【獣医師監修】メスが乳腺炎になる原因とは?症状から治療・予防方法まで
メスの犬と暮らしていて、なんだか乳房が赤みを帯びていたり、少し張っている感じがすると思ったことはありませんか?触ってみて熱っぽい感じがする場合は、乳腺炎の疑いがあります。今回は、メスが多く発症する病気「乳腺炎」について、症状や発症の原因、治療法、予防方法について解説します。
乳腺炎という病気について
オス・メス関係なく犬の腹部には、左右に5組ずつ、合わせて10個の乳頭がついています。メスの場合は、左右の乳頭に沿っておっぱいを出すための乳腺があります。乳腺炎は、この乳腺の組織が何らかの理由で炎症を起こしている状態を指します。
初期症状
乳腺炎を発症すると、乳房が熱っぽい、触ると痛がる、出産していないのに乳房が張っている、黄色っぽい乳汁が出るなどの初期症状が現れます。また、症状が重くなると、元気が無くなったり食欲不振になる、発熱などの症状が現れ、子育てをしている場合には授乳を嫌がることもあります。
重度の症状とは
乳腺炎が重症化すると、乳房にしこりができる、乳汁が茶色っぽい、血が混じるなどの症状が見られます。また、元気がなくなる、食欲不振などの症状が出ることもあります。細菌感染を伴う場合は、細菌によって皮膚組織が壊死したり腐敗して壊疽を起こすこともあるため注意が必要です。
また、乳腺炎とよく間違えられる病気に「炎症性乳がん」があるため、しこりがないかをよく観察するとともに、重症化する前に動物病院でしっかり診察してもらい、適切な検査を受けることが大切です。
他の犬や人間にうつる?
乳腺炎は、授乳中に傷がつくなどの原因から細菌感染を引き起こし発症するため、子犬に飲ませているおっぱいに細菌がふくまれている可能性があります。乳腺炎自体が、子犬にうつることはありませんが、免疫の低い子犬が細菌のふくまれるおっぱいを飲むことは良いことではないとされています。
人間にうつることはありませんが、患部に細菌感染を起こしていることが多いので、触った後は手洗いをして清潔にしておきましょう。
乳腺炎になる原因は?
メスが発症する乳腺炎には2つの原因があります。
原因①授乳中の傷による細菌感染
乳腺は子犬が生まれると、おっぱいを出すために発達します。特に、授乳中にたくさんおっぱいを出すために発達しますが、このおっぱいが過剰に分泌されて目詰まりを起こしたり、何らかの理由で細菌に感染して乳腺炎を発症します。
また、子犬が母犬のおっぱいを飲むときに噛み付いたり、おっぱいを出そうと引っ掻いたりすることで、小さな傷がつきそこから細菌が入り感染することもあります。
さらに、子犬が急に離乳した場合には、おっぱいが一定の場所に滞留してしまい、乳腺炎を起こすことがあります。
原因②偽妊娠による炎症
メスは、ヒートが終わった後1〜2ヶ月ほどすると、実際に妊娠していないにもかかわらず、ホルモンバランスの変化により妊娠しているのと同じようなホルモンの状態になります。この状態を「偽妊娠」と呼び、犬はぬいぐるみなどを大切に世話したり、巣作り行動をするなど子犬が実際にいるような行動をとります。
この時に、乳腺が同じように発達し、おっぱいが出たり、乳腺が腫れる、熱っぽいなどの症状が現れます。このような症状が出た場合、乳腺炎を発症することがあります。
かかりやすい犬種や年齢
乳腺炎は、チワワやミニチュアダックスフンド、トイプードル、ヨークシャテリアなどの小型犬種が発症しやすいとされていますが、避妊をしていないメスなら犬種や年齢関係なく発症する可能性がある病気です。特に、授乳期は乳腺炎にかかりやすいため、細菌感染しないように清潔な環境作りをすることが大切です。また、シニアで乳腺炎を発症すると重症化しやすく乳腺腫瘍に発展する可能性があるため注意が必要です。
乳腺炎の治療方法
乳腺炎の治療には、次の3つの方法が挙げられます。
冷やすまたは温める
乳腺炎は、痛みや不快感を伴う炎症を起こす病気です。この不快感を取り除くために、炎症を起こしている部位の温湿布または冷却などを行う場合もありますが、獣医師の指示のもと、適切な方法で行うようにしましょう。
抗生剤などの投薬治療
乳腺炎の原因が細菌感染である場合は、抗生物質の投薬が行われます。また、偽妊娠による場合や細菌感染の可能性がないと考えられる場合には、消炎剤の投薬をします。
手術による治療
乳腺炎が重症化し、乳頭の炎症や化膿によって皮膚や皮下組織の壊死が起こっている場合には、乳腺の除去手術をする場合もあります。
乳腺炎を予防する方法はある?
乳腺炎を発症する可能性があるのは、子犬への授乳中です。そのため、授乳期間は部屋の中や授乳する場所を清潔にしておく必要があります。また、偽妊娠の場合は、適切な時期に避妊手術をすることで予防できます。
再発する可能性
偽妊娠での乳腺腫瘍は、ホルモンバランスの変化から起こるため、一旦治っても繰り返し発症する可能性があります。乳腺炎は、シニアになればなるほど重症化するリスクがある病気のため、出産の予定がない場合は早めに避妊手術を行うことがおすすめです。
乳腺炎を早期発見するために
主にメスが発症する乳腺炎は、その原因である授乳中、偽妊娠どちらも犬の身体にとって負担の大きい病気です。特に、授乳中の場合、子犬たちの命に危険が及ぶ可能性もあるため、早期発見、早期治療が必要です。乳腺炎はヒート後に発症するため、早期に発見するにはヒートの時期を把握しておくことが大切です。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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