犬の骨格を紐解く|犬の骨は何本?犬種による骨格の差・人間との違いから犬の体を覗いてみよう
愛犬と過ごす毎日は本当に幸せですよね。歩いたり走ったり、散歩に遊びにと元気に動き回る愛犬。でも、ときどき、愛犬の歩き方や座り方が気になることはありませんか?他の犬とどこか違っていたり、なんとなくガニ股だったり・・・。今回は、犬の骨格について人間との違いや犬種による差、子犬期から成犬までの骨格の成長スピードを見ていきます。犬の骨格の標準・基準を、人間や犬種の違いから紐解いていきましょう。
犬の骨格の基本的な構造、そもそも「骨格」とは?
「骨格」とは、まさに身体を形作る土台・骨組みのことを意味します。関節で結合した複数の「骨」および「軟骨」によって形成される構造のことで、建築現場で足場を作る骨組みを想像すると分かりやすいかもしれません。
愛犬の健康を日頃から観察し、管理をする上で、犬の骨格の基本を知っておくことはとても重要です。直に見ることはできない犬の骨格ですが、愛犬の健康管理のために、犬の骨格の基本的な構造は理解しておきましょう。
犬の骨の数は人間の約1.5倍!
人間には、成人の身体で約206個の骨があります。では、犬の骨格はどれくらいの数の骨から出来ているでしょうか?人間と比べて身体も小さいので、骨も少ないかな?と考える方も多いかもしれません。犬種によっても若干異なりますが、実は、犬の骨格を形成する骨の数は平均すると約320前後の骨があると言われています。
フサフサの毛の下を想像することはなかなか難しいですが、人間の約1.5倍もの骨があるんですね。ただ、身体は小さいので、人間と比べると1つ1つの骨は全体的に細かったり小さかったりして、骨折や脱臼を起こしやすい構造になっています。
これも一緒に知っておこう。「関節」とは?
関節とは、骨と骨をつなぐ、強い帯状の線維組織の束のことです。骨と骨をつなぐだけでなく、衝撃を吸収したり、関節部位が滑らかに動くようにする役割があります。各関節に可動範囲があり、動く角度や方向が決まっています。
犬と人間の骨格の違いとは?
まず犬は4本脚・人間は2本脚で立っている点が、犬と人間の骨格における大きな違いです。 4本脚と2本脚では基本姿勢が異なります。そのため、重力がかかりやすい部分が異なり、様々な違いが生まれます。
犬は踵(かかと)を使わず「つま先立ち」で歩いている
二本足で歩く人間は踵をつけて歩きますよね。犬は実は、「つま先立ち」のような状態で歩いています。肉球は足の裏というより、人間で言うと指の腹という位置づけなんです。地面に踵をつけている方が安定して歩くことができるのに犬が地面に踵をつけないで歩く理由は、踵をつけていない方が早く長く走ることができるため、と考えられています。
犬には「鎖骨」がないので負担がかかりやすい
鎖骨の有無も、人間と犬の大きな違いです。人間は肩関節を形成している肩甲骨(けんこうこつ)と、胸の胸骨が「鎖骨」という骨でつなげられ、関節しているので、腕・肩をぐるぐると回すことができます。
一方で、犬には「鎖骨」がなく、肩甲骨もどこにも関節していません。四肢が身体を支えたり前後に動かすだけの役割しか持たないため、「鎖骨」がないのです。犬の肩甲骨と、上腕骨(じょうわんこつ)という腕の骨は、強靭な筋肉によって繋がっていることによって機能しています。そのため、犬の「鎖骨」にあたる部分は日頃からとても負担がかかりやすくなっています。
犬は顎の関節の構造上、食べ物を細かく「噛めない」
愛犬が丸飲みでは⁉という猛スピードでご飯を食べていることはありませんか?これは、単に空腹で早く食べたいという理由もあるのですが、人間との骨格の違いも影響しています。犬は、骨格の構造上、顎の関節を左右に動かすことができません。そのため、口の中にある食べものを人間のように細かくすり潰すことが出来ず、丸飲みのような食べ方になってしまうのです。
