犬の予防接種は必要?混合ワクチンの種類・費用・接種時期を説明
犬も人間と同じように感染症にかかるため、一般的によく知られている狂犬病だけでなくさまざまな予防接種が必要です。
「感染症なんてめったにかからないのでは?」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、散歩やドッグランなどでほかの犬やその排泄物に触れるため、愛犬は日々感染症のリスクにさらされています。
もし感染症にかかってしまうと、体調不良だけでなく、最悪の場合は命を落とす危険もあります。
この記事では、わかりにくい予防接種の種類やその選び方、接種時期や副反応への対処法を紹介します。
犬の予防接種は必要?
犬の予防接種を大きく2つに分けると、接種が義務付けられている「狂犬病予防接種」と飼い主が任意で行う予防接種に分かれます。
どちらの予防接種も愛犬自身が感染するリスクだけでなく、犬同士や犬から人に感染する可能性のある病気を予防するために接種が必要です。
また、ドッグランやペットホテルなどではワクチンの接種証明書を提出しないと利用できない施設がほとんどです。
犬のワクチンの種類
では具体的にワクチンにはどのような種類があるのかを見ていきましょう。
義務ワクチン
義務ワクチンは狂犬病ワクチン1種類のみです。
狂犬病は日本では1957年以降発生してはいませんが、人も動物も発症するとほぼ100%死に至る非常に恐ろしい病気です。
そのため毎年の接種が義務付けられています。
コアワクチン
コアワクチンとは致死率が高い感染症に対するワクチンです。
高い予防効果が認められているため、すべての犬種に接種が必要とされています。
以下の感染症に対するワクチンがコアワクチンと定められています。
- 犬ジステンパー
- 犬伝染性肝炎
- 犬アデノウイルス(II型)感染症
- 犬パルボウイルス感染症
犬ジステンパー
犬ジステンパーは非常に感染力の高いウイルスです。
ウイルスは感染している犬の鼻水や唾液、血液、尿に潜んでいて、触れるだけで感染の可能性があります。
感染後はくしゃみや発熱、咳や嘔吐下痢等の症状が現れ、悪化すると脳にまでウイルスが侵入し、けいれん、発作、麻痺などの症状が現れます。
予防接種をしていない若い犬での致死率が非常に高く、有効な治療法もないため非常に恐ろしい感染症です。
犬伝染性肝炎
犬アデノウイルスⅠ型に感染すると肝炎を引き起こします。
感染している犬の尿や便、唾液にウイルスが潜んでいて、直接舐めたり、同じ食器を使った場合に感染する可能性があります。
軽症の場合は発熱や鼻水といった風邪のような症状だけです。
しかし、重症になると肝炎による肝機能の低下の影響で出血しやすくなったり、肝性脳症による痙攣や発作などの症状が現れたりします。
予防接種をしていない若い犬は突然死する可能性があり、犬ジステンパーと同様に有効な治療法はありません。
犬アデノウイルス(II型)感染症
犬アデノウイルスⅡ型に感染することで引き起こる感染症で、感染している犬と接触した場合や、飛沫で感染します。
この感染症単体では重い症状はあまりありません。
しかし、細菌やほかのウイルスも合わせて感染することで症状が重症化します。
主な症状は乾いた咳や膿のような鼻汁が出て、重症になると肺炎を引き起こす可能性があります。
「伝染性気管支炎」ともよばれる犬ケンネルコフの原因の一つです。
犬パルボウイルス感染症
犬パルボウイルスⅡ型に感染すると引き起こる病気です。
感染している犬の便や嘔吐物に触れると感染します。
直接便や嘔吐物に触れなくても、犬の食器を介して感染する可能性があるので注意が必要です。
特に子犬が感染した場合に重症化しやすく、激しい嘔吐や血便などの消化器官の異常と白血球の減少といった症状がみられます。
脱水や体重が激減した結果、急死する可能性が高いため、急いで治療を行う必要がある恐ろしい病気です。
この感染症も有効な治療法はありません。
