【獣医師監修】犬に寄生虫が見つかった時の対処法が知りたい|寄生虫の種類と感染病の症状も
犬の寄生虫にはノミやダニ、フィラリアなどさまざまなものがあります。どれも放置しておくと犬の身体に悪影響をもたらすため、感染しないよう事前に予防措置をとることが大切です。
ここでは、体内に寄生する「消化管内寄生虫」、体外に寄生する「外部寄生虫」について、その種類や特徴、犬に寄生したときの症状や対処法を詳しく解説します。
寄生虫とは
寄生虫とは人間や動物の体内外に住みついて生きる生物のことです。寄生される人間や動物のことを「宿主」といい、宿主がいなければ寄生虫は生存していることができません。寄生虫は宿主の身体にさまざまな病害をもたらすことがあり、寄生虫による感染症のことを「寄生虫症」といいます。
寄生虫の分類
犬の寄生虫には、ノミ、マダニ、ダニ、シラミなど体の表面(外部)に寄生するものと、フィラリア、犬回虫、鉤虫、鞭虫、瓜実条虫、マンソン裂頭条虫など、体内(消化管内)に寄生するものがあります。大きさも0.2mmの微小なダニのように小さなものから、フィラリアのように成虫になるとオスで体長約17cm、メスで約28cmにもなる大きなものまであります。
またあまり知られてはいませんが、お腹の中に寄生するマンソン裂頭条虫などは最大1~2mもの大きさになります。
犬に寄生する虫の種類
犬が感染しやすい、代表的な寄生虫の種類や特徴について詳しく解説します。
1.体外(皮膚など)に寄生する寄生虫
ノミ
ノミは犬にとって最もポピュラーな外部寄生虫で、イヌノミとネコノミが代表的です。ノミは褐色で体が縦に平たく、体長1~3mmで6本の脚を持っています。犬の血を吸うのはノミの成虫で、ノミの幼虫は成虫の糞や、人間や犬の食べかすやフケなどを食べて成長します。
ノミは梅雨前後から活発に繁殖しますが、現代では住環境が良くなっているため、年間を通じて発生するようになりました。ノミにとっては温度18~27℃、湿度75~85%が最適な環境条件となります。そのため、ノミやダニの駆除剤は通年投与する必要があります。
マダニ
マダニは昆虫ではなく8本の脚を持つ節足動物で、クモなどに似た生物です。固い外皮を持ち、吸血する前の大きさは3~4mmで、イエダニに比べると約8~10倍の大きさがあります。日本ではフタトゲチマダニ、ヤマトマダニなど20種類ほどが犬に寄生します。
マダニは春から夏にかけて活動が活発になりますが、秋から冬には卵からふ化する幼ダニや若ダニが増える季節です。マダニ対策もノミ対策同様、年間を通じて行う必要があります。
2.体内(消化管内など)に寄生する寄生虫
フィラリア
犬糸状虫と呼ばれているフィラリアは、蚊の媒介によって犬の心臓や肺動脈に寄生して、内臓や全身の血液循環にも重篤な病害を与える怖い寄生虫です。フィラリアの成虫はオスで体長約17cm、メスで約28cmで、細い乳白色のソーメン状の形をしています。フィラリアは媒介する蚊の体内でミクロフィラリアとなり、蚊が血を吸った犬の体内に入り込み成虫となります。
フィラリアは蚊が媒介するため、通常5月~12月までがフィラリア予防薬の投与期間です。事前にフィラリアに感染していないか動物病院でフィラリアの血液検査を受けたうえで、この期間は月1回の予防薬の投与を継続するといいでしょう。
犬回虫
虫の卵を口に入れたり、母犬の乳汁や胎盤からも感染します。犬の腸内のタンパク質や炭水化物などを栄養源としながら寄生します。犬回虫の大きさは18cm以下です。
犬鉤虫
皮膚からの侵入や、幼虫を口に入れたり、母犬の乳汁や胎盤などから感染します。体内に入った犬鉤虫は腸の粘膜から血を吸い寄生します。大きさは2cm以下です。腸内に寄生する寄生虫は症状に気付きにくく、犬の便に寄生虫が残っている場合などは、排便がベッドやシートなどに付着して寄生虫に汚染され、再感染を繰り返すことがあるので注意しましょう。
鞭虫
虫の卵を口に入れることで感染します。犬の腸内で粘膜から血を吸い寄生します。鞭虫の大きさは7cm以下です。
瓜実条虫
幼虫を持っている中間宿主であるノミなどを口に入れることで感染します。腸の粘膜に体を付着させ、体の表面で腸の粘膜から栄養を吸収して寄生します。瓜実条虫の大きさは50cm以下ですが、かなりの大きさがあります。
