【獣医師監修】愛犬の目に傷がついている?考えられる病気と対処法について解説します
愛犬が目を瞑り気味にしていたり、目ヤニが多くて心配になった経験はありますか?犬の目に傷があることに、飼い主さんが目視で気づけることはそう多くはありません。万が一目に傷がついてしまった場合、眼球にさまざまな症状が見られます。また、目を気にするしぐさで異常に気がつくこともあります。今回は、犬の目に傷があるときの原因や症状、考えられる病気と対処法を解説していきます。
犬の目に傷がある場合の原因について
犬の目に傷ができる原因にはいろいろなものがあります。いくつかの考えられる原因を見ていきましょう。まずは代表的な原因を3つご紹介します。
原因1:外傷によるもの
目の外傷で多いのが、散歩や家の中などで走ったり遊んだりしているときに、何かにぶつかって傷つけてしまうケースです。特に、もともと鼻が短い短頭種に多く見られます。
中には、硬くて長いジャーキーを食べているときに、口から飛び出したジャーキーが目に当たって傷を負ったケースもあるようです。
また、他の犬とのケンカや交通事故などで目を損傷することもあります。
原因2:角膜の病気や損傷
角膜炎や乾燥角結膜炎(ドライアイ)、角膜潰瘍など、角膜の疾病によって角膜が炎症を起こしたり、傷ついたりすることがあります。特に角膜潰瘍は角膜に穴が開く眼球穿孔を起こし失明してしまうこともあるので、早期発見・早期治療が大切です。角膜は傷が浅いほど強く痛みを感じるといわれており、目をシバシバさせたり、目を開けるのが辛そうにしていたらすぐに獣医師の診察を受けましょう。
原因3:外部からの刺激や異物の侵入
目にシャンプーや砂、ほこり、虫、花粉、草などの異物が入って傷つくことがあります。また、長期にわたる逆さまつげの刺激によって眼球の表面を傷つけてしまうケースも見られます。さらには、疾病や手術による顔面神経麻痺でまばたきができなくなることで、目が乾燥して表面を傷つけてしまうことがあります。
要注意な症状と、考えられる病気・対処法
愛犬が以下のような症状を見せている場合、飼い主さんは特に注意が必要です。
- しきりに目をこすったり、掻くしぐさをする
- 目がしょぼしょぼしている、眩しそうにする
- 目を瞑ったままにしている
- 涙がいつもより多い(興奮したときにたくさん涙が出る)
- 瞳の表面が白または黒く濁っている、あるいは窪んでみえる
- 角膜に小さな穴があいている(ように見える)
- 目ヤニが多い、色がいつもと違う
考えられる病気と対処法は?
上記のような症状が見られたり、明らかに目を気にするしぐさをしたり、また角膜にはっきりと異常がみられるようなときに考えられる病気には、どのようなものがあるのでしょうか。
そのときの対処法も併せて見ていきましょう。
角膜潰瘍
犬の角膜潰瘍は目の角膜に潰瘍ができる疾病です。ドライアイなどで目が乾いたり、異物や外傷などで角膜に傷がついたりすることから発症します。
潰瘍ができると涙や目ヤニが増えて、痛みのために目をしきりに擦り付けたり、瞬きの回数が増えてショボショボさせたりします。細菌感染が進むと角膜に穴が開き失明してしまうこともあります。
<対処法>
角膜潰瘍には単純な潰瘍から複雑な潰瘍、難治性の潰瘍まであり、それぞれの進行具合によって治療法が異なります。潰瘍の浅い単純な角膜潰瘍の場合は、抗生剤や角膜保護成分の点眼薬の投与で3日から1週間ほどで良くなることもあります。
複雑な角膜潰瘍になると点眼治療の他にも、外的要因(刺激や目の乾燥など)に対する治療や処置が行われます。また、自己血清点眼、アセチルシステイン、抗生剤の内服、コンタクトレンズやエリザベスカラーによる患部の保護などが行われることもあります。
難治性の角膜潰瘍の場合は、内科的治療の他に潰瘍部分を周囲の結膜や瞬膜で覆う外科手術を行うことがあります。角膜潰瘍の状態や手術内容によっては、眼科専門の獣医師に依頼されることもあります。
角膜潰瘍は細菌感染から角膜が溶け、急速に角膜穿孔に進んでしまうことがあります。角膜穿孔にまで進行してしまうと、状況によっては眼球摘出にまで及んでしまうことがあります。
角膜潰瘍はきちんと治療を行っていても、数日のうちに病状が進行してしまうこともあります。早期発見・早期治療はもちろんのこと、状況観察を怠らず完治するまでしっかりと治療を続けることが何よりも重要です。
乾性角結膜炎(ドライアイ)
犬の乾性角結膜炎(ドライアイ)は、免疫異常から涙腺や瞬膜腺が破壊され涙が出なくなることで発症することが多くなっています。
また、短頭種のように目が出ている犬種は完全にまぶたを閉じることができず、角膜が常に露出した状態で乾いてしまったり、涙の分泌が悪く眼球の潤いが少なくなってしまうことから起こりやすい傾向にあります。
<対処法>
免疫異常からの乾性角結膜炎(ドライアイ)は、免疫抑制剤の「シクロスポリン」を点眼したり眼軟膏を使用したりして治療します。シクロスポリンの内服薬や抗生剤を併用投与することもあります。免疫異常からの乾性角結膜炎(ドライアイ)の場合は、シクロスポリンでの治療で改善することが多いのですが、治療を始めて2ヶ月たっても良くならない場合は改善は難しいといわれています。その場合はタクロリムスなどの他の免疫抑制剤を使って治療していきます。
涙液量の増加が見られたら点眼や眼軟膏の回数を減らしていきますが、止めると再発することが多いので、定期的な検査と治療の継続が必要です。犬の乾性角結膜炎(ドライアイ)は角膜潰瘍を起こしやすく、急速に進行することがあるので注意が必要です。
角膜炎
犬の角膜炎は、黒目を覆う角膜が炎症を起こす病気です。
原因としては外傷によるもの、逆さまつげ、ウイルスや細菌感染、ドライアイ、結膜炎などによるものが考えられます。症状は目の痛み、目ヤニ、涙の増加などがあり、重症になると角膜の白濁や色素沈着、潰瘍が見られるようになります。
<対処法>
逆さまつげや眼瞼内反症、眼瞼腫瘍などからくる慢性刺激が原因の場合は、まつげの除去やまぶたの内側への巻き込みや腫瘍を外科治療するなどして慢性刺激を取り除きます。また、細菌感染などの場合は、抗生剤などの点眼薬で治療をおこないます。
角膜炎は様々な原因から発症し、それによって経過や治療法が異なります。角膜潰瘍を起こしたり、色素沈着により視力が低下してしまうこともありますので、早期発見・早期治療で重症化を防ぎましょう。
早期発見・早期治療が一番の対処法。異変を感じたらすぐに病院へ
犬の目に傷があるとはっきり分かるのは外傷のときくらいで、ほとんどの傷は肉眼で見つけることができません。目が充血している、ずっと目をシバシバさせている、目ヤニや涙が増えるといった症状から異常を感じることがほとんどです。軽症の結膜炎のことも多いのですが、軽い症状から急に重い角膜潰瘍や角膜穿孔に進行することがあります。
愛犬がしきりに目を気にしたり、目にいつもと違う症状を見つけたら、軽く見過ごさず、すぐに動物病院に連れていきましょう。治療を始めたら、症状がなくなったからと途中で治療を止めたりせず、しっかりと完治するまで治療を続けることが大切です。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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