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【獣医師監修】犬の身体にできる脂肪腫について|初期症状や原因、治療法を解説

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愛犬の身体を触っているとき、しこりやできものを見つけたことはありませんか?犬の身体にできものができる理由はさまざまですが、考えられる原因の一つとして「脂肪腫」が挙げられます。

脂肪腫は、中年齢〜高齢犬において多く発生する脂肪組織由来の良性腫瘍で、犬では珍しいものではありません。良性なので基本的には健康に大きな影響を与えることはありませんが、発生部位やその性質によっては対処が必要になるため、気になる場合は早めに獣医師に診察してもらうことが大切です。

今回は、犬にできる脂肪腫の原因や治療法、予防法について解説していきます。

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目次

  1. 犬の脂肪腫について
  2. 犬の身体に脂肪腫ができる原因とは
  3. 脂肪腫の治療法は?
  4. 脂肪腫を予防する方法はある?
  5. 愛犬の身体に脂肪腫を見つけた場合は

犬の脂肪腫について

犬
Lina Kivaka Pexels

犬の脂肪腫は、皮膚のすぐ下、皮下組織で発生することが多く、ほとんどは身体の表面から触ることができます。

また、太もも部分に発生する筋肉内脂肪腫や、湿潤性脂肪腫という、悪性ではないものの骨にまで達することもある怖い脂肪腫も存在します。湿潤性脂肪腫の場合は、身体の別の部位に転移することはありませんが、脚の切断などの外科手術が必要になることもあります。

脂肪腫とは異なりますが、腫瘍脂肪肉腫という珍しい悪性腫瘍もあります。多くの場合は皮膚の下にできるのですが、骨や内臓近くにできた例もあり、肺、肝臓、骨などへの転移も発生します。

初期症状とチェック項目

脂肪種は、飼い主さんが愛犬をブラッシングしたりスキンシップをとったりしたときに「柔らかいしこりがある」「ぶよぶよとした塊がある」と気付くことが多い病気です。

また、太っていた犬が痩せてきたときに皮下脂肪が少なくなり、脂肪腫があることに気付くというケースも珍しくありません。身体の表面にできる皮下脂肪腫は、痛みなどが生じず無症状であることがほとんどです。

大きさや発生部位によっては、問題になる症状が現れることも

脂肪腫は、どんどん巨大化することが少なくありません。脇の下にできた場合には足を閉じられなくなったり、上手く歩けなくなります。胸部や腹部にできた腫瘍が地面と擦れ、出血することもあります。

また、皮下でなく身体の内部に脂肪腫が発生すると、違和感や痛みを感じたり、内臓を圧迫することによる機能障害を起こすことがあります。

筋肉内脂肪腫ができた場合

太もも部分に筋肉内脂肪腫ができると、跛行(はこう:足を引きずる症状)が見られることもあり、発生部位によっては臓器の働きを邪魔して、その部位に応じた症状が出ることがあります。

他の犬や人間にうつる?

脂肪腫は皮下の脂肪が異常に増殖してしこりを形成したものであり、感染症ではありません。そのため、他の犬や人間にうつるかもといった心配は不要です。

犬の身体に脂肪腫ができる原因とは

寝ている犬
sql Unsplash

脂肪腫は脂肪組織由来の腫瘍で、皮下組織に脂肪のかたまりのようなしこりやできものが生じます。はっきりとした原因はわかっていませんが、肥満や遺伝の関与があると考えられています。

肥満

肥満の犬は脂肪腫ができやすい傾向があると言われています。適切な体重管理には食事と運動が大切です。おやつの与えすぎなどカロリーの摂りすぎは注意し、毎日お散歩などで適度な運動を心がけましょう。

人間と同じように、犬も肥満は万病のもとです。特に高齢の場合は関節に大きな負担がかかったり、呼吸器や循環器にも悪影響を与えます。手術が必要になった場合も麻酔のリスクが高くなるので、体重管理には注意しましょう。

遺伝

脂肪腫はどの犬にも発生しますが、比較的特定の犬種に発生しやすいことから、遺伝が関与しているとも考えられています。

かかりやすい犬種や年齢は?

あらゆる犬種において発生する腫瘍ですが、ラブラドール・レトリバーやドーベルマン・ピンシャー、コッカー・スパニエルなどは脂肪腫ができやすい傾向にあるようです。

また、中年齢~老齢において多く発生することがわかっており、メスの脂肪腫の発生率はオスのおよそ2倍と言われています。

脂肪腫の治療法は?

