犬の老衰の症状や飼い主のとるべき行動|死後行うことについても解説
犬の寿命は私たちと比べて短いため、飼い主さんは愛犬の最期を考える必要があります。
老衰で愛犬と別れるのは想像するだけで寂しく悲しいですが、満足のいく最期を迎えられるよう老衰の症状やとるべき行動を知っておきましょう。
犬の平均寿命
「アニコム家庭どうぶつ白書2021」によると、犬の平均寿命は2019年度の調査では14.1歳です。
10年前の2009年の平均寿命は13.1歳、5年前の2014年の平均寿命は13.7歳であることと比較してみても、徐々に平均寿命は延びているといえます。
しかし犬種別の平均寿命を見てみると、以下のようになっています。
超小型犬 | 14.4歳 | トイプードル チワワ ポメラニアンなど |
小型犬 | 14.4歳 | シーズー パピヨン ダックスフンドなど |
中型犬 | 13.4歳 | 柴 コーギー ビーグルなど |
大型犬 | 11.5歳 | ラブラドールレトリバー シベリアンハスキー ブルドッグなど |
自分の愛犬の老衰についていつ頃かと考える際、犬全体の平均寿命を見るのではなく、今この記事を読んでいるあなたが飼っている犬種の平均寿命を見るべきです。
たとえば小型犬と大型犬であれば、約3年も寿命が変わってきます。
老衰とは年齢を重ねることで身体能力や機能が徐々に低下し、衰弱して死亡することです。
愛犬の犬種と比較し、自分の犬の老衰をすでに考えるべき状況に入っているのかどうかを判断してみましょう。
老衰の症状
愛犬が平均寿命と近く老衰を考える時期に入っている場合、老衰の症状を知っておくことでいざ症状を目の当たりにしたときに、慌てずに対処できる場合があります。
- 足腰が衰える
- 睡眠時間が長くなる
- 口臭がきつくなる
- 食欲が低下する
- 感覚が鈍くなる
- 老化と関係した疾患がみられる
順番に見ていきましょう。
足腰が衰える
老衰の症状のひとつとして、足腰の衰えが挙げられます。
シニア期に突入した7歳頃から、愛犬の体では新しい細胞を作るスピードが遅くなっていくためです。
骨や関節、筋肉などが衰え始めると動きたくなくなったり痛みを感じたりするため、寝たきりになってしまう犬もいます。
また小さな段差でも躓きやすくなり、転倒してしまうと骨折する危険も注意するべきポイントです。
段差の先に犬のお気に入りの寝床やおもちゃがある場合は、移動したり段差を解消したりするグッズをつけましょう。
散歩が大好きな犬であれば、腰を支えて補助しながら散歩できるグッズも使用して、足腰が衰えていることを受け止め工夫してあげてください。
睡眠時間が長くなる
老衰が近づくと、睡眠時間が長くなります。
睡眠時間が長くなる原因は足腰の衰えと、感覚が鈍くなるためです。
前述したように足腰が衰えると動きたがらなくなります。
新たな刺激への感覚も鈍るため、常にぼーっとして寝てばかりいるようになります。
もちろんそっとしておくことも大切ですが、時間を決めて遊びに誘うのもおすすめです。
決して無理をさせてはいけませんが、おもちゃを使ったり撫でたりして刺激を与えてあげましょう。
口臭がきつくなる
老衰の症状として、口臭がきつくなることが挙げられます。
犬の体が衰え始めると唾液の分泌が少なくなり、唾液による口の中の浄化がうまくいかなくなるためです。
また唾液が少なければ、食べものをうまく飲み込めなくなってしまいます。
ウェットフードに切り替えたりドライフードをふやかしたりして、フード自体の水分量を増やすことも検討しましょう。
また、唾液の分泌が少なければ食べものが歯に残りやすくなるため、歯周病になる可能性もあります。
昔から歯磨きをしている犬であれば歯磨きを徹底してください。
そうでない場合は、デンタルガムやデンタルオモチャなどを使ってなるべく汚れを残さないようにしてあげましょう。
食欲が低下する
老衰の症状として、食欲の低下が挙げられます。
老化により胃腸の働きが低下するため、今まで食べていたフードが食べられなくなったり感覚の低下からにおいを嗅いでも食欲が湧かなかったりするためです。
決して大量に食べさせる必要はありませんが、愛犬の体に必要な分だけでも摂れるように飼い主さんがサポートしてあげるとよいでしょう。
感覚が鈍くなる
老衰の症状として、感覚が鈍くなることが挙げられます。
具体的には暑さや寒さを感じにくい点や、遊びやフードへの欲求の低下です。
年をとっていくごとに体温調節がうまくできなくなってしまうため、愛犬が暮らす環境はしっかりと整えてあげましょう。
暑さを感じず水を飲まなければひどい脱水症状を起こす危険もあります。
欲求が低下していると感じたら、大好きな場所へ出かけてみましょう。
足腰の衰えを感じている場合でも、補助具を使ったり抱っこしたりして行く方法があります。
