【獣医師監修】犬も破傷風にかかる。症状から原因、治療法まで
「破傷風」と聞くと、人間が犬や猫に噛まれたり引っかかれることで発症する病気、というイメージがあるのではないでしょうか。あまり知られていませんが、犬も破傷風にかかる場合があります。
この記事では、犬が破傷風にかかってしまう原因や治療法、予防法などについてご紹介します。
犬の破傷風について
皆さんは破傷風という病気を聞いたことはありますか?
破傷風は、土壌中に広く存在する破傷風菌が傷口から体内に侵入することで感染します。破傷風菌から産生される神経毒は、「テタノスパスミン(別名:テタヌストキシン)」と呼ばれ、毒性は極めて強く、動物種によってこの毒素に対する感受性が異なります。テタノスパスミンが神経を障害することにより、さまざまな神経症状が引き起こされます。
破傷風は人獣共通感染症であり、馬や牛、人間、犬などが感染しますが、抵抗性がもっとも低い馬と比べ、犬は600倍ほど抵抗性があるとされています。
人間の場合は、生後3ヶ月から4週間隔で3回受ける「4種混合ワクチン」で予防を行っています。
万一、人間が感染して発症した場合、特徴的な症状としては、開口障害、首筋の張り、顔の筋肉のこわばりが初期に見られます。続いて、筋肉の痙攣発作などが起きてきます。自律神経の異常によって、呼吸不全や突然の心停止など、命に関わる症状を引き起こすこともあります。
犬の破傷風の症状
破傷風の潜伏期間は、数日~2週間くらいと言われています。口が開きにくくなる、よだれを垂らす、食べ物が飲み込めなくなるなどの神経症状を示し、全身性の痙攣が起こり死に至ることもあります。
他の犬や人間にうつる?
破傷風は、感染した犬から直接同居する犬や人間にうつる、という病気ではありません。
ただし、犬が破傷風菌が存在する土を舐めることで犬の舌に破傷風菌が付着し、その口で他の犬や飼い主さんの手などに咬みついたことで傷を負うと、咬まれた犬や人間が破傷風に感染する可能性があります。
犬が破傷風に感染する経路は?
犬が破傷風に感染する原因についてご紹介します。
破傷風菌は傷口から感染する
散歩中にすり傷や切り傷を負うことや、事故による開放骨折、他の犬や猫との喧嘩による外傷から、破傷風菌が感染して発症します。すぐに治ってしまうような小さな傷から感染することもあるので、動物病院を受診した時には既に傷が見当たらず、感染した原因やきっかけが分からないこともよくあります。
かかりやすい犬種や年齢
破傷風に感染しやすい犬種や年齢は特にありません。犬が外傷を負っている場合には注意が必要です。
破傷風の治療方法やかかる費用の目安
破傷風の毒素をコントロールするための抗毒素血清の投与や抗菌剤の投与、筋硬直を緩和するための投薬のほか、対症療法として脱水を改善するための輸液療法、呼吸困難になった場合の酸素吸入、外傷の洗浄、消毒などの処置が行われます。
また、破傷風にかかると接触や音、光などの刺激に敏感になり、これらの刺激によって筋硬直が悪化する可能性があるため、暗い静かな場所で安静にします。
予後について
診断後、すぐに治療が開始された場合はおよそ4週間で回復すると言われていますが、中には完全に回復するまで3ヶ月ほどかかるケースもあります。重篤な場合は、積極的な治療が施されても命を落とすことがあります。
治療にかかる費用
破傷風は病原体の存在を証明することが困難です。迅速に治療が求められる病気であるため、飼い主さんから発症するまでの経緯を聞いたり、一般的な血液検査やレントゲン検査で他の病気の可能性を排除し、診断・治療を行います。病院によって幅はありますが、一般的な検査費用や抗菌剤の投与などに、1万円~数万円程度かかると考えられます。
破傷風に感染しないようにするには
人間や馬には破傷風のワクチンがありますが、犬用のワクチンはありません。犬が怪我を負っているときに土壌から感染する危険があるので、怪我をした後には適切に手当てすることが大切です。
再発する可能性
人間の破傷風では再発の可能性があることが分かっています。犬は破傷風の発症自体がまれであり、再発の可能性についてはよく分かっていません。
小さな怪我でも十分注意しよう
破傷風は、破傷風菌が産生する神経毒によって神経症状を引き起こす危険度の高い病気です。傷口から感染するので怪我には十分注意し、犬が傷を負った時には、小さな傷であっても安易に様子を見ずに、動物病院で治療を受けましょう。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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