【獣医師監修】犬の漏斗胸という病気について解説|初期症状から原因、治療法まで
皆さんは、「漏斗胸(ろうときょう)」という病気をご存知でしょうか?漏斗胸は人間にも犬・猫にも発症する可能性がある病気です。
人間の場合、漏斗胸は胸骨や肋骨が変形して胸の中央部が凹む病気のことを指します。800人から1000人に1人の割合で発症すると言われており、胸部が凹むことによって心臓や肺の機能に影響を及ぼします。
次に犬の場合ですが、愛犬がいつも辛そうに呼吸していたり、咳をしていて、胸のあたりが凹んでいたらもしかすると漏斗胸かもしれません。犬よりも猫に多く見られる病気ですが、飲み薬などでは治らず、症状の程度によっては手術が必要になる場合もあります。
ここでは、犬の漏斗胸がどのような病気なのか、原因や治療法についてご紹介します。
犬の漏斗胸とはどんな病気?
漏斗胸は生まれつきの先天的な異常であることが多く、名前の通り漏斗のように胸が変形している病気です。本来であれば盛り上がって凸型となっているはずの胸が、胸椎(きょうつい)・肋骨(ろっこつ)および胸骨の変形により扁平になっていたり、胸腔の内側に向かって陥没して凹んだ状態になります。
陥没の状態は、飼い主さんが触ってもわからない程度のものから、指で触ってはっきりと凹みが分かるほど深く窪んでいるものまで様々です。
初期症状とチェック項目
症状は骨格の変形の程度によりますが、胸が凹んでいるとそこに位置する肺や心臓を入れる胸腔の容積が少なくなってしまうため、肺活量が少なくなります。
軽度の場合は、症状を示さない場合も多くありますが、呼吸困難やチアノーゼ(舌の色が紫や青白い色になること)、咳、過呼吸などの呼吸器症状が現れるほか、心機能にも悪い影響が出ることがあります。
その他の症状としては、嘔吐や食欲不振、体重減少、疲れやすくなるといった症状が見られます。
他の犬や人間にうつる?
犬の漏斗胸は感染症ではないので、他の犬や人間にうつる心配はありません。
漏斗胸を発症する原因として考えられるものは?
犬の漏斗胸の発症原因は、いまだ解明されていません。遺伝的素因があると考えられており、次のような可能性が示唆されています。次に、可能性として考えられる代表的な原因4つについてご紹介します。
原因【1】横隔膜腱中心の短縮
横隔膜(おうかくまく)は胸腔と腹腔との境界にある膜状筋のことで、呼吸機能に重要な役割を担っています。横隔膜の中央部にある腱膜(けんまく)状の部分を腱中心(けんちゅうしん)といい、ここが短縮していると漏斗胸の要因になるとされています。
原因【2】横隔膜頭側部の筋肉組織の先天性欠損
横隔膜の頭側部の筋肉組織が生まれつき欠損していると、漏斗胸を発症する可能性があると考えられています。
原因【3】母体の子宮内圧異常
妊娠中の犬の子宮内圧に異常があった場合、胎児が漏斗胸になる可能性が示唆されています。
原因【4】若齢時の気道閉塞
後天的な発生は非常にまれですが、若齢時の気道閉塞なども漏斗胸が発生する要因の一つになるという説もあります。
かかりやすい犬種や年齢は?
犬の漏斗胸は犬種に関係なく発生します。遺伝的素因であると考えられているため、生まれつきのものがほとんどです。
漏斗胸の治療法について
胸が少し扁平になっているくらいで変形の程度が軽く、他に目立った症状が現れていない場合には、治療を必要としないことも少なくありません。内科的治療で完治する病気ではないので、根治するには外科的治療が必要になります。
手術は陥没した部分の肋軟骨や胸骨自体がやわらかく、変形しやすい時期(生後3ヶ月まで)に行うのが望ましいとされています。手術方法はさまざまですが、胸腔を広げるために次のような手術が行われます。
開胸手術
胸部を切開し、骨の変形の整復を行ってプレートを装着します。整復後はプレートを外すための再手術が必要になります。
外部からのけん引
身体の外部から胸の骨に糸をかけて、プロテクターのようなもので固定します。プロテクターは犬の成長に合わせて調整し、整復後は抜糸をします。
治療にかかる費用
漏斗胸の整復にかかる費用は、漏斗胸の程度や手術方法、治療を受ける動物病院の設定金額などにより異なりますが、胸部の手術であるため高額になる可能性は高いです。
その他、レントゲン検査代や血液検査代、入院費などがかかり、整復後もプレートを外すための再手術や抜糸、経過を見るための通院などに費用がかかります。事前に動物病院に確認してみると良いでしょう。
ペット保険の補償について
多くのペット保険会社では、先天性の病気は補償対象外になっています。ペット保険会社や補償プランなどによって違いがあるので、漏斗胸の治療が補償の対象になるかどうかは、加入している保険会社に直接問い合わせてみましょう。
犬の漏斗胸は予防することはできる?
犬の漏斗胸は予防が難しい病気なので、漏斗胸から影響して見られるさまざまな症状の早期発見・早期治療が大切です。愛犬の胸が陥没していないか、扁平になっていないか確認しましょう。初期には無症状でも、病気が進むと呼吸に異常が現れたり、息苦しそうな様子が見られるかもしれません。愛犬の様子をよく観察しましょう。
遺伝的要因があると言われている病気なので、漏斗胸の犬を交配して繁殖するのは控えましょう。
再発する可能性
手術後の状態が良好であれば、再発の可能性は低いでしょう。
犬の漏斗胸は早期発見が大切
犬の漏斗胸は、様子を見て良い軽度のものから、早期に治療を必要とするものまでさまざまです。
手術をする場合には胸骨が柔らかい生後3ヶ月までが適齢期と言われているので、日頃から愛犬の様子をよく観察したり、動物病院で健康診断を受け、早期発見に努めましょう。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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