犬に必要な6大栄養素について|愛犬の健康のために知っておきたい栄養素のこと
大切な愛犬には、1日でも長く健康で元気でいてほしい、毎日のご飯をおいしく食べてほしい、と思うのが飼い主の親心ですよね。愛犬の健康のために必要なのが栄養管理です。そのためにまずは、犬に必要な栄養素について知っておくことが大切。体は食べているものでできている、と言われているように、人も犬も健康に過ごすためには食事の内容が重要です。そこで今回は、犬にとって必要な栄養素やその働き、適切な摂取量について解説します。
犬にとって必須の栄養素について
人も犬も必要な栄養素は同じです。3大栄養素といえば、「タンパク質」「脂質」「炭水化物」。これに「ミネラル」「ビタミン」を加えると五大栄養素になります。そして欠かせないのが「水分」。この6つの栄養素は人も犬も変わらなく必要なものですが、人と犬とでは必要となる栄養素のバランスが異なります。
6大栄養素から得られるものとは
人にも犬にも大切な6大栄養素。この6つの栄養素はどれか1つが欠けても生命維持に影響を及ぼす大切なもの。また、年齢や生活環境を問わずバランスよく摂取する必要があります。まずは、1つ1つの栄養素について理解を深めておくことがおすすめです。
生命維持に欠かせない水分
犬にとっても人間にとっても生命維持に欠かせない栄養素が水分です。水分は成犬の体の約60〜70%を占めている成分で、犬の体に最も多く含まれている物質です。水分は代謝や物質の運搬、体温調節などの働きをします。犬は汗をかきませんが、脱水症状を起こさないためにも常に新鮮な水が飲めるようにしておくことが大切です。
犬の生体維持に欠かせないミネラル
犬の体を構成し、生体維持に欠かせない栄養素がミネラルで無機質とも呼ばれます。犬に必要なミネラルは、ヘモグロビンの成分となり、肺から酵素を運ぶ役割も果たす鉄、骨や歯に必要なカルシウム、筋肉の収縮を助け骨や歯の生成に必要なマグネシウム、カルシウムの吸着を補助するリン、細胞の再生に必要不可欠な亜鉛、神経の伝達、筋肉の収縮に必要なナトリウム、ナトリウムの排出を助け、細胞内の浸透圧を一定に保持する働きがあるカリウム、甲状腺ホルモンの構成成分であるヨウ素の8種類。どのミネラルも欠けてはいけない成分で、体内で生成できないため食事から摂取する必要がありますが、多すぎても少なすぎても健康に害を及ぼす可能性があります。
糖質の供給源となる炭水化物
米などの穀類や芋類などに多く含まれている炭水化物は、糖質と食物繊維で構成されています。糖質は、体内に消化吸収されエネルギー源となり、食物繊維は腸内環境を整えるのに役立つ栄養素です。人間にとって炭水化物は、即効性のあるエネルギー源として知られていますが、犬にとっては必ずしも必要な栄養素ではありません。また、炭水化物には単糖類、二糖類、多糖類と3種類の糖類から構成されていることから、適量以上に摂取すると肥満や糖尿病のリスクが高まると言われています。
体を構成するタンパク質
犬の体を構成する被毛、皮膚、筋肉、臓器、ホルモン、免疫物質などを作るのがタンパク質です。また、タンパク質には栄養素を運ぶ役割もあります。タンパク質は20種類のアミノ酸によって構成されています。この20種類のアミノ酸のうち、10種類は犬の体内で合成できないアミノ酸で「必須アミノ酸」と呼ばれ、食事から摂取する必要があります。この必須アミノ酸は、肉や魚などの動物性タンパク質に含まれているもので、野菜類にはあまり含まれていません。
栄養素の代謝を促進するビタミン
ビタミンは犬の成長や代謝を調整する役割があり、犬は多くを必要とはしませんが欠かすことができない栄養素です。ビタミンには、油に溶ける脂溶性ビタミンと水に溶ける水溶性ビタミンの2種類があります。ビタミンは14種類あり、そのうち脂溶性ビタミンはビタミンAをはじめ4種類、ビタミンB群をはじめとする水溶性ビタミンが10種類です。なお、ビタミンCは犬の体内で合成できるため摂取が必要ないとされていますが、病中病後の場合やシニアの犬は合成できる量が必要量に足りない可能性があるため、摂取が推奨されています。またビタミンもミネラルと同じように、過剰症や欠乏症による体調不良が起こる栄養素のため、摂取量には注意が必要です。
過剰摂取に気をつけたい脂質
脂質は、肉の脂身や油、バターなどに含まれているカロリーの高い成分で、犬の体のエネルギー源としてだけではなく、ホルモンや細胞膜、核膜の構成に必要な栄養素です。さらに、毛艶をよくしたり、皮下脂肪として寒さから体を守る働きもあります。また、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKといった犬に必要な脂溶性ビタミンの吸収を促進する役割もあります。脂質は脂肪酸によって構成され、食事から摂取する必要のあるものを必須脂肪酸と呼びます。近年話題となっているオメガ3やオメガ6などが必須脂肪酸にあたりますが、犬にはリノール酸、αリノレン酸、EPA、DHAが必要とされています。
犬に必要な栄養素の適切な摂取量が知りたい
犬の健康にとって大切な栄養素ですが、どの栄養素も犬に必要な規定量より多すぎても少なすぎても体調不良の原因となります。基本的に犬に必要とされる栄養素は同じですが、生活環境、年齢、病気の有無などによって不足しやすい栄養素・過剰になりやすい栄養素が異なります。愛犬の体調をよく観察しながら栄養管理をしてあげることが大切です。
どの栄養素も過剰摂取に注意!
