老犬の寝ているときの呼吸が早い・・異常か判断するポイントと考えられる原因を解説
犬はシニア期に入ると、筋力・代謝の低下や視覚・聴覚、消化機能、認知機能などの身体機能の衰えが認められるようになります。ちょっとした運動でも息切れを起こしやすくなりますが、これは心肺機能の衰えからくるものであり、普段の生活の中で老犬の呼吸が荒くなるのは珍しいことではありません。しかし、寝ているときの呼吸が速いと「具合が悪くて苦しいのかも」と心配になりますよね。今回は老犬の呼吸が速いときに正常か異常かを判断するポイントと考えられる原因を解説していきます。
犬の呼吸について
愛犬の安静時の呼吸数を知っておくことは健康管理をするうえで重要なポイントの1つではありますが、「愛犬の普段の呼吸数は?」と聞かれて即答できる方は少ないのではないでしょうか。また、そもそもどれくらいが正常な数値なのか知っていなければ、万が一異常があったとしても見逃してしまうかもしれません。普段の様子との違いに気づくためにも、一般的な犬の呼吸数や呼吸数の測り方、正常・異常を見分けるポイントについて知っておきましょう。
犬の正常な呼吸数ってどれくらい?
犬の正常な呼吸数は、覚醒時で1分間に10〜35回程度とされています。
ただし、ライフステージや身体の大きさなどによって多少違いがあります。たとえば、子犬は成犬よりも呼吸数が多く、通常は15〜40回程度。サイズでいえば、小型犬は20回前後、大型犬は15回ほどが平均です。
また、短頭種に分類される犬は鼻孔や気管が狭いという構造上、鼻呼吸よりも口呼吸が多くなり、結果として呼吸数が多くなる傾向があります。
さらに、老犬の場合は身体機能が低下するため、呼吸が速くなることは珍しいことではありません。
このようにさまざまな状況によって違いが見られるため、異変に気付くためには愛犬の安静時の呼吸数を知っておくことが大切です。
呼吸数の測り方は?
愛犬が寝ている時やリラックスしているときに、胸の動きを見たり、胸やお腹に手を当てて回数を測ります。上下して(吸って吐いて)1回の呼吸というカウントです。
1分間測り続けるのは難しいので、10秒測って6倍、15秒測って4倍という方法で呼吸数を算出してみてください。何回か測ってみるとより正確な数が分かると思います。
正常な呼吸と異常な呼吸の見分け方
愛犬の呼吸がいつもより早いかも?と感じた時には、普段の呼吸数と比べてみましょう。
夏場は体温調整のために少し呼吸が速くなることもありますが、涼しい室内にいて1分間の呼吸数が40回以上の場合や、普段の呼吸数よりも多い場合には何らかの異常があると考えられます。特に、安静時の回数との差が大きいほど注意が必要です。
また、呼吸数だけでなく呼吸の仕方や様子もあわせて確認しておきましょう。以下のような様子が見られた時には緊急性の高い病気が疑われるため、すぐに動物病院を受診してください。
- 荒く苦しそうに呼吸をしている
- 舌の色が白や紫になっている
- 上を向いて呼吸している
- ヒューヒュー、ガーガーといった音がする
- 呼吸音が大きい
- お腹や胸をいつもより大きく動かして呼吸をしている(努力呼吸)
- 口を開けて呼吸する(開口呼吸)
呼吸が速い場合に考えられる原因について
老犬は身体機能が衰えるため呼吸が速くなるのは珍しいことではありませんが、痛みや病気が原因で呼吸が速くなる可能性ももちろんあります。特に寝ているときに呼吸が速くなるのは何らかの異常が考えられるため、注意が必要です。まずは病気以外で寝ているときも呼吸が速い場合に考えられる原因をご紹介します。
暑さによるもの
犬は暑さを感じると「ハァハァ」と荒い呼吸を繰り返して体温を調整しようとします。(パンティング)
パンティングは運動した後や体温が上昇した時、さらには嬉しい時や興奮した時にも見られる生理現象であり、多くの場合、安静にしていれば治まるので問題はありません。ただし、中には熱中症の初期症状というケースもあるため、いつまで経っても治まらない、苦しそう、涼しい環境なのにパンティングをしているといった場合は注意が必要です。
パンティングの場合は4本足で立っていることがほとんどですが、呼吸が苦しい場合はお座りの状態でハァハァとしていると言われているので、生理現象なのか苦しいのか分からないという場合にも姿勢も判断材料の1つにしてみてください。
ストレスや身体の痛み
不安や恐怖、緊張などの心理的なストレスを感じていたり、身体に痛みがあるときも呼吸が速くなることがあります。
