犬の肉球ケアのポイントとは?腫れ・色味・怪我などの対処法をご紹介
肉球は、犬の体にかかる衝撃を和らげるクッションの役割を持っています。
普段どおりに生活していても肉球が擦れたり、切り傷や火傷などのトラブルを起こすこともあり、炎症を起こしてしまうと治るまで安静にしていなければいけません。また、老犬になると乾燥してしまい、フローリングなどで滑ってしまうことも。重要な役割を果たしている肉球が傷ついてしまったり病気を患ったとき、どうすればいいのかわからなくて困ってしまいますよね。
ここでは肉球の病気や怪我、肉球ケアの方法などについてご紹介します。
犬の肉球が果たしている役割
子犬の頃はピンク色でとても柔らかい肉球ですが、その後の生活環境により肉球の状態は変わっていきます。
室内飼育であまり外を散歩しない犬は肉球が柔らかく、コンクリートの上をたくさん歩く犬は肉球が固くなります。
犬の肉球は、以下のような大切な役割を果たしています。
滑らないようにする
肉球の表面には、円錐状突起(えんすいじょうとっき)が集まっており、滑りにくい構造になっています。人間の靴も凹凸があることで滑りにくくなっていますが、犬の肉球もそれと同様、突起がスパイクのような役割を果たしてくれているということです。
また、汗をかくと肉球がしっとりと湿り、滑り止めとして機能します。しかし、シニアになってくると肉球も乾燥しがちになってしまい、筋力も衰えるため、フローリング等で滑りやすくなってしまいます。
体温調節をする
人間の場合は全身の汗腺から汗を出して体温調節していますが、犬は口で「パンティング」という浅く早い呼吸により熱を外に出し、体温調節をしています。パンティングだけで体温が下げられない場合は、肉球や鼻の汗腺(エクリン線)から汗を出して、気化熱を利用して体温調節をします。
犬は発汗する部位が肉球と鼻の頭しかないため、体温を下げることがとても苦手な動物です。
足にかかる衝撃の緩和
犬は歩く、走るだけでなく急に飛びつくなどいろんな行動を取り、飼い主を驚かせることもありますよね。
犬の肉球の表皮は他の皮膚とは構造が異なり、分厚くなっています。そして、表皮の下は脂肪やコラーゲン、エラスチンと呼ばれる弾力繊維が混在し、弾力性のある構造をしています。
そのため、ジャンプして着地時に足にかかる衝撃を緩和したり、全体重を支えて足を守ったりなど、足にかかる負担を軽減させてくれます。
地面の感触を確かめる
犬は地面の感触で場所を覚えます。例えば、トイレにペットシーツを敷きトイレトレーニングをすると、次第に犬はペットシーツの感触で「この場所はトイレの場所だ」と感じるようになります。
犬の視覚はそれほど発達していませんが、聴覚・触覚・嗅覚などの五感で補っています。
何度も同じ場所を歩く行動は、肉球で地面の感触を確かめるためです。
犬の肉球からわかる健康状態のポイント9つ
肉球は犬が立った状態だと隠れてしまう部位のため、飼い主ですらどんな状態になっているのか知らないことも多いのではないでしょうか。
ここでは肉球の正常な状態、気をつけるべき異常な状態についてご紹介します。
- 傷・腫れ・ひび割れの有無
- 汚れ
- 色
- 歩き方
- 温度
- 硬さとしっとり感
- 行動
- 爪の長さ
- 指間の毛の長さ
1.傷・腫れ・ひび割れの有無
肉球の表面がめくれていたり、腫れたり、傷口ができているときは、火傷やケガなどのトラブルが考えられます。夏場におけるアスファルトの温度は、50〜60度を超えることもあり、その上を歩けば肉球が火傷する恐れがあります。
また、散歩時に鋭利なものを踏んでしまいケガをしたり、引っ張り癖がある子の場合は、地面との摩擦で肉球を傷つけてしまうことも考えられます。
犬の肉球は乾燥が原因でひび割れてしまうこともあります。人の場合でも、冬になるとあかぎれなどが起こりやすくなりますが、犬も乾燥によって肉球の水分が失われていき、ひび割れを起こします。冬の乾燥している外の空気に加えて、室内でのエアコンや暖房器具の影響などによっても肉球は乾燥していきます。
また、加齢によって体の代謝機能が落ちると、汗腺の機能もいっしょに低下し、肉球の表面を薄く覆っている皮脂膜の形成が悪くなります。すると、肉球をバリアできずにどんどん水分が失われるようになり、乾燥状態から抜け出せなくなってしまいます。
2.汚れ
足裏が不衛生になっていると、雑菌が繁殖しやすくなってしまいます。散歩などで汚れた後は清潔にしましょう。
汚れがなかなか落ちない、べたついているといった場合には、散歩中にガムを踏んでしまっていることがあります。ガムは食用油で溶けるので、サラダ油などをもみ込んだ後、よくシャンプーしましょう。
3.色
