犬の外耳炎とはどんな症状?治療法や予防法についてもわかりやすく紹介!
犬がかかりやすい病気の一つに「犬の外耳炎」があります。
外耳炎は再発することも多く、慢性的に外耳炎の症状がある犬も多いです。
もし犬に「頻繁に頭を振っている」「耳垢がくさい」「耳の周りの毛が抜けている」という様子が見られたら、それは外耳炎の症状かもしれません。
この記事では、犬の外耳炎の症状や治療法、予防法について解説していきます。
犬の外耳炎とは
犬の耳は外耳(がいじ)、中耳(ちゅうじ)、内耳(ないじ)と分かれています。
そして、耳の穴から鼓膜までの間の部分にあたる外耳に炎症が起こる病気のことを外耳炎といいます。
犬の外耳道は垂直部と水平部からなるL字型になっていて、通気しにくい構造です。
そのため細菌が繁殖しやすく、外耳炎になりやすくなっています。
また、「垂れ耳」「耳毛が多い」「耳道が狭い」といった犬種は、さらに通気性を悪くする要因があるため、特に外耳炎になりやすいです。
犬の外耳炎の症状
犬が外耳炎になると、さまざまな症状が見られます。
それぞれの症状について解説していきます。
耳垢の量が増える
細菌性の外耳炎の場合、耳垢が増えることがあります。
黄色い耳垢が見られたり、ドロっとした耳垢が見られたりする場合は、外耳炎を疑いましょう。
耳をかゆがる
耳をかゆがる場合も外耳炎の特徴的な症状です。
頻繁に頭を横に振ったり、後ろ足で耳の付近や耳をかくなどした場合は注意して観察しましょう。
頭を振る
頭を振る行為も外耳炎になるとよく見られる症状の一つです。
日常的に頭を振る仕草をすることはあると思いますが、その行為が頻繁になっていると、耳がかゆいというサインです。
外耳炎の可能性もあるので、耳垢をチェックして様子をみましょう。
耳を床にこすりつける
耳を床にこすりつける場合も、耳がかゆいというサインです。
後ろ足でかく場合もありますが、耳を床にこすりつけてかく場合もあるので、頻繁にその行為をするようであれば、外耳炎を疑いましょう。
かゆみや痛みのある耳を下にして傾ける
耳を下にして傾ける仕草は外耳炎の際に見られます。
普段やらないような仕草なので、もしこの動作が見られるようであれば、ほかの外耳炎の症状が見られないかチェックしましょう。
悪臭がする耳だれ(耳漏)
通常の耳垢は、ほとんどにおいがしません。
悪臭がする場合、外耳炎や炎症が起きている状態です。
耳の脱毛
外耳炎を放っておくと耳の脱毛が見られる場合があります。
もし、耳の脱毛以外に悪臭がする、耳垢がドロっとしているなどの症状が見られるようであれば、外耳炎を疑いましょう。
音や声への反応が鈍くなる
音や声などの反応が鈍くなるのも外耳炎の症状です。
シニア犬の場合、老化によって反応が鈍くなることがあります。
しかし外耳炎の場合も、耳垢が貯まっていき聴き取りが悪くなるので、注意深く観察してみましょう。
耳血種(血液の貯留により耳介が膨れた状態)
耳血腫は耳に血液が貯まってしまい、膨れ上がった状態をいいます。
たとえば、人間の場合で一例を挙げると柔道の選手の耳が膨れ上がっているのが耳血腫です。
耳血腫は後ろ足で激しくかいたり、頭部を激しく擦りつけたり、振ってバタバタさせることによる耳への度重なる負荷により生じます。
耳の穴周囲が赤い
耳の穴の周囲が赤い場合は、腫れていることも考えられます。
耳をかきすぎると、耳の穴の周囲が赤くなったり、皮膚がザラザラしたりします。
犬の外耳炎の原因
外耳炎の原因はいくつか挙げられます。
ここでは外耳炎を起こす原因について解説していきます。
寄生虫:耳ダニ、ニキビダニ、マダニ
寄生虫は外耳炎を起こす代表的な原因です。
寄生虫には耳ダニやニキビダニ、マダニなどがおり、強いかゆみとともに黒っぽい耳垢が見られるのが特徴です。
過敏症:アトピー、食物アレルギー、接触性皮膚炎
アトピーや植物アレルギー、接触性皮膚炎などの過敏症でも外耳炎になります。
過敏症の犬は皮膚のバリア構造が弱っているため、寄生虫からの感染が起こりやすくなります。
また、治っても発症を繰り返すことが特徴です。
異物
異物が耳の中に入り、外耳炎になることもあります。
例えば散歩中に草むらに行き、植物の種のような異物が耳の中に入ったことによって発症します。
腫瘍
耳に腫瘍ができた場合、外耳炎の症状を併発することがあります。
