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【獣医師監修】犬の腹水について|腹水が溜まる原因と症状、治療法・予防法などを解説

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健康な犬のお腹には腹水が溜まることはほとんどなく、さまざまな病気が原因となって腹水が溜まることが分かっています。もし、愛犬の食欲が落ちてきた、食後ではないのにお腹がぽっこりと張って見えるというときは要注意です。

今回の記事では、犬の腹水の原因と症状、治療法・予防についてご紹介します。愛犬のお腹の張り具合に注意しながら対処していきましょう。

【獣医師監修】犬の腹水について|腹水が溜まる原因と症状、治療法・予防法などを解説
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目次

  1. 犬の腹水とは|主な症状について
  2. 腹水が溜まってしまう原因は?
  3. 治療法と費用について
  4. 腹水を抜くことによるリスクはある?
  5. 愛犬に腹水が溜まった場合にしてあげられること
  6. 腹水を予防する方法と再発の可能性
  7. 愛犬のお腹が膨らんでいると思ったら獣医師に相談を

犬の腹水とは|主な症状について

横になっている犬

犬の心臓病や肝臓病などが進行すると、血液の循環が滞るなどの原因で水分が腹腔内ににじみ出し、お腹に溜まります。この症状を「腹水」と言います。腹水が大量に溜まると周囲にある胃や肝臓、腎臓、腸などの臓器が圧迫され、さまざまな影響が出てきます。

腹水の主な症状

さまざまな病気によって腹水が溜まると、以下のような症状が現れます。

お腹が膨らむ

腹水が溜まったときの特徴的な症状は、お腹の膨らみです。お腹が膨らんでいるのに気づいたとき、ただの肥満だと思いがちですが、肥満の場合は、お腹だけでなく体全体がふくよかになります。腹水の場合は、主に下腹部が液体の貯留により異様に膨らみ、ボールのように見えることもあります。大量に溜まっているときは、お腹を触ると波打つような感触(波動感)が感じられます。

食餌を食べる量は今までと変わらない、もしくは減っているのに、お腹周りだけ急に張ってきたときは、腹水が溜まっていることが疑われます。

呼吸困難

腹水が溜まることで横隔膜に圧がかかってしまうと、横隔膜の収縮が上手くできなくなり、肺がうまく機能できなくなります。その影響から息切れをする、呼吸困難になるなどの症状を招くことがあります。

元気がなくなり食欲が低下する

腹水が溜まると胃や腸が圧迫されることから、食欲が落ちてしまいます。また、便秘や下痢などの消化器症状を起こす場合もあります。このような症状に伴い、体力が衰えて元気がなくなってくるケースも多いです。

腹水と似た症状の腹腔内出血とは

腹水と似た症状が見られる「腹腔内出血」という病態がありますが、この場合は、交通事故や腫瘍の破裂などによる急性の失血に伴い、突然の元気消失、無気力、起立不能、可視粘膜蒼白(歯茎や舌が白っぽくなる)などの症状が見られます。腹水以上に緊急度が高く、迅速な対処が必要になります。

他の犬や人間にはうつらない

腹水は、さまざまな病気のひとつの症状として現れるものであり、腹水そのものが他の犬や人間にうつるということはありません。ただし、犬の腹水の原因がフィラリア症や犬伝染性肝炎などの感染症によるものであった場合は、他の犬にうつる可能性は考えられます。適切な検査を行って腹水を引き起こす原因をしっかり調べることが重要です。

腹水が溜まってしまう原因は?

具合悪そうな犬

ここでは、犬に腹水が溜まる原因となり得る病気を3つご紹介します。

原因【1】腹腔内の炎症

子宮蓄膿症や、腫瘍、膵炎など、お腹の中で炎症が起きている場合があります。腹膜炎を起こした結果、腹水の貯留が見られることがあります。その場合、腹膜炎を起こしている原因疾患の治療を行う必要があります。

原因【2】肝臓病

肝臓は再生力が非常に高い臓器ですが、重度の障害を受けると再生が追いつかなくなります。犬の肝臓病が進行すると嘔吐や下痢、腹水、黄疸などの症状が現れます。腹水の貯留は、肝臓疾患において、門脈という血管の異常により、血液の水分がにじみ出ることで起こります。

原因【3】心臓病

心臓病には心筋症やフィラリア症などがありますが、犬で最も多く見られる心臓病は「僧帽弁閉鎖不全症」です。僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の左心房と左心室の間にある弁(僧帽弁)が変性し、上手く機能できなくなり、血液が逆流して咳や食欲低下、腹水などさまざまな障害を引き起こします。

キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルマルチーズチワワポメラニアンなどの小型犬種が好発犬種として知られており、なかでも中高齢犬に多く見られます。

腹水が溜まるケースとしては、僧帽弁閉鎖不全が進行して、左心だけでなく右心にまで症状が及んでしまった場合に見られることが多いです。

発症しやすい犬種や年齢は?