犬の腸内に寄生する回虫などの寄生虫には時期や季節による対策法はありませんが、ノミが媒介する瓜実条虫は、ノミの活動期である初夏から秋にかけては注意しておく必要があります。
犬の寄生虫感染による症状と対策
犬の体内外に寄生する寄生虫によって、さまざまな病害があらわれます。それぞれの寄生虫によって引き起こされる症状や、その対策について解説します。
ノミによる寄生虫感染
アレルギー性皮膚炎
ノミに刺されたときに、皮膚内に注入された唾液がアレルゲンとなり引き起こされる皮膚炎です。強い痒みを伴います。
瓜実条虫症
ノミの体内に入り込んでいた瓜実条虫の幼虫が、ノミをつぶしたりした際に犬の体内に入ることで感染します。お尻のあたりを痒そうにしたり、軟便、下痢、体重減少などが引き起こされます。
マダニによる寄生虫感染
貧血
マダニが大量に寄生して吸血することによって起こります。
アレルギー性皮膚炎
マダニの唾液によるアレルギーで強い痒みが出ます。
ダニ麻痺症
マダニの種類によっては唾液中に毒性の物質を含んでいます。毒性の唾液が体内に入ると神経障害、弛緩性麻痺を引き起こします。
マダニ媒介性疾患
マダニにはマダニが媒介する病原体によって引き起こされる、さまざまな疾患があります。犬だけではなく人間にも感染する疾患です。
バベシア症(バベシア原虫による)
発熱、黄疸、貧血、元気消失などがあり重症の場合は急死する場合もあります。
ライム病(ボレリア菌による)
関節炎や発熱、食欲不振、全身痙攣などがあらわれます。
Q熱(コクシエラリケッチアによる)
軽い発熱、流産・不妊症などが見られる程度の不顕性感染です。
エールリヒア症(リケッチア菌による)
急性の場合は発熱、鼻汁、貧血、食欲不振、流涙、元気消失などが見られます。
フィラリアによる寄生虫感染
慢性犬糸状虫症
体力が弱り散歩や運動などを嫌がるようになります。早朝や興奮したりすると乾いた咳をしたり、呼吸困難、腹水、喀血、ネフローゼ症候群などの病状があらわれます。
大静脈症候群
血色素尿(血の色素が尿に混じること)、貧血、突発性虚脱、呼吸困難などがみられます。
消化管内寄生虫による感染
回虫などの消化管の中に寄生する寄生虫は、犬が食べた消化物を栄養源としたり、消化管に吸着して血液を吸い上げたりして生息します。そのため、下記のようなさまざまな症状が発生します。
- 動作が鈍くなる
- 消化不良や下痢を起こす
- 元気がなくなる
- 腹囲膨満
- 発育不良
- 食べ物ではないもの、例えば糞や石、紙などを食べる
- 粘血便が出たり、貧血を引き起こす
犬の寄生虫感染の対処法は?
ノミ、ダニ、マダニ、フィラリアに関しては定期的な駆除剤の投与で防ぐことができます。消化管内寄生虫の場合はなかなか症状があらわれないので、寄生虫感染に気付かないことが多く、人間への感染や糞便などから知らず知らずのうちに繰り返し感染してしまうことがあります。
子犬の場合は検便などで発見される前に、重篤な症状になり命を落としてしまうこともあります。そのために、アメリカのCDCと呼ばれる疾病予防管理センターのガイドラインでは、犬の消化管内寄生虫駆除は、生後3~6ヶ月までは月に1回、成犬の場合は3ヶ月に1度の定期駆虫が推奨されています。
ただし、あまりに体格が小さかったり痩せている子や、お腹が弱い子は、寄生虫駆除剤によってさらに軟便になったりする可能性もあるので、かかりつけの獣医師と相談した上で、予防を進めていくのがよいでしょう。
定期的に駆除剤を投与して愛犬を寄生虫から守ろう
犬に害を与える体内外の寄生虫のほとんどは、定期的な駆除剤で予防、駆除することができます。 生活環境の向上から、皮肉にも季節に関わらずノミやダニの発生がみられるようになりました。
愛犬の健康と快適な生活維持のためにも、成犬であれば混合ワクチンや狂犬病の予防注射、年に1回の健康診断、さらに定期的な寄生虫駆除剤の投与も忘れないようにしましょう。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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