【獣医師監修】犬が咳をしているときに考えられる病気は?原因と要注意な症状を紹介します
犬が咳をしているのを見たことはありますか?犬の咳は人間の咳とは違って「ケッケッ」「カッカッ」と何かが詰まって吐き出すような咳をします。頻繁に出るものではないので、そのまま放っておくといつの間にか病状が悪化し、取り返しのつかない事態になってしまうかもしれません。
今回の記事では、犬に咳が出たときの原因や考えられる病気、要注意な状態について解説します。
犬が咳をしている場合に考えられる原因は?
犬の咳には心配のないものや重篤な疾病によって引き起こされるものまで、さまざまな原因が考えられます。まずは、犬が咳をしている場合の原因について見ていきましょう。
咳の原因|1.生理的現象によるもの
咳とは気道に異物の存在を感じたときに、その異物が侵入してくることを防いだり、吐き出したりするための生体の防御反応です。 フードを勢いよく食べ過ぎたり、水をがぶ飲みしたときにむせて出る咳や、ほこりを吸い込んでしまって出る咳は一過性のもので、心配はありません。
咳の原因|2.疾病からくるもの
子犬であればケンネルコフやアレルギー性肺炎、中〜高齢犬になると心臓病や気管虚脱などのさまざまな疾病が原因となって咳が出ます。
咳の原因|3.誤嚥性肺炎
異物や食物、水分などが食道につかえてしまい吐き出そうとした際に、誤って肺に入ってしまうと誤嚥性肺炎を発症し、呼吸困難になったり咳が出たりします。
併発していたら要注意な症状とは
犬が咳をしているときは、他にどのような症状が併発しているかを注意して見ておく必要があります。例えば、ぐったりしている、舌や歯茎が白くなった、開口呼吸をしている、苦しくて横になることができないなどの症状が出ている場合には、呼吸困難や酸素不足になっていると考えられます。緊急性が高いのですぐに動物病院に連れて行きましょう。
犬の咳が続くときに疑われる病気
犬の咳がいつまでも続くときや、咳と同時に他の身体的症状を伴うときは病気の可能性があります。考えられる病気やその対処法について詳しく解説します。
犬の咳で考えられる病気|1.心臓病
犬の心臓病にはさまざまな種類がありますが、なかでも僧帽弁閉鎖不全症が最も多く見られます。犬の心臓にある僧帽弁がしっかり閉じなくなることで、血液の逆流が起こり、身体にさまざまな障害が出る病気です。
初期では無症状ですが、進行すると喉を詰まらせたような咳が出るようになります。放置してしまいさらに進行すると、肺水腫を引き起こすこともあり、チアノーゼや呼吸困難を起こし、突然倒れてそのまま死に至る可能性もあります。
治療法
犬の僧帽弁閉鎖不全症は、初期には無症状であることが多いので、飼い主さんが自宅で病気に気付くことは難しいかもしれません。定期健診などで、獣医師が聴診器で心臓の雑音を聞くことで見つけることがほとんどです。犬の僧帽弁閉鎖不全症の治療には、内科的治療と外科的治療があります。
【外科的治療】
僧帽弁閉鎖不全症の完治を望むのであれば、全身麻酔下での外科的治療が選択されます。外科治療にはいくつかの術式がありますが、最もよく行われるのが、弁を縫い縮めることで逆流を減らす「弁輪縫縮」と、弁と心臓内壁をつなぐ腱索を再建する「僧帽弁修復術」ですが、非常に難しい高度な手術になります。
この手術ができる動物病院は限られており、高額な治療費を必要とすることから、誰もが簡単に選択できる治療法ではありません。また、すべての段階の僧帽弁閉鎖不全症が手術に適応するわけではなく、手術をしても完全に血液の逆流を止められないこともあります。
【内科的治療】
僧帽弁閉鎖不全症の内科治療は心臓の負担を軽くすること、病気の進行を緩やかにすることを目的とします。その子の病態に合わせて、心臓の収縮力を高める薬や、血管を拡張して循環を促し血圧を下げる薬など、いくつかの内服薬を服用します。また症状が進んでしまって肺水腫を引き起こした場合は、酸素吸入が必要となり、利尿剤を投与し、入院して点滴などを行う場合もあります。
犬の咳で考えられる病気|2.気管虚脱
気管虚脱とは、気管が潰れてしまって狭くなったり細くなってしまう病気です。 チワワやトイ・プードルなどの小型犬に多い病気で、初期では水を飲んだ際などに、むせるような咳をしたり、喉が詰まったような咳が見られたりします。
病気が進行してくると、運動したり興奮したとき、リードを強く引いたときなどに、ガーガーというガチョウの声のような乾いた咳や、喘息のときのようなヒューヒューという呼吸音が出たりします。さらに進むと呼吸困難やチアノーゼを起こして突然倒れてしまうこともあります。
治療法
気管虚脱の発症には遺伝的要素が関係しているといわれていますが、はっきりとした原因はわかっていません。気管虚脱を起こした子は、どのような治療を行うときもまずは普段の生活において、呼吸症状を悪化させる要素をしっかりと取り除く必要があります。肥満体型であればダイエットをさせ、頸部に負担がかかる首輪をやめてハーネス(胴輪)に変更する、などといった工夫が必要になります。
気管虚脱の治療に関しては、ほとんどが内科治療ですが、あくまでも対症療法であり完治は期待できません。外科治療を実施すれば、気管の狭窄は解消されますが、合併症を発症するリスクがあるため、その後も定期的な経過観察が必要となります。
【内科的治療】
症状が軽い場合は、鎮咳剤、去痰剤、気管支拡張剤、ステロイドなどの抗炎症剤などの内服薬を投与することである程度の改善が見られますが、病気の進行そのものを抑えることはできません。
【外科的治療】
外科治療としては、虚脱部分が頚部の気管の場合には、気管が正常な形を保つのを助ける気管外リングプロテーゼが行われ、70~80%で良い結果が出ています。他にも気管の虚脱部を内側から広げる器具(ステント)を挿入するステント治療も行われます。こちらも結果は良好ですが、定期的に気管内視鏡検査や薬剤を気道内に吸引させるネブライジングが必要になります。
犬の咳で考えられる病気|3.ケンネルコフ
生後6週齢~6ヶ月齢の子犬によく見られる疾病で、伝染性の気管支炎と呼ばれています。ウイルスやマイコプラズマ、細菌などさまざまな病原体によって発症します。咳、くしゃみ、鼻水が主な症状です。
単独の細菌感染であれば、7日から2週間程度で回復しますが、他のウイルスにも感染しているときは、重症化して肺炎や重度の気管支炎を引き起こす場合もあります。
治療法
ケンネルコフの内科的治療としては、咳止め薬や抗生剤などの内服薬を1週間ほど投与します。子犬の免疫力を高め、ウイルスの活性化を弱めるための注射をすることもあります。その他、ネブライザーを使って液体薬を霧状にして吸引する治療法もあります。重度の気管支炎や肺炎などの合併症を引き起こした場合は、治療や回復に時間がかかります。
愛犬が頻繁に咳をしていたら迷わず動物病院へ
犬が咳をするということは、そんなに頻繁に起こることではありません。リードを引っ張ったり、水を飲んでむせたりすることで起こる心配する必要のない一過性の生理的な咳以外に、普通にしていても咳が出たり、咳がいつまでも続いたりするときは、疾病からくる咳の可能性が高いので、安易に様子を見ずに、迷わず獣医師の診察を受けましょう。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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