パグのぺちゃ鼻は要注意?短頭種が抱えるリスクについて
パグはその愛らしい見た目から日本のみならず世界中で人気のある犬種です。しかし、短頭種の1番の特徴とも言える短い鼻が、健康上の問題を引き起こす原因となっていることをご存じでしょうか?私たちから見ればチャームポイントですが、ぺちゃ鼻であることによって彼らが慢性的に呼吸のしづらさを感じているケースは非常に多いのです。本記事では、パグをはじめとする短頭種が抱えている問題についてご紹介します。
「短頭種」とは
「短頭種」とは、マズルの長さが頭蓋骨の長さ(幅)よりも短い犬種を指します。マズルが短いことで皮膚が余るので目と鼻の間にしわやたるみが現れることが多く、解剖学的に眼窩(※)が浅いため目が飛び出して見えることもあるのが特徴です。
一般的に、マズルが長いと嗅上皮の面積が広くなるので嗅細胞の数も多く、鋭い嗅覚を持っていると言われています。そのため、短頭種はマズルが長い犬と比べると嗅覚の感度が低い傾向にあるようです。
マズルの長さが頭蓋骨の長さとほぼ同じ犬種を中頭種、頭蓋骨よりもマズルが長い犬を長頭種と言います。
※眼球が収まっているくぼみ
短頭種の代表的な犬種
みなさんが思い浮かべる「ぺちゃ鼻の犬」といえば、パグのほかに「ブルドッグ」や「フレンチブルドッグ」、「ボストンテリア」、「ペキニーズ」などの犬種が該当すると思いますが、そのほかにも、「狆」や「シーズー」、「キングチャールズスパニエル」、「チャウチャウ」、「ボクサー」、「チベタンスパニエル」、「ブリュッセルグリフォン」なども短頭種です。
また、鼻ぺちゃではありませんが、チワワやポメラニアン、マルチーズなどの人気の犬種もマズルが極端に短い個体は短頭種に分類されるケースもあります。
ちなみに、中頭種は「柴犬」、「ビーグル」、「コーギー」、「ゴールデンレトリバー」などの犬種が、長頭種は「イタリアングレーハウンド」、「ミニチュアダックスフンド」、「ボルゾイ」、「コリー」などの犬種が該当します。
短頭種は先天的な問題を抱えていることも
短いマズルは短頭種の魅力の1つでもありますが、その身体構造が原因となって、生まれつき呼吸器に問題を抱えているケースも少なくありません。特に、先天的に鼻の穴が小さい「外鼻孔狭窄」や喉の手前にある軟口蓋が長い「軟口蓋過長症」、気管が本来の大きさまで成長せず細い「気管低形成」などはよく見られる症状です。これらの呼吸器疾患を総称して「短頭種気道症候群」と呼びます。
上記のような疾患は慢性的な呼吸のしづらさを引き起こすため、短頭種の犬は一生懸命息を吸いますが、この努力呼吸が続くことでさらに気道に負担がかかり、喉頭虚脱や喉頭小嚢の外反といった二次的な構造の変化が起こることも珍しくありません。
短頭種気道症候群の症状としては、寝ているときにいびきをかく、「ガーガー」、「ブーブー」といった呼吸音が聞かれる、口を開けてハァハァと呼吸をするといった様子が見られ、中には咳や嘔吐が現れるケースも。高温多湿の季節や興奮時、運動後には症状が強くなることが多いです。
日常生活で飼い主さんができることとしては、快適な室温・湿度を保ち、適正体重の維持に努め、興奮しないようにコントロールすることなどが挙げられます。
症状の程度には個体差がありますが、内科的な治療法はないため、根本的な改善を望む場合やその子の状態によっては症状の進行を食い止めたり、緩和を目的とした手術を検討しなければいけません。
ただし、手術をすることで呼吸が楽になる可能性がある一方で、必ずしもすべての症状が改善されるというわけではないということは留意しておく必要があります。また、短頭種は後述する全身麻酔のリスクも高いので、手術を行うかどうかはかかりつけ医とよく相談して決めることが大切です。
短頭種が抱えるリスクの例
ここでは、他の犬種よりも短頭種のほうがリスクが高いとされていることを簡単にご紹介します。
■全身麻酔のリスク
全身麻酔はどんな犬であっても命に関わるケースが少なからずありますが、短頭種、小型犬、老犬、高齢の犬、肥満気味の犬、呼吸器や心臓に持病のある犬などは全身麻酔によるリスクがさらに高くなると言われています。
もともと呼吸のしづらさを抱えており、意識がある状態でも呼吸困難を起こすことがある短頭種は、麻酔をかけはじめるときや、術後、酸素を送るチューブを抜くタイミングなどで気道が閉塞してしまうケースがあり、他の犬種と比べて特に全身麻酔のリスクが高いとされているのです。
