【獣医師監修】犬が過呼吸になってしまう原因とは|考えられる病気や対処法を解説
愛犬の呼吸が普段より速い、呼吸数が多い気がすると感じたことはありませんか?普段と違い、ゼーゼーと苦しそうな呼吸をしていると心配になりますよね。平常時よりも呼吸数が多い場合、何らかの病気が潜んでいることがあるため、早めに見つけてあげることはとても大切です。
この記事では、犬が過呼吸を起こしたときに考えられる原因と対処法について解説します。
犬が過呼吸になったときの初期症状
犬の正常な呼吸数は小型犬で毎分25回程度、大型犬で毎分15回程度です。平常時の呼吸数が毎分35回を超えており、犬が苦しそうに荒く速い呼吸をしているときが過呼吸の状態と言えます。
初期症状とチェック項目
口を開けてハァハァと呼吸をしている場合や、荒く苦しそうな呼吸をしている場合は過呼吸の可能性があります。普段の呼吸と違うときは身体に異常が起きているサインかもしれません。
また、口を開けたときに舌が見えたら、その色も見ておきましょう。正常だと舌はきれいなピンク色に見えますが、低酸素状態になると、ピンク色が薄くなって白っぽくなったり、もっと悪くなると青紫色に見えることもあります(チアノーゼ)。
呼吸の仕方や回数、舌の色など、普段と違う様子が見られたら、早めに動物病院を受診しましょう。
他の犬や人間にうつる?
過呼吸の症状そのものは、基本的には他の犬や人間にはうつりません。しかし、何らかの病気が背景に隠れている場合、その病気が感染性のものだったら、うつる可能性は考えられます。まずは適切な検査を行って、原因となる病気を特定するのが良いでしょう。
過呼吸になってしまう原因として考えられる病気
犬の過呼吸を引き起こす代表的な病気を4つご紹介します。過呼吸を引き起こしている原因疾患によっても適切な治療が変わってきますので、まずは早めに病院を受診して、鑑別のために必要な検査を受けることをおすすめします。
原因【1】気管支炎・肺炎
ウイルスや細菌に感染して起こる気管支炎や肺炎が原因となって、浅くて速い呼吸や胸を大きく動かす呼吸が見られることがあります。特に免疫状態が低い子犬や老犬は重症化する可能性もあるので注意が必要です。
原因【2】気管虚脱
気管虚脱は筒状である気管がつぶれてしまい、空気の通り道が狭くなることで呼吸が苦しくなる症状です。ガーガーという呼吸音が特徴で、他にもゼーゼーと鳴くような喘鳴音や咳なども引き起こします。
症状が軽い場合は涼しい場所で安静にして、落ち着くまでは様子を見ましょう。口の中の粘膜や舌が青紫や紫色になるチアノーゼが見られたら、命に関わる場合も考えられますので、早急に病院で診察を受けてください。
原因【3】犬糸状虫症
蚊が媒介して感染する犬糸状虫症(フィラリア症)を発症すると、心臓や血管に虫が寄生することにより、肺と心臓の間の循環が上手くいかなくなって肺の機能が滞り、呼吸困難に陥るリスクがあります。フィラリアに感染するのを防ぐためには、春から冬にかけて、月に1度の予防薬の定期的な投与が重要です。
フィラリア予防薬の投薬を怠ってしまい、疑わしい症状が見られた場合は、フィラリア症に感染していて病気が進行している可能性が高いので、早急に動物病院を受診しましょう。
原因【4】軟口蓋過長症
上顎の奥にある軟口蓋が正常よりも長く伸び、息を吸う際に気道を塞いでしまうため、ガーガーといった呼吸音となります。
パグやフレンチブルドッグなどの短頭種に多く見られる病気で、先天的な原因があると言えます。重症になると、興奮時に呼吸困難になったりチアノーゼを起こしたりします。
過呼吸を起こしやすい犬種は?
