【獣医師監修】犬が足を捻挫したときの症状とは|見分け方や原因と日常生活での予防法まで
身体の構造も骨格も異なる人間と犬ですが、犬も人間のように足を捻挫してしまうことがあります。高いところから落ちてしまったり、足場の悪い地面を走って滑ったり転んだりすることが原因となることが多いのですが、場合によっては肥満により足に負担がかかり靭帯が断裂してしまうようなこともあります。今回は、犬の足の捻挫の症状や家での予防策、検査、治療について解説します。
犬の足の捻挫の症状
犬の足の捻挫は、何らかの拍子で関節が無理に曲げられることで、関節をつないでいる靭帯(じんたい)が許容範囲を越えて引き伸ばされてしまった状態のことを言います。
引き伸ばされた靭帯は損傷を受け、その部位に炎症が起こり、痛みや腫れ、赤みだけでなく熱感を感じることもあります。
捻挫した際の症状と見分け方
犬は痛みを隠してしまうことが多い動物なので、飼い主さんに「痛い」という主張をあまりしません。そのため、仮に捻挫をしていたとしても飼い主さんから見ると「ちょっと疲れているのかな?」と思う程度で、犬の捻挫は気付きにくい病気、怪我のひとつと言えます。
とはいえ、一度捻挫すると癖になって再発しやすい状態となってしまうこともあるので、日頃から愛犬の歩き方や足回りをよく観察することで、迅速に適切な対処ができるようにしましょう。以下のような症状が見られる場合、足を捻挫している可能性があるので、見分け方の参考にしてください。
- 歩き方がいつもと違う(ゆっくり、ぎこちない)
- 座ったまま動こうとしない
- 足を挙上する、庇う様子がある
- 足が赤い、腫れている
- 足を触ると熱感がある
- 足を触られるのを嫌がる
犬が足を捻挫してしまう原因
犬は、日常生活の中のどんな場面で捻挫してしまうのでしょうか?ここでは、犬が足を捻挫する原因として多く挙げられるものを2つご紹介します。
原因1.足場が悪いところでの全力疾走
走っている際に障害物につまずいたり、デコボコしている地面で犬が全力疾走すると、足に負担がかかり捻挫につながることがあります。
原因2.高い場所からの落下、着地の失敗
犬が捻挫をする原因としては、高い場所からの落下や着地の失敗というのが多くなっています。おもちゃをキャッチしようとジャンプして失敗したり、急な方向転換をした際に転んで足を捻ってしまうこともあります。高い場所からの落下は骨折に至る可能性も高いため、高低差のある生活環境は要注意です。
高い場所には登れないようにする、一気に降りたりしないように犬用のステップ(階段)を設置してあげる、床材を滑りにくいものに変更するなどの工夫をする必要があります。
原因3.交通事故
交通事故などで捻挫してしまうケースもあります。
捻挫しやすい犬種や年齢は?
捻挫はどの犬種でも起こりうる怪我ですが、そり犬やレース犬、猟犬など、激しく走ったり運動を要求される犬は、捻挫してしまう確率が高くなります。また、加齢や肥満などが原因となり、膝の前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)が断裂してしまうこともあります。
捻挫してしまった場合の応急処置方法は?
犬が捻挫してしまった場合、無理な運動をせずに安静にしていれば概ね3日程度で回復してくることが多いです。患部に熱感がある場合は、タオルを巻いた保冷剤などを当てて冷やしてあげましょう。患部に強く触れてしまうと痛みを感じるので注意してください。
他にも、患部をバンデージで圧迫・固定したり、心臓よりも高い位置に固定して痛みを抑えるという方法もあります。
ただ、なかなか赤みや腫れが引かなかったり、3日以上足を引きずっているようなら、動物病院へ連れて行きましょう。重症の場合には手術が必要です。
また、中には捻挫ではなく脱臼や骨折している可能性もあるので、レントゲンや血液検査の結果に応じて適切な治療を受けるようにしてください。
病院では、必要に応じて抗生物質や痛み止めなどを処方してもらえます。また、靭帯断裂や剥離骨折してしまっている場合は手術が必要になることもあります。 手術するべきか、サポーターなどで治療するべきかは獣医師と相談した上での判断となりますので、経験豊富でしっかりと実績のある獣医師の診察を受けるようにしましょう。
検査、治療にかかる費用
犬の足の捻挫の検査、治療にかかる費用は、病院によってさまざまです。行う可能性のある診察内容、検査としては触診、レントゲン検査、血液検査などが挙げられます。レントゲン検査は1枚あたり3000円〜(2-3枚は撮影することが多い)、血液検査は5000円〜(検査項目が多いと高額になる)くらいの費用がかかってくることが多いですが、病院によって検査費用はまちまちです。費用面で不安がある場合は、動物病院に診療予約をする際に電話などで確認してみましょう。
愛犬の足の捻挫を予防するためにできること
犬の捻挫を予防するためには、部屋や外出先で危険な場所がないか、よく安全確認することが大切です。犬がおもちゃを追いかけて無理な体勢で方向転換したり、高いところから飛び降りないように注意してください。フローリングで滑って転んでしまわないよう、床にカーペットなどの滑りにくい床材を敷いたり、フロアコーティングするのもおすすめです。また、肉球が被毛で隠れてしまうと滑りやすくなるので、こまめに足裏をチェックし、被毛が伸びていたら切ってあげましょう。
肥満は足の関節に負担がかかってしまうので、日頃からの体重管理も非常に重要となります。
再発する可能性
犬の捻挫は元通りに歩けるようになっても、再発することも多いと言われています。捻挫が完治しないままで負担をかけてしまうと、靭帯がゆるんだままになり再び捻挫してしまうことがあるので、しばらくは安静を保ち、治ったあとも散歩の距離や時間を短くするなどして負担を減らしてあげることが大切です。
捻挫の症状が長引くようであれば動物病院へ
犬の足の捻挫は軽度であれば安静に過ごすことで治癒しますが、そもそも捻挫ではなく脱臼や骨折しているケースもあります。そのため、犬の歩き方に違和感があったり足の腫れがなかなか治らない場合は、信頼できる獣医師の診断を受ける必要があります。
また、犬の捻挫は再発することも多いため、完治したあともあまり無理をさせないように十分注意してあげてください。しばらくは散歩の距離や時間を短くするといったケアが大切です。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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