【獣医師監修】犬の身近に潜む危険|猛毒「カエル中毒」に要注意!
道端や公園にいたカエルを、愛犬が反射的にパクッとくわえてしまった、という経験はありませんか?すぐに口から取り出そうとしても、取られまいと丸飲みにしてしまうケースもありますが、犬がカエルを口に入れて飲み込んでしまうと、重篤な症状が現れる可能性もあるので、散歩中・ドッグランなどでは注意しなければなりません。
この記事では、犬がカエルを口にしてはいけない理由と、食べてしまった場合に起こりうる不調、また、その対処法について解説します。
犬がカエルを口にすると危険な理由
犬がカエルを体内に入れることで問題になるのは、主に「カエル中毒」と「寄生虫感染」です。
中毒を起こす可能性
日本全国でよく見かけるヒキガエルやアマガエルは、毒性物質を持っていることが分かっています。
特にヒキガエルは、犬がカエルをくわえるなどして刺激を与えると、身を守るために耳下線(耳の辺りの唾液腺)や皮膚から強力な毒素を分泌します。この毒素は「ブフォトキシン」というもので、犬の体内に吸収されると中毒を起こします。カエルを引き離そうとして飼い主さんが触ってしまった場合も、よく手洗いを行ってください。
寄生虫感染
毒性物質を持っていないカエルであっても、高い確率で「マンソン裂頭条虫」という寄生虫に感染しています。
マンソン裂頭条虫は一般的に「サナダムシ」とも呼ばれる虫で、成虫になると体長1m、体幅1.2cmにもなる乳白色の長い虫です。犬の体内に入ると小腸に頭を突き入れて吸着します。
マンソン裂頭条虫は、人間にも感染する恐れがある人獣共通感染症で、人体の各組織内に寄生して病害をもたらします。仮に幼虫が寄生した場合、移動性で無痛性の腫瘤が形成されます。腫瘤の他にも寄生部位によりさまざまな症状が見られます。また、ごくまれに人体内で成虫になった場合は、その成虫による障害を受けることがあります。
犬がカエルを食べてしまった際に考えられる症状
犬がカエルを食べた場合に考えられる症状には、次のようなものがあります。
カエル中毒の症状
カエルが毒性物質を持っていた場合、よだれ、口から泡を吹く、嘔吐、下痢、呼吸困難、運動麻痺、虚脱、発作、意識不明などの重篤な症状が現れ、最悪の場合は命を落としてしまいます。強力な毒素であるため、大型犬でも2~3時間後に死に至ることがあると言われています。
寄生虫感染の症状
マンソン裂頭条虫に感染しても多くの場合は無症状で、症状が現れた場合は軟便、食欲があるのに体重が増えないなどの症状が見られます。
多数寄生した場合には慢性的に軟便や下痢が続いたり、ときに腸管内に虫が詰まって腸閉塞を起こすこともあります。腸閉塞を起こした場合には食欲不振や頻繁な嘔吐、お腹が膨れるといった症状が現れます。
消化不良
食べたカエルが毒性を持っておらず、寄生虫が感染していなかった場合はそれほど問題ありませんが、食べ慣れない異物を食べることで消化不良を起こす可能性はあります。この場合、一時的な嘔吐や軟便などの症状が見られますが、症状が長引いたり、ひどい下痢をするような場合は動物病院を受診しましょう。
犬がカエルを食べてしまった際の対処法は?
犬がカエルで遊んでいたら、すぐに引き離しましょう。口にくわえてしまったり、舐めたり、飲み込んでしまった場合は次のように対処する必要があります。
応急処置
まだ口の中にくわえている状態であれば、口を開けて取り出しましょう。おやつやお気に入りのおもちゃがあれば、交換で放してくれるかもしれません。カエルの毒素が口から吸収されないよう、ペットボトルの水やホースで口の中を十分に洗うことが重要です。
応急処置後は、なるべく早く動物病院を受診しましょう。
また、飼い主さんにカエルの毒性物質が付着したり、マンソン裂頭条虫が感染したりしないように、カエルの取り扱いには十分注意してください。
動物病院を受診する
カエルが毒性物質を持っている可能性を考えると、迅速な対処が必要です。食べてすぐであれば吐かせるための処置や、口内の洗浄が行われます。カエル中毒に対する特効薬はないので、症状に対する治療が行われます。マンソン裂頭条虫症に対しては、駆虫薬が使用されます。
拾い食いをさせないためのしつけを
愛犬に故意にカエルを与える飼い主さんはいないと思いますが、犬は飛び跳ねたカエルや道端で干からびたカエルを興味本位で口に入れてしまうことがあります。カエルを体内に入れることで犬の身体に悪影響を及ぼすことがあるので、飼い主さんは気をつけなければなりません。
外出時の拾い食い癖に注意
カエルがいるような場所では犬から目を離さないようにし、犬が拾い食いしそうになったときはリードを引いて食べさせないようにしましょう。
また、カエルに限らず、お散歩コースや公園などには犬が口にしない方が良いものがたくさん存在します。子犬の頃から「拾い食い」をさせないようにしつけましょう。くわえてしまった場合にもコマンドで離すようにしつけておくことも大切です。
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身近な危険から愛犬を守るために
カエルとの遭遇を完全に防ぐことは困難です。散歩中はリードを短く保持し、犬の動きをコントロールする、拾い食いしないようしつけるなど、飼い主さんが気を付けてあげなければなりません。もしカエルを食べてしまった場合には、早めに動物病院を受診しましょう。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!