肉球には黒やこげ茶、ピンク、まだらなど様々な色の種類があり、四肢で異なる色模様をしていることもあります。色の濃さにも個体差があるので、日頃から愛犬の正常な状態の色を観察しておくと、異常の早期発見につながります。
肉球が普段より赤い場合、間違った肉球ケアやアレルギーが原因で指間炎などのトラブルが起きている可能性があります。
もともとピンク色だった肉球が白っぽくなったときには、貧血や血流に関わる循環器の異常などが疑われます。
4.歩き方
犬は歩くときに必ず肉球を使うため、何らかの異常がある場合は歩き方がおかしくなります。足を引きずって歩く、少し歩いてもすぐに立ち止まってしまうといった場合は、足裏や関節に何らかの異常があると考えられます。
5.温度
犬の肉球の温度は外部の温度の影響を受けやすいため、常に一定というわけではありません。
いつも足が冷えているときには、血行が悪く身体が冷えているのかもしれません。丸まってぶるぶる震えていないか、耳や歯茎が白くなっていないか確認しましょう。
また、暑い中に散歩をしたわけでもないのに肉球に熱を感じるときは、感染症などが原因で発熱していることがあります。
6.硬さとしっとり感
犬の肉球は、アスファルトの道ばかりを歩くのに適した作りにはなっていません。
もともと犬の肉球は、柔らかい土や草の上を歩くようにできています。そのため、照りつく太陽で熱せられたアスファルトや、冷たくなったコンクリートの上を歩くだけでも日々ダメージを受けています。
散歩によって肉球はダメージを受け続けるため、本来のぷにぷにとした弾力を失い、乾燥して硬化を続け、次第にカサカサになってしまいます。
7.行動
しきりに肉球を舐める、噛む、動くのを嫌がるといった様子が見られるときには、異常のサインかもしれません。まずは肉球の状態を確認しましょう。
8.爪の長さ
爪の長さは、立ったときに爪の先が床につかない程度が理想的です。爪が伸びすぎると歩きにくくなるだけでなく、爪が根元から折れて出血したり、巻いた爪が肉球に刺さってケガをしてしまうこともあります。
9.指間の毛の長さ
長毛犬の場合、足裏の毛が伸びると肉球を隠してしまい、足を滑らせて思わぬケガを招いてしまいます。
また、雨の日の散歩などで足先が濡れると、足裏の毛があることで雑菌が繁殖しやすくなってしまいます。
肉球が毛で覆われてしまう場合は、短くカットして肉球が見えるようにしましょう。
犬の肉球に関する病気やケガの種類と対処法
犬は靴を履かずに散歩に行くことが多いため、室外でケガを負ってしまう事もありますが、実は室内であっても肉球の病気を引き起こすことがあります。
ここでは肉球に関する病気やケガについてご紹介します。
肉球に変化が出る病気、犬ジステンパーウイルス感染症
肉球や鼻などの皮膚が固くなる「ハードパッド」という症状が見られ、接触感染、空気感染も起こす感染力の強い病気です。
死亡率が高く、発症すると治療しても後遺症が残ることもあります。
発熱、咳・くしゃみ・鼻水などの呼吸器症状、下痢・嘔吐などの消化器症状、結膜炎、白血球減少などの症状が現れ、その後、ジステンパー脳炎、痙攣、麻痺などの神経症状が現れます。
子犬や老犬などの免疫力が低い動物は重症化しやすいため、特に注意が必要です。
治療法と対処法
治療は出ている症状に対して行う対症療法になり、抗生物質の投与や輸液療法などが行われます。栄養価の高い食事を与えるなど、免疫力を高めることも大切です。
予防法
犬ジステンパーウイルス感染症はワクチン接種で予防できる病気です。獣医師の指示に従い、定期的に予防接種を行うことが大切です。
火傷や凍傷、ケガ
夏場の太陽に熱されたコンクリートの上を歩いたり、冬場ストーブなどに触れることで肉球は火傷を起こしてしまいます。火傷をすると肉球が変色し、赤く腫れます。
また、凍傷は長時間の雪遊び、雪道の散歩などで起こります。凍傷では肉球の変色、水ぶくれが起こり、症状が進行すると患部が壊死してしまいます。
肉球に火傷や凍傷などのケガを負うと、歩くことを嫌がる、足を引きずる、足を上げるなどの行動が症状として見られます。
治療法と対処法
火傷の場合、すぐに動物病院を受診することが望ましいですが、応急処置として水に濡らし、保冷剤などを使用し冷やしましょう。
凍傷を起こしたときは、応急処置として体や患部を温めます。壊死した足は最悪切断しなければいけなくなるため、凍傷の場合もすぐに動物病院を受診しましょう。
予防法
肉球にケガをさせないためにはアウトドアに連れて行く時だけではなく、散歩中も足元に気をつけるようにしましょう。
道路にはガラスの破片やガムなどのゴミが落ちていることがあるため、危険な場所は抱き上げて散歩をするなどの対策が必要です。
中型犬や大型犬で抱き上げるのが難しい場合は犬用の散歩用靴下を履かせましょう。