毛をなびかせる風や自然のにおい、音、寄ってくる人に触られるなどの経験は愛犬の感覚を刺激してくれるでしょう。
毎日必ずおこなう必要はありませんが、飼い主さんと愛犬の負担にならないようにたまにお出かけしてみるといいですよ。
老化と関係した疾患がみられる
- 認知症
- 関節炎
- 白内障
- 皮膚病
犬の平均寿命が延び、犬も人間と同じように認知症を発症する場合があります。
飼い主さんのことを認識できなくなり、朝晩問わず鳴き続けたり徘徊したりする行動もみられます。
愛犬には一日も長く生きてほしい反面、自分のことがわからなくなってしまった犬を見たらやるせない気持ちになってしまうかもしれません。
関節炎や白内障、皮膚病はもちろん、認知症の症状が出始めたら動物病院に相談するとよいでしょう。
よくなる薬はありませんが、症状を抑えるための鎮静剤を処方してもらえる場合があります。
これから始まるであろう介護のことや不安なこと、すべて相談してみましょう。
一人で悩まず、周りの人みんなで愛犬を支えてあげてください。
老衰末期の症状
老衰の症状が出始め愛犬の最期について考え始めたら、老衰末期である死の直前の症状も知っておきましょう。
縁起でもないと思うかもしれませんが、この症状を見逃すことで旅立ちに立ち会えなくなる可能性もあります。
- 呼吸が乱れる
- 食事も水分も摂らなくなる
- 発作を起こす
- 体温が低下する
- 下痢や嘔吐をする
- 尿が出なくなる
- 意識が朦朧とする
愛犬にとって幸せな最期を迎えさせてあげられるよう、老衰末期の症状を知っておきましょう。
呼吸が乱れる
老衰末期は呼吸が乱れます。
空気を取り込む力が弱くなり、浅く早い呼吸を繰り返すのであれば最期が近いと考えましょう。
首が曲がっている状態では息を上手く吸えないため、嫌がらなければクッションなどで首を伸ばしてあげてください。
食事も水分も摂らなくなる
老衰末期は食事も水分も摂らなくなります。
食事や水分を摂ることは、生命の維持に必要です。
生命維持活動ができないほど状態が悪く、最期が近いことを示しています。
犬自身が全く食べる気力がなく、食事の工夫をしたり水を飲ませたりしても吐き出してしまう場合、無理やり与えるのは止めましょう。
動物病院に行けば水分補給のための皮下補液をしてもらえる場合があるため、相談してください。
発作を起こす
老衰末期に考えられるのは、臓器不全や老化関連疾患、心疾患などによる発作です。
痙攣や失禁などの症状も見られ、そのまま意識が低下し、死に至る可能性もあります。
落ち着かせようと声をかけたり体を揺らそうとしたりする飼い主さんも多いですが、大きい発作の場合、意識はほとんどありません。
発作中は愛犬がケガをしないよう、傍にある物をどけてスペースを作ってあげましょう。
体温が低下する
老衰末期は通常、体温が低下していきます。
耳や脇、鼠径部など皮膚の薄い部分を触って低い状態が続いているようであれば、最期が近いと覚悟しましょう。
体温計がなければ正確な体温は測れませんが、普段からスキンシップをして触れておくことで比較できますよ。
下痢や嘔吐をする
老衰末期になると下痢や嘔吐の症状が見られます。
体の機能の衰えと共に、消化器官の働きも衰えるためです。
下痢や嘔吐は犬に負担がかかるため、意識障害や発作などにつながってしまう場合も考えられます。
尿が出なくなる
老衰末期は尿が出なくなります。
血液をろ過し尿を作り出す腎臓機能が衰えるためです。
尿が出なければ、体中に毒素が回る尿毒症になる可能性があります。
尿毒症による痙攣発作につながる場合があるため、注意しておきましょう。
意識が朦朧とする
老衰末期は意識が朦朧としています。
さまざまな臓器が衰えるため呼びかけても反応がなくなり、意識を保つことができなくなってしまうのです。
このような状態になったときは、飼い主さんは愛犬の最期を覚悟しなければなりません。
悲しく辛いとは思いますが、愛犬が旅立つその瞬間までそばにいてあげましょう。
老衰死前の心構え
長く愛犬と共に時を過ごし、老衰死が頭をよぎり始めたら、どのような心構えをしておけばよいのでしょうか。
ここでは3つの心構えを紹介します。
- 気持ちに整理をつけ、現実と向き合う
- 悲しくても明るい気持ちで接する
- 最後まで悔いの残らない介護をする
順番に見ていきましょう。
気持ちに整理をつけ、現実と向き合う
死は誰にも避けられないものです。
愛犬にとってよりよい旅立ちとなるよう、まずは飼い主さんが気持ちに整理をつけることが大切です。
愛犬が死に向かい始めている現実と向き合い、残された時間を大切に過ごしましょう。
悲しくても明るい気持ちで接する
愛犬の死を感じたら、悲しくて寂しくて想像したら泣いてしまうほど不安で仕方がないかと思います。
ただし犬は飼い主さんの気持ちを敏感に察知する動物です。
