犬に寄生するダニの種類や感染経路は?症状や駆除方法・予防法も解説
犬に寄生するダニは非常に小さく普段姿を見ないことから、私たち人間はダニの存在をほとんど気にしていないでしょう。
しかしダニに寄生されたまま放っておくと、病気になる可能性があります。
今回は犬に寄生するダニについて種類や症状、駆除方法、予防法を解説します。
犬に寄生するダニの種類・感染経路
ダニは2万種ほどと大変多くの種類が存在しますが、犬に寄生するダニは以下の4種類です。
- マダニ
- ニキビダニ
- ヒゼンダニ
- ミミヒゼンダニ
犬に寄生する虫といえばノミを想像し、ダニとの違いがわからない飼い主さんも少なくありません。
上記の4種類のダニの特徴や感染経路とともに、ノミとの違いについても見ていきましょう。
マダニ
マダニは8本の足を持つ節足動物です。
犬に寄生し吸血することで成長していきます。
吸血すると3~8mm程度の体長は1~2cm台へと大きく膨らみ、肉眼で簡単に確認できるようになります。
感染経路は散歩やお出かけなどで外に出た際に、犬の被毛や人間の服に付着することです。
マダニは草木が茂った場所や山、森に潜み、犬が草に潜り込んだときに付いたり、人間の折り曲げたズボン裾に潜り込んだりします。
散歩後や山、森に行った際は、犬だけでなく飼い主さん自身もマダニを連れ帰っていないか、家に入る前によく確認することが大切です。
ニキビダニ
ニキビダニは皮膚の毛根を包んでいる、毛包とよばれる場所に潜むダニです。
毛包虫やアカラス、デモデックスなどさまざまな呼び名があります。
犬だけでなく私たち人間の皮膚にも存在する常在菌で、体長が0.3mmと非常に小さいため、肉眼では確認できません。
ニキビダニの感染経路は濃密な接触です。
産まれたばかりの子犬が母犬に寄り添い、母乳を飲んでいる際に感染すると考えられています。
ヒゼンダニ
ヒゼンダニは皮膚の表面、表皮の中に掘った穴の中で生活するダニです。
体長は0.4mm程度と小さいため肉眼で見ることは難しく、動物病院での検査で発見する場合が多いでしょう。
ヒゼンダニの感染経路も濃密な接触ですが、犬同士はもちろん私たち人間にも感染するため、注意が必要です。
ミミヒゼンダニ
ミミヒゼンダニは耳の中に寄生するダニです。
ミミダニや耳疥癬(みみかいせん)ともよばれます。
ヒゼンダニと混同しやすいですが、ミミヒゼンダニは表皮に穴を掘りません。
体長は0.4~0.5mmと小さいため、こちらも顕微鏡での発見となる場合が多いでしょう。
ミミヒゼンダニも寄生した動物との濃密な接触が感染経路です。
親子間、ドッグランや散歩での接触、ミミヒゼンダニの成虫や卵が付着したブラシや首輪に触れるなどが考えられます。
ほかの犬との接触が多い場合は、最後に紹介する予防をしっかりと行いましょう。
ノミとダニの違い
ダニと同じく犬の寄生虫で有名なのがノミではないでしょうか。
「ノミダニ予防」などセットでよばれることも多いため混同してしまう飼い主さんも多いですが、ノミとダニは根本的に異なります。
ノミダニとまとめてよばれ間違いやすいダニのほとんどは、マダニです。
ノミとマダニの違いは以下のようになっています。
- ノミは犬の身体以外にも寄生する
- ダニは身体の部位のみに寄生する
- ノミは昆虫、ダニはクモの仲間
- 吸血してもノミは身体の大きさが変わらない
また、ノミは住み家を犬の身体なら身体、家の中の絨毯なら絨毯と決めればその場所で卵を産み、増え続けます。
一方でダニは吸血してお腹がいっぱいになると一旦離れ、またお腹が空いたら寄生する点も違いがあるといえるでしょう。
さらに吸血しつつ増えるノミと違い、ダニは吸血している間は産卵しません。
愛犬に寄生している段階で駆除してしまえば増えることがないため、早期の発見や予防が大切です。
ダニの種類別症状
次に、犬に寄生する4種類のダニが寄生するとどんな症状を引き起こすのかについて解説します。
マダニの症状
犬がマダニに刺されると、以下のような症状が起こります。
- かゆみ
