【獣医師監修】犬の口の周りが赤いときに考えられる3つの原因と予防法
愛犬の口の周りが赤くなっていて心配になった経験はありませんか?そのうち治るだろうと放置してしまうと症状が悪化してしまったり、病気が潜んでいる可能性もあるので、なるべく早く対処することが大切です。
この記事では、犬の口の周りが赤くなる原因や考えられる病気、予防方法について解説します。
犬の口周りが赤い時に考えられる原因3つ
犬の口の周りが赤くなるのは、どのような原因があるのでしょうか。まずは考えられる原因から見ていきましょう。
感染性の炎症によるもの
細菌や真菌、寄生虫などが原因で、口の周りに炎症が起きている可能性があります。進行すると次第に痒くなり、掻きむしって赤く腫れてしまったり、フケや脱毛が現れることもあります。
唾液の付着による変色
犬の口や鼻から、分泌物や老廃物が出て口の周りの毛に付着することで、口の周りが赤くなることがあります。症状が悪化すると痛みを伴う場合もあるので、早めの対処が必要です。口周りは清潔に保つことが望ましいので、食事の後には飼い主さんが、動物用のウェットティッシュや濡らしたタオルなどで綺麗にぬぐってあげましょう。
アレルギーによるもの
アレルギーの中には、過剰に免疫反応を起こしてしまうアトピー性皮膚炎、食器、敷物、植物などに触れることで炎症を起こす接触性のアレルギー、アレルゲンとなる原料などを口にすることで起こる食物アレルギーなどがあります。いずれも痒み、発赤、皮膚の腫脹といった症状が発生しやすいと考えられます。
併発している症状によっては要注意
口の周りが赤くなるのと同時に、口周りや体を掻いていたり、皮膚が赤くなっているなど別の症状もある場合は病気の可能性があります。ここからは、併発している症状ごとに考えられる病気を解説します。
円形脱毛、発赤など
フケや、かさぶたを伴った円形脱毛が起こる皮膚糸状菌症は、糸状菌という真菌(カビ)が原因の皮膚病です。皮膚の角質層や爪、皮膚の傷などから入り込み、皮膚の角質層で増殖することで発症します。
毛穴の中に入り込んで毛自体を侵して円状に真菌が増殖していくため、最初に感染して脱毛が起こった場所を中心に特徴的な円形脱毛が現れます。頭部や顔面、前肢が特に症状の現れやすい場所です。
まれに炎症が深部に及ぶと急激な化膿や赤い隆起(肉芽腫)の形成が引き起こされます。
皮膚糸状菌症の治療法
皮膚糸状菌症の治療は数週間から数カ月かかり、投薬治療(内用・外用)と抗真菌薬入りの薬用シャンプーを使った薬浴が行われることが一般的です。
動物同士で感染するため、同居している動物が感染しないよう、部屋やケージを別々にするなど隔離する必要があります。人にも感染する場合があるので、疑わしい症状が見られる場合は、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
左右対称性のしつこい痒みやただれ
しつこい痒みや色素沈着など左右対称性の変化、目周り・わきの下・あごの下などにも同様の発赤や痒みがある場合には、アトピー性皮膚炎が考えられます。
アトピー性皮膚炎は、免疫調節が上手くできず過剰な免疫反応を起こすことが原因と考えられている病気です。犬の口周り以外に目の周りや耳、腹部やお尻周りに症状が出やすく、痒みから患部を掻いてしまうことで炎症や色素沈着が起こります。
柴犬やフレンチブルドッグ、シーズーなどの犬種で多く見られます。
アトピー性皮膚炎の治療法
もし上記の症状が見られた場合、まずは動物病院を受診しましょう。似た症状のほかの病気や、食物の関与を調べるなど複数の検査、鑑別診断を経てアトピー性皮膚炎と診断された場合、薬物療法や保湿剤などのスキンケアを行って治療していきます。
悪化すると皮膚が厚く硬くなり色素沈着も起こるので、早めに動物病院を受診して、獣医師の診断のもとで治療を進めていきましょう。
痒みや脱毛、下痢、嘔吐など
皮膚に異常が見られ、痒そうにしている、下痢や嘔吐がある場合は食物アレルギーが疑われます。
1歳以上になってから発症することも多い食物アレルギーは、アレルゲンとなる食べ物や食品添加物などが原因で起こります。口周りだけでなく、顔全体や耳にまで炎症が広がることもあります。
食物アレルギーの原因は穀物や卵、乳製品などさまざまです。これらのアレルゲンに敏感な体質の犬は、アレルゲンを摂取することで皮膚炎や痒み、腸炎などの症状が発生します。
アレルギー性皮膚炎に関しては、ほかの原因から起こる皮膚炎とも似ているため、外観から判断するのは難しい病気です。もし皮膚炎以外に下痢や嘔吐などがある場合には、食物アレルギーの疑いもあります。
食物アレルギーの治療法
治療法としては、アレルゲンが除去された療法食を食べてもらう食事療法や、皮膚の炎症が強い場合はその炎症を抑える治療をする必要があります。症状が改善するのに時間がかかる可能性もあるので、自己判断で食事療法や投薬を中止することはせず、必ず獣医師と相談した上で進めましょう。
日頃からできる予防法
愛犬の口の周りが赤くならないよう、普段からできる予防法をご紹介します。
寄生虫や細菌の感染を防ぐ
皮膚の抵抗力を下げないためには、日ごろから室内を清潔に保つことが大切です。掃除機や粘着カーペットクリーナーなどを使って室内を清潔に保ち、ダニやノミなどの寄生虫を防ぎましょう。
クッションやカバーなどはこまめに洗い、乾燥機にかけるか天日干しをしてしっかりと乾かすのがポイントです。
また、高温多湿の環境も皮膚バリア機能を低下させてしまうので、室内の温度や湿度にも気をつけましょう。愛犬が過ごすケージの側には温湿度計を設置しておき、快適な環境になっているか常にチェックしておきましょう。
定期的にシャンプーをする
まずは付着した汚れをお湯で洗い流し、2~4週間に1回シャンプーをしてあげましょう。シャンプーは犬の肌の状態に合わせて、適切な薬用シャンプーを選んであげることも大切です。シャンプーをするときには、過度にゴシゴシと擦ったり、強く泡立てたりせず、優しく洗ってあげましょう。シャンプーを行う頻度は、皮膚の状態によって異なるので、適切な頻度を獣医師に確認し、過度に行わないように注意しましょう。
愛犬の皮膚コンディションをよく観察
アレルギー反応の一種として赤みが出ているのか?肌が敏感で少しの汚れや刺激にもかぶれているのか?など、日常生活の中で愛犬の皮膚の傾向を把握しておくことは重要です。そのためにもトリミングや動物病院で、皮膚の状態について定期的にアドバイスをもらえると安心です。
普段から愛犬の様子に気を配りましょう
の口の周りが赤くなる原因や、考えられる病気などを解説しました。今回挙げた例以外の病気も考えられるので、口の周りの赤みや併発する症状があった場合には、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。また、日頃の定期的なスキンケアによって防げる可能性もあるので、愛犬の皮膚の特性を把握したうえで適切なケアを取り入れていきましょう。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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