【獣医師監修】愛犬とのお別れについて|最期の時が近づいている老犬に見られる様子と看取るために考えておくべきこと
できれば考えたくありませんが、愛犬とのお別れはいつか必ずやってきます。かけがえのない幸せな時間を与えてくれた愛犬が最期の時を迎える際に、飼い主さんはどんなことをしてあげられるのでしょうか。ここでは、死期が近づいている際に見られる様子と、犬の代表的な死因、飼い主として最期にしてあげられることなどをまとめて紹介します。
目次
老犬の最期が近づいているときに見られる様子とは
犬が突然死することは少なく、多くの場合は何らかの予兆が見られます。老犬が最期を迎える数日前~直前に見られる様子について見ていきましょう。
食欲の減退
シニア期に入ると成犬と比べて食べる量は減りますが、死期が近づくとごはんをまったく食べなくなったり、水も自力で摂ることができなくなるケースがあります。ごはんを食べないことでエネルギーが出ず、動くことが難しくなり寝たきりに近い状態になるほか、身体も痩せていきます。栄養が足りないことで毛並みが悪くなっていくケースも珍しくありません。
いつもと違うニオイがする
死期が近くなると代謝の低下から普段とは違うニオイがするようになります。
また、水を飲むことが減り口内が乾燥することや嘔吐を繰り返すことで口臭がきつくなることがあります。
体温が下がる
死が近付くと、体温が低下します。犬が体温を維持するにはエネルギーが必要ですが、代謝が下がりエネルギーを作り出す力が無くなっているため、死期の近い老犬は低体温になります。
呼吸が不規則になる
身体機能の衰えから老犬の呼吸が速くなることは珍しいことではありませんが、亡くなる直前は浅い呼吸から深い呼吸、そのあと呼吸の間隔があく(無呼吸になる)というサイクルを繰り返すことがあります。
このサイクルを「チェーンストークス呼吸」と呼び、このような呼吸の仕方が見られると、旅立ちが近いと言われています。
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排泄の異常
シニアになると肛門や膀胱の筋肉の衰えにより排泄のコントロールができなくなって寝たまま粗相をしてしまうこともあります。
また、亡くなる前には身体の中を空にしようと排便・排尿をする子もいます。
意識レベルが低下する
死期が近い老犬は強い刺激には反応するものの、反応自体は少なくなります。目の焦点が合わない、目を開けられないなどの様子が見られたら、意識がもうろうとしている可能性があります。
けいれんする
意識レベルが低下し、昏睡状態になったあとはけいれんを起こすことがあります。手足をバタバタと動かしたり、後ろにのけぞり四肢を突っ張るような症状が見られます。
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ラストラリー現象が見られることも
人は亡くなる数日前に症状が軽快したかのように見える行動をとることがありますが、犬も同様に、亡くなる直前に尻尾を振ったり鳴いたりすることがあります。全くごはんを食べられなかったのに以前のように食べたり、寝たきりだったのに体を起こしたり、甘えるような態度を見せたり、家族が全員揃った後に息を引き取るなどの行動が見られることもあるようです。
これは「中治り現象」、外国では「ラストラリー現象(last rally:最後の回復)」と呼ばれており、「死期が迫っている肉体を守ろうと脳がドーパミンやエンドルフィンなどを分泌することで、一時的に回復したかのように見える説」と、「最期の瞬間を迎える前に、身体が無意識に何かをやり遂げようとする働きによるものだとする説」があります。
この現象は科学的・医学的に解明されているわけではなく、すべての子に起こるわけでもありません。しかし、多くの人がこのような場面に立ち会ったことがあるのもまた事実です。
ラストラリー現象はあくまで「一時的な」回復なので、すぐに元の状態に戻ってしまいますが、実際にペットを看取った経験のある方ならなんとなく思い当たることもあるのではないでしょうか。「rally」には「持ち直す」や「奮い立つ」という意味もあり、死期が近い犬が一時的に元気を取り戻す様子は、まさにこの言葉の通り、最後の力を振り絞って、大好きな飼い主さんに感謝を伝えようとしているかのように見えます。
愛犬が回復したかのように見えたら嬉しくなるとともに、どうかこのままよくなってほしいと願ってしまいますが、この現象が見られたあとには、再び衰弱し、亡くなってしまうケースがほとんどです。
ラストラリー現象は「神様が大切な人と過ごすためにくれる最後のプレゼント」とも言われているので、そばを離れずたくさん名前を呼んだり、身体を撫でたり、感謝の気持ちを伝えて愛犬が安心できるようにしてあげたいですね。
犬の死因として多い病気は?