だからと言って短頭種は麻酔をかけられないというわけではありません。避妊・去勢手術の際や歯石のクリーニングの際には、リスクがあっても怪我の予防やなるべく苦痛を感じさせないために全身麻酔が推奨されることがほとんどだと言ってもよいでしょう。
飼い主としてはリスクが高いと言われると不安になってしまいますが、短頭種が高リスクなのは短頭種気道症候群によるものであり、症状の軽快には手術が望ましいということを理解する必要があります。全身麻酔によるリスクを最小限に抑えるためには、短頭種の麻酔経験が豊富な獣医師に相談するようにしましょう。
■熱中症のリスク
犬は汗をかく汗腺が少ないため、主にパンティングによって体温調節を行いますが、短頭種は鼻が短く口の中が狭いため、唾液を気化して熱を逃がすのが苦手です。そのため、他の犬種よりも熱中症のリスクが高くなります。
熱中症は呼吸が荒くなったり、よだれが増えるなどの様子が見られるほか、元気不振やけいれん発作、嘔吐・下痢といった症状も見られることがあり、重篤化すると命に関わることもあるため、甘く見てはいけません。
夏場のお散歩では暑さ対策をしっかり行い、室内でもこまめに水分補給をさせ、快適な温度を保つようにしましょう。
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■呼吸困難のリスク
短頭種は空気の通り道が狭いため、普段から努力呼吸をしている状態です。一生懸命呼吸をすることで気道に負担がかかって狭窄し、さらに呼吸がしづらくなってしまうという悪循環に陥ってしまいます。
この状態を放置すると症状が進行・悪化し、二次的な併発疾患によって呼吸困難を起こしたり、熱中症になりやすくなります。
呼吸困難が続くと、舌が紫色になるチアノーゼや失神を起こすことがあります。最悪の場合には突然死してしまうケースもあるため、これらの症状が見られた場合には一刻も早く動物病院へ連れて行ってください。
愛犬の鼻の形をチェックしてみよう
軟口蓋過長症や気管低形成は見ただけではわかりませんが、外鼻孔狭窄については飼い主さんが愛犬の鼻の穴をチェックすることでどれくらい閉塞しているかある程度視認することができます。
パグの場合、鼻の穴が勾玉(ハート)のような形で開いている状態が望ましいです。しかし、穴が細くなっていたり、中には線のように見えるほど閉じている子も少なくありません。「穴がほとんど見えない」、「呼吸のたびに鼻の穴が塞がりそうになっている」といった状態が見受けられる場合には、外鼻孔狭窄の可能性があります。「短頭種 外鼻孔狭窄」などのキーワードで検索してみると具体的な画像を見ることができるので、愛犬の鼻と比べてみてください。
外鼻孔狭窄は、鼻の穴を広げる手術をすることで呼吸がしやすくなるケースも多いです。短頭種気道症候群は進行性と言われており、気道に負担がかかり続けることで症状が重くなってしまいます。重篤化してしまうと手術をしても改善が見込めないケースも少なくないので、「他の子よりも鼻の穴が狭いかも・・」と思ったら、なるべく早い段階でかかりつけ医に相談してみるとよいでしょう。
ぺちゃ鼻は可愛いけれど
短頭種はそのユニークな外見が人気の理由の1つであるものの、マズルが短いことで特有のリスクを抱えていることも珍しくありません。短頭種気道症候群は予防が難しいですが、呼吸がしづらい状態は愛犬にとって苦しいことなので、かかりつけ医とよく相談をし、状況に応じて手術を検討しましょう。
また、普段の生活で症状を悪化させないために飼い主さんができることもたくさんあります。パグは食欲旺盛ですが、太りやすい犬種です。肥満になると首の周りにも脂肪がついて呼吸しづらくなると言われているので、適正体重を維持するようにしっかり体重管理を行ってください。
室内環境でいえば、温度だけでなく湿度も重要です。湿度が1度上がると、体感温度も1度上がると言われているため、じめじめする季節は湿度管理にも気を付けましょう。
短頭種は他の犬種と比べて注意しなければいけないことが多いです。パグを迎える際には犬種の特性はもちろん、短頭種ならではの注意点をしっかり把握するようにしてくださいね。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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