腹水は、犬種や年齢に関係なく発生します。腹水が溜まる原因になる心臓病や肝臓病などは中高齢の犬によく見られやすいと言えるでしょう。

治療法と費用について

薬

犬の腹水の治療法と、治療にかかる費用の目安について見ていきましょう。

療法食で改善を試みる

腹水の原因が、消化管から多量のタンパク質が漏れ出し、血中タンパク質が低下するタンパク漏出性腸症の場合、内科的な治療と並行して療法食を食べさせることで症状が緩和されることがあります。

利尿剤・血管拡張薬を用いて排出させる

利尿剤や血管拡張薬などを用いて、溜まった腹水を排出させる治療を行うことがあります。利尿剤を使うと排尿量が増加し、身体の水分が排出されます。それに伴い、血液の水分が減り血液の量が減ります。血液の量が減ると血液のうっ滞を緩和させることが期待できるので、利尿剤が用いられます。

また、血管を拡張させて血液の流れを改善させる血管拡張薬と利尿剤をうまく併用して、腹水を排出させることもあります。

穿刺(お腹に針を刺すこと)を行い、腹水を抜く

腹水がたくさん溜まってしまい、食欲がかなり低下しているときや呼吸困難になっている場合は、穿刺(お腹に針を刺すこと)を行い、物理的に腹水を排出させることもあります。これにより臓器の圧迫が緩和されるので、一時的には苦しさを軽減することができます。ただし、原因疾患によっては、時間が経つと再び腹水が溜まってくると考えられます。

検査、治療にかかる費用

腹水の溜まり具合やその子の全身状態によって治療法は異なります。腹水の原因疾患にもよりますが、原因疾患を鑑別するための検査(血液検査、胸腹部のレントゲン検査、腹部のエコー検査など)や点滴、利尿剤の注射などを行うケースが多いでしょう。これらにかかる費用は、動物病院によって異なるので、気になる場合は事前に確認しましょう。

腹水を抜くことによるリスクはある?

寝ている犬

腹水を抜くことにはリスクもあり、全身の状態によっては抜かないほうが良い場合もあります。そのため、どんなリスクがあるのかを知り、どの程度抜くのかを獣医師とよく話し合って決めることが大切です。 

体が衰弱することもある

腹水にはタンパク質などの栄養成分が含まれているため、一度にたくさんの量を抜いてしまったり、あまり頻繁に腹水を抜くと栄養失調になり、身体が衰弱してしまうことがあります。

これに加えて、血圧の低下によりショック状態になる恐れもあるので、「どの程度の量を抜くのが望ましいのか」もしくは「抜かない方が良いのか」ということを事前に検討することが必要です。

原因疾患を治療しないと、腹水は抜いてもすぐに溜まる

腹水はさまざまな原因疾患によって引き起こされる症状であるため、一度腹水を抜いたとしても原因疾患を治さなければ、すぐに溜まってきます

愛犬に腹水が溜まった場合にしてあげられること

寝ている犬

全身状態が悪い場合、犬の体力的に腹水を抜く治療が難しい場合もあります。そんなとき、愛犬の苦しさを軽減させるために飼い主さんができることを知っておきましょう。

獣医師の指示に従って食餌管理をする

原因となっている病気や病状によって食餌内容の制限は異なるので、必ず獣医師の指示に従って食餌管理をするようにしましょう。

例えば、愛犬の食欲が落ちて体が衰弱しているとき、栄養価の高い食餌を与えて体力の回復を図ることもあります。しかし、腹水が溜まっている状態では、与えるものによっては悪化させる要因になってしまうことがあります。獣医師の指導のもと、与えて良いもの、悪いものを把握してから与えるようにしましょう。

セカンドオピニオンを受ける

現在の治療法で本当によいのか、専門医の意見も聞いてみたいなど、飼い主さんが何かしら気になることがある場合は、セカンドオピニオンを検討するのもひとつの方法です。

セカンドオピニオンを受診することで、治療の選択肢が広がることもありますし、かかりつけの獣医師と同じ意見が得られれば、安心して治療を任せられるでしょう。現在の治療に関して疑問や不安がある場合は、セカンドオピニオンの利用も検討してみることをおすすめします。

マッサージで利尿を促す

血流が滞ることが原因で腹水が溜まる場合は、飼い主さんがマッサージをして利尿を促すことで、腹水が溜まるのを軽減させることができます。ただし、ぐったりしているときなどは無理にしない方が良いですし、マッサージのやり方が間違っていると逆効果になることもあるので、必ず獣医師に確認したうえで行うようにしましょう。

腹水を予防する方法と再発の可能性

犬

腹水の予防法はありませんが、腹水の原因疾患を起こさないように予防することが必要です。適切な食餌管理や、定期健診で必要な検査を受けることが病気の発見につながります。

例えば、原因のひとつになる、心臓病を起こすフィラリア症は月に1回の飲み薬による予防が一般的ですが、首の後ろに垂らす滴下剤や年1回の注射による予防も可能です。フィラリア症のお薬が苦手な子も、面倒がらずにかかりつけの獣医師に相談してみましょう。

ほかにも、腹水の原因となる心臓疾患、肝臓疾患の場合も、定期検診で血液検査やレントゲン検査、エコー検査などを行うことで早期に発見することができます。

再発する可能性

腹水を減らすために利尿剤を用いたり、穿刺により腹水を抜いたりしても、腹水が溜まる原因となる原因疾患がうまく治療できないと、またすぐに溜まってしまいます。原因疾患を正しく診断して、根本的に治療することが重要です。

愛犬のお腹が膨らんでいると思ったら獣医師に相談を

寝ている犬

「最近、愛犬のお腹が膨れてきたな」と感じたとき、ただの肥満と思って様子を見がちですが、実際には腹水が溜まっていて緊急の処置が必要かもしれません。腹水は比較的重い病気の症状として見られることが多いので、手遅れにならないよう、あやしいなと思ったら動物病院で早めに適切な検査、治療を相談しましょう。

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この記事のライター

choco

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