犬の突然死とは「健康に見える犬が予兆なく死に至ること」を指します。診断されていない潜在的な病気が原因の場合は突然死に含まれることが多いですが、既に闘病中だった場合や予兆があった場合は含まれないと考えるのが一般的です。前触れのない突然の別れは飼い主さんの心身の負担も大きく、ペットロスになりやすいため、できれば防ぎたいものですが、飼い主として何をしてあげられるのでしょうか?本記事では犬が突然死してしまう原因として考えられるものと突然死を避けるためにできることをご紹介します。

犬が突然死する原因にはどんなものがある?
生き物と一緒に暮らすうえで必ず別れはやってきますが、すべての飼い主さんが大切な家族の一員である愛犬にはなるべく健康で寿命を全うしてほしいと願っていると思います。しかし、どんなに気をつけていても病気になってしまったり、突然の別れが訪れることも残念ながらありますよね。ここでは犬が突然死・急死(※)してしまう原因として考えられるものをご紹介します。
※「突然死」と「急死」は似ている言葉ですが、急死は「急変し死に至ることのみ」を指し、この場合は直前の健康状態は問いません。しかし、実際には意味が曖昧なケースも多く、厳密に使い分けられていないことも多いです。今回は突然死と急死を区別せずにご紹介します。
突然死・急死を引き起こす原因となる病気
「昨日まで元気だったのに突然様子がおかしくなった」という場合、飼い主さんが気づかないうちに病気が進行していたり、発症してから短時間で命を落としてしまう病気が原因となっているかもしれません。突然死を招く恐れのある病気の一例をご紹介します。
心臓病
突然死の原因の多くは不明とされているものの、人間の突然死の原因として最も多いのは心臓病で、次いで脳血管障害だと言われています。これは犬でも同様で、犬の突然死の原因も心臓病が1番多いようです。なお、犬の死因全体で最も多いのは「ガン」で、次いで「心臓病(循環器系)」、そして「腎不全(泌尿器系)」とする統計もあり、心臓病は犬にとって通常の死因としても突然死の原因としても高いリスクを持つ疾患であることが分かります。
- 僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁閉鎖不全症は、左心房と左心室の間にある僧帽弁が何らかの原因でうまく閉じなくなることで、血液が左心房へ逆流してしまう状態です。この状態が進行すると、肺にうっ血が生じ、心原生肺水腫を引き起こします。
また、血液が逆流することで体全体に必要な血液が送り出せなくなり(=心不全)、突然死を招くことがあります。
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- 大動脈狭窄
大動脈狭窄は心臓と大動脈の間にある大動脈弁付近で狭窄が起こる状態です。狭窄が起きる部位によって弁上部、弁部、弁下部に分けられますが、犬では弁下部狭窄(SAS)が最も多いとされています。
狭窄の程度が軽度の場合には症状が見られず、治療の必要がないことも多いと言われていますが、重度の場合には疲れやすい、運動を嫌がる(運動不耐性)、失神などの症状が現れることがあり、特に不整脈を伴うと突然死に至ることがあります。大型犬に好発する心臓病です。
- 拡張型心筋症
拡張型心筋症は心臓の筋肉が薄くなることで心臓が拡大し、収縮力(ポンプ機能)が低下する疾患です。全身に血液を十分に送れないため、肺水腫や心不全を引き起こすケースもあり、不整脈が見られる場合では失神や突然死することもあります。
犬の心筋症には肥大型心筋症、拘束型心筋症などもありますが、これらの中では拡張型が最も多く、ドーベルマンやボクサー、セントバーナードなどが好発犬種です。
消化器系の病気
心臓病のほかにも、消化器系の疾患により突然死を招くケースもあります。
- 胃拡張・胃捻転
胃拡張・胃捻転は、胃の中に大量のガスが発生して胃が膨張し(胃拡張)、胃の入り口と出口がねじれてしまう(胃捻転)疾患です。膨張した胃により周りの臓器が圧迫されたり、胃がねじれることで血流障害が起こり、全身の循環に影響を及ぼします。腹部の膨張のほか、大量のよだれや吐きたくても吐けない様子が見られ、多臓器不全、重度のショック状態に陥って死に至ります。
食後すぐの激しい運動や早食い、多量の飲食などが関係していると考えられていますが、はっきりとした原因は分かっていません。突然発症し、症状が急激に進行するため非常に緊急性が高く、早急に処置が行われないと数時間で命を落としてしまいます。
短頭種特有の病気
短頭種気道症候群は、パグやフレンチブルドッグなどのマズルが短い犬種に多く見られる呼吸器疾患の総称です。特に、外鼻孔狭窄や軟口蓋過長症、気管低形成などがよく見られます。
これらの疾患は、いびきや慢性的な呼吸のしづらさを引き起こしますが、努力呼吸(※)が続くことで気道に負担がかかり、喉頭虚脱や喉頭小嚢の外反などの二次的な構造の変化が起こって、さらに悪循環に陥ってしまうことがあります。
