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【獣医師監修】犬の眼振はどんな症状?愛犬の目が揺れる原因は前庭疾患かも

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犬は外敵から身を守るために黒目がちな瞳をしていると言われています。また意識を集中してどこか1点だけを見つめていることも多い動物ですよね。

そんな犬の瞳が小刻みに揺れていたり、痙攣を起こしたように動いていることを『眼振(がんしん)』と呼びます。

この症状は、『前庭疾患』と呼ばれる疾患の症状として起こることがあります。今回は犬の目が揺れている状態から考えられる病気と治療法について解説していきます。

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目次

  1. 犬の眼振の症状について
  2. 眼振から考えられる病気|前庭疾患とは?
  3. 前庭疾患の原因となる病気の治療法
  4. 犬に眼振の症状が見られたら動物病院へ

犬の眼振の症状について

犬

まず、眼振(がんしん)とは、どのような状態を指すのでしょうか?眼振とは、犬の両目が自分の意思とは関係なく、小刻みに左右・上下に揺れていたり、視点が定まらずに眼球が痙攣を起こしたように動いている状態のことを指します。

通常、眼振が起きる場合には、めまいが起きたり、物が揺れて見えたり、その他の全身の症状を伴うことが大半であるため、眼振とはいわゆる目が回ってしまった状態のことを言います。

そして、このような眼振の症状が起きる原因として考えられる病気が前庭系の病気=前庭疾です。眼球が揺れる方向が縦方向か横方向かなどによって病態を把握するヒントになることもあります。

愛犬の気持ちをもっと理解したいなら

もし前庭疾患(眼振)の状態を飼い主さんご自身で体験してみたい場合は、周囲に危ないものがないか等の安全を確認したうえで回転する椅子に座ったまま30秒ほどグルグル回ってみることです。

想像するだけでも分かるかもしれませんが、回り終わった後、まっすぐに歩くことができないと思います。このとき、自分の目は「眼振」している状態となり、前庭疾患の犬に起きている状態と同じ状態になります。

眼振から考えられる病気|前庭疾患とは?

寝ている犬

前庭疾患の一般的な症状は、目が回ったように揺れる状態である眼振のほかに、首をかしげたような状態になる捻転斜頸、平衡感覚を失ったことによって起こる転倒・運動失調などが挙げられます。

眼と頭の位置を正常に保つとともに、身体の平衡感覚を正常に維持するための中枢神経系(小脳や脳幹)と末梢神経系(耳の中にある平衡感覚のセンサーと脳に繋がる神経)からなる前庭系と呼ばれる神経があります。ここに異常が起きる病気を総じて「前庭疾患」と言い、この病気は、内耳・中耳・小脳に悪影響を及ぼす病気に由来し、その背景には複数の原因となる疾患が挙げられます。

さらに前庭疾患の原因は大きく分けて、下記の2つに分類されます。

  1. 耳の中(内耳)や耳と小脳や延髄をつなぐ前庭神経に異常があるもの:末梢性前庭(内耳)疾患
  2. 延髄や小脳に異常があるもの:中枢性前庭(脳幹・小脳)疾患

1.末梢性前庭(内耳)疾患

末梢性前庭疾患の原因は、中耳炎・内耳炎、特発性前庭疾患が多く、過去の報告では末梢性前庭疾患の中で中耳炎・内耳炎が原因とされるものが約49%、特発性前庭疾患が約39%となっています。このほかにも、可能性としては、前庭神経炎、異物、腫瘍、外傷、甲状腺機能低下症、聴毒性のある薬剤や化学物質なども原因となりえます。

中耳炎・内耳炎は外耳道内の感染が中耳を経て内耳に拡がることで、捻転斜頸や眼振といった症状が見られます。多くの原因が細菌性で、キャバリア・キングチャールズ・スパニエルやフレンチ・ブルドッグなどの犬種で多く見られます。

特発性前庭疾患はあらゆる年齢で発症しますが、特に高齢犬において見られるケースが多く、老齢性前庭疾患と呼ばれることもあります。特発性前庭疾患とは原因不明の前庭障害であり、さまざまな検査で異常がみとめられず、原因が不明な場合に診断される病気となります。

眼振の原因と考えられる末梢性前庭(内耳)疾患

  • 中耳炎
  • 内耳炎
  • 特発性前庭疾患
  • 前庭神経炎
  • 異物
  • 腫瘍
  • 外傷
  • 甲状腺機能低下症
  • 聴毒性のある薬剤や化学物質など

2.中枢性前庭(脳幹・小脳)疾患

中枢性前庭疾患の原因には、髄膜脳炎や小脳梗塞などの血管病変、腫瘍やそのほかの原因が挙げられます。末梢性前庭疾患の場合のように、捻転斜頸などの前庭症状のみを主訴に来院するケースもありますが、発作や目が見えないといった大脳や間脳の症状を併発しているケースの方が多く見られます。

髄膜脳炎には、細菌などの病原体が原因の場合とそうでない場合があります。犬に多い非感染性の場合は、壊死性脳炎、肉芽腫性髄膜脳脊髄炎といった原因不明の髄膜脳炎によるものが挙げられます。これらの疾患の原因は明らかにされていませんが、主に自己免疫疾患が疑われています。