ノンコアワクチン
ノンコアワクチンとは感染の可能性のある犬のみに接種が勧められるもので、全ての犬種に接種が必要なものではありません。
主に以下のような感染症に対するワクチンがあります。
犬パラインフルエンザ感染症
犬アデノウイルス(II型)感染症と同様、犬ケンネルコフの主な原因の一つです。
感染している犬のくしゃみや咳にウイルスが潜んでいて、口または鼻を介して感染します。
この感染症単体では重い症状はありません。
しかし、ほかのウイルスや細菌と合わせて感染することで重症化します。
抗菌薬の投与などで治療を行います。
犬コロナウイルス感染症
感染している犬の便を口にすることで感染します。
下痢や嘔吐が主な症状で、子犬は特に重症化しやすい病気です。
点滴や調整剤で治療を行います。
犬レプトスピラ症
犬レプトスピラ症は人間にも感染する病気です。
感染している犬の尿にウイルスが潜んでいて、尿が触れた水や土壌を汚染し、それらから皮膚や口、目の粘膜を介して感染します。
症状は大きく出血型と黄疸型の2種類です。
出血型の場合は発熱、嘔吐、血便、腎炎などが引き起こされます。
黄疸型の場合はけいれん、発作、黄疸や嘔吐などの症状が現れ、治療が遅れた場合は死に至る可能性があります。
治療方法は抗生剤です。
混合ワクチンで予防可能な感染症と費用
任意で接種するワクチンには単体ワクチンと混合ワクチンがあります。
混合ワクチンは、2種類の感染症から10種類の感染症を予防するものまで8つの混合ワクチンがあります。
その費用と予防できる感染症は以下のとおりです。
犬のワクチンの選び方
このように混合ワクチンには予防できる感染症が増えるほど費用も高くなります。
愛犬にどのワクチンを接種すれば良いか迷う場合は以下を目安にしてみましょう。
<5・6種混合ワクチン>
- 室内にいることがほとんど
- ほかの犬と触れ合うことがない
<8種混合ワクチン>
- 外出は散歩程度
<10種混合ワクチン>
- 外で遊ぶことが多い
- 小さな子供やお年寄りと同居している
- 山や海などアウトドアレジャーによく出かける
接種前に獣医師と相談して適切なワクチンを選びましょう。
犬の予防接種の適切な時期・回数
愛犬に合っているワクチンの種類がおおよそ理解できたと思います。
では接種のタイミングや回数について確認しましょう。
幼犬の予防接種の適切な時期・回数
幼犬の場合は母犬の初乳に抗体が含まれているため、生まれてすぐの接種は必要ありません。
この初乳に含まれる抗体を「移行抗体」と呼びます。
移行抗体はワクチンの効果を抑えてしまう作用もあるため、移行抗体がなくなるタイミングでの予防接種が効果的です。
幼犬に移行抗体が残る期間は個体差があり、早い時期に移行抗体がなくなる場合や、16週齢まで残る幼犬もいます。
そのため生まれて初めての予防接種は6〜8週齢で接種し、16週齢以上になるまでは2〜4週間ごとの接種が推奨されます。
その後は6か月齢または1歳齢に一度予防接種が必要です。
成犬の予防接種の適切な時期・回数
1歳齢を迎えたあとは1年に1回の予防接種が推奨されますが、副反応が出る場合もあるため、抗体検査をして抗体量が十分であれば接種を見送ることも可能です。
老犬の予防接種の適切な時期・回数
年齢による副反応が心配かもしれませんが、高齢というだけでワクチンの副反応リスクが高まることはないといわれています。
ですが、高齢になれば知らないうちに病気を患っている可能性も高くなり、その病気によっては副反応のリスクが高まります。
そのため老犬は小まめな健康チェックを行い、気になる症状があれば動物病院を受診しましょう。
愛犬の健康状態を把握していれば、ワクチンの副反応リスクを抑えることが可能です。
犬の予防接種の副反応と対処法
予防接種後、副反応が出る場合があります。
以下のような症状が出た場合は副反応を疑い、接種した動物病院へすぐに連絡しましょう。
