ペットブームとは?その実態と急増する飼育放棄について
コロナ禍によるお家時間が増えたことによって、日常生活に癒しを求め、ペットを飼育しようと考えている方が増えています。そんなペットブームと同時に、様々な問題も起こっていることはご存知でしょうか。
今回は、ペットブームの実態と共に、問題点とその対策について紹介していきます。ペットブームとは何なのかを詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
空前のペットブーム。その実態とは
コロナ禍で加速するペットブームですが、あまり実感がないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでは、一般社会法人ペットフード協会の調査データ(※1)を元に、ペットブームの実態を見ていきましょう。
いつからペットブームが始まっている?
年度ごとの犬の新規飼育数に関する詳しいデータは以下の通りです。
- 2016年…44万7千頭
- 2017年…38万頭
- 2018年…38万3千頭
- 2019年…40万4千頭(106%増)
- 2020年…46万2千頭(114%増)
ペットを飼育し始めた理由トップ3は?
ペットを飼い始めた人達への理由に関する調査では、犬猫共に同じ理由がトップ3となっています。
これらの理由が回答全体の約80%を占め、1位は全体の約40%にもなりました。
ペットに対して癒しを求める人が増えていることや、SNSの普及により他の人の生活を目にする機会が増えたことがペットブームの要因となっていると考えられます。
- 1位…生活に癒しや安らぎが欲しかった
- 2位…過去に飼育経験があり、また飼いたいと思ったから
- 3位…身近でペットを飼育している人が羨ましくなったから
ペット市場への影響は?
ペットブームによって、ペットビジネスの市場規模も拡大しています。株式会社矢野経済研究所(※2)の調査データを元に、ペット市場の広がりについて見ていきましょう。
ペット市場は拡大する見込み
ペットシーツやフードのような消耗品はもちろんのこと、新規飼育者の増加によって、ハウスや首輪のような必需品の需要が高まったことが市場規模拡大の要因になっていると考えられます。
年度別の小売金額をベースとした、ペット関連の総市場規模は以下の通りです。
- 2015年…1兆4,743億円
- 2016年…1兆4,983億円
- 2017年…1兆5,193億円
- 2018年…1兆5,442億円
- 2019年…1兆5,705億円
- 2020年…1兆6,242億円(見込)
- 2021年…1兆6,543億円(予測)
- 2022年…1兆6,987億円(予測)
新たな需要が生まれている
コロナ禍によって生活様式が変わり、ペットにオシャレな服を着せてSNSに投稿する「巣ごもりファッション」といった新たな需要も生まれています。旅行や外食へ行き辛くなった分、飼育環境の質を上げようという意図が読み取れます。
その他にも、家の中を快適にする消臭剤や掃除グッズといった衛生用品の需要も高まっているため、今後もペット市場は拡大していくでしょう。
ペットブームの裏で急増する飼育放棄
ペットの飼育数が増えると同時に、飼育放棄に関するニュースも頻繁に目にするようになりました。ここでは、ペットブームに隠れた問題点やその改善方法について紹介していきます。
実際どのくらいペットを手放す人が増えている?
飼育が困難になったペットを引き取り、里親を探す活動をしている「NPOみなしご救援隊」では、2~3ヵ月に1匹程度だった引き取りが、新型コロナウイルスの感染拡大後からは1週間に2~3匹へと増加しています。
また、環境省のデータ(※3)では、全国の犬・猫の引取り数や殺処分数がここ10年で3分の1以下に減少しています。良い傾向ではありますが、これは各都道府県でペットの引き取りをしなくったというだけでもあります。
実際には、ペットの飼育放棄によって地方では野犬が増えたり、捨て犬の報告も見受けられるようになっています。
ペットを手放す理由
ペット保険相談サービス「MOFFME」による、ペットを飼い始めた人を対象にした意識調査(※4)では、「ペットを飼ってから知識不足だと感じた」という回答が56%にものぼっています。
健康上の理由といった仕方ない理由で手放す方もいますが、「かわいいから」という理由だけで飼い始めてしまい、下記のような身勝手な理由で1~2週間で手放してしまうケースが増えています。
- ペット用品の出費の計算をしていなかった
- 思ったように懐いてくれなかった
- しつけが上手くいかなかった
- 臭いが気になる
ペットショップの問題
ペットの飼育放棄の背景には、ペットショップも関わりがあります。ペットショップはペットを売ることを目的としているため、飼育によるメリットを強調し、デメリットを説明することはほとんどありせん。
そのため、新規飼育者は飼育前後でギャップを感じてしまうということが起こります。
ヨーロッパをはじめとした海外では、動物福祉の観点から、生態販売を行っているペットショップはほとんどなくなっています。日本でもペットショップのあり方について考えなければいけないのかもしれません。
ペットの譲渡数は増加傾向
保護されたペットの譲渡数は、10年前から比べて約3倍にまで上がっています。一見良い報告のようにも思えますが、譲渡数が増えているというのは、保護されているペットが増えているという意味でもあります。
人の善意によってペットの命を成り立たせるのではなく、その前段階での対策が大切であることには変わりありません。
動物愛護管理法による飼育放棄の対策
環境省では「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)」(※5)という動物愛護に関する法律が5年ごとに改正されています。2020年6月からは、出生後56日を経過しない犬猫の販売に制限がかけられることになりました。
2022年6月からは販売するペットへのマイクロチップ装着が義務化されます。 安易にペットを飼わせないことや、飼い主とペットの紐づけをより強固にすることで、飼育放棄を防ぐ効果が期待されています。
人間の身勝手でペットたちを悲しい目にあわせないために
ペットブームと聞くと、ペットに対する理解が社会的に進んでいると思われがちですが、その裏では飼育放棄といった数多くの問題も生み出しています。
その理由の多くは、新型コロナウイルス拡大によって、癒しを求めた人達が事前調査なしでペットを飼い始めてしまっていることが挙げられています。
ペットを飼育するのは楽しいことばかりではなく、大変な面もあるのだということを世間に知られていく必要があるようです。
参考文献
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この記事のライター
komugi
都内で愛犬のビーグルと暮らしています。コロナ期間中に肥満体型になってしまった愛犬のために食事や運動について勉強をはじめました。面白い発見や愛犬家の皆様に役立つ情報があればどんどん発信していきます!
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