また、震えている、あまり動きたがらない、身体を触ったときに唸る・キャン!と鳴くなどの様子が見られたら、どこかに痛みを感じているかもしれません。
病気が関係していることも
暑さやストレス、痛み以外にも、さまざまな病気が原因となって呼吸が速くなることもあります。呼吸が速い際に考えられる病気は多岐にわたるため、ここでは一例をご紹介しましょう。
【のどの病気】軟口蓋過長症
軟口蓋過長症とは、喉の手前の柔らかい部分が通常よりも長いことで気道が塞がれてしまい、空気をうまく吸い込めなくなる状態です。短頭種気道症候群の1つで、パグやフレンチブルドッグなどの短頭種に多くみられます。
肥満や合併症だけでなく、年齢とともに喉や軟口蓋周辺の筋肉が衰えることでも症状が悪化すると言われており、老犬になると呼吸が速くなるケースも少なくないようです。
【鼻の病気】鼻炎
鼻炎は鼻の内部で炎症が起きてしまう状態です。原因は細菌やウイルスによる感染症、アレルギー、異物、腫瘍などさまざまで、くしゃみや鼻水などの症状が見られますが、重症化した場合、鼻の内部が腫れ、呼吸がしにくくなります。
【気管の病気】気管支炎、気管虚脱
細菌・ウイルスの感染やアレルギー反応が原因として考えられる気管支炎や、気管の一部がつぶれて呼吸がしにくくなる気管虚脱などの病気によって呼吸が速くなることもあります。
気管虚脱は小型犬や老犬によく見られる病気です。初期の段階ではガーガーという音が聞こえますが、重症化するとチアノーゼや呼吸困難を起こし、最悪の場合死に至る可能性もあります。
【肺の病気】肺炎
肺炎は細菌・ウイルス・真菌などの感染によるものが多く、咳、発熱、食欲がなくなるなどの症状が見られます。肺に異常が生じるため酸素を取り込むために呼吸が速くなります。鼻炎や気管支炎よりも重いため、重症化すると死に至ることもあり、なるべく早い対応が必要です。
【胸の中の病気】胸水
胸水は胸腔内に血液や漿液などが溜まってしまう状態です。胸腔内に水が溜まると肺の動きが制限されるので、うまく息ができなくなり呼吸が速くなります。初期の段階では気づかれにくいとされていますが、放置すると命の危険があるため、日頃から愛犬の様子をよく観察し早期発見に繋げることが重要です。
【心臓の病気】僧帽弁閉鎖不全症、フィラリア
僧帽弁閉鎖不全症は特にシニア期の小型犬に多くみられる病気です。僧帽弁と呼ばれる左心房と左心室の間にある弁がきちんと閉じなくなり心臓内で血液が逆流するため、全身をめぐる血液の量が少なくなります。そうすると酸素不足となり、脳が酸素を吸うよう命令を出すため、呼吸数が増加するのです。
フィラリアは心臓や肺動脈に寄生し、心臓、肺だけでなく肝臓や腎臓にも深刻な影響を与える病気で、かつては犬の死亡原因の1位だと言われていました。予防薬を投与することで予防することができますが、予防薬を投与せず感染してしまった場合、元気がない、運動を嫌がる、血尿、呼吸が速くなるなどの症状が見られます。
「いつもと違う」と感じたらかかりつけ医へ相談を
人間の場合、成人は1分間に12~20回が正常値だと言われているものの、自分の呼吸数がどれくらいなのか意識して数えることはあまりありませんよね。そのため、愛犬の呼吸数を把握している!という飼い主さんはあまり多くないと思います。しかし、愛犬の普段の呼吸数を知っておくことは、病気の早期発見に繋がる可能性が高くなるため、実はとても大切なことなのです。
老犬になると身体機能の衰えからこれまでとは違う様子が見られることが増えます。呼吸が速くなることも珍しいことではなく、パンティングなどの生理現象であれば心配はいりません。また、老犬の呼吸が速い原因が暑さであれば、室温を適宜調整することで対処することができます。また、心理的なストレスなどが原因だと考えられる場合には、その原因を突き止め取り除いてあげることで落ち着くでしょう。加齢が原因となっている場合は、呼吸が楽にできる体勢にしてあげるのも効果的です。
しかし、これらを判断するのは難しい部分もあり、大したことないと思っていたら深刻な病気が隠れていたというケースも珍しくありません。呼吸の異常は緊急度が高く、命に関わる病気も多くあるので、「いつもより呼吸が速いかも」、「息の仕方がおかしい」と感じた時点で様子を見ずになるべく早くかかりつけ医に相談することが大切です。
日頃から愛犬の様子をよく観察し、少しの異変も見逃さないようにしたいですね。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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