犬の健康に必要不可欠な6大栄養素ですが、どの栄養素も与え過ぎによって体調不良となる可能性があります。特に気をつけたい栄養素は炭水化物と脂質。この2つの栄養素は犬が大好きな食材に多く含まれていますが、肥満の元となる可能性があります。また、ミネラルも過剰摂取による悪影響を及ぼす栄養素です。
犬に必要なカロリーは
犬が健康に生活するためには、適切なカロリーの食事が必要です。また、栄養素もバランスよく含まれていることが大切です。ドッグフードのパッケージには、給餌量として与える量が体重別に表記されていますが、食事量は犬の年齢や生活環境によっても異なるため、あくまでも目安として考えることがおすすめです。
環境省が発行している「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」では、犬のカロリー必要量が参考値として示されています。これによると、成犬が1日に必要なカロリーの目安は、体重5kgで441kcal、体重10kgで742kcal、体重20kgで1248kcal、体重30kgで1692kcalとされています。あくまでも参考値ですので、体調や年齢を考慮した上で、食事の量を決めてください。
いつでも飲めるようにしておきたい水分
健康な成犬が必要な飲み水の量は、ドライフードの重量の約2.5倍と言われています。ドライフードの水分含有量の目安は約10%前後、レトルトなどのウエットフードの場合は約75%前後とされていますが、真夏や運動量の多い日には多めに水が飲めるように心がけることが大切です。犬が1日に必要な水分量の目安は、体重5kgでは370ml、体重10kgで630ml、体重20kgで1060ml、体重30kgで1440mlとされています。また、ミネラルウオーターにはミネラルが多く含まれている可能性があるため、ミネラルの過剰摂取となる場合があり注意が必要です。
バランスよく与えたいミネラル
ミネラルは、過剰症、欠乏症を発症する可能性のある栄養素のため摂取量には注意が必要です。どのミネラルもバランスよく摂取することが必要です。米国資料検査官協会(AAFCO)によって上限が定められているミネラルは、カルシウム、リン、セレン、ヨウ素です。
与えすぎに注意したい炭水化物
犬のエネルギー源でもある炭水化物は、腸内環境を整える働きがある大切な栄養素です。環境省が発行している「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」によると、犬の3大栄養素の割合は、脂肪15%、タンパク質25%、炭水化物60%とされていますが、犬への適正な摂取量は定められています。炭水化物は糖質が多く、また1gあたり4kcalあるため与えすぎには注意が必要です。
年齢や生活環境によって摂取量を決めたいタンパク質
タンパク質は犬にとって主食となる食材に含まれている栄養素です。動物性タンパク質が不足すると、発育が遅れたり、生体機能の低下、体重が減ってくるなど犬の生命維持に支障をきたします。過剰に摂取すると腎臓に負担をかけてしまうことがあります。最近では、動物性タンパク質が70%以上含まれるドッグフードも多くありますが、犬が必要とするタンパク質量には個体差があるため、体重1kgに対し1.6~2.5gを目安として、運動量の多い子や代謝の高い子は多めに、シニアなど代謝機能が落ちてきている場合は少なめに与えましょう。
過不足なく与えることが大切なビタミン
ビタミンは犬にとって大切な栄養素ですが、必要な量は微量です。ビタミンは、米国資料検査官協会(AAFCO)が最小必要量と上限値を定めています。上限値が定められているビタミンは脂溶性ビタミンのAとDです。脂溶性ビタミンは体内に蓄積されるため過剰摂取には注意が必要です。
質を見極めて与えたい脂質
脂質は、過剰摂取によって肥満を招く栄養素ですが、脂肪に含まれている不飽和脂肪酸は健康維持に役立つ成分として知られています。特に、必須脂肪酸であるリノール酸、アルファリノレン酸、アラキドン酸、EPA、DHAは積極的に摂取したい栄養素。米国資料検査官協会(AAFCO)では、成犬の最小必要量を5.5%としています。
全ての栄養素をバランスよく摂取することが大切
犬も人間と同じように、6大栄養素をバランスよく摂取する必要があります。また、子犬期にはタンパク質をたっぷり、運動量の多い日にはいつもより多めに、シニアになって運動量が減ったら脂質を少なめに、などライフステージや生活環境に合わせた栄養バランスを考えることも必要です。栄養管理と考えると難しくなってしまいますが、栄養たっぷりの食事を上手に体に取り込めるように、その犬種に合わせた適度な運動とストレスのない生活環境を整えてあげることも大切です。
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この記事のライター
komugi
都内で愛犬のビーグルと暮らしています。コロナ期間中に肥満体型になってしまった愛犬のために食事や運動について勉強をはじめました。面白い発見や愛犬家の皆様に役立つ情報があればどんどん発信していきます!
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