短頭種気道症候群は高温多湿の環境や運動後、興奮時などに症状が悪化し、呼吸困難を起こしてしまうことも珍しくありません。呼吸困難が続くと、チアノーゼが見られたり失神を起こすほか、重度の場合には突然死のリスクがあります。
※体全体で一生懸命呼吸すること
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突然死・急死の病気以外の原因
犬が突然死する原因には病気以外のものが関係していることもあります。
急性中毒
犬にとって有毒な食べ物や植物、洗剤などを口に入れてしまうと急性の中毒を起こすことがあります。軽度であれば嘔吐や下痢といった消化器症状で済むこともありますが、大量に摂取した場合には激しい嘔吐や下痢、震え、けいれん、不整脈などの症状が見られ、呼吸困難や昏睡状態など重篤な症状を伴うと命を落とす危険性があります。
異物誤飲
おもちゃや小物などを誤飲すると、大きさや形状によっては喉に詰まって窒息死したり、食道や腸に詰まって腸閉塞を引き起こすことがあります。腸閉塞は放っておくと壊死や穿孔を伴い、腹膜炎を起こして命を落とす可能性があります。
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子犬の場合に考えられる原因
子犬の場合は以下のようなものが原因で突然死してしまうこともあります。
低血糖症
子犬は成犬に比べてエネルギーを消費しやすい一方で、肝臓に糖を貯蔵する機能が不十分であるため、低血糖症が起こりやすいです。生後数週間から3ヶ月くらいまでの間に多く見られます。中でも小型犬の子犬が顕著です。
低血糖状態になると、元気がなくなり、震えやふらつき、舌や肉球の色が白っぽくなる、体温が低くなる、けいれんするなどさまざまな症状が現れます。低血糖症は緊急性が高く、速やかに処置が行われないと死に至ります。
感染症
子犬は免疫力が低く、感染症にかかりやすいです。特に犬ジステンバーウイルス感染症、犬伝染性肝炎(犬アデノウイルス感染症)、犬パルボウイルス感染症は致死率が非常に高いため注意が必要です。中でも犬パルボウイルス感染症は腸炎型と心筋型があり、心筋型は嘔吐や不整脈、呼吸困難を起こして、急死してしまう事例が多いと言われています。
愛犬の突然死を防ぐために
突然死は避けられないこともありますが、少しでもリスクを減らすために日々の生活の中で飼い主さんができることをご紹介します。
日頃の健康チェックと健康診断の受診
愛犬の突然死を予防するためには、日頃から健康チェックを行い、早期に異常を発見することが重要です。普段から食欲や排泄物の様子を観察し、些細なことで異変を感じたらなるべく早くかかりつけ医に相談しましょう。
また、定期的に健康診断を受けることで、目に見えない病気や病気の兆候を発見することができます。健康診断は半年に1回が受診の目安と言われているので、できるだけこの頻度で通うようにしましょう。
定期的なワクチンの接種
ワクチンは愛犬を感染症から守るためにとても重要です。犬の感染症の中には致死率が高いものも少なくありませんが、ワクチンを接種すれば防ぐことができます。
また、ペットホテルやトリミングサロン、ドッグランなどではワクチン接種証明書の提示が求められるケースがほとんどです。
愛犬だけでなく、周りの動物を守るためにも適切な頻度でワクチンを接種するようにしましょう。
誤飲を防ぐ
急性中毒や誤飲は日頃から愛犬の手の届くところに危険なものも置かないことが大切です。犬にとって危険な食べ物はたくさんあるので、食べ残しをそのままにしたり、うっかり落としてしまったときに愛犬が口に入れないよう注意してください。
何が愛犬の興味を引くかは分からないので、洗剤などは地面に置かず棚の中にしまったり届かない高さのところで保管するようにしましょう。
花や観葉植物も品種によっては中毒症状を起こしてしまうものがあります。犬に害のないもののみ置くようにするか、もしくは口に入れることができない場所に飾ることが大切です。
危険なものから愛犬を遠ざけるためにはペットゲートも有効なので、状況に応じて活用してみてください。
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些細な変化を見逃さないことが大切
突然死は、目立った前兆がなく、急激に体調が悪化して命を落とすケースを指します。そのため、完全に防ぐことは難しい部分もありますが、日頃の飼い主さんの観察や定期的な健康診断の受診による獣医師のチェックで、些細な異変や病気を早期に発見できる可能性が高まります。病気の中には目立った症状が出ずに進行するものもあるので、早期発見がなによりも大切です。
また、感染症を防ぐためのワクチン接種や誤飲を予防する環境づくりはすぐにでも始められる取り組みです。愛犬がなるべく健康で長生きできるよう、飼い主さんができることから始めてみてください。
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