【獣医師監修】犬の歯周病について|重度の場合は抜歯が必要?知っておきたい治療法の選択肢
皆さんは、もし愛犬が歯周病になったとしたら、治療のための抜歯であれば厭わない派ですか?もしくは、抜歯には抵抗がある派でしょうか?
犬の歯周病は、症状の進行具合によっては獣医師から抜歯を勧められることがあります。一度失った歯は元には戻らず、また抜歯するにあたって全身麻酔をかけるので、抜歯という選択肢に踏み切れないという飼い主さんも多くいらっしゃるかと思います。
そこで今回は、犬の歯周病について詳しく解説します。また、動物病院選びのポイントも頭に入れておきましょう。
犬の歯周病治療における抜歯に対する考え方
犬の歯周病治療では、重度の歯周病で抜歯という選択になることが多いです。例えば、歯肉が後退して歯根(歯の根元)の露出がひどく、歯のぐらつきがひどい場合や、歯根周辺に根尖周囲病巣を起こしている歯がある場合などです。
犬の抜歯賛成派の意見
それ以外に、歯周病が重度であり歯を温存することができても、犬が歯磨きを嫌がってできないという場合は、抜歯することを選択肢の1つとして提示することがあります。犬の年齢によっては、数年後に再び歯周病を患ったときに、全身麻酔のリスクがさらに高くなる可能性があるからです。犬は、人間のように咀嚼してごはんを食べないので、歯がなくても問題ないと飼い主さんに説明する獣医師もいます。
犬の抜歯反対派の意見
その一方で、できる限りの治療をし、抜歯は致し方なく決断する最終手段と考え、ご自宅でのオーラルケアを行うことで歯周病の進行、再発を予防するように勧める獣医師もいます。
というのも、抜歯をすれば歯周病が起きないわけではないので、術後に自宅でのオーラルケアができなければ、結局のところ歯周病は繰り返し起こるためです。口腔内環境の悪化は犬の生活の質(QOL)の低下にもつながることから、安易に抜歯を提示することはしません。
このように抜歯に対する考え方は、獣医師によって違いがあることを覚えておきましょう。
人間の歯科では「抜歯」は最終手段
人間の歯科の歯周病治療においては、抜歯は治療がどうしても施せないときの最終手段で、治療をして症状が悪くなるのを防ぎ、歯をできる限り残す方向で治療が進められます。
犬の歯周病治療においても、多くの獣医師は同様の考え方を持っています。しかし、犬の歯周病治療は麻酔下で行うことが多く、何らかの理由により麻酔がかけられない、もしくは飼い主さんが麻酔をしての治療を希望しない場合は、歯を温存できる状態であっても、口腔の適切な治療のために、抜歯に至ることも少なくありません。
抜歯以外の治療法について
先述の通り、犬の歯周病治療において抜歯はあくまでも重度の場合です。歯の温存が可能な場合は、歯の表面や歯の裏側、歯周ポケット(歯と歯肉の隙間)内に溜まった、歯周病を悪化させる要因である歯石を除去して、口腔内を徹底的にきれいに処置します。そして、自宅では毎日歯磨きを継続して、病気の再発を予防していきます。
ここでは、歯周病治療にかかる費用や通院頻度の目安について見ていきます。
治療にかかる費用の目安
犬の歯周病治療にかかる費用は、初期の歯周病で4~5万円、中程度の症状で5~6万円、重度の場合で7~10万円ぐらいが目安です。症状の進行具合や犬のサイズによって異なるので金額に幅があります。
通院頻度・期間の目安
犬の歯周病治療はほとんどの場合、全身麻酔をかける前に実施する事前検査(血液検査、レントゲン検査、心電図検査など)から治療まで日帰りで済むことが多いようですが、病院によって異なります。治療を行う前に身体検査や血液検査などをして、全身麻酔をしても大丈夫な状態なのかをしっかりチェックしてから治療を行います。
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犬の歯周病治療は動物病院選びが大切
歯周病が重度の場合、獣医師によって治療方針が異なることも珍しくありません。そのため、動物病院選びは慎重に行うことをおすすめします。
例えば、治療をして歯を温存し、しっかりと自宅でのオーラルケアをしていくことを勧める獣医師もいれば、歯石除去をしても決して良いとはいえない状態の歯を温存するより、抜歯をしてあげたほうがその子の生活の質(QOL)が向上すると勧める獣医師もいます。
決して、抜歯を勧めるのが悪い動物病院というわけではありません。抜歯をしたら当然ながら元の状態には戻らないので、以下のポイントを押さえたうえで動物病院を選ぶことが大切です。
予防歯科にも力を入れている
歯周病の治療をしたとしても、自宅で飼い主さんが愛犬のオーラルケアがきちんとできなければ再度、歯周病になってしまいます。そのため、歯周病の治療だけでなく、歯周病にならないように飼い主さんにオーラルケアのアドバイスをしっかりと行い、予防歯科にも力を入れている動物病院を選ぶことが重要です。
歯磨きのやり方や、歯磨きを嫌がる場合の対処法などを指導してくれる動物病院や、飼い主さん向けにオーラルケアの講習を開催している動物病院を選ぶことをおすすめします。
セカンドオピニオンを聞く
どの歯周病の治療が愛犬にとって最善なのか判断が難しい場合は、かかりつけの獣医師以外に、他の獣医師にも相談してセカンドオピニオンを聞くのもよいでしょう。複数の意見を参考にしたうえで治療をお願いする動物病院をご自身で決めることで、納得できる治療を選択できます。
歯科専門の獣医師に相談する
麻酔のリスクが心配な場合や、愛犬に元々基礎疾患があり麻酔をすることができない場合は、歯科専門の獣医師に相談することをおすすめします。
参考までに、東京都小平市にある花小金井動物病院の院長林一彦先生は、獣医師と人間の歯科医師免許を有し、ペットの歯科治療を専門で行っています。
通常、歯石除去は超音波スケーラーを使用して麻酔下で行うのが一般的です。歯の裏側や歯周ポケット内の歯石除去はとても細かい作業で、犬が動いてしまうと口の中を怪我する恐れがあるので、麻酔をしないと治療が困難だからです。
花小金井動物病院では、人間用の歯科治療に使用するスケーラーを用いて無麻酔で行います。歯周ポケット内に付着した歯石もよほどひどくない限り、麻酔なしで除去することができます。さらに犬を無理に押さえつけるようなことはなく、犬を安心させながら治療を行います。
このように人間の歯科医師免許を持つ獣医師は、技術の高い動物歯科治療ができるので、歯周病治療を諦めている飼い主さんは相談してみるのもよいでしょう。
愛犬のためにも治療法は慎重に決めましょう
愛犬が重度の歯周病の場合、抜歯も選択肢の1つとして勧める動物病院は少なくありません。しかし、愛犬のオーラルケアができる、もしくは獣医師から指導してもらえばできそうという場合は、歯を残す方向で治療をし、毎日歯磨きをして歯を維持していくという選択もあります。抜歯をするかどうかは、いろんな方の意見を聞いて、飼い主さんが慎重に決めることが重要です。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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