【獣医師監修】犬の顔が突然腫れてしまった場合に考えられる原因とは。対処法と予防法も併せて解説
愛犬の顔が突然腫れてしまったら、何があったのかと驚きますよね。犬の顔が腫れる原因はいくつか考えられますが、どのような原因であっても早急に治療が必要になるので、なるべく早めに動物病院を受診することをおすすめします。
ここでは、犬の顔が腫れるときに考えられる代表的な原因と、対処法・予防法について解説します。
目次
犬の顔が腫れる理由【1】ワクチンのアレルギー
狂犬病や混合ワクチンを接種すると、ときどき接種後の副作用としてアレルギー反応が出ることがあります。
アレルギー反応の症状は大きく2つに分けられ、ワクチン接種後すぐ(30分以内)に呼吸困難や全身の虚脱など重篤な症状が現れる即時型アレルギー(アナフィラキシーショック)と、ワクチン接種してから数時間経過後に顔の腫れやじんましん、下痢や嘔吐などが起こる非即時型アレルギーがあります。顔の腫れは「ムーンフェイス」とも呼ばれ、よく見られる症状です。
対処法
ワクチン接種後は犬の様子をよく観察し、何か変わった症状があればすぐに動物病院に連絡を取りましょう。時間があれば、接種後10〜30分くらいは念のため病院で様子を見ることをおすすめします。特にアナフィラキシーショックには、迅速な処置が必要です。
予防法
ワクチン接種はできるだけ体調の良い日に受けるように心がけ、当日の激しい運動やシャンプーなどは控えましょう。アレルギー体質の子や過去にワクチン接種でアレルギーを起こしている子は特に注意が必要です。アレルギー既往歴によっては、事前に抗アレルギーの注射(ステロイド剤など)を打ってからワクチン接種を行うなどの方法をとる場合もあります。接種前には必ず、過去の既往歴をしっかり獣医師に伝えておくことが大切です。
犬の顔が腫れる理由【2】歯周病
犬は口腔内のトラブルが多い動物です。歯周病が進行し、根尖膿瘍(こんせんのうよう)と呼ばれる状態になると顔が腫れることがあります。
根尖膿瘍(こんせんのうよう)とは
歯根の先端を「根尖(こんせん)」といいますが、歯周病が進行し、歯の根元の部分に膿がたまった状態を根尖膿瘍(こんせんのうよう)といいます。「根尖周囲膿瘍(こんせんしゅういのうよう)」「歯槽膿瘍(しそうのうよう)」とも呼ばれます。
犬が根尖膿瘍になると口臭やくしゃみ、鼻水、鼻血、食欲低下などの症状が見られるほか、片側の目の下や頬が膿で腫れたり、たまった膿が皮膚を突き破って排膿し、頬に穴が開くこともあります。
対処法
根尖膿瘍の根本的な治療としては、抜歯が必要です。抜歯と合わせて抗生剤の投与も行われます。
抜歯には全身麻酔が必要になるため、高齢犬など麻酔のリスクが高い場合には抜歯をせずに抗生剤の投与など内科的治療が選択されることもあります。ただしこの場合、顔の腫れが収まるのは一時的であり、再発を繰り返す可能性は高いと言えます。
予防法
歯周病を予防するには、原因となる歯垢・歯石を蓄積させないことが大切です。歯垢を放置すると3〜5日で歯石に変化すると言われているので、できるだけ毎日歯みがきを行って、歯垢を除去しましょう。
一度歯石が付いてしまうと、自宅で落とすことは困難です。それでも歯石が蓄積しやすい体質の子は、定期的に動物病院を受診し、必要に応じて、数年に1回のペースで麻酔下での歯石除去手術を受けましょう。
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犬の顔が腫れる理由【3】虫・へびにかまれた
草むらにいるミツバチやアシナガバチ・スズメバチに刺されたり、犬小屋でマムシにかまれて顔がパンパンに腫れることがあります。
対処法
ハチに刺された場合、毒針が皮膚に残っていたらクレジットカードや爪で弾き飛ばすようにして抜きましょう。指やピンセットでつまむと、毒嚢とよばれる毒の入った袋がある場合に袋を押しつぶしてしまい、毒液が体内に入る恐れがあります。毒を絞り出すよう流水で洗い、患部を冷やして動物病院を受診しましょう。
毒へびにかまれた場合、動き回ると全身に毒が回ってしまうので、なるべく安静にさせ、すぐに動物病院を受診しましょう。
予防法
好奇心旺盛な子は、虫やへびに興味をもって近付いたり、匂いを嗅いで顔を噛まれてしまいます。危険な生き物がいそうな草むらには顔を突っ込ませないよう注意しましょう。お散歩中はリードをなるべく短く保持し、いざというときに犬の動きをコントロールできるようにしましょう。
詳しくはこちらの記事で解説しています
犬の顔が腫れる理由【4】腫瘍
顔や首、のどなどに腫瘍ができたときにも顔が腫れることがあります。良性・悪性どちらの可能性もあるので、愛犬の顔が腫れていると気づいたらかかりつけ医に相談しましょう。
対処法
腫瘍の場合、飼い主さんが自宅でできる治療はありません。特に悪性の場合は原因を突き止め適切な処置が必要です。早期発見・早期治療は予後を大きく左右するので、速やかに動物病院で診てもらいましょう。
予防法
腫瘍は細胞が異常に増殖することでできるもので、多くは遺伝や加齢などが原因だと考えられており、予防は難しいです。ただし、定期的に健康診断を受診することで早期発見に繋げることができるかもしれません。日々のスキンシップや健康チェックで愛犬の異変にすぐに気づけるようにすることも大切です。
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犬の顔が腫れたときはなるべく早く動物病院へ
犬の顔が突然腫れるときは、ここでご紹介した歯周病やアレルギー反応、虫やへびにかまれたとき以外にも、腫瘍や外傷によるものなどさまざまな原因が考えられます。
顔の腫れは様子を見ていると悪化したり、原因によっては命に関わることもあります。また、顔の腫れを引き起こす原因によって適切な治療法も変わってきますので、なるべく早く動物病院を受診して検査を受けるようにしましょう。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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