犬に必要な「脂溶性ビタミン」の役割とは?知っておきたい過剰摂取や欠乏症について
ビタミンは、犬の体内機能の維持やエネルギー、細胞を作るための代謝に関わる重要な栄養素です。必要な量は少量ですが、どれか一つのビタミンでも不足または過剰になると体に不調をきたす恐れがあります。ビタミンには2つのタイプがあり、水に溶けやすい水溶性ビタミンが9種類、水に溶けにくく油に馴染む脂溶性ビタミン4種類があります。
今回は、体に蓄積しやすく過剰に摂取すると過剰症を引き起こす可能性のある脂溶性ビタミンの役割と、過剰摂取で起こる問題、必要な摂取量、摂取時の注意点などを詳しく解説します。
脂溶性ビタミンの役割って?
多くのビタミンは、犬の体内で生産されないため、食事から摂取する必要があります。また、ビタミンが不足すると犬はさまざまな体調不良や病気を発症する可能性があります。
脂溶性ビタミンと水溶性ビタミン
2種類あるビタミンのうち、今回ご紹介する脂溶性ビタミンは、腸で吸収され過剰なものは体外へ排泄される水溶性ビタミンとは異なります。脂肪に溶け、肝臓や脂肪組織に蓄積される脂溶性ビタミンは過剰症に注意が必要です。また、食物中の脂肪がこのビタミンの吸収を助けるため、低脂肪食など脂肪分の少ない食生活では、脂溶性ビタミン欠乏症になる可能性があります。
犬に必要なビタミンは14種類とされ、そのうち脂溶性ビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの4種類。この4種類の役割を知っておきましょう。
ビタミンA(レチノール、カロチン)
ビタミンAは、レバー、うなぎ、卵、バター、チーズ、緑黄色野菜などに多く含まれています。 犬は、緑黄色野菜に多く含まれているβカロチンなどのカロチノイドを体内で必要な量をビタミンAに変換することができます。小腸で吸収され肝臓に蓄積されるビタミンAは、亜鉛やアミノ酸との相乗効果によって健康な皮膚や被毛の産生し維持するのに役立ちます。
また、網膜の色素の構成成分となり、暗闇でも目が見えるようになる視覚の暗順応を正常に働かせ視覚低下を防ぐ役割があります。特に、胎児の成長に必要不可欠なビタミンであるため、妊娠中の母犬は十分に摂取する必要があります。
ビタミンD
ビタミンDは、レバー、マグロ、イワシ、かつお、天日干しのしいたけ、卵黄に多く含まれています。 ビタミンDは、犬の骨や歯を形成し再構築するために必要不可欠なビタミンで「骨のビタミン」とも呼ばれています。このビタミンには、D2~D7と6種類があり、その中でも犬にとって必要なビタミンはD2とD3の2種類です。
ビタミンDの特徴は、食べ物から摂取する方法の他に紫外線を浴びることで生成する方法があるところ。太陽の光を浴びることで、活性型のビタミンDが作られるのです。ビタミンDの最も重要な役割は、腸管からカルシウムとリンの吸収を促進し血中のカルシウム濃度を上げること。また、遺伝子の働きを調整し免疫向上にも役立ちます。
ビタミンE(トコフェロール)
ビタミンEは、アーモンドなどのナッツ類、べに花油、ごま油などの植物油、うなぎなどに多く含まれています。 その高い抗酸化作用から「若返りのビタミン」とも呼ばれているビタミンE。よりその効果を高めるためには、ビタミンCと一緒に摂ることが推奨されています。ビタミンEは、細胞膜の脂質に入り、細胞膜を守る働きがあります。
また、脂肪や細胞膜の酸化を防ぎ、ホルモンバランスなどの生体機能を調節、血行促進などに役立ちます。特に、成長期の子犬やシニア、病気の犬、スポーツドッグ、妊娠期の犬などは積極的に摂取することが推奨されています。
ビタミンK
ビタミンKは、納豆、レバー、卵、チーズ、モロヘイヤなどに多く含まれています。 ドイツ語で「血液凝固」を表すKoagulationから名付けられたビタミンKは、その名の通り、止血作用、血管を健康に保つ作用があります。
犬は、腸内細菌によってビタミンKを生成できますが、必要量としては足りないため食事から摂取する必要があります。納豆に含まれているビタミンKは、骨粗しょう症予防に役立つとされ、ビタミンDと一緒に摂取することで骨密度を増やす効果が期待できます。また、ビタミンKは、タンパク質の代謝にも関わっています。
脂溶性ビタミンは多くても少なくても体調に影響する
脂溶性ビタミンは、脂肪組織や肝臓に一定時間蓄積されるため、過剰に摂取すると過剰症を引き起こす可能性があります。サプリメントなどを摂取している場合は過剰症に注意が必要です。また、犬の生体機能維持に深く関わっていることから、欠乏しても体調不良を起こすことがあります。
過剰摂取で起こる問題
脂溶性ビタミンの大きな特徴は、脂肪と一緒に摂取することで、効率よく犬の体内に吸収されるところ。しかし、過剰に摂取することで、特に、ビタミンAとビタミンDは肝臓や脂肪組織に蓄積されるため注意が必要です。
ビタミンA(レチノール、カロチン)の過剰摂取