犬は背骨の胸椎・腰椎が多く、仙椎が少ない
背中を作っている背骨全般のことを「椎骨(ついこつ)」といいます。「椎骨(ついこつ)」は頭の方から首の骨・頸椎(けいつい)、胸椎(きょうつい)、腰椎(ようつい)、仙椎(せんつい)、尾椎(びつい)と分かれています。
人間の場合は、横から見ると背骨がS字のようなカーブを描いています。縦に繋がっている背骨に全て振動が伝わってしまうと脳への影響が大きすぎるので、カーブで衝撃を逃しています。
人間の背中の骨、「胸椎」の数が12個に対して、犬は13個。また、腰の骨、「腰椎(ようつい)」は、人間が5個に対して、犬が7個となっています。逆にお尻部分の「仙椎」は、人間5個に対し犬は3個と少なくなっています。
犬の胸椎(首とお尻の間の背骨)の中でも、犬が立っているときに出っ張っている部分を「キ甲部」と呼びます。背骨から構成される背中のラインは、犬種によってさまざまな違いがありますが、一般的に「高いキ甲部に水平な背部の胸椎」「わずかにアーチ状になった腰椎」が理想的と言われています。
ちなみに、犬の体高として計測するのが「キ甲部」です。地面から頭のてっぺんを体高と勘違いしている方も多いのですが、地面から背骨までの高さが犬の「体高」となりますので、覚えておきましょう。
余談:キリンの首の骨の数は多いのか
首の長いキリンは首の骨の数が多いのでしょうか?実はキリンも犬も人間も、みんな首の骨、「頸椎」は同じ7個です。個数は同じですが、キリンは首の骨1個1個が大きいことで、長い首が形成されています。
犬の骨格や骨の成長は何歳まで?
人間に比べて犬の成長は一瞬です。人間の骨格は約15~18年ほどの期間をかけて、緩やかに形成されていきますが、犬の場合は人間と比べると、とてもスピーディに成長していきます。成犬のサイズまで成長する期間は、超小型犬・小型犬で8~10ヶ月、中型犬で10~12ヶ月、大型犬で15~18ヶ月、超大型犬で18~24ヶ月となっています。では、犬のサイズ別・生後からの期間別に、骨格の成長・身体の大きさや体重の変化を見ていきましょう。
超小型犬~超大型犬、サイズ別で見る犬の骨格成長スピードの違い
犬のサイズ別に骨格の成長を見ていきましょう。小型犬と大型犬の成長スピードの違いに注目です。
超小型犬~小型犬
チワワやトイプードルなどの超小型犬・小型犬は、生後8~10ヶ月で成犬の大きさにまで成長をし、誕生時の約20倍にまで体重が増えます。と言っても超小型犬・小型犬の場合、成犬になった状態でも体重が約1~10kgと軽いので、両手で十分に抱えられそうですね。
出生~生後5ヶ月頃まではフードを水でふやかす必要がありますが、その後は噛む力を鍛えることも意識していく必要があります。
中型犬
ビーグルやボーダーコリーなどの中型犬は、生後10~12ヶ月で成犬の大きさ・体重に成長します。誕生時の約50倍にまで体重が増えるので、その変化は小型犬に比べると早く感じるかもしれません。
大型犬
大型犬の場合は、生後5ヶ月頃までに、成犬に必要な骨格構造を発達させ、体重は成犬時の半分程度まで成長をしていきます。その後、小型犬に比べると緩やかな成長スピードで臓器などが成長し、生後15~18ヶ月で成犬の身体へと成長します。ただ、身体の大きさはもちろん、最終的に体重は出生時の約70倍にまで増えていくので、その成長による変化はとても大きく感じるでしょう。
超大型犬
マスティフなどの超大型犬に分類される犬種の場合は、成犬になると出生時の約100倍にまで体重が増えます。その成長期間は約18~24ヶ月となっており、犬の中では最もゆっくりと着実に成長していきます。成長期を過ぎた超大型犬はとても迫力のある見た目で、ダイナミックな脚力が圧巻です。