犬の死因は「腫瘍」、「循環器の病気」、「泌尿器の病気」が多く、中でも腫瘍が最も多いと言われています。それぞれについて簡単に見ていきましょう。
腫瘍
犬にできる腫瘍には良性と悪性がありますが、悪性のものは進行すると肺や肝臓などに転移し命をおびやかすことがあります。
循環器疾患
老犬は心臓病を患いやすく、動物病院を受診した際に聴診によって心雑音が聴取され、病気が発見されることは少なくありません。心臓病には小型犬に多い僧帽弁閉鎖不全症や、心臓を構成する筋肉が異常を起こして心不全を引き起こす心筋症などがあります。
肥満や塩分の多い食餌は心臓に負担をかけることで知られているので、その子のライフステージに合っていて栄養バランスのとれている適切な食餌を与えることが重要です。また、心臓病の進行具合によっては、病院で適切な療法食を処方してもらえることもあるので、かかりつけの獣医師に相談してみましょう。
泌尿器疾患
犬の死因になる泌尿器疾患は、主に腎臓病を指します。急性腎不全と慢性腎不全があり、老犬は何らかの原因により腎臓の機能が少しずつ時間をかけて低下していく慢性腎不全がよく見られます。
慢性腎不全は腎臓の機能が75%障害されるまで目立った症状を示しません。残念ながら完治が期待できる病気ではないので、早期発見と適切な対症療法が必要になります。
対策としては、愛犬が7〜8歳のシニア期を迎えたら、1年に1度のペースで血液検査を行い内臓機能の低下が無いかをチェックしてもらうと早期発見につながることがあります。また、自宅では多飲・多尿が見られることが多いので、普段から飲水量がどれくらいなのかをチェックしておくと良いでしょう。
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愛犬が最期を迎えるときに飼い主さんができること
老犬が最期を迎えるとき、飼い主さんは愛犬のために何ができるのでしょうか?身体の機能が衰えた老犬は、飼い主さんの介助を必要としているかもしれません。愛犬の様子や症状をよく観察し、何を求めているのか、何が必要かを考えましょう。
生活の介助
老犬は身体の機能が衰え、飲み込む力が弱くなるので、食事や水を摂らなくなることがあります。フードを食べやすいようふやかしたり、シリンジ(注射器)やスポイトで水を与えましょう。
寝たきりになると床ずれになるので、体位をこまめに変えたり、床ずれ防止用のマットを敷いてあげることも大切です。
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寝たきりの老犬は下痢や嘔吐で身体を汚しやすいので、下にペットシーツを敷いたり、タオルなどで拭き取り身体を清潔さを保つようにしてください。
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たくさんコミュニケーションを取る
最期が近い老犬は反応が鈍くなっているかもしれませんが、耳が遠くなっていても飼い主さんの声や存在は何となく感じています。優しく声をかけたり、頭を撫でたり、マッサージするなどたくさんの愛情を伝えましょう。
愛犬の最期を看取るために考えておくべきこと
愛犬が亡くなった直後は喪失感から呆然としてしまいますが、家で看取るのか病院で看取ってもらうのかや、葬儀の方法について考えておくとともに、必要な手続きについても調べておきましょう。
看取る場所について考えておこう
■自宅で看取る
老犬が慣れ親しんだ自宅で、家族で見送ってあげたいと考える飼い主さんは多いのではないでしょうか。
自宅であれば、亡くなる直前まで飼い主さんがケアすることができます。亡くなった後に遺体が痛まないよう、保冷剤やドライアイスを用意しておきましょう。
■病院で看取る
病院では、容態が悪化したときに適切に処置をしてもらえます。薬や点滴で、愛犬の身体が楽になることもあります。
ただし病院に預けた場合、容態が急変したときに側にいてあげられず、飼い主さんが最期を看取れない可能性があります。
看取った後の準備をしておこう
愛犬が旅立ってしまったら心の整理がつかずすぐに行動できなくなってしまいますが、葬儀について個別火葬にするのか合同火葬にするのか、それとも火葬車に自宅まで来てもらうのか、埋葬はペット霊園にするのか自宅にするのか、などは考えておく必要があります。
また、愛犬の死後は、自治体に死亡届を提出しなければいけません。どのような手続きが必要になるのかあらかじめ調べておきましょう。
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お別れが近づいているときの症状を見逃さないように
老犬の多くは、亡くなる前に何らかの予兆を見せます。たくさんの愛情をくれた愛犬の最期の瞬間まで寄り添ってあげられるよう、些細な身体の変化も見逃さないようにしたいですね。
できれば考えたくないことではありますが、飼い主さん自身が後悔しないためにも、愛犬の最期をどのように見送りたいのかを考え、必要な準備を整えておきましょう。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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