飼い主さんが悲しい気持ちでいたら不安になり、自分まで悲しくなってしまうでしょう。
悲しくても愛犬と接するときは明るい気持ちで接してください。
最後の最後まで、幸せな気持ちを分け合いましょう。
最後まで悔いの残らない介護をする
愛犬の死を感じたら、悔いの残らないよう精一杯介護しましょう。
愛犬の世話をしていくなかで、徐々に気持ちに整理がつくかもしれません。
自分のあてられる時間全てを愛犬に注ぎ介護をすると、愛犬がいなくなった後もその思い出と共に生きていけます。
老衰中に飼い主がとるべき行動
心構えができたら、飼い主さんがとるべき行動を紹介します。
- スキンシップの時間を増やす
- 体のケアをする
- 食事に気を遣う
- 床ずれ防止のために体勢を変える
- 病院に連れて行くかどうか決める
順番に見ていきましょう。
スキンシップの時間を増やす
感覚が鈍くなり意識が低下した状態でも、愛犬は飼い主さんの声やにおい、手の温かさなどはしっかりと理解しています。
スキンシップの時間を増やし、触れ合って愛犬に安心を与えてあげましょう。
体のケアをする
愛犬の体のケアを行いましょう。
被毛のブラッシングはもちろん、目やにや口周りの汚れもすぐに拭き取ってあげてください。
お尻周りも汚れやすいため、部分洗いがすぐにできる体制を整え、洗い流さないタイプのシャンプーを用意しておくとよいでしょう。
生活環境も整え、温度や湿度などを調節し心地のいい環境を作ることで、愛犬は快適と感じてくれますよ。
食事に気を遣う
ただ与えるだけでなく、愛犬がフードを食べやすいように工夫してみましょう。
今までドライフードしか与えていなかった場合、食べやすくにおいの強いウェットフードやソフトタイプのフードを喜ぶ場合もあります。
フードを食べやすくふやかすと食欲が増したり、温めて香りを出すことで食いつきがよくなる子もいるので、愛犬に合わせていろんな方法を試してみてください。
床ずれ防止のために体勢を変える
寝てばかりの犬は体の一箇所に力が加わり続けると皮膚が破れ、床ずれを起こしてしまう場合があります。
2時間に1回を目安に、頻繁に体勢を変えてあげましょう。
また床ずれ防止用のマットを利用するのもおすすめです。
マットにバスタオルをかぶせ、その上にペットシーツを敷いておくと汚れてもすぐに交換できますよ。
病院に連れて行くかどうか決める
いよいよ愛犬の最期を感じたときに、病院に連れて行くかどうか決めておきましょう。
病院では延命のための治療は受けられますが、緊急時にすぐに駈けつけられない可能性があります。
愛犬の旅立ちを、見守ることができないかもしれないのです。
どのような最期を望んでいるのか自分自身によく問いかけ、考えてください。
老衰死後に飼い主がとるべき行動
老衰を感じ愛犬の死を考えたら、愛犬が亡くなった後にとるべき行動についても知っておきましょう。
葬儀会社に連絡する
愛犬が亡くなったら葬儀会社に連絡しましょう。
かかりつけの獣医師に聞いてもいいですし、知り合いで経験のある方に聞いてみる方法もあるでしょう。
合同葬や個別葬、お骨を返して貰うのか共同墓地に入れるのかなど選ぶこともたくさんあります。
愛犬をどのように空に送り、骨をどうするかなど少しずつ考えておくとよいでしょう。
体を拭いて、ブラッシングをする
愛犬が亡くなったら、体を拭いてブラッシングをしてあげましょう。
死後は体の中に残った分泌液が出てきて体を汚してしまう場合があります。
汚れがひどい箇所はシャンプーをし、乾かしておきましょう。
安らかな顔で眠る愛犬を見ながら、たくさんお世話をしたことを思い出しケアをしてあげると、気持ちが落ち着く場合もあります。
綺麗にした後も分泌物が出てくる場合があるため、口元やお尻の下にペットシーツを敷いてすぐに交換できるようにしておくとよいでしょう。
タオルにくるみ、棺代わりの箱に入れる
葬儀会社に連れて行く際、タオルにくるんで段ボールやペット用の棺に入れましょう。
金属は入れられませんが、一緒に大好きなおやつや手紙を入れてあげると愛犬も喜ぶのではないでしょうか。
葬儀社につくまで、愛犬との時間を大切にしてください。
まとめ
今回は愛犬が老衰を迎える際の症状や末期の症状、飼い主さんがとるべき行動についてまとめました。
死は誰にでも訪れます。
愛犬も例外ではありません。
私たちよりずっと早く年をとっていく愛犬の姿を見るのは、辛いときもあります。
しかし、よりよい最期を迎えさせてあげるためにとるべき行動を参考に、愛犬との時を楽しんでください。
この記事のライター
satoko
わんちゃん大好きなドッグライターです!愛犬のコーギーに癒される日々を送っています。皆さんにとって有益な情報を発信できるよう頑張ります!
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