「ペットフード安全法」という法律について|制定のきっかけや定められていることを解説します
最近では、オーガニック、グレインフリーなど犬の健康を考慮したより質の高いドッグフードが人気を集めています。これは、愛犬に1日でも長く健やかでいて欲しいと願う飼い主が増えたことによる健康意識の高まりの表れとも言えます。そんな現代の風潮を受け、平成20年に制定された法律が「愛玩動物用資料の安全性確保に関する法律案(ペットフード安全法)」です。今回は、このペットフード安全法がどのようなことを定めているのか、詳しく解説していきます。
「ペットフード安全法」について
「愛玩動物用資料の安全性確保に関する法律案(ペットフード安全法)」は、「愛玩動物用資料の安全性の確保を図り、愛玩動物の健康を保護し、動物の愛護に寄与する」ことを目的とした法律です。農林水産省と環境省が共同で管轄する法律で、これによってペットの健康に悪影響を及ぼすペットフードの製造、輸入または販売が禁止されたのです。
対象となる商品
ペットフード安全法では、ペットフードの使用が原因となって、ペットの健康が害されることを防止することを大きな目的としています。ここで対象となるペットフードとは、当面の間は犬用と猫用とされているため、うさぎやハムスター、鳥などの他の動物の飼料に関しては含まれていません。対象となる商品は、一般的に言われているドライのドッグフードとキャットフードといった総合栄養食だけではなく、おかずタイプの一般食、生肉、おやつ、スナック、ガムやサプリメント、ミネラルウォーターと「愛玩動物の栄養に供することを目的として使用される物」は全てが該当します。なお、医薬品、ドッグカフェなどで提供される犬用フード、調査研究用のフードは対象にはなりません。
禁止されている内容とは
ペットフード安全法では、以下の項目に当てはまるペットフードの製造、輸入または販売を禁止しています。
1.有害な物質を含み、またその疑いがある愛玩動物用飼料
2.病原微生物により汚染され、またはその疑いがある愛玩動物用飼料
ここで注目したいのが「有害な物質」です。「有害な物質」については詳しくご紹介しますので、ぜひ目を通してください。
ペットフード安全法制定のきっかけって?
このペットフード安全法が施行されるきっかけとなったのは、2007年に北米最大の大手ペットフード製造会社が発表したペットフード史上最大のリコールでした。リコール対象商品は、18社5300銘柄にも上り、約1950頭の猫、約2200頭の犬の死亡が報告されたのです。日本では、大手量販店でリコール対象商品が販売されていたことが判明。このリコールを重大に捉えた消費者団体、動物愛護団体関係者からの強い要望を受け、それまで野放し状態だったペットフードを監視・取り締まる法律が制定されたのです。
Menu Foods社のリコール
Menu Foods社は、北米最大のペットフード製造会社で、缶詰を主体に大手ペットフード会社やプライベートブランドの受託生産を行っていた会社です。アメリカでは、このMenu Foods社製造のペットフードを食べた犬10頭が死亡したことから、問題が表面化したのです。このペットフードのリコールの最大原因は小麦グルテンに混入したメラミンでした。小麦グルテンは、とろみをつけるために使用されていた材料で、この小麦グルテンにメラミンを混入することで高タンパク化できることから中国の原材料生産業社が意図的に混入したことが判明したのです。
ペットフード安全法で定められている成分規格とは
ペットフード安全法では、販売用のペットフードに使用される添加物、農薬、汚染物質、その他(メラミン)の成分に対して使用の基準・規格を定めています。また、製造業者名や賞味期限などの表示が義務付けられたことも大きな進展と言えます。
成分規格
ペットの健康を損ねる可能性のある成分について、その規格は細かく定められています。(成分規格表は以下のリンクを参照)規格が定められている成分の使用目的について知っておきましょう。
添加物
規格が定められている添加物は主に酸化防止剤、防腐剤として使用されています。発ガン性、アレルギーなどを発症する可能性がある物質として問題視されていることでも知られています。
エトキシキン
モンサント社が製造している強い抗酸化力を持つ化学物質で酸化防止剤として使用されています。防腐力が強く安価なため、ペットフードなどの防腐剤として使用されていますが、毒性が強いことから日本では人間用の食品で使用することは認められていません。
BHA、BHT
BHA、BHTともに、ガゾリンの酸化防止剤として作られた化学物質です。発ガン性、歩行障害、呼吸困難などの可能性があることが確認されています。
農薬
除草剤として世界各国で危険視されているグリホサホートをはじめ5種類の農薬に関しても規格が定められています。農薬は、ペットフードに使用される野菜に対して使われているものですが、グリホサホートをはじめとする有機ヒ素系農薬、殺虫剤などは犬が中毒を起こす原因物質として指摘されています。
汚染物質
成分企画に記載されている汚染物質とは、環境中に存在する物質のことで、意図せずにペットフードに含まれているものを指しています。
メラミン
前述のように、死亡例が多く報告されたペットフードに混入していたメラミンは、プラスチックの原料として使用されている化学物質です。たんぱく質を高めることができることから、食品偽装などに使用され問題となった成分です。
製造法の基準
ペットフード安全法では、有害物質を含むペットフードの製造などを禁止し、基準・規格の対象外の有害な物質を含むペットフードが見つかった場合は、製造、輸入、販売を禁止することができると定めています。ペットの健康に有害なものは販売してはならないという法律なのです。そのため、製造穂に関しても基準が定められています。製造法の基準として、有害微生物の除去、原料全般では「有害な物質を含み、もしくは病原微生物により汚染され、またはこれらの疑いがある原材料を用いてはならない」としています。また、猫用では添加物にプロピレングリコールの使用を禁止しています。さらに、表示にも基準があり、ペットフードの名称、賞味期限、原材料名(添加物を含めたすべての原材料を多く含まれる順に記載)、原産国名(最終加工工程を完了した国)、事業者名及び住所をパッケージに日本語で表記することが義務付けられています。
ペットフード安全法の制定は動物愛護先進国への第一歩
飼い主にとって愛犬の健康に直結する食べものには、細心の注意を払いたいもの。欧米のペットフードに関する法律を見てみると、人間が食べられる基準と同じものを使用すること、副産物の表示など、日本に比べるとかなり厳しい基準が設けられています。欧米諸国からは、30年、50年遅れていると言われている日本のペット業界において、この法律が制定されたことは少なからずとも一歩前進といえるのかもしれません。
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この記事のライター
ずーこ
動物全般が大好きで現在は猫を飼ってます!犬もだいすきなのでpetanでは犬に関する様々な情報を発信していきたいと思います!!
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