【獣医師監修】愛犬を寄生虫から守るために。気をつけたいポイントと知っておきたい予防法
皆さんは愛犬を寄生虫から守るための対策をきちんと行っていますか?
気温が高くなってくると虫の活動が活発になるので、愛犬を寄生虫から守るために対策が必要になります。寄生虫が媒介する感染症にかかるリスクもあるので、夏を迎える前から予防しておくことが大切です。犬に寄生する虫に関して、気を付けることや予防法について理解を深めておきましょう。
犬に寄生する虫と予防方法
寄生虫が活発に活動する5~11月頃までの間は、体表に寄生する外部寄生虫にも体内に寄生する内部寄生虫にも注意が必要です。ここでは、夏に気を付けたいことと予防法をご紹介します。
ノミ・マダニの寄生
ノミは繁殖力が非常に強く、爆発的に増えていくので予防が必要です。暖かくて湿気がある場所を好み、1年を通して屋外にも部屋の中にも生息しています。ノミの卵は13度以上の気温で孵化するので、冬であっても暖かい室内では予防しておくのが安全と言えます。
ノミは犬の体表に寄生して吸血し、さらに卵を産みつけます。体長1.5~3mmほどで肉眼で確認できますが、見つけても指で潰さないようにしてください。もし卵を持っていたら、潰したときに飛び散ってしまうからです。
また、マダニにも要注意です。マダニも犬の体表に寄生し、引っ張っても取れないほど皮膚に咬みついて吸血します。マダニが病原体を媒介し、感染症を引き起こすことも多く、重症化すると死に至ることもあるので予防対策は必須です。
ノミ・マダニの予防法
ノミにもマダニにも効く駆除薬があるので、定期的に投与すれば予防できます。駆除薬はさまざまな製品がありますが、大きく分けると経口薬と体表に滴下するスポット薬の2種類に分類されます。どちらの種類でも良いので、その子の性格や行動を考えた上で、獣医師に相談して最適な製品を選んでください。
ノミ、マダニの駆除薬はペットショップやホームセンターでも取り扱いはありますが、できれば個人の判断で購入するのではなく、動物病院で健康診断の際などに購入するのが望ましいと言えます。万一駆除薬が体質に合わなかったり、副作用などが強く出てしまったときに、相談しやすいというメリットがあります。
また、ノミもマダニも草が茂っている場所に多く生息しているので、散歩のときは草むらを歩かせないようにすることも重要です。
死に至ることもあるフィラリア症にも注意
犬のフィラリア症にも注意が必要です。フィラリア症は、フィラリアという寄生虫が犬の体内に入り込み、肺動脈や心臓に寄生して心臓の機能障害を起こす病気です。フィラリアの寄生により、血液の流れが悪くなるので肺や心臓のほかに、肝臓や腎臓にまでも悪影響を及ぼします。
フィラリア症が起こる原因は蚊による媒介です。フィラリア症に感染した犬を吸血した蚊が、別の犬を吸血することで感染します。フィラリア症も重症化すると死亡することがあるので、4月頃から予防が必須です。
フィラリア症の予防法
フィラリア症は、駆除薬を定期的に投与することでほぼ100%予防できます。予防期間は4〜5月頃から12月頃までとなります。真冬の間は駆除薬を休薬する場合が多いのですが、通年で予防される方もいます。駆除薬を冬の間に休薬していた後、春になって再度駆除薬をスタートするときは、フィラリアに感染していないかを調べるためのフィラリア抗原検査という血液検査を動物病院で行うことが一般的です。
予防薬は経口薬とスポット薬、注射薬があります。薬を飲むのが苦手な場合はスポット薬にするなど、愛犬や飼い主さんの都合に合ったものを選ぶとよいでしょう。また、1つの薬でノミ、マダニ、フィラリアを駆除できるタイプもあります。
駆除薬の投与に加えて、ペット用の虫除けスプレーや、愛犬のベッド周りなどに吊るして使用する蚊除けグッズなども活用して、蚊を寄せ付けないようにすることも大切です。
寄生されている疑いのある症状
もし以下のような症状が見られたら、ノミやマダニ、フィラリアが寄生している疑いがあります。
寄生虫の症状1. 貧血が起きる
マダニの媒介によって感染するバベシア症に感染すると、重度の貧血を引き起こします。バベシア症は、犬の体内に侵入したバベシア原虫が赤血球に寄生し、赤血球を破壊していく感染症です。貧血に加えて食欲不振や発熱などの症状も現れ、どんどん衰弱して死に至ることもあります。
また、大量のノミが寄生すると、特に子犬は貧血を起こす恐れがあるので注意が必要です。
寄生虫の症状2. アレルギー性皮膚炎を発症する
ノミやマダニの唾液がアレルゲンとなり、アレルギー性皮膚炎を引き起こすことも少なくありません。強い痒みを伴うことから、しきりに顔や体を足で掻いたり、地面に体を擦りつけたりする行動が見られます。掻き壊すと傷口から細菌が侵入し、二次感染を引き起こすこともあります。皮膚炎は症状が長引きやすいので、軽度のうちに治療をすることが大切です。
寄生虫の症状3. 咳が見られる
フィラリア症に感染すると、咳をするようになったり、運動することを嫌がったりといった症状が見られます。初期のうちは軽く咳が出る程度ですが、重度になると咳がひどくなり、食欲や元気がなくなってきて死に至ることもあります。そのため、少し咳をする程度でも軽く考えず、早めに病院で診察を受けるようにしましょう。
寄生虫による感染症の治療方法
ここでは、寄生虫によって発症したそれぞれの病気の治療法について解説します。
アレルギー性皮膚炎の治療法
ノミ・マダニの吸血によるアレルギー性皮膚炎の治療は、痒みや皮膚の炎症を抑える薬や抗生剤を投与することで良化するかを見ていきます。
治療にかかる費用・期間の目安
診察料や薬代、駆除薬代を含めて、アレルギー性皮膚炎の治療にかかる1回の通院あたりの費用は、6,000円程度です。症状が軽ければ1~2週間程度の治療期間で済みますが、二次的な細菌感染が起こっている場合は、治療が長引くこともあります。
バベシア症の治療法
バベシア原虫を完全に駆除できる特効薬はないので、バベシア症の治療には、抗原虫薬や抗生剤を投与して症状の改善を図ります。しかし、治療をしてもバベシア原虫を完全に駆除することはできないので、再発する可能性があります。
治療にかかる費用・期間の目安
バベシア症は完治が難しいので、再発を繰り返すと数十万円もの治療費がかかる可能性があります。また、長期的な投薬が必要になることも少なくありません。
フィラリア症の治療法
軽度であれば、駆除薬で死滅させることができます。成虫が多数寄生して駆除薬で死滅できない状態のときは、外科手術をして成虫を摘出します。
治療にかかる費用・期間の目安
1回あたりのフィラリア駆除薬は900円程度からで、体の大きさや薬剤の種類によって料金が異なります。地域により多少差がありますが、経口薬やスポット薬は一般的に4月または5月頃~12月頃まで毎月投与します。注射薬は1回投与すると半年~1年、効果が持続します。注射薬の種類によって有効期間は異なります。
適切に予防をして愛犬を寄生虫から守ろう
ノミ、マダニ、フィラリアとも、獣医師の指示通りに駆除薬を投与すれば防げるので、投薬を忘れずに行いましょう。寄生虫の予防には駆除薬が最も効果的ですが、併せて虫除けグッズを活用するのもおすすめです。愛犬が健康に過ごせるよう、内部・外部寄生虫から愛犬を守ってあげてくださいね。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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