【獣医師監修】人間の薬は犬にも使える?犬の薬と人間用の薬の違いとは
愛犬の体調が思わしくない時に、人間用の薬を与えたら治るのではないかと考えたことはありませんか?最近では、緩やかな効き目の市販薬などもありますが、人間用の薬は犬に使っても問題はないのでしょうか。
今回は、犬に使ってもよい人間用の薬は存在するのか、また市販薬は与えてもよいのか、整腸剤として有名なビオフェルミンを犬に使用する際に注意することなど、薬についてのあれこれをご紹介します。
人間用の薬は犬に与えても問題はないのか
犬に使える人間用の薬というものは存在するのでしょうか?
動物病院で扱っている薬の多くは人間用
動物病院で扱う薬の7〜8割くらいが、実は人間用の薬です。犬の病気の治療に必要な薬は、人間用の薬と同じ成分であることが少なくありません。そのため、人間用に開発された薬が動物の用法・用量で処方されています。
人間用の薬が動物病院で多く扱われている理由
新しい動物用医薬品の製造販売の承認を取得するには、効能または効果を裏付けるための臨床試験(治験)を行う必要があり、莫大な時間とコストがかかります。製薬会社がわざわざ人間用・動物用に分けて開発、製品化するメリットは少なく、採算が合わないため動物用として開発される医薬品の種類は多くないのが現状です。実際に動物病院では、多くの人間用の薬が動物の用法・用量で処方されています。
人間用の市販薬は犬に使用できる?
犬に風邪のような症状が見られたり、下痢をしたときに「人間用の市販薬を与えてみようかな」と考えたことのある方もいるかと思いますが、人間の薬を飼い主さんの自己判断で犬に与えることは、リスクを伴うことがあります。
飼い主さんの自己判断での使用は禁物
安易に「犬の体重は人間の体重の何分の一くらいだから」と計算して薬を与えてしまう方がいます。しかし、人間では副作用がほとんど現れない有用な薬でも、犬が摂取すると有毒となる薬もあるため、自己判断で人間用の薬を与えてしまうと重大な事故に繋がることがあります。
犬が適切でない薬を服用したときに起こり得る症状は、服用した薬の種類や副作用の症状の程度によって異なりますが、肝臓や腎臓に負担がかかり、元気消失、食欲不振、嘔吐、下痢、吐血、痙攣などといった症状が現われることがあります。
外用薬も要注意
外用薬(塗り薬)であっても、使用には注意が必要です。例えば、人間用の傷薬で有名なオロナインを犬の傷に塗り、治るケースもありますが、皮膚の奥に深い傷があった場合には表面だけが治り、隠れた深層の傷が悪化して膿んでしまうことがあります。身体中を被毛に覆われた犬の傷は、バリカンなどで刈らなければ状態がわからないことがあります。
また、犬が外用薬を舐めてしまった後に吐き気がみられたり、舐めとってしまうことで必要な効果が得られないこともあります。
風邪薬や痛み止めは特に危険
人間用の薬の中でも、風邪薬や解熱鎮痛剤に含まれている成分には、少量の摂取であっても、犬にとっては命に関わるものがたくさんあります。そのため、人間用の薬を数多く扱う動物病院であっても、人間用の風邪薬・解熱鎮痛薬はほとんど使用されていません。
人間用の薬を誤飲してしまった!対処法は?
愛犬が人間用の薬を誤って飲み込んでしまったという場合には、すぐにかかりつけ医に連絡をとり、指示を仰ぎましょう。薬の成分によっては中毒を起こしてしまうこともあるため、飲んでしまった薬の種類や量、愛犬の様子などをできるだけ詳しく伝えるようにしてください。
また、自己判断で吐かせようとすると粘膜を傷つけたり吐しゃ物を詰まらせるなどかえって状態が悪くなってしまうことがあります。インターネット上には食塩水やオキシドールを飲ませて吐かせる方法も載っていますが、自宅で飼い主さんが行うのはおすすめできません。できるだけ早く動物病院に連れていくようにしましょう。
「ビオフェルミン」を効果的に使うには
ビオフェルミンを常備しているご家庭は多いのではないでしょうか。ビオフェルミンは乳酸菌から成る整腸剤で安全性が高く、犬にもよく使われています。
人間用のビオフェルミンと犬用のビオフェルミンの違い
人間用と犬用のビオフェルミンでは、用量や薬に配合されている成分が異なります。犬の胃酸は人よりも強酸のため、犬用のビオフェルミンには胃酸によって菌が死なずに腸まで届くような菌が配合されています。
ビオフェルミンにも種類がある
ビオフェルミンにも様々な種類があり、一般的に家庭に常備されていることの多い薬は「ビオフェルミンS」です。
ビオフェルミンSは、抗生物質と一緒に服用するとビオフェルミン中の乳酸菌が抗生物質によって死んでしまい、効果が得られなくなってしまいます。抗生物質を投薬中に整腸剤を与えるのであれば、抗生物質に抵抗力のある耐性乳酸菌製剤「ビオフェルミンR」を与えましょう。
人間用のビオフェルミンを与える際の注意点
犬に人間用のビオフェルミンを与えても、特に問題はありませんが、犬に与える際の注意点をご紹介します。
期待する効果が得られないことがある
ウイルスや細菌、寄生虫の感染による下痢や、熱中症など原因となる病気があれば、ビオフェルミンの用法・用量を守って与えたとしても完全に治ることはありません。
用法・用量は獣医師に相談する
ビオフェルミンは他の薬と比べ安全性が高いと考えられます。しかし、量を多く与えればさらによく効くというものではありませんし、少なすぎると期待する効果が得られないことがあります。用法・用量についてはその子の体重や体調によって異なりますので、服用させる前に獣医師に相談しましょう。
アレルギーに注意
乳製品・乳酸菌に対してアレルギーを持っている場合には、ビオフェルミンを与えることで下痢や嘔吐、皮膚のかゆみなどを引き起こす恐れがあります。前もってかかりつけ医に相談するのが安心です。
原因によっては病気が悪化することも
「犬の便が緩いときはビオフェルミン」と安易に考えることは危険です。重篤な病気が原因の場合は、ビオフェルミンを与えて様子を見ているうちにどんどん悪化してしまうことがあります。ビオフェルミンを与えても改善が見られないときや、下痢や軟便以外の症状が見られるときは、早めに動物病院を受診しましょう。
犬に使える人間用の薬は実はたくさんある
動物病院で使用される薬の多くが、人間用の医薬品です。犬での効果が期待できるために処方されるわけですが、それは時間をかけて獣医学について勉強し、国家試験に合格した獣医師であるからこそ許可されていることであり、飼い主さんの判断で人間用の薬を安易に使用することはリスクを伴います。病気の治療については、自己判断で進めることはせずに、前もってかかりつけの獣医師に相談しましょう。
<参考文献>
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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