発生がまれな感染性の原因としては、ステロイド反応性髄膜脳炎や犬ジステンパーウイルスといったウイルスが原因の疾患のほか、内耳炎から髄膜および脳へ波及した細菌感染を疑うケースもあります。まれですが、鼻などを経由した真菌(カビ)による髄膜脳炎も存在します。

何らかの原因で小脳の動脈が詰まり、虚血や出血が生じた結果、中枢性の前庭障害を発症します。高齢犬に多く見られ、急性に発症する前庭症状のほか、運動失調、瞬きが消失するといった小脳症状が現れます。しかし発症から数時間経過後は、症状は進行しないのが特徴です。

また腫瘍、脳出血、頭部の外傷、何らかの中毒、ビタミンB1欠乏症などによる中枢性前庭疾患も見られることがあります。

眼振の原因と考えられる中枢性前庭(脳幹・小脳)疾患

  • 髄膜脳炎

(非感染性)壊死性脳炎、肉芽腫性髄膜脳脊髄炎

(感染性)犬ジステンパーウイルス、細菌感染

  • 小脳梗塞
  • 腫瘍
  • 脳出血
  • 頭部の外傷
  • 中毒
  • ビタミンB1欠乏症

前庭疾患の診断方法とは?

眼振をはじめとするさまざまな神経症状が見られた場合には、神経学的検査と呼ばれる神経の反射をチェックする検査を行い、異常を起こしている大まかな部位を推定します。

それと同時に、耳鏡検査によって外耳道や鼓膜の観察、また外耳道炎があるのであれば原因菌の特定のために細菌培養やどの薬が効くのかを調べる抗菌薬感受性検査を行います。さらにレントゲン検査全身麻酔下での画像検査(CT、MRI)脳脊髄液の採取各種の抗体検査といったさまざまな検査を行い、鑑別診断を進めていきます。

前庭疾患の原因となる病気の治療法

寝ている犬

犬に眼振の症状が見られたら、迷うことなく動物病院を受診しましょう。ここからは前庭疾患の原因となる主な病気の治療法をご紹介します。

中耳炎・内耳炎の治療法

中耳炎・内耳炎の治療法は、適切な細菌や真菌(カビ)に有効な抗生剤、抗真菌薬などの投与を行い、場合によっては外耳道や鼓室胞に対する手術が必要なケースもあります。

髄膜脳炎(非感染性)の治療法

髄膜脳炎(非感染性)では、プレドニゾロンと呼ばれるステロイド剤の投与を行います。ステロイドについては前庭疾患に対して使用しても予後に影響しないとされていますが、専門医の間でも意見・見解の分かれるものです。使用する場合には、必ず感染症(内耳炎や中耳炎)を除外した上で投与し、投与期間は症状に合わせて必要な期間にとどめます。しっかりと獣医師の治療方針を聞き、理解・納得した上で、愛犬に処置してもらうようにしましょう。

なお、発生自体がまれな感染性の場合には、抗生剤の投与などが求められます。

特発性前庭疾患の治療法

特発性前庭疾患では、捻転斜頸や眼振といった前庭症状そのものに対する治療は難しい場合もありますが、酔ってしまったことによる嘔吐や食欲不振に対する対症療法が必要となります。高齢犬での発症が多く、たとえ短期間であっても嘔吐や食欲不振といった消化器症状が続くことで全身状態の悪化につながりやすい傾向が見られますので、そういった症状の緩和が必要とされます。

具体的には、点滴による脱水の改善と、薬による嘔吐や吐き気のコントロールを行います。前庭疾患の子は、旋回や転倒を繰り返す子も少なくありません。

眼振が起きた場合の予後・経過は?

犬の特発性前庭疾患の予後は一般に良好です。多くが7〜10日で正常に回復しますが、重症例では3〜4週間かけて回復するケースもあります。眼振や旋回、食欲不振といった症状が消失しても捻転斜頸だけが残ることもしばしばあります。激しい眼振や旋回が生じていた末梢性前庭疾患の犬でも、1〜2日で症状は軽減します。

これは前庭代償とよばれる中枢神経系による代償機構が関与した機能回復であると考えられています。末梢性前庭疾患と中枢性前庭疾患を比較した際、中枢性前庭障害の方が緊急性および重篤度が高くなります。

小脳梗塞の治療法

現在では有効な治療法は確立されていません。しかし、中枢性前庭疾患の中でも、小脳梗塞の症例は比較的短期間で改善がみられ、おおむね予後良好であることが知られています。 

犬に眼振の症状が見られたら動物病院へ

具合の悪そうな犬

今回は犬の眼振・目が揺れている症状から考えられる病気をご紹介しました。もしも愛犬に眼振の症状が見られた場合には、落ち着いて、すぐに動物病院に連れて行くようにしましょう。もしすぐに動物病院に行けない場合には、後から獣医師に見てもらえるよう、動画で眼振の様子を撮影しておくとよいでしょう。

眼振が起きて目が回っているとき、愛犬は今までにない状態を体験し、とても怖い思いをしていると考えられます。そのため、愛犬が怪我をしないように、安全な落ち着ける場所に移動して、落ち着くまでは飼い主さんが寄り添ってあげるようにしましょう。視界を遮るのも有効な手です。

飼い主さん自身が落ち着いて対処できるよう、もしものときの対処法を理解しておくことが大切です。

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choco

この記事のライター

choco

シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!

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