【獣医師監修】犬の歯周病について|治療方法や費用、完治までにかかる時間などを解説
3歳以上の犬の約80%が、歯周病や歯の病気のリスクを抱えていると言われていることをご存知でしょうか。これは、成人の日本人が抱えているリスクと同じ数字です。人間と同じように、犬も歯周病が重症化すると細菌感染から重大な病気に発展する危険性があります。しかし、一般的な動物病院では、まだまだ歯の専門的な治療ができる獣医師は少ないことも知っておかなくてはなりません。今回は、犬の歯周病について、発症の原因から完治までにかかる時間や治療費について解説します。
目次
恐ろしい病気|犬の「歯周病」について
犬の歯周病は、人間の歯周病と同じように、悪化すると最悪の場合死に至ることもある恐ろしい病気です。犬の歯周病は、毎日の歯磨きで予防することができます。犬に取って重大な病気の原因ともなる歯周病について、飼い主さんは正しい知識を持つことが大切です。
犬は歯石ができやすい
犬は、虫歯になりにくい動物だと言われています。その理由として、私たち人間との口腔内と犬の口腔内とでは環境が異なるからです。
人間の口腔内は、むし歯菌が繁殖しやすいPH6.8~という中性~弱酸性であることに対し、犬は口腔内はPH8~8.5と弱アルカリ性に保たれていることが特徴です。
ところが、口腔内がアルカリ性であると歯垢が溜まりやすく、あっという間に歯垢が歯石へと変わってしまうのです。人間では約25日で歯石が形成されますが、犬の場合は、約3日と短期間で歯石が形成されてしまいます。
歯周病の原因は歯石
皆さんはプラークコントロールという言葉を聞いたことがありませんか?プラークとは、歯の表面や歯と歯肉の間に溜まった歯垢のことを指します。
口腔内の細菌によって歯垢(プラーク)が作られるのは、人間も犬も同じメカニズムです。歯垢が溜まり、歯茎が赤く腫れた状態が歯肉炎です。この段階で、歯磨きをして、歯垢を取り除くことがプラークコントロールなのです。
歯茎の溝などにたまった歯垢や歯垢が固まった歯石が歯周病を引き起こします。歯垢の中で繁殖した歯周病菌によって、歯茎に炎症が起こる細菌感染症が歯周病です。歯周病は進行すると、歯茎の内部にまで浸透していきます。
やがて、歯周病菌が周りの組織を壊し、最終的に歯を支えている顎の骨(歯槽骨)を溶かし歯が抜け落ちてしまうのです。この状態を歯周炎と呼びます。歯周炎は、歯周病が最も進行した状態なのです。
また、炎症を起こしている場所の粘膜から血管に細菌が入り込み、心臓や腎臓、肝臓などの内臓や関節、骨髄などに悪い影響を及ぼすことから、歯周病の予防や治療が重要となるのです。
歯周病の症状とは
犬が歯周病を発症すると、人間と同じように痛みや不快感を感じます。また、次のような症状が見られたら、歯周病を疑い、動物病院へ連れて行きましょう。
- 口臭が強くなる
- 歯茎から出血する、歯茎が赤く腫れている
- 口のまわりを気にする
- 床に顔をこすりつけたり、前足で顔をこすっている
- ご飯を食べるとき痛がる、違和感がありそう
- 硬いドライフードの食いつきが悪い
- 歯磨きガムなどの硬いものを嫌がるようになる
- 以前より、飼い主さんに口を触られるのを嫌がる
歯周病になりやすい犬種とは
小型犬は歯周病になりやすいと言われていますが、ペット保険大手のアニコム損保の統計データによると、イタリアングレーハウンド、ダックスフンド、トイプードルは、歯周病の罹患率が高いことがわかっています。また、パグ、フレンチブルドッグ、ボストンテリアなどの短頭種は、マズルが短く特殊な構造であることから、歯周病を発症しやすいと言われています。
犬の歯周病の治療方法とは
歯周病かなと思ったら、放置せずにすぐに動物病院へ連れて行くことが、愛犬の歯を守る最良の方法です。残念ながら、一般の動物病院では専門的な歯科治療を受け付けていなかったり、専門医がいないために適切な診断ができない可能性があるため、重度の歯周病が疑われる場合は犬の歯科専門病院を訪れることがおすすめです。
もちろん、一般的な歯石除去や抜歯などは一般の動物病院でも行うことが多いので、まずはかかりつけの動物病院を受診して口腔内の状態を確認してもらいましょう。
歯周病の治療は全身麻酔で
歯周病は放置すると、歯茎の内部にまで炎症が進行し、顎の骨を溶かしてしまうことがあります。最悪の場合には、顔の皮膚まで貫通したり鼻腔内に貫通することもあるので早期発見・早期治療が必要です。見た目だけではわからない歯周病は、レントゲン検査や麻酔下で歯周ポケットの深さを測定するプローピングなどの口腔内検査を行います。
また、歯周病と診断されると、多くの場合は全身麻酔をして治療します。治療では、歯石の除去、歯周ポケット内の洗浄、歯の研磨が行われます。さらに歯周病が進行している場合には、歯根の洗浄処置や抜歯、歯肉の切開・縫合を行うこともあります。
歯周病の治療にかかる費用はどれくらい?
犬の歯周病の治療費は、抜歯の本数、歯肉の切開が必要かどうかによって異なります。また、処置後に通院や入院が必要となった場合は治療費も異なってきます。
病院によってさまざまですが、通常は初診料、診察料、検査費、全身麻酔、歯科処置費が請求の項目となります。軽度で歯石の除去のみの場合、重度で何本も抜歯するなど進行の度合いによって、治療費が大きく異なるのが歯周病の特徴です。歯周病の治療費は約5万円~30万円程度が目安となります。
歯周病が完治するまでに要する期間は?
歯周病は、進行度合いによって治療期間も変わってきます。軽度の場合は、日帰りでの治療が可能ですが、重度になると1泊程度の入院が必要になります。
また、犬の年齢や健康状態によっても治療方法が異なるため、治療期間は一律ではありませんが、目安として歯石除去は半日程度、抜歯が必要な場合は入院の可能性もあると考えておいたほうがいいでしょう。
愛犬のお口の健康を守るために毎日のデンタルケアが大切
最近では、犬のオーラルケア用品として、ガムやドッグフード、デンタルトイなどが多数販売されています。しかし、このようなケア用品では、歯垢を取りきれないことがわかっています。
歯周病にさせないためには、人間と同じように、犬も毎日の歯磨きが有効です。食後30分以内の歯磨きによって、90%近く歯垢の付着を予防することが可能だと言われています。
歯石は、一度形成されてしまうと歯磨きでは取り除けません。犬にとって麻酔を必要とする歯の治療は負担の大きいものです。毎日の歯磨きを習慣にして、歯周病予防を継続してあげることが大切です。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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