- 貧血
- 皮膚炎
マダニに咬まれるとまず、かゆみを起こします。
マダニが吸血する際に体内に入った唾液に対し、アレルギー反応が起きるためです。
かゆみに耐えられず掻きむしり、皮膚炎を起こしたりただれたりしてしまう犬もいます。
また、大量に寄生され吸血されると貧血の恐れもあるほか、恐ろしいのが後述する感染症です。
マダニは体温の高い場所を好みます。
犬の身体でも特に毛の薄い耳やマズル周り、内股や足の指の間があるため、散歩から帰った際は愛犬の身体をよく見て、ダニがついていないか確認しましょう。
ニキビダニの症状
ニキビダニに刺された場合、以下の症状が起こります。
- 小さな範囲の脱毛
- フケ
- 脱毛
ニキビダニは犬や私たちの身体に常に存在する菌です。
症状自体は軽く済むため放っておいても大丈夫だろうと思う飼い主さんも多いですが、軽く見てはいけません。
生後2年未満の幼い仔犬の場合、免疫力がまだ未完成であるためと判断できますが、老齢犬の場合、内分泌疾患が潜み免疫力を落としている可能性があります。
内分泌疾患については後述していますので、確認して知っておきましょう。
ヒゼンダニの症状
ヒゼンダニが犬の身体に寄生すると、以下の症状が起こります。
- 激しいかゆみ
- 脱毛
- フケ
マダニと同じくヒゼンダニも毛のない部分を好みます。
犬の耳や内股、かかとなどを掻いている、フケや脱毛がある場合、ヒゼンダニの可能性を考えましょう。
ヒゼンダニに刺されてすぐはかゆみも軽い場合が多いですが、すぐに激しいものへと移行します。
人間にも寄生するため、症状があったらすぐに病院に連れて行くことが大切です。
ミミヒゼンダニの症状
ミミヒゼンダニが寄生することにより、以下の症状が起こります。
- かゆみ
- 黒っぽい耳垢
ミミヒゼンダニは名前のとおり、犬の耳の中に寄生するダニです。
ミミヒゼンダニに寄生されると、耳の中に強い痒みを感じます。
愛犬がしきりに頭を振っていたり、耳を掻く素振りを見せて臭いのある黒い耳垢が確認できたりする場合、すぐに動物病院に連れていきましょう。
ダニの種類別合併症
ダニに寄生されると上記の症状のほか、感染症にかかる可能性があります。
それぞれのダニが媒介する感染症について見ていきましょう。
マダニ
マダニは以下の感染症を媒介します。
- バベシア症
- 日本紅斑症
- ライム病
- エールリヒア(エーキリア)症
- SFTS(重症熱性血小板減少症)
- Q熱
順番に見ていきましょう。
バベシア症
バベシア症はバベシアとよばれる原虫が、犬の赤血球内に寄生する疾患です。
バベシアに寄生されると溶血性貧血や食欲不振、血尿、黄疸などを起こします。
すべてのマダニがバベシア症を媒介するわけではありませんが、日本全体で発生の報告があるため注意が必要です。
日本紅斑症
日本紅斑症は病原体であるリケッチアを保有するダニに咬まれることにより発症する疾患です。
犬にも人にも移る人畜共通感染症で、人間に感染すると、発熱や倦怠感、頭痛、全身痛などの症状が出たり、マダニに刺された部分が赤く腫れたりする症状が見られます。
犬に出る症状は明らかにされていないため気づきにくく、予防をしっかり行うことが大切です。
ライム病
ライム病もマダニに吸血されることにより発症する人畜共通感染症です。
犬は無症状の場合も多いですが、人間は咬まれた部位の丘疹、関節痛やリンパ節の腫れが見られます。
放置すると顔面麻痺や髄膜炎、疼痛を伴う関節炎が見られることもある恐ろしい感染症です。
エールリヒア(エーリキア)症
エールリヒア症はリケッチアによって引き起こされる感染症です。
犬がエールリヒア症に感染するとはじめはリンパ節の腫れ、脾臓腫瘍、鼻出血、体重減少などを示し、骨髄増生などが見られます。
犬にのみ感染し、人への感染はみられません。
日本での発生は少ないもののアジア圏では発生報告もあることから、国内の発生にも注意する必要があります。
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)
