犬の皮膚病「天疱瘡(てんぽうそう)」について。かかる原因や症状、治療法を解説

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犬は皮膚病にかかりやすい動物です。犬が発症する皮膚病には、アトピー性皮膚炎、膿皮症、脂漏症などが代表的ですが、多くの皮膚病は完治が難しく、生涯にわたって治療を続ける必要があります。そんな皮膚病の中でも、特に難しい病気が「天疱瘡(てんぽうそう)」です。天疱瘡は、人間では難病指定されている皮膚病の一つ。

今回は、犬の天疱瘡の症状、原因から治療法、なりやすい犬種などについてご紹介します。

犬の皮膚病「天疱瘡(てんぽうそう)」について。かかる原因や症状、治療法を解説

目次

  1. 犬の天疱瘡ってどんな病気?
  2. 犬が天疱瘡を発症する原因は未解明
  3. 犬の天疱瘡の予防法
  4. 犬の天疱瘡の治療法
  5. 犬の天疱瘡との向き合い方

犬の天疱瘡ってどんな病気?

犬
Engin_Akyurt

 天疱瘡は、皮膚の細胞と細胞を接着する部位に起こる皮膚病です。何らかの原因によってこの接着する部位が、自己免疫によって攻撃されることから発症します。

天疱瘡は、大きく分けると落葉性天疱瘡、尋常性天疱瘡の2タイプがあります。さらに細分化すると紅斑性天疱瘡、増殖性天疱瘡や腫瘍随伴性天疱瘡などがあります。

この中で、犬に最も多くみられる天疱瘡が落葉性天疱瘡です。ここでは、落葉性天疱瘡について詳しく解説していきます。 

初期症状とチェック項目

 落葉性天疱瘡では、健康な皮膚に大小さまざまな水ぶくれ膿疱ができ、かさぶたとなることが特徴です。初期症状では主に鼻筋、まぶた、耳たぶに見られることが多く、炎症や水ぶくれなどの症状が現れます。また、肉球がガサガサになることもあります。 

他の天疱瘡と見分けるチェック項目

 天疱瘡には発症する部位や症状によって病名が異なります。どの天疱瘡も自己免疫の異常から発症する疾患です。 

  • 紅斑性天疱瘡:落葉性天疱瘡の亜種で、顔や耳の後ろに膿疱ができる他、鼻の色素が失われるなどの症状が現れます。
  • 尋常性天疱瘡:尋常性天疱瘡では、皮膚と粘膜がただれ、びらんと呼ばれる状態になります。主に口の中や目の周り、食道、脇の下、鼠径部、肛門などに発症し、びらんや潰瘍ができます。
  • 増殖性天疱瘡:増殖性天疱瘡では、顔にできた水ぶくれや膿疱がイボ状の腫瘤に変化します。
  • 腫瘍随伴性天疱瘡:近年になって分類された腫瘍随伴性天疱瘡は、悪性腫瘍に伴って発症する天疱瘡です。

他の犬や人にうつる?

 犬の天疱瘡には、先天性と後天性があるため、母犬や父犬からの遺伝が考えられていますが、詳しくは解明されていません。ただし、人間の場合では遺伝性はないとされています。また、自己免疫性疾患であるため、通常は他の犬や人にうつすことはありません。 

犬が天疱瘡を発症する原因は未解明

ミニチュアダックスフンド
Nel_Botha-NZ

 自分が持つ免疫が何らかの理由から、自分自身を攻撃してしまう自己免疫疾患の一つがこの天疱瘡です。犬の天疱瘡は、発症の原因が解明されていないため、特発性の疾患と考えられていますが、現在は以下の原因が示唆されています。 

  1. 遺伝
  2. 紫外線や薬物の影響

考えられる原因【1】遺伝

 天疱瘡のはっきりとした原因は未解明ですが、発症する犬の中には先天性のものがあります。そのため、何らかの遺伝的な要素が発症の原因と考えられていますが、詳しくはわかっていません。 

考えられる原因【2】紫外線や薬物の影響

 後天性の天疱瘡の発症原因として、過剰に紫外線にさらされることが発症の引き金となると考えられていますが、詳しくは解明されていません。

また、アレルギー、細菌やウイルス感染などに対する長期にわたる薬物投与なども原因の一つとして示唆されていますが、はっきりとしたことはわかっていません。

かかりやすい犬種や年齢は?

 落葉性天疱瘡では、次の犬種が好発犬種とされ、発症しやすい年齢は4~5歳です。特に夏に発症しやすく、悪化する傾向にあると考えられています。

好発犬種はミニチュア・ダックスフント、秋田犬、ドーベルマン、ニューファンドランド、チャウチャウ、ベアテッドコリーなどが挙げられます。

犬の天疱瘡の予防法

動物病院
shixart1985

 犬の落葉性天疱瘡は、発症の原因が解明されていないため予防が難しいとされています。ただし、過度に紫外線を浴びすぎないようにすること、悪化を予防するために早期の治療開始が望ましいとされています。 

再発する可能性

 自己免疫性の皮膚病である落葉性天疱瘡は、完治は難しく、皮膚の状態が改善しても再発する可能性がある病気です。そのため、定期的な診察と治療を生涯にわたって続けていく必要があります。 

犬の天疱瘡の治療法

動物病院
Mikhail Nilov Pexels

 犬が落葉性天疱瘡を発症した場合、紫外線を避けることが獣医師から求められます。また、ステロイドや免疫抑制剤の投薬による治療が開始されますが、症状を和らげるための治療となります。完治が難しい病気であるため生涯を通じて治療が必要となります。 

治療にかかる費用

 落葉性天疱瘡は、細胞診、皮膚生検によって確定診断されます。落葉性天疱瘡は、命に関わる病気ではありませんが、長期にわたってステロイドや免疫抑制剤が投与されるため、薬による副作用から合併症を発症する可能性があります。

なお、落葉性天疱瘡の治療は、発症の部位の大きさや程度によって治療内容が大きく変わりますが、通院1回当たりの平均的な治療費は4,000円程度(アニコム調べ)とされています。

犬の天疱瘡との向き合い方

犬
Anna-f

 犬の天疱瘡は、発症の原因が解明されていない皮膚病です。落葉性天疱瘡は、かゆみは伴いませんが、悪化すると全身に水ぶくれ、膿疱が現れ、最終的にはかさぶたとなってポロポロと落ちてくる皮膚病です。

症状を緩和する治療には、副作用が現れる薬を使用するため、 信頼できる獣医師を見つけることも大切です。

特に、天疱瘡の場合は長期にわたる治療が必要となるため、経験豊富な獣医師を探すことも病気と向き合う時のポイントとなります。

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komugi

この記事のライター

komugi

都内で愛犬のビーグルと暮らしています。コロナ期間中に肥満体型になってしまった愛犬のために食事や運動について勉強をはじめました。面白い発見や愛犬家の皆様に役立つ情報があればどんどん発信していきます!

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