犬につく寄生虫の種類や対策は?定期駆虫の大切さについても解説
愛犬に異常が見られた場合、寄生虫がついているかもしれません。
今回は犬につく寄生虫の種類や対策を紹介します。
どんなに対策をしていても絶対に寄生虫がつかないわけではありませんが、症状を知っておけばより早い対応が可能です。
この記事で寄生虫の知識を深めましょう。
主な寄生虫の種類
犬の寄生虫は、外部寄生虫と内部寄生虫の2種類に分けられます。
外部寄生虫と内部寄生虫の違いは寄生場所です。
名前のとおり体表などの体の外側に住みつくのが外部寄生虫、消化管内などの体の内側に住みつくのが内部寄生虫と認識してください。
ここからはまず外部寄生虫と内部寄生虫それぞれの主な種類を確認し、対策や定期駆虫についての考え方を紹介していきます。
外部寄生虫
さまざまいる外部寄生虫のなかで代表的な種類は、以下の2つです。
- ノミ
- マダニ
それぞれの特徴を順番に見ていきましょう。
ノミ
ノミは犬や猫だけでなく、人間にも寄生する外部寄生虫です。
犬に寄生するノミのほとんどはネコノミで、体長1.5〜2mmと小さい体ながら驚異的なジャンプ力で犬の体表へと住みつきます。
ほぼ1年中活発で、一度繁殖サイクルが確立されてしまうと爆発的に増えるため注意が必要です。
ノミに寄生されるとひどい痒みや発疹をもたらすノミアレルギー皮膚炎や、ノミが媒介する感染症にかかってしまう恐れもあります。
マダニ
マダニは体長3mm程度の外部寄生虫ですが、寄生し吸血をすると10~20mm程度まで体が膨れ上がる特徴を持っています。
春から秋は活動的となるため注意が必要であるほか、暖冬傾向にあることや室内に入り込んでしまった場合を考えると、冬場でも対策が必要です。
マダニに寄生されると皮膚炎や貧血のほか、さまざまな感染症の原因ともなります。
吸血し膨れ上がったマダニは引っぱれば簡単に取れそうな気がしますが、無理矢理引き剥がしてはいけません。
化膿やウイルス感染を引き起こす場合があるため、愛犬の体にマダニが付いているのを発見しても取らずに病院へ連れて行ってください。
内部寄生虫
内部寄生虫の数は大変多く、全てを紹介することはできません。
ここでは代表的な内部寄生虫である以下の5種類を紹介します。
- 回虫
- 瓜実条虫
- 鉤虫
- 鞭虫
- フィラリア
それぞれの特徴について順番に見ていきましょう。
回虫
回虫は細長いヒモ状の見た目を持ち、犬をはじめ哺乳類の小腸に寄生する内部寄生虫です。
感染経路は経口や母犬からの胎盤・乳汁からですが、寄生が少数であれば特に症状は現われません。
寄生数が多くなれば下痢や食欲不振、体重減少などの症状を示し、糞便と一緒に回虫が排出される場合もあります。
人に感染した場合、神経系や目、肝臓などで炎症を起こしてしまうこともあり、深刻な後遺症をもたらす場合もあるため注意が必要です。
瓜実条虫
瓜実条虫(ウリザネジョウチュウ)は、体にいくつもの節がある内部寄生虫です。
外部寄生虫であるノミやハジラミにより媒介されますが、寄生数が少ない場合、目立った症状は現われません。
ただし体内に瓜実条虫が寄生していると糞便や肛門に瓜実条虫の片鱗が出てくる場合があるため、発見して驚いた飼い主さんが動物病院へ連れてくるケースもあります。
多数寄生の場合、考えられる症状は食欲不振や下痢、元気消失です。
鉤虫
鉤虫(コウチュウ)は、頭部に鉤(かぎ)に似た構造を持つ内部寄生虫です。
感染経路には経口や経皮、胎盤・乳汁の3つがあります。
鉤虫に感染した場合の症状は下痢ですが、大量に吸血されると貧血を起こすこともあります。
鞭虫
鞭虫(ベンチュウ)は、体が鞭のように見える内部寄生虫です。
鞭虫に寄生された犬の糞を食べることで感染します。
寄生数が少なければ感染症状は見られませんが、多数感染している場合は下痢や粘血便、腸炎、貧血などの症状が現われます。
フィラリア
フィラリアとは犬糸状虫とも呼ばれ、蚊を媒介して犬の心臓や肺動脈に寄生する内部寄生虫です。
フィラリアの幼虫であるミクロフィラリアを持った蚊が犬の血を吸うと、蚊の唾液とともにミクロフィラリアが犬の体へと入り込みます。
感染すると元気消失や食欲不振、咳などの症状が出ますが、進行すると胸水や腹水の貯留、呼吸困難や食欲不振などの深刻な症状をもたらします。
寄生虫を疑うべき症状