アウトドアによく連れて行く場合は、あらかじめ犬用の靴下を履かせておくといいかもしれません。足先は敏感な犬が多く、靴下を履かせようと考えている方は、「履くことになれさせる訓練」も必要になります。
指間炎
指間炎は何らかの原因により肉球の間(指間)に炎症が起こる病気です。
原因は散歩中のケガ、火傷、トリミングでの傷など様々で、発症すると指間が赤く腫れ、熱を持ち、進行すると膿んでしまいます。
炎症を起こすことで痒みも出るため犬が気にし、舐めるだけでなく噛むこともあります。すると、患部にさらに傷が付き、症状が悪化していくため早めに治療を受けることが重要です。
治療法と対処法
まずは原因を除去したり、患部の被毛をバリカンで短く刈って通気性をよくします。症状により異なりますが、抗生物質の内服薬や塗り薬などが処方されます。
同時に症状を悪化させないように、エリザベスカラーが処方されることもあります。
予防法
お散歩の後は足の裏に異常がないかよくチェックし、汚れをきれいに拭き取って清潔に保ちましょう。ただし、足の洗いすぎは禁物です。かえって犬が気にして舐めてしまったり、乾かし残しがあれば雑菌が繁殖して炎症を起こすことがあります。
アレルギー体質の犬や皮脂の分泌量が多い犬の場合、とりわけ指間炎にかかりやすくなります。この場合、動物病院で処方される療法食や正しいスキンケアなど、適切な管理を取り入れることが指間炎の予防につながります。
愛犬の肉球を健康に保つためのケアを紹介
厚い表皮に覆われ足を保護してくれている肉球ですが、傷つくと治るまでに時間がかかります。これは、立ち上がったり歩いたりするとき、肉球はどうしても地面に触れる場所なので、傷口が塞がってもまた開いてしまうことがあるためです。
肉球を健康に保つためには普段からどのようなケアを行えばいいのでしょうか。ここでは肉球のケアについてご紹介します。
犬用の靴や靴下の使い方
犬用の靴や靴下は足先から被せて使用します。
初めて靴下や靴を履くときは違和感から嫌がる犬が多く、歩き方がおかしくなったり、無理やり脱いでしまうこともあります。
履かせる時は靴下を履いても嫌がらないようにゆっくり時間をかけてトレーニングを行いましょう。
靴や靴下を購入するときはメジャーを使い、幅、縦、足首の太さを測定し、犬の足にピッタリなサイズを選びましょう。
肉球に被さっている毛はカットする
肉球に毛が被さっていると、肉球が滑り止めの役割を果たせなくなってしまいます。すると足元が不安定になり、足の関節や腰に負担がかかるほか、滑って骨折するなどの危険性もあります。
肉球が隠れてしまっているときは、ペット用のバリカンや散髪用のハサミで伸びすぎている毛をカットするようにしましょう。
バリカンでカットする場合は、必ずペット用のバリカンを使うようにしてください。ペット用のバリカンは人間用のバリカンよりも刃が細かく、皮膚を傷つけないよう安全な設計になっています。
肉球クリームの使い方
肉球のケアは、肉球を清潔な状態にしてから「肉球クリーム」を塗り、マッサージしながら行います。肉球クリームはジェル、ローション、蜜蝋など様々なタイプがあり、香りも異なります。
犬は嗅覚が優れた動物なので、匂いの強すぎるものは避け、クリームを舐めとってしまう犬も多いため安全な物を選びましょう。
足の裏の被毛をバリカンで刈り、濡れタオルなどできれいな状態にしてから使用しましょう。
空気が乾燥している冬場や、保湿機能が低下しているシニア犬などは特に肉球が乾燥しやすいため、定期的に肉球クリームでお手入れすると良いでしょう。
その他、肉球を守るためにできること
肉球を守るためには「清潔を保つ」ことも大切です。散歩の後は濡らして固絞りしたタオルなどで肉球の汚れをきれいに拭き取り、清潔に保つよう心がけましょう。
犬の肉球をきれいにすることで、ケガや火傷などにも早く気付くことができるため、病気の早期発見にも繋がります。
愛犬の肉球を普段からケアをして守ろう
犬にとって肉球は歩くためにとても大切な部位です。
肉球が健康な状態でないと運動不足になり、ストレスが溜まり噛む・吠える・物を壊すなどの問題行動を起こしてしまうこともあります。
肉球が健康な状態で保たれていることこそが犬の健康にも繋がります。
犬と人が快適に生活するためにも、肉球に異常が無いかチェックしたり、必要なケアを取り入れていきましょう。
この記事のライター
komugi
都内で愛犬のビーグルと暮らしています。コロナ期間中に肥満体型になってしまった愛犬のために食事や運動について勉強をはじめました。面白い発見や愛犬家の皆様に役立つ情報があればどんどん発信していきます!
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