この場合は、まずは腫瘍の問題を解決することが先決になります。
構造的な問題:重く垂れ下がっている耳、狭い耳道・耳道狭窄、耳道内の毛
犬種によっては、垂れ耳や耳が被毛で覆われていて、耳道の通気性が悪く細菌が繁殖しやすいです。
このように、構造的な問題で外耳炎になることがあります。
外耳炎によって引き起こされる問題
外耳炎になると二次的な問題が起こる可能性もあります。
具体的な問題は、以下のとおりです。
- 細菌感染
- マラセチア感染
- 中耳炎
- 耳道狭窄
もともと耳の中には「マイグレーション」という耳の中を浄化する自然治癒力があります。
しかし、外耳炎によってその機能が働かなくなると耳の中の環境が悪化し、細菌感染やマラセチア性皮膚炎を引き起こしてしまいます。
また、外耳炎がさらに悪化すると外耳道が腫れ、耳の穴が塞がって耳道狭窄となり、さらに鼓膜の奥にある中耳まで炎症が起こる中耳炎となることもあるのです。
外耳炎になりやすい犬種
外耳炎になりやすい犬の特徴や代表的な犬種について解説していきます。
アトピー・アレルギーが多い犬
アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの基礎疾患がある犬は、耳以外の場所もかゆみや皮膚炎を起こしてしまうため外耳炎になりやすいです。
アトピー・アレルギーが多い代表的な犬種は以下のとおりです。
- 柴犬
- ラブラドールレトリバー
- ゴールデンレトリバー
- シーズー
- チワワ
- フレンチブルドッグ
垂れ耳の犬
垂れ耳の犬種は外耳道の通気性が悪いため耳の中が蒸れやすく、耳の中で汚れが溜まり細菌が繁殖しやすいため外耳炎になりやすいです。
垂れ耳の代表的な犬種は以下のとおりです。
- ラブラドールレトリバー
- ゴールデンレトリバー
- ダックスフンド
- アメリカンコッカースパニエル
- キャバリアキングチャールズスパニエル
被毛が多い(耳毛が多い)、剛毛な犬
耳毛が多いと外耳道の通気性が悪くなり、蒸れの原因になります。
蒸れたまま放置しておくと細菌の繁殖から外耳炎が発症しやすくなります。
被毛が多い(耳毛が多い)、剛毛な犬の代表的な犬種は以下の通りです。
- マルチーズ
- シーズー
- ヨークシャテリア
- トイプードル
- ミニチュアシュナウザー
脂っぽい体質の犬
皮脂が増えると、この脂をエサとしてマラセチアが異常に増え、やがてマラセチア皮膚炎を引き起こします。
マラセチア皮膚炎が外耳道で起こり、外耳炎発症の原因となります。
脂っぽい体質の代表的な犬種は以下の通りです。
- ラブラドールレトリバー
- シーズー
- チワワ
- ダックスフンド
- トイプードル
- フレンチブルドッグ
- ボストンテリア
- アメリカンコッカースパニエル
- キャバリアキングチャールズスパニエル
耳道が狭い犬
犬はもともと耳道が狭いため、通気性が悪く耳の構造的な問題で外耳炎となりやすい動物です。
耳道が狭い、代表的な犬種は以下のとおりです。
- パグ
- フレンチブルドッグ
また、この2種は短毛かつ剛毛でもあります。
そのため、大量の被毛が耳に入ると、それが耳道を刺激し感染を誘発するため、外耳炎が発症する原因になります。
犬の外耳炎の治療法
犬の外耳炎の治療法は耳道の洗浄や点耳薬、内用薬が中心です。
犬の状態を加味し、獣医が適切な処置を判断します。
治療法について解説します。
内科的治療
まず外耳炎を内科的治療をするうえで、耳道内の汚れの除去をすることが大切です。
耳道内に大量の耳垢があると、細菌の増殖や炎症の温床となったり、汚れが邪魔をして点耳薬が十分に浸透しなかったりする場合があるからです。
内科的治療は以下が挙げられます。
- 耳洗浄
- 点耳薬
- ステロイド剤
- 抗生剤
- 抗真菌剤
ただし、外耳道よりもっと奥に炎症が波及していたり、耳道が重度に腫脹していたりする場合は、洗浄を行わない方が望ましいこともあります。
獣医師の指示に従いましょう。
外耳炎の症状が重度な場合や、痛みや腫れがひどく、まず炎症を鎮めたい場合はステロイド剤、抗生剤、抗真菌剤などの内用薬が処方されることがあります。
外科的治療
内科的治療に反応がなく再発を繰り返す場合や、外耳道の形態変化による耳道閉塞がある場合は外科的治療が検討されます。
外的治療は、腫瘍切除や耳道切除術が挙げられます。
犬の外耳炎の治療費用はいくら?