寝ている犬
ditakesphotos Unsplash

次に、犬の脂肪腫の検査方法や治療法についてご紹介します。

脂肪腫の検査方法

脂肪腫は、腫瘍に針を刺して組織を採取して顕微鏡で観察する細胞診で診断されます。刺すのが難しくない部位であれば、全身麻酔は不要です。

しかし、浸潤性脂肪腫の場合は、細胞診だけでは細胞の形態は通常の脂肪腫と区別できません。より確かな診断のために周囲の組織を含めた組織を、全身麻酔をかけて外科手術で切除し、切除した組織を病理組織検査でより詳細に検査する必要があります。

また、細胞診で脂肪腫と判断される場合でも、急激に大きくなったり見た目が変わるようであれば浸潤性脂肪腫が疑われることから、手術による検査が必要になることがあります。

脂肪肉腫の場合は、細胞の形態が明らかに異なることから、脂肪腫との区別はしやすくなっています。とは言え、細胞診のみで脂肪肉腫を確定診断することは危険なので、病理組織検査をする必要があるでしょう。

治療にかかる費用

犬の脂肪腫は、無症状で見た目の大きさが極端に変化がなければ、治療をしなくても済む場合も多くあります。

しかし、脂肪腫が周辺の組織を圧迫して、身体の一部に機能障害が見られる場合は外科手術が必要になることもあります。腫瘍摘出手術は、病院によって幅はありますが、おおよそ2〜5万円くらいのことが多いようです。その他に、手術前の血液検査代や全身麻酔代、入院費、点滴代などがかかります。

浸潤性脂肪腫の手術をするときは、切除が不十分だとすぐに再発する可能性が高いので、できる限り大きく切除するか、四肢に発生した場合には足を切断してしまうなどと大がかりな外科手術になることも考えられます。外科手術での切除が不十分であった場合は、放射線療法や化学療法が選択されることもあります。そのため、浸潤性脂肪腫の治療にかかる費用は、一般的な脂肪腫よりも高額になると考えられます。

料金設定は動物病院によって異なるので、直接問い合わせることをおすすめします。

犬の年齢や健康状態によっては、希望する治療を受けられないことも

脂肪腫の治療は外科手術が一般的ですが、手術には全身麻酔が必要です。高齢犬や、心臓病などの持病を抱える犬は麻酔のリスクが高いため、獣医師の判断によっては手術を受けられないことがあります。

基本的には良性の腫瘍であるため様子を見がちですが、発生した部位などによっては少しずつ成長した腫瘍により歩きにくくなるなどの機能障害が起きることがあります。高齢になってから巨大化した腫瘍の手術を受けたいと思っても受けられないことがあるので、身体にできものを発見したら早めに診察を受け、治療について獣医師とよく話し合っておくことが大切です。

脂肪腫を予防する方法はある?

犬
connorhome Unsplash

脂肪腫の発生を確実に予防することは難しいので、日頃から犬の身体によく触り、しこりやできものが無いかチェックすることが大切です。高齢の犬に多い腫瘍ではありますが、成犬や子犬でも発症する確率はゼロではありません。

大きくなってから発見し手術するとなると、その分傷口も大きくなります。早期に発見すれば傷が小さく済み、悪性であった場合にも定期的に転移などをチェックして、身体症状を起こさないように対策できる可能性が高くなります。

また、肥満は脂肪腫の発生に関与するとも言われているので、体重管理も予防に繋がると考えられます。毎日の食餌はきちんとカロリーを計算し、適正量を決めて与え、おやつの与えすぎにも注意しましょう。

再発する可能性

脂肪腫は外科的に摘出することによって完治することが可能ですが、まれに腫瘍の種類によっては再発してしまう場合があります。

悪性の腫瘍脂肪肉腫は再発する確率が高く、再発を繰り返すたびに悪性度が増す傾向があります。そのため、できるだけ早いうちに広範囲な組織(筋肉や骨)を切除する必要があります。浸潤性脂肪腫も、良性ではあるものの周囲に腫瘍が浸潤しながら増殖するため、早期の対応が必要です。

脂肪腫を摘出した後も犬と小まめにスキンシップを取り、再発した腫瘍を少しでも早く発見することが大切です。

愛犬の身体に脂肪腫を見つけた場合は

犬
Pexels

犬の脂肪腫は多くのものは良性で、通常であれば健康に大きな問題を起こすことはありません。しかし、大きく成長すると地面などにこすって出血したり、皮膚の下ではなく身体の内部にできた場合は内臓の機能障害を起こすことがあります。

また、脂肪腫に似た浸潤性脂肪腫や悪性の脂肪肉腫は治療が必要な病気です。浸潤性脂肪腫や脂肪肉腫と診断された場合でも、外科的に完全切除されれば予後は概ね良好とされています。

愛犬の身体にしこりやできものを見つけた場合は、単純な脂肪腫だけではなく、その他の病気である可能性も考慮して、早めに動物病院で相談するようにしてくださいね。

■参考文献

  • 『犬と猫の治療ガイド 2015 私はこうしている』インターズー刊

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choco

この記事のライター

choco

シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!

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