SFTSは2011年にはじめて中国で特定され、その後2013年に日本でも発生した新しい感染症です。
犬だけでなく人間や猫の感染も報告されており、感染すると初期の段階では発熱や消化器症状を発症します。
血液検査では血小板や白血球の減少が見られ、重症の場合は死に至る大変危険な感染症です。
年に数例死者が出ていることも考えて、マダニの予防は必ずしておきましょう。
Q熱
Q熱は病原体コクシエラによる感染症で、犬だけでなく私たち人間や猫、ウシ、ヒツジなどの家畜にも感染する人畜共通感染症です。
犬は感染しても無症状の場合も多いですが、ときに軽い発熱が見られたり、妊娠中のメスの場合流産や死産を起こしたりする場合があります。
人間が感染した場合の症状は、40度近い発熱や頭痛などです。
症状が出るまで3週間近い潜伏期間がありますが、肺炎や肝炎を発症する場合もあり、注意が必要といえるでしょう。
ニキビダニ
ニキビダニが症状を示すことで考えられる内分泌疾患には、以下のものがあります。
- 腫瘍
- クッシング症候群
- 甲状腺機能低下症
ニキビダニは常在菌ですが、高齢の犬が発症することで免疫力が落ちていると判断でき、疾患の可能性が考えられる場合があります。
上記の疾患について順番に見ていきましょう。
腫瘍
腫瘍とは組織の塊を示し、良性のものではできものやしこり、悪性のものはガンとよばれます。
腫瘍の存在する部位は身体の中や体表などさまざまです。
種類も多く、見た目だけでは良性や悪性の判断ができないものが多いうえ、成長スピードも異なります。
高齢の愛犬にニキビダニの症状が見つかった場合、定期検診を受けたり身体を隅々まで確認したりして、腫瘍がないか確認しましょう。
クッシング症候群
クッシング症候群は副腎にできた腫瘍からコルチゾールとよばれるホルモンが、過剰に分泌されすぎてしまう疾患です。
症状は多飲多尿や体重増加、脱毛、皮膚炎などで、ほかに特徴的な症状としてお腹がぽっこりと出ていることが挙げられます。
早期に発見し、腫瘍を摘出または縮小できれば病気と付き合いながら寿命まで生きるのは十分可能です。
上記の症状に気付いたらすぐに動物病院を受診しましょう。
甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症は気管に沿って存在している甲状腺から、ホルモンが分泌されなくなってしまう疾患です。
症状は左右対称性の脱毛や脱毛部の色素沈着、皮膚病、全身の浮腫による体重増加が挙げられます。
ほかにも特徴的な症状は、尻尾の毛が全て抜ける「ラットテール」や、浮腫により皮膚が緩み、悲しげな表情に見える「悲観的顔貌」、極端に寒さに弱くなるなどです。
重篤な症状を起こすと命にかかわりますが、薬でコントロールすれば予後が悪い病気というわけでもありません。
上記の症状だけでなく、検診により発見できる場合もあります。
定期的な検診を受けて早期の発見につなげていきましょう。
ヒゼンダニ
ヒゼンダニに寄生されることにより、疥癬(かいせん)という病気が引き起こされます。
疥癬は皮膚の伝染性感染症で、犬だけでなく人間にも感染します。
症状は非常に強いかゆみです。
かゆみに伴い皮膚炎や脱毛を起こし、掻けない箇所には黄色いフケが付着します。
ひどいかゆみに苦しむ愛犬を発見した場合、すぐに動物病院を受診しましょう。
また人間にも同じく強いかゆみをもたらすため、皮膚科を受診する必要があります。
ミミヒゼンダニ
ミミヒゼンダニが寄生すると、以下の症状を併発する恐れがあります。
- 聴力低下
- 平衡感覚障害
順番に見ていきましょう。
聴力低下
ミミヒゼンダニの寄生で大量に出る耳垢により外耳炎を併発し、聴力低下へとつながる恐れがあります。
犬は嗅覚が発達しているため、耳が聞こえにくくてもそれほど問題はありません。
しかし、飼い主さんとしては自分の声が愛犬に届かないのはやはり寂しさを感じますよね。
呼んでも反応しなかったり、急に触られる行為に対して驚いたり怒ったりするなどの症状が見られた場合、難聴を疑いましょう。