寄生虫を疑うべき症状は、以下の2つです。
- 体を異常に掻きたがる
- 下痢や嘔吐がある
外部寄生虫であるノミやマダニが寄生している場合、犬は異常な痒みを感じます。
シャンプーをしても治まらなかったり、床に体を擦りつけたりするなどの強い痒みが見られる場合、外部寄生虫を疑いましょう。
また内部寄生虫においては、下痢や嘔吐をもたらす場合もあります。
下痢や嘔吐は寄生虫だけでなくさまざまな病気の症状としても現われますが、愛犬と遊びに行った場所や予防状況を考え、寄生虫を疑うことも大切です。
このほかにも、愛犬の繁殖を考えている場合は、必ず寄生虫の検査を受けましょう。
親犬が寄生虫に感染したまま子犬を産んだり育てたりしていると、胎盤感染や乳汁感染が起こる危険があります。
寄生虫は初期の寄生数が少ない段階では症状が見られない場合がほとんどです。
飼い主さんは寄生虫を疑うべき症状を見逃さず、早い段階で病院に連れて行けるように普段から愛犬をよく観察しましょう。
寄生虫の対策法
見た目や犬にもたらすさまざまな症状から気味が悪いと思われる寄生虫ですが、きちんと対策をしておけば早期に発見したり予防したりすることができます。
外部寄生虫と内部寄生虫、それぞれの対策法について見ていきましょう。
外部寄生虫の対策法
外部寄生虫であるノミやマダニの対策は、以下の4つが挙げられます。
- 予防薬を活用する
- 外部寄生虫の生息場所に近づかない
- ブラッシングとシャンプーを怠らない
- 生活環境を清潔にする
順番に見ていきましょう。
予防薬を活用する
外部寄生虫の対策には、予防薬の活用が有効です。
首筋に垂らすスポットタイプや飲み薬タイプなど種類も豊富なほか、ノミやマダニだけでなくハジラミやシラミを予防してくれるものもあります。
外部寄生虫の対策を考える飼い主さんは、愛犬に合ったタイプを定期的に使ってみてください。
外部寄生虫の生息場所に近づかない
外部寄生虫の対策は、生息場所に近づかないことです。
散歩やドッグランなどが大好きで、ノミやマダニの潜む草むらに入っていく犬は特に注意しましょう。
ただしせっかくの散歩やお出かけを楽しみたいのに、どこに行くにもダメと言われては残念な気持ちになってしまいますよね。
予防薬の活用や散歩後のケアをしっかりとしたうえで草むらのにおいをたっぷりと嗅がせてあげるなど、犬にとって家の外での時間を存分に楽しめる工夫をしてみてください。
また外部寄生虫の生息場所を歩いた際、飼い主さんの折ったズボンの裾や上着のフードなどにノミやマダニが入り混み、家までついてきてしまう場合もあります。
散歩後は服を軽く叩いてから家に入り、外部寄生虫を家の中に持ち込まない意識も大切といえるでしょう。
ブラッシングとシャンプーを怠らない
外部寄生虫の対策は、適切なブラッシングとシャンプーも重要です。
ノミやマダニが付いてしまった場合でもすぐに発見できるよう、ブラッシングやシャンプーを行い体を清潔に保ちましょう。
ブラッシングは散歩後などに1日1回、シャンプーは月に1〜2回が目安です。
ブラッシングでは愛犬の毛の長さによりコームやスリッカー、ラバーブラシなど適切な物を揃え、もしノミがいた場合に備えてノミ取りクシも用意しておきましょう。
シャンプーは外部寄生虫の予防のほか、皮膚の健康を保つためにも重要です。
愛犬の体力や体調に注意しながら、適切な頻度で洗ってください。
生活環境を常に清潔にする
外部寄生虫の対策として、生活環境を常に清潔にすることも大切です。
どんなに対策していても、ノミやマダニが家の中に入り込んでしまう可能性は否定できません。
外部寄生虫が家の中に入り住みついてしまうのを防ぐため、生活環境を清潔にすることを忘れないようにしましょう。
生活環境の清潔を保つために、部屋の掃除や換気、温度、湿度に気を配ることが重要です。
ノミやマダニの好む生活空間とならないよう注意してください。
カーペットや絨毯、畳、犬が使っているクッションやベッドなどは特にノミやマダニの温床となりやすいものです。
定期的に洗い、乾燥機を使って高温で乾かすなどケアも重要となります。
内部寄生虫の対策法
内部寄生虫の対策は、以下の3つが挙げられます。
- 外出時に不衛生な場所に近づかない
- 犬が口にするものには常に気にかける
- 定期駆虫を行う
順番に見ていきましょう。
外出時に不衛生な場所に近づかない