ビタミンAは小腸で吸収され肝臓に蓄積される性質があります。ビタミンAを過剰に摂取すると、食欲不振、関節の異常、繁殖機能の低下、体重減少などの障害が出る可能性があります。
ビタミンDの過剰摂取
ビタミンDは、他のビタミンと異なり体内でホルモンとして作用するビタミンです。カルシウムの吸収に大きく関わるビタミンですが、摂取しすぎると骨の石灰化、高カルシウム血症、腎機能低下、食欲不振、嘔吐、下痢などの症状が現れることがあります。
欠乏すると起こる問題
脂溶性ビタミンは、多すぎても少なすぎても体に悪影響を与える栄養素です。特に、脂溶性ビタミンの欠乏は犬の健康にとってマイナスとなることが多いことで知られています。
ビタミンA(レチノール、カロチン)の欠乏
βカロチンからビタミンAに変換することで有効利用する栄養素で、成長の促進、粘膜細胞の保護、目の健康、皮膚トラブルなど役立ちますが、不足すると暗いところで目が見えにくくなるなどの眼疾患、毛艶が悪くなりフケが出るといった皮膚疾患や筋肉が弱くなる、発育が悪いなどの悪影響が現れます。さらに欠乏すると、細菌やウイルスに対する抵抗力が弱まり呼吸器の感染症などが起こる可能性があります。
ビタミンDの欠乏
カルシウムとリンの吸着促進に大きく関わるビタミンDは、犬にとって重要な栄養素です。このビタミンDが不足すると、くる病や骨折しやすくなるなどの骨軟化症といった骨の病気を発症する恐れがあります。また、免疫力の低下によるさまざまな悪影響が出る可能性があります。
ビタミンE(トコフェロール)の欠乏
抗酸化作用が高く犬の健康維持に欠かせないビタミンEは、欠乏すると筋肉の衰え、毛艶が悪くなる、脱毛、皮膚病、胃腸の不調などさまざまな体調不良を引き起こす可能性があります。
「脂溶性ビタミン」の適切な摂取量とは?
脂溶性ビタミンは、脂肪と一緒に摂取することで効率よく吸収されるビタミンですが、肝臓や脂肪組織に蓄積されるため、過剰摂取に気をつける必要があります。また、健康維持のために欠かせない栄養素でもあるため、不足にも注意が必要です。犬の総合栄養食であるドッグフードには、AAFCOが定める必要最小限の脂溶性ビタミンが配合されていますが、手作り食の場合は、過不足ないように配慮する必要があります。
定められている推奨値とは
AAFCO(米国飼料検査官協会)では、ペットフードにおけるビタミンA、ビタミンD、ビタミンEについての最小推奨量を規定していますが、アメリカの研究者たちによって作られているNRC(国家研究協議会)が推奨している数値とは異なります。
参考までに、AAFCOが最低必要量としてあげている数値は、ビタミンA:1250IU、ビタミンD:125IU、ビタミンE:12.5IUとなります。NRCの推奨値は、ビタミンA:1263IU、ビタミンD:136IU、ビタミンE:11.2IU、ビタミンK:410μgとなっています。AAFCOでは、ビタミンKは犬の体内で合成されるため、必要量を記載していません。
※IUとは国際単位(International Unit)の略で、脂溶性ビタミンなどに使用される単位のことを言います。mgに換算すると以下の容量になります。
ビタミンA:1IU=0.33mcg、ビタミンD:1IU=0.025mcg、合成ビタミンE:1IU=1mg、天然ビタミンE:1IU=0.67mg
摂取する際の注意点
脂溶性ビタミンは、脂肪分と一緒に摂取することで効率よく犬の体内に取りこまれます。しかし、脂肪に溶けやすいため、過剰に摂取すると肝臓や脂肪組織に蓄積しやすいことが特徴です。脂溶性ビタミンが体内に蓄積されると、中毒症状や思わぬ病気を発症することがあるため、与えすぎには注意が必要です。
脂溶性ビタミンは過剰摂取に気をつけて
脂溶性ビタミン、水溶性ビタミンどちらも、微量ながら犬の体内での代謝に大きな働きをする栄養素。特に、免疫力を高めるビタミンはACEと呼ばれるビタミンA、ビタミンC、ビタミンEの3種類。活性酸素の働きを抑えてくれるこの3つのビタミンは、緑黄色野菜に多く含まれています。そのため、手作り食を与えている場合には、意識的に緑黄色野菜を取り入れることがおすすめです。
また、ドッグフードを与えている場合は、おやつなどで脂溶性ビタミンが過剰にならないように気をつけることが必要です。免疫力向上に役立つ脂溶性ビタミンと上手に付き合って、健康な毎日を送らせてあげてくださいね。
<参考文献>
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この記事のライター
komugi
都内で愛犬のビーグルと暮らしています。コロナ期間中に肥満体型になってしまった愛犬のために食事や運動について勉強をはじめました。面白い発見や愛犬家の皆様に役立つ情報があればどんどん発信していきます!
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