平衡感覚障害
ミミヒゼンダニは耳に寄生するため、内耳の中にある三半規管に障害を与えると平衡感覚障害を起こす恐れがあります。
歩行障害を発見したり眼振が見られたりしたら、頭だけでなく耳に障害が起きている可能性を考え動物病院に連れていきましょう。
ダニを見つける方法とダニを取り除く方法
ダニに寄生された際の症状や媒介する感染症について見ていきましたが、ここからはダニを見つける方法と取り除く方法について見ていきましょう。
ダニを見つける方法
ダニを見つける方法は、触って見つける方法と症状から見つける方法があります。
マダニの場合は肉眼で見えるため、愛犬の身体に触れてダニが付いていないか確認しましょう。
吸血前の小さなダニの場合は見つけづらいですが、ブラッシングの最中に毛を根元から掻き分けると、被毛に付いたダニを発見できる場合があります。
ダニの付きやすい箇所を特に念入りに確認するほか、かゆがる様子やそれぞれのダニ特有の症状にいち早く気付き、ダニを見つけましょう。
ダニを取り除く方法
ダニを取り除く方法は、動物病院で予防薬を処方してもらったり治療してもらったりすることです。
マダニは目に見えるため手で引っ張って取ってしまおうと思う方も多いですが、無理にとってはいけません。
吸血中のマダニは引っ張ることで吸血中の刺し口だけが犬の体内に残ってしまう可能性があるためです。
皮膚病の悪化につながるほか、手で触ることでウイルスや細菌が人間に感染してしまう恐れもあるため注意しましょう。
またヒゼンダニやミミヒゼンダニは、放っておいても治りません。
症状を発見してすぐに動物病院に連れて行かなければ、治療が長引いてしまう可能性もあります。
ダニ特有の症状を発見したら、すぐに動物病院に連れて行きましょう。
ダニの予防方法
最後にダニの予防方法を紹介します。
- 清潔な飼育環境をつくる
- 定期的なブラッシング・シャンプーをする
- ダニ予防薬をつける
順番に見ていきましょう。
清潔な飼育環境をつくる
ダニを予防するには、清潔な飼育環境をつくることが大切です。
ダニは犬に寄生して吸血を終えた後、一旦離れて産卵します。
離れた先にダニのエサとなる犬の毛や人の皮膚、ホコリなどがあると、ダニが住み着き産卵し、増殖してしまう恐れがあるでしょう。
特に室内は温度管理がされているため、一年中ダニが繁殖しやすい環境となってしまいます。
清潔な飼育環境をつくり、ダニが繁殖しづらい状態へしておくことが大切です。
定期的なブラッシング・シャンプーをする
ダニの予防には定期的なブラッシングやシャンプーが大切です。
ブラッシングは毎日、シャンプーは月2回を目安に行いましょう。
特に毎日行うブラッシングは散歩の後に行うと決めておくと忘れにくくなります。
ブラッシングやシャンプーは愛犬とのコミュニケーションにもつながるため、ぜひおこなっていただきたい予防です。
ダニ予防薬
ダニの予防薬はダニの予防ができるほか、寄生後のダニに対して駆虫効果を示すためぜひ使いたい予防方法です。
予防薬は背中に垂らすスポットタイプや、おやつのように味付けしてあるチュアブルタイプがあります。
飼い主さんが予防しやすい方法や愛犬の性格に合わせ、適切なタイプを選びましょう。
まとめ
今回は犬のダニ予防について解説しました。
ひと言でダニといっても犬に寄生する主なダニは4種類あり、それぞれの症状も異なります。
ダニが寄生することでさまざまな病気を媒介したり併発したりする恐れもあるため、症状に気付いたらなるべく早く動物病院を受診しましょう。
しっかりと予防すればダニを心配することなく過ごせるため、今回紹介した方法をぜひ試してくださいね。
この記事のライター
satoko
わんちゃん大好きなドッグライターです!愛犬のコーギーに癒される日々を送っています。皆さんにとって有益な情報を発信できるよう頑張ります!
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