内部寄生虫の対策として、不衛生な場所に近づかないことが挙げられます。
前述したとおり内部寄生虫の多くは、感染した動物の糞などを食べることで感染するためです。
ほかの動物の排泄物が落ちている危険がある「不衛生な場所」に近づかない工夫を行いましょう。
しかしどうしても、自分の行きたい方向にリードを引っ張ってしまう犬もいます。
いきなりは難しいですが、リードを引っ張ったら立ち止まり別の方向に行き、散歩の主導権があくまでも飼い主さんにあることを愛犬に伝えましょう。
同時に家でもアイコンタクトやツケなどのしつけを練習し、散歩が飼い主さんと愛犬との楽しいコミュニケーションの時間となるよう工夫してみてください。
犬が口にするものには常に気にかける
不衛生な場所に近づけないだけでなく、愛犬が口にするものに関して飼い主さんは常に気にかけておくことが大切です。
飼い主さんが犬を常に見ておくことで、ほかの動物の排泄物を口にするのを防ぐだけでなく、異物摂取の予防にも役立ちます。
ただし愛犬によっては飼い主さんの制止を振り切り、興味のあるものを口に入れてしまう場合があります。
拾い食いが好きな愛犬を飼っている場合、リードを短めに持ち、コントロールしやすい状態にしておきましょう。
時々オヤツを与えたりコミュニケーションをとったりしながら散歩することにより、落ちているものへ意識が行く回数も減らせます。
ぜひ試してみてください。
定期駆虫を行う
内部寄生虫の対策として、定期駆虫が挙げられます。
定期駆虫とはアメリカの疾病予防センター(CDC)や寄生虫学協会(AAVP)が提唱している概念です。
「感染する機会が多い愛犬を寄生虫から守るために、寄生虫に気付いてからではなく、寄生されているか分からない状態でも定期的に駆虫薬を使おう」とする考え方です。
この定期駆虫の必要性やガイドラインについては、次から詳しく解説していくのでぜひ読んでみてください。
定期駆虫
内部寄生虫の対策に有効な定期駆虫ですが、いまいち必要性を感じない飼い主さんも多いのではないでしょうか。
ここからは定期駆虫の必要性やガイドラインについて見ていきましょう。
なぜ定期駆虫が必要なのか
定期駆虫は、飼い主さんが気付いていない段階での寄生虫を駆除するために有効です。
前述しましたが、多くの寄生虫は寄生数が少ない初期の段階では症状が現われません。
寄生数が増え、飼い主さんが気付いたときには愛犬が重篤な症状に冒されている場合も考えられます。
定期駆虫をすることで、投薬の手間や費用は発生します。
しかし寄生虫がいるかどうかわからない初期の段階で寄生虫を駆除しておくことは、愛犬と触れ合う際の安心へとつながるのではないでしょうか。
今回紹介した内部寄生虫のなかで、特にフィラリアは発見が遅いと命にも関わる危険な寄生虫です。
ほかの寄生虫に関しても多数寄生されてしまうと、さまざまな症状が出てきます。
ドッグランや散歩での犬同士、普段の飼い主さんとのスキンシップのなかで寄生リスクを下げるため、ぜひ定期駆虫を検討してみてください。
定期駆虫ガイドライン
アメリカの疾病予防センター(CDC)などの国際的な機関では、以下のように定期駆虫についてガイドラインが定められています。
- 生後3ヶ月まで:2週間1度投薬
- 生後3ヶ月から6ヶ月まで:月に1度投薬
- 生後6ヶ月以降:年4度(3ヶ月に1度)投薬
上記はあくまでもガイドラインのため、犬の性格や生活環境により多少異なる場合があります。
愛犬と飼い主さんにとってよりよい駆虫ができるよう、不安や疑問点は納得するまで獣医師に質問し、相談するとよいでしょう。
まとめ
今回は、寄生虫の種類や対策法について紹介しました。
今回挙げた対策はもちろん、定期駆虫の必要性も感じていただけたでしょうか。
今暮らしている生活環境だけでなく、迎える前に住んでいた場所により家に来た段階で寄生虫がいる場合も十分考えられます。
犬と暮らし始めたらまず動物病院へ行き、健康状態のチェックとともに寄生虫の検査も受けてみてください。
この記事のライター
satoko
わんちゃん大好きなドッグライターです!愛犬のコーギーに癒される日々を送っています。皆さんにとって有益な情報を発信できるよう頑張ります!
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