年齢に関わらず、トイプードルやチワワなどのトイ犬種やミニチュア犬種は気管虚脱になりやすいと言われています。パグやブルドッグなどの短頭種も軟口蓋過長症になりやすいため、過呼吸を引き起こしやすく、注意が必要です。
過呼吸になった場合の治療法
過呼吸はさまざまな病気が原因となって引き起こされます。過呼吸を引き起こしている原因疾患を正しく診断して、早めに治療を開始することが重要と言えます。
治療にかかる費用
治療費用は、動物病院によってさまざまです。
肺炎や気管支炎や軽度の気管虚脱などは、内科治療で症状が緩和される可能性が高いですが、気管虚脱や軟口蓋過長症は程度によっては手術を含めた外科的な処置が必要になります。その場合、呼吸器に特化した専門の科が設置されている病院を受診する必要があり、費用も高額になる可能性があります。
気管虚脱や軟口蓋過長症が判明した場合、かかりつけの病院ではどのような治療方針になるのか、重症である場合、手術を含めた外科的な処置は行ってもらえるのか、費用はどのくらいになるのかなど、不安な点があれば事前に相談してみましょう。
過呼吸への対処法は?
先天性の病気は残念ながら予防法はありません。しかし、元から過呼吸を起こしやすい子であれば、過度に興奮させない、暑すぎず寒すぎないように空調を調節するなどの対処はしておくと良いかもしれません。
過呼吸は悪化すると命に関わる可能性もあるため、苦しそうな症状が見られたときには早めに適切な検査を行って、原因となっている疾患を診断してもらい、必要な治療を検討しましょう。
再発する可能性
治療を行っても再び過呼吸を引き起こしている場合は、その様子の動画を撮影しておき、診察の際に持参しましょう。
気管が潰れる気管虚脱は、原因がはっきりと分かっていないため予防が難しい病気ですが、外科治療を行うと再発の可能性は少なく、根治を目指せる場合もあります。生まれつき喉元が狭い軟口蓋過長症は、外科治療により軟口蓋の切除を行っても場合によっては再び伸びる可能性があります。
愛犬の平常時の呼吸数を把握しておきましょう
過呼吸かどうかを判断するためには、平常時の呼吸の仕方や回数をチェックしておくことが大切です。呼吸の異常は病気の兆候である場合が多いため、獣医師に具体的な症状を伝えられるようにしておきましょう。愛犬がいつもと違う呼吸をしていたり、苦しそうな表情をしていたら、早めに病院を受診してくださいね。
こちらの記事もチェック
この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
呼吸に関する記事
健康管理/病気
【獣医師監修】犬の逆くしゃみとは|逆くしゃみ症候群が起こる原因や対処法などを知っておこう
愛犬が突然、フガフガと苦しそうな呼吸をして驚いたことのある飼い主さんは少なくないのではないでし...
2023年12月14日
健康管理/病気
【獣医師監修】犬の呼吸が荒い場合はどうしたらいい?ハアハアと苦しそうな原因と対処法について
愛犬がハアハアと苦しそうな呼吸をしていたり、ガーガーと大きな音のする呼吸をしていたら、とても心...
2023年11月14日
健康管理/病気
【獣医師監修】愛犬の正常な呼吸数を知ろう|呼吸が速い場合に考えられる病気や原因について
愛犬の平常時の呼吸数が何回くらいか把握していますか?「普段よりも呼吸が速い気がする」と気付ける...
2023年4月6日
健康管理/病気
【獣医師監修】犬が過呼吸になってしまう原因とは|考えられる病気や対処法を解説
愛犬の呼吸が普段より速い、呼吸数が多い気がすると感じたことはありませんか?普段と違い、ゼーゼー...
2023年4月5日
健康管理/病気
【獣医師監修】病気の可能性も。犬の呼吸がフガフガという呼吸音になる4つの理由
愛犬から「フガフガ」「ブーブー」というような異常な呼吸音が聞こえたことはありませんか?いつもと...
2023年1月4日