外耳炎の原因や状態によって、治療費は全く異なってきます。
軽度の症状ですと1回の受診料が「2,000〜3,000円」の場合がありますが、使用される内用薬によって費用は加算されます。
また、重度の症状で外科的治療が必要とされた場合は、手術費用として10万円を超えることが多いです。
また、ペット保険会社によって異なりますが、外耳炎は保証対象となっている場合が多いです。
ペット保険加入を検討される場合は、どの病気が補償の対象となっているか確認してから加入するようにしましょう。
また、外耳炎になっていない状況で行う予防に対しての治療は、基本的にペット保険の保証対象外となります。
犬の外耳炎の予防法
犬の耳は構造的に外耳炎が発症しやすい特徴をもっているため、外耳炎を完全に予防することは難しいです。
しかし、適切なケアで発症しにくい環境にすることは可能ですので、ここでは外耳炎の予防法について紹介します。
定期的な検診
外耳炎は再発することが多く慢性的な病気になる可能性が高いです。
湿気が多い梅雨時期に発症することが多いので、慢性的に外耳炎を発症する場合は定期的な検診をおすすめします。
また、獣医より日ごろの適切なケア方法についても指導を受けましょう。
耳の掃除
犬の耳掃除にはペットショップで販売されているイヤークリーナーや犬用の耳掃除用シート、イヤーローションとよばれる洗浄液などを使って掃除します。
綿棒や人間用の消毒用アルコール、ウェットティッシュなどは使用しないでください。
外耳道の皮膚を傷つけたり、皮膚を守っている常在菌まで死滅させてしまったりする恐れがあります。
犬が嫌がって耳掃除をさせてもらえない場合は、すぐに食べきれない硬めのおやつをかじらせながら耳に触れられることに慣れさせましょう。
おやつを使用しても耳掃除が困難な場合は、トリミングサロンや動物病院に耳掃除を依頼することも方法の一つです。
日ごろから耳を観察
見える範囲でいいので、赤みがないか、耳垢は出ていないか、悪臭はないかと定期的に耳をチェックしましょう。
また、定期的にチェックすることで、犬が耳に触られることに慣れて耳掃除がしやすくなるメリットもあります。
耳毛の管理
耳毛によって通気性が悪くなっているようであれば、短くカットしましょう。
抜くと炎症を起こす場合もあり、犬にとっても痛くて苦痛ですので抜くのはおすすめしません。
耳に水が入らないように気をつける
耳の中に水が入ってしまうと、湿度の上昇により外耳内で細菌が増殖しやすい環境になってしまいます。
シャンプーや水浴びの際は耳に水が入らないように注意しましょう。
仕草のチェック
外耳炎の症状例でも紹介しましたが、耳をかゆがる、痛がる、頻繁に頭を振る、耳を床や壁にこすりつけるような行動がないか、日ごろから仕草のチェックをしましょう。
アトピー・アレルギーの対策
犬アトピー性皮膚炎がある場合は、耳も含めた全身をかかないように動物病院でかゆみ止めをもらう必要があります。
犬によってアトピーの薬や治療法も異なるので、獣医師と相談のうえ適切な治療を行いましょう。
アレルギーの予防としては、日常的にブラッシングをして、ノミやノミの糞、皮膚病がないかをチェックします。
また、抗真菌効果のあるシャンプー剤で週に1回程度シャンプーをお勧めします。
食物アレルギーがある場合はアレルゲンの特定を行い、愛犬にあった適切な食事を心がけましょう。
まとめ
外耳炎はどの犬でも発症してしまう可能性が高い病気です。
犬の命に関わるような大きな病気ではありませんが、耳のかゆみや痛みは犬のストレスとなります。
放っておくと、外科手術が必要な状態になってしまうこともあります。
しかし、日ごろのケアや管理で発症するリスクを抑えられますし、飼い主さんが注意することで発症した場合でも軽度の状態から治療を受けることも可能です。
犬の外耳炎を予防するためにも、日ごろから仕草や耳の状態をチェックし、早期の発見と適切な治療を心がけましょう。
この記事のライター
nana
泳ぎも走りも得意な運動神経抜群のゴールデンレトリバーと暮らしています!今は愛犬とタンデムサーフィンの練習中。いつまでもアクティブに楽しく過ごせるような情報を発信していきます。
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