【獣医師監修】犬が尿失禁をする場合に考えられる原因と疑われる病気
“愛犬が寝ているベッドが濡れている”、“歩くとポタポタと尿が垂れる”などの症状が見られる場合、それは尿失禁かもしれません。犬の尿失禁には、驚いた時に起こるような一過性で心配する必要がないものから、重大な病気によるものまで、さまざまな原因が考えられます。今回は、犬の尿失禁の原因とその対処法について詳しく解説します。
犬が尿失禁をする場合に考えられる原因
犬が尿失禁をしてしまうとき、主に4つの原因が考えられます。尿失禁が起こる原因とその対処法について理解を深めていきましょう。
1.病気が原因でおこるもの
細菌感染、ホルモン異常(クッシング症候群など)、脊髄腫瘍、椎間板ヘルニア、腎盂腎炎、尿路結石、間質性腎炎、子宮蓄膿症、尿崩症などのさまざまな病気が原因で尿失禁が起こる可能性があります。
対処法
病気から引き起こされる尿失禁は動物病院で検査を行うとすぐに分かります。そのため、頻繁に尿失禁がみられるときは、すぐに診察を受けるようにしましょう。尿検査から進めていくことが多いため、できれば事前に新鮮な尿を液体の状態で採取して持っていくといいでしょう。
日頃から愛犬の尿をよく観察しておくと異常をすぐに見つけることができます。
2.先天的異常によるもの(異所性尿管)
メスの犬に多くみられる先天的異常で、左右の腎臓から出て膀胱に接続しているはずの尿管が、膀胱ではなく直接尿道につながっていることがあり、尿失禁などの排尿障害を起こします。
対処法
異所性尿管の治療法は外科手術が適応となります。手術後はほとんど完治しますが、尿失禁が完全に治らないときは。内服薬を併用しながらの治療となります。
3.精神的な原因によるもの
雷や地震などのさまざまな恐怖体験から思わず犬が尿を漏らしてしまうことがあります。 長時間の留守番が多かったり、狭いところに閉じ込められたり、不安を感じたときなどにも失禁が起こります。
また引っ越しや飼い主の出産などの環境の変化によるストレスから失禁してしまうこともあります。
対処法
さみしさや不安からくる精神的な失禁を予防するには、いつも家族がいるところに愛犬のベッドを置くなどの工夫をしてみて、常に安心して暮らせるような環境を整えることが大切です。
いつもより多くスキンシップをしてあげたり、声かけを増やすなどをして、少しでもストレスが減るような環境を作ってあげましょう。
4.加齢によるもの
犬も高齢になると筋肉の衰えによって体型が変化し、さまざまな器官へ情報を伝達する神経も衰えてきます。 尿失禁は泌尿器の筋肉と排尿コントロール機能の衰えから起こる場合があります。
また、認知症によって脳機能が低下し、尿道の括約筋や膀胱の働きが悪くなることから尿失禁を起こすこともあります。
対処法
加齢による失禁は、排泄機能の衰えからくるものであるため、改善は難しいことがあります。
マナーパンツや犬用おむつを使用してこまめに取り換え、一日一回は暖かいタオルなどで陰部やお尻周りなどを拭いてあげるなど、適切なケアを行い、常に清潔な状態を保つように心がけましょう。
尿失禁の疑いがある症状
尿失禁と言ってもなかなかその状況を目の当たりにするのは難しいかもしれません。 下記のような症状が見られたら尿失禁の疑いがあり、何らかの病気が原因であることも考えられますので、獣医師の診察を受けるようにしましょう。
チェックポイント
- 寝ているベッドがいつも濡れている
- 歩いているときにポタポタと尿が垂れている
- 無意識に排尿してしまう
- 陰部がいつも濡れていたり赤く腫れている
- 排尿の回数が少なく、膀胱を押すと尿が出てくる
尿失禁する場合に考えられる病気
犬が尿失禁してしまう際に一番心配なことは、病気が原因なのかということですよね。尿失禁はさまざまな病気の症状としてあらわれます。尿失禁があるときに考えられる主な病気について把握しておきましょう。
尿失禁が見られるときに疑われる病気|1.脊髄腫瘍
脊髄に腫瘍ができる病気で、髄内腫瘍、硬膜内腫瘍、硬膜外腫瘍、などがあります。
初期では跛行やふらつきなどが見られ、病気の進行とともに四肢の麻痺がおこり、歩行不能になることがあります。
障害された部位によって失禁や排尿障害を引き起こす可能性があります。
尿失禁が見らるれときに疑われる病気|2.椎間板ヘルニア
ミニチュアダックスフンドなどの短足胴長の犬種に起こりやすい病気です。ヘルニアによって背骨の中に通っている脊髄が圧迫され、体の一部が麻痺してしまう病気で、脊髄の神経に障害が出て、足に連絡する神経が走る脊髄が障害を受けると、起立できない、うまく歩けないなど運動障害が起こります。
ヘルニアが起こる部位によっては、尿道や膀胱の神経も障害を受けるため尿失禁や排尿障害が起こります。
尿失禁が見られるときに疑われる病気|3.細菌性の感染症
代表的なものとして、大腸菌などの細菌によって膀胱に炎症が引き起こされる膀胱炎が挙げられます。 また、細菌による炎症が腎臓に及んでしまうと腎盂腎炎となります。
尿失禁が見られるときに疑われる病気|4.ホルモン反応性尿失禁
避妊手術をしたメスの犬に多く見られ、女性ホルモンのバランスが乱れることにより膀胱の機能が低下し、尿失禁が起こります。
尿失禁が見られるときに疑われる病気|5.子宮蓄膿症
避妊手術を行っていないメスの犬の子宮が細菌感染を起こして腫れ、子宮内に膿がたまる病気です。発熱し、元気消失、嘔吐、食欲不振などの症状が発現します。また水をよく飲むようになるので、尿の量が増えて失禁することがあります。
症状が見られた際は獣医師に相談しましょう
犬の尿失禁には、雷や地震などで驚いたときに出る一過性のものや、寂しさや不安からくる精神的なものもありますが、病気が原因の尿失禁も多く見られます。また、交通事故や病気の急変などにより膀胱括約筋が弛緩し尿失禁が起こる場合など、緊急性の高い状況も考えられます。
頻繁に尿失禁を起こしたり、歩くたびに尿がこぼれ落ちたり、しきりに陰部を舐めたりするときは、すぐに動物病院で診察を受けるようにしましょう。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!