また、副反応が出た場合のために予防接種は犬と一緒に過ごせる日の午前中に行い、万が一副反応が出た場合にすぐに動物病院へ連れていけるようにしておきましょう。
嘔吐
空腹時の場合はやや黄色の液体(胃液・胆汁液)、食後の場合は食べたフードを吐き出します。
吐く回数が1〜2回程度で、それ以外に症状がなく、食欲に変化がなければ経過観察で大丈夫です。
何度も吐く、ぐったりしている、下痢をしている場合は、すぐに動物病院へ相談してください。
再び吐いてしまう可能性があるため、吐いたからといってまた食事をさせるのではなく、そのまま動物病院で受診をしましょう。
下痢
下痢は持ち上げると崩れるような軟便や、泥のような状態、水のような便になります。
また、ゼリー状の粘液が便に混じっていたり、便の色が変色している場合も下痢の症状です。
嘔吐と同じように1〜2回程度でそれ以外に症状がなく、食欲もいつもどおりであれば経過観察で大丈夫です。
何度も下痢を繰り返す、ぐったりしている、嘔吐している場合は、動物病院へ連絡しましょう。
下痢の場合もフードや水は与えずそのまま受診してください。
発熱や痛み
ワクチンを打った箇所が局所的に発熱する場合と、炎症反応により全身が発熱する場合があります。
発熱した場合の症状はぐったりする、体が小刻みに震える、呼吸が早くなる等です。
痛みがある場合は触ると痛がったり、予防接種をした足を地面につこうとしなかったりという異常が見られます。
発熱、痛みともに軽度でほかに症状がなければ経過観察をしてください。
ぐったりして動かない、食欲が低下している、嘔吐や下痢を伴っている、呼吸が早い、小刻みに震えているなどの症状も見られる場合には動物病院に連絡しましょう。
便や震える様子などをスマートフォン等で写真、動画に撮って動物病院で見せるとわかりやすく伝えられます。
呼吸困難
呼吸が早くなったり、呼吸困難になったりする場合があります。
やや呼吸が早くなる程度で、ほかに症状がなければ経過観察をしましょう。
呼吸がかなり早くなっている場合や、ほかにも下痢、嘔吐、痛そうにしている、いつもと違う呼吸音がした場合は動物病院に連絡してください。
特に舌の色が白や紫に変化している場合は、血液中の酸素が不足している危険な状態です。
すぐに動物病院へ連絡して受診しましょう。
痙攣
痙攣の代表的な状態は、全身が突っ張ったように手足をピンと伸ばしたままの状態が続くか、手足を曲げてガクガクと震わせながら激しく動かす状態です。
この2つの状態がどちらも見られる場合もあります。
愛犬が痙攣している姿はとてもショッキングなので、パニックになってしまう方も多いです。
ですがこの状態は数秒から2~3分で治まることが多いため、まずは落ち着いて痙攣している愛犬の周りにあるものを片付け、愛犬の体がぶつかって怪我をしないようにしましょう。
痙攣と似た状態で「震え」があります。
震えの場合は立ったままやうずくまった状態で手足を小刻みに震わせていて、呼び掛けには反応します。
痙攣と思われる症状が出たら、その状況を動画に撮り、痙攣が落ち着いてから動物病院へ連絡、受診をしましょう。
痙攣と震えは間違えることが多いため、正確な症状を伝えるために動画が役立ちます。
まとめ
犬を飼い始めたときは「どこに連れて行こう?」「どんなおもちゃを気に入ってくれるかな?」など楽しいことで頭がいっぱいになる方も多いでしょう。
ですが飼い主として犬の健康管理が何よりも重要です。
「大丈夫」だと思っていても、愛犬が生活する環境にはウイルスがたくさん潜んでいて、感染症にかかると最悪の場合命を落とします。
新しい家族になった愛犬に一日でも幸せでいてもらえるように、必要なタイミングできちんと予防接種を行いましょう。
この記事のライター
momo
動物に関わる仕事がしたいと思い、トリマーを目指して勉強中です。犬にまつわる疑問などについて発信していきます。
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