【獣医師監修】愛犬の体にできものみたいなものが。良性と悪性の見分け方や原因と治療法を解説
愛犬の体に「できもの」があるのを見つけたらびっくりしてしまいますよね。放っておいてよいのか、すぐに処置するべきなのかの判断も難しいところです。
実はできものには、良性と悪性の2種類があります。悪性のできものは、全身に転移し命に関わる場合もあります。手遅れにならないよう早めの対処が必要です。
ここからは、犬のできものの正体や発生する原因、治療法についてご紹介します。
犬の体にできものができる原因
犬の皮膚に発生するできものには、パピローマウイルスというウイルスが関係していることがあります。このウイルスによって発生するできものは、カリフラワーのような形をしているため心配になる方も多いでしょう。しかし性質は良性で、どこにでも存在している一般的なウイルスです。
では、できものができる犬とできにくい犬の違いはあるのでしょうか?ここからは、できものができる原因についてご紹介します。
原因1:できものができやすい体質だから
皮膚嚢胞(ひふのうほう)というできものは、できやすい体質があるといわれています。この皮膚嚢胞は良性で、特徴としては犬の毛穴の上の方で皮膚のなかに空間ができ、ポケットのようになります。ポケットにふたをするように皮膚が重なってしまうため膨らんで見えます。
この皮膚嚢胞は痛みはありません。しかし、何かのはずみで犬が掻いたり、咬んだりしてしまうと傷口から細菌が侵入していまい炎症を起こすことがあります。
原因2:皮膚の状態が良くないから
犬の皮膚が健康な状態のときは、パピローマウイルスにはかかりにくいといわれています。しかし、栄養が十分でないと、皮膚のバリア機能が十分に働かず、ウイルスに負けてしまうことがあります。
また、洗浄力の強いシャンプー剤を使用すると犬の皮脂を必要以上にとりすぎて、乾燥肌になってしまうことが原因でウイルスに感染してしまうことがあります。なぜなら、乾燥している皮膚表面はバリア機能が正常に働くことができず、ウイルスに侵入されてしまうからです。犬の皮膚に傷があるときも同じく感染してしまうリスクが高くなります。
原因3:高齢期になったから
犬が高齢期になると新陳代謝機能が衰えてしまうため、皮膚が生まれ変わるターンオーバーのサイクルも乱れがちです。このサイクルが乱れてしまうと、皮膚のバリア機能まで低下してしまいます。その結果、できものができやすくなってしまうのです。
良性か悪性かの判断基準は?
できものには、良性と悪性があります。犬のできもので良性のものは時間が経ってもあまり変わらず、転移の可能性は少ないことが考えられます。できものの性質によっては自然に小さくなっていくこともあります。ただし、急に大きくなったり、自分で掻きこわしたりといった行動をしないかはよく見ておきましょう。
一方、悪性のものは他の臓器に転移を起こしたり、放っておくと命に関わる場合もあるため、なるべく早く治療をすることが大切です。犬に一度に多数のできものができたり、しこりのようにかたい場合は注意が必要です。
犬のできものが良性か悪性かを調べたい場合は、まずは病院を受診し「細胞診」の検査を受けて仮診断をしてもらうのが良いでしょう。ただし、予想されるできものの種類によっては細胞診によって悪化したり、発生部位そのものが細胞診に適さないこともあります。例えば、目の周りや口の中などは、部分的な麻酔(鎮静)や全身麻酔をかけて行わないと検査そのものが困難です。
細胞診を行わない段階で、良性か悪性かを見た目で判断する材料は、色や大きさ、触った感じ、成長速度です。ただし、これはあくまで予測にすぎませんので注意が必要です。良性か悪性かを判断する目安は次のとおりです。
良性の場合
犬のできものが良性と予想される場合の特徴についてご紹介します。ただし、良性のできものであっても触りつづけていると、大きくなってくることがあります。
また、犬が掻いたり、咬んだりして傷口をつくってしまうと炎症を起こすことがあるので、注意しましょう。
- 色:白色や黄色、うすいピンク色といった明るい色
- 大きさ:直径1cm以下
- 触った感じ:やわらかい
- 成長速度:ほぼ大きくならない
悪性の場合
次に、犬のできものが悪性と予想される場合の特徴についてご紹介します。悪性の場合は、早急な治療が必要です。それほど進行が早く、ときには命に関わる場合があります。
- 色:黒色、紫色、赤黒色
- 大きさ:直径1cm以上
- 触った感じ:かたい、ゴリゴリとした感じがする、しこりのような感じ
- 成長速度:大きくなる
- できものから出血、排膿などが見られる
- 元気、食欲がなくなる
悪性のときに考えられる病気
犬のできものが悪性である場合は、腫瘍の可能性があります。はじめは小さかったイボのようなものが進行するにつれ、大きくなります。次に、代表的な犬の腫瘍を2つ挙げます。
悪性黒色腫(メラノーマ)
発見されたときには、すでに他の組織に転移していることがあるほど進行が早いのが特徴です。悪性黒色腫は高齢犬に発症することが多い病気です。
扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)
皮膚や口の中の粘膜に発生する腫瘍です。膀胱に発生することもあります。進行すると肺やリンパ節から全身に転移します。
犬のできものの治療法について
犬のできものの性質によって治療法が大きく変わります。ここからはできものの性質別の治療法についてご紹介します。
良性の場合
良性であれば経過観察を行い、自然に治るのを待つ場合もあります。良性のできもので掻きこわしなどによる二次感染を伴っていなければ、痛みは感じないことが多いです。
しかし、できものが発生している部位によっては、犬が気になり咬んだり、掻くことがあります。その結果、細菌による二次感染が起こってしまい炎症を起こしてしまうことがあります。
犬ができものを気にしている、ずっと舐めているまたは噛んでいるなら手術で取り除くことも選択肢のひとつです。
手術方法
できものの手術方法は、全身麻酔を使用する方法と麻酔を使用しない方法があります。
全身麻酔を使用する方法は、メスを使用してできものを切り取る、または医療用の穴開けパンチで元から切り取るというものです。全身麻酔を使用しない方法は、できものの根元に糸を巻き付け血流をとめ壊死させるというものです。
どちらの方法を選択するかは、できものの性質や発生部位、病院の方針によって異なります。手術を実施する前にしっかりと説明を聞き、納得してからおこないましょう。
悪性の場合
まずは犬のできものの組織を切り取り、病理検査を実施します。その結果で手術をするか、どのような薬を使用するかという治療方針が決まります。
悪性腫瘍であると確定した場合は外科手術のほか、抗ガン剤や放射線治療を行うのが一般的です。
治療について説明されるときは、愛犬がより快適に過ごすためには何ができるかといったことも相談してみましょう。
早期発見できるように愛犬の様子には気を配って
犬のできものは放っておいても問題が起きにくい良性のものと、すぐに対処しなければならない悪性のものがあります。良性のできものと悪性のできものは、それぞれに特徴があるため、判別することができる場合があります。しかし、中には難しいこともあるでしょう。
そんなときは、犬のできものについてかかりつけの獣医師に相談をしてみましょう。できものの早期発見ができるよう、日ごろから全身をチェックすることを毎日のケアとして取り入れたいものですね。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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