成長期間別に犬の骨格をチェック
期間を区切った犬の骨格の成長はどうでしょうか。子犬の時期の骨の成長は独特です。人と同じく動物も大人になるまで骨は上下左右に大きくなっていきます。特に長幹骨と言われる腕や太腿の骨の成長に必要なのは、上下にある成長板です。この成長板は、骨の成長に関わる大事な場所なので、もし傷ついたりするとその後の骨の成長に大きく影響することがありますので、注意する必要があります。
~生後1ヶ月
子犬の体重は生後2週間で出生時の約2倍、生後4週間で約4倍まで成長します。生後1か月までの間に徐々に歯が生えてきますが、歯の強度や噛む力はまだあまり強くありません。
~生後2ヶ月
この時期、小型犬でも大型犬でも子犬は急速に骨格が成長します。生後2ヶ月までの期間を経て、出生時の約10~15倍まで体重が増加し、主に骨の組織が発達します。
生後2ヶ月~
生後2ヶ月以降は主に筋肉組織が発達し、成犬になるまでにさらに約2~5倍体重が増加します。 生後4~5ヵ月頃からは脂肪組織が発達し始めるため、肥満にならないように注意しましょう。超小型犬~超大型犬、それぞれのサイズの成長スピードに合わせて、子犬に適した栄養バランスの食事を与えることが必要です。
例えば、生後5ヵ月頃までの子犬の場合は、カルシウムを過剰に与えると必要以上にカルシウムが吸収されてしまうため、骨の成長に悪影響を与えないよう、ライフステージ毎に合ったフードを与える必要があります。
犬種別に見る骨格の違い
犬は犬種によっても骨格の違いが多少あります。そして、犬種によっての違いがあるからこそ、かかりやすい病気・怪我も異なってきます。犬種毎の骨格の特徴を追っていきましょう。
胴長短足の骨格:ミニチュアダックスフント、ウェルシュコーギーなど
胴長短足の犬種も、胸椎や腰椎の骨の数自体は他の犬種と変わりません。しかしこれらの犬では、2~3歳までに背骨の間にあるクッション、椎間板が変性を起こしてしまうと弾力があった核が硬くなることで、椎間板ヘルニアなどの病気を引き起こしやすくなっています。
超小型犬種の骨格:チワワ、ポメラニアン、パピヨンなど
超小型犬の場合、四肢の骨が細く軽い、支える筋肉量が少ないということで特に衝撃に弱いです。ちょっとした落下でも折れてしまうことがあるので注意してあげましょう。また頚椎の異常がみられることがあり、首周りの刺激に敏感だったり嫌がることがあります。
視覚ハウンド犬種の骨格:イタリアングレーハウンド、ウィペットなど
これらの視覚ハウンド系の犬は歴史が古く、数千年前の遺跡からレリーフや骨が見つかることもあるそうです。長い時間をかけて追求した骨格は、長い手足、流線型の体、強いバネを支える背骨、そして強い心肺機能を支える胸郭がおさめられた肋骨を完成しています。
大型犬の骨格:ドーベルマン、グレートデーンなど
大型犬になるほど、成長期の栄養状態によりその骨格形成に影響が出てきます。また、成長するにつれて関節や靭帯の異常が出てくることもあります。遺伝的な問題を抱えた犬をむやみに増やさないようにするため、遺伝的病気を確認するための検査が推奨されています。
骨格も意識して愛犬を見てあげよう
犬によっては、特徴的な座り方や歩き方をすることがあります。もしかしたらそれは骨格の違いによるものかもしれません。もし何か不安に思うことがあれば遠慮せず、骨格のことだけでも動物病院に行ってみてくださいね。
この記事のライター
YuriChan
チワワの「ちゃん」君と暮らすドッグライター。ちゃん君と実際に行ってみた「犬とのお出かけ情報」や、アンケート結果を基にしたPetan独自調査記事などを中心に書いています。犬商品の企画開発やプロモーションも行っています。
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