【獣医師監修】犬の認知症について|知っておきたい原因や症状と予防法
人間だけでなく、犬も発症する認知症。飼育や食餌などの環境変化、獣医療の発達などによって犬の寿命が延び、高齢化が進んだことで、認知症になる犬は増加傾向にあると言えます。認知症は放置するとどんどん進行してしまうので、いつもと違う行動をしていると思ったらすぐに獣医師へ相談しましょう。
今回の記事では、犬の認知症の症状や治療法、日常生活でも取り入れられる予防法を解説していきます。
犬の認知症について
犬の認知症は正式名称を認知機能不全症候群(にんちきのうふぜんしょうこうぐん)と言い、認知機能が低下することで起きる行動の変化全般を指します。少しずつ症状が進行していくケースが大半です。
しかし、環境の変化や急な騒音、他の病気を発症して回復した時など、急激に悪化してしまう場合もあります。犬に認知症の疑いがある時は、早急に獣医師に相談し、症状の改善や進行を遅らせるための対策を検討しましょう。
認知症の主な症状
以下に挙げられるような症状が見られる場合、認知症の可能性があります。
- 名前を呼んでも反応がない
- トイレの失敗が増えた
- 常にぼんやりとした感じで、無反応なことが多い
- 「マテ」や「フセ」などができなくなる
- 触れようとするとおびえたり、怒ったりする
- 同じ場所をぐるぐると回っている
- 狭い場所に入った時後ろに下がれず、自力で戻れない
- ご飯を食べたばかりなのに、すぐに食べたがる
- 生活リズムが乱れ、夜鳴きをする
認知症にかかる原因
認知症になってしまう原因の詳しい部分は解明されていませんが、以下に挙げられる要因が関係すると考えられています。
加齢
加齢によって脳に形成される老人斑(ろうじんはん)が、認知症の原因となっている可能性があります。老人斑とは、アミロイドβと呼ばれるタンパク質が、神経細胞と神経細胞の間に蓄積したもの。この老人斑は、脳の機能低下や神経細胞の減少を引き起こすと言われています。
脳の障害
脳梗塞や脳腫瘍、ジステンパー脳炎、脳出血、水頭症など、脳の障害が認知症の起因となってしまう場合もあります。
犬種や年齢によって認知症になりやすい?
犬の認知症は個体差があるものの12~13歳頃から症状が出始め、15~16歳頃にピークを迎えることが多い傾向にあります。小型犬に比べて寿命が比較的短い大型犬では、7~8歳頃から注意しましょう。
認知症は犬種や体のサイズを問わず発症する可能性がありますが、特に20歳近くまでの長寿であることが多い日本犬、中でも柴犬がかかりやすいと言われています。
犬の認知症の治療方法
残念ながら、現段階では特効薬が存在しない犬の認知症。そのため、症状の緩和や進行を遅らせる対処を行います。ここでは食餌療法や生活習慣の改善、薬物療法など犬の認知症の治療法について見ていきます。
サプリメント
認知症の症状は、抗酸化作用のあるβカロテンやビタミンC、ビタミンEなどの成分、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)といった脂肪酸の摂取により改善する可能性があります。これらの成分をきちんと摂取できるサプリメントや食餌を与えて、認知症の改善を図ります。
場合によっては精神安定剤も
また、脳の動きを活発にしてくれる神経伝達物質を増やす薬や、認知症の代表的な症状のひとつである夜鳴きを抑えるため鎮静剤を投与することもあります。正常な体内時計になり、夜にしっかり眠れるようになれば、鎮静剤を飲む必要はありません。
ただし、必ずしも投薬をしたからといって認知症の症状が緩和されるわけではありません。まずは夜に睡眠を取れるよう、日中遊んだり散歩をしたりして、たくさん活動するようにすると良いでしょう。
治療にかかる費用
認知症の治療にかかる費用は、病院によってさまざまです。認知症と関連がありそうな、他の脳疾患や内臓疾患などはないのか調べるための検査を行う場合もあります。行動療法などで改善を期待する場合、カウンセリング料も発生する場合もあります。治療に必要な薬が処方されれば、別途その費用もかかります。
認知症が疑われる場合は、かかりつけの獣医師に、診断が下った場合にはどのような方針でどのような治療を行うのかという方向性と、大まかにかかる費用を相談しておくことをお勧めします。
治ったと思っても再発する
犬の認知症は現在の獣医療では完治できないものなので、症状が落ち着いたからといって治療を中断したら、再発または悪化してしまうことも少なくありません。もし、また認知症の症状が表れた場合には、獣医師へ早めの相談をすることが大切です。
犬の認知症を予防するためにできることは
犬が認知症になる詳しい原因は解明されていませんが、普段の生活の中で簡単に出来る行動が、認知症のリスクを下げてくれる可能性はあります。認知症を予防するための行動を知って、日常生活に取り入れてみましょう。
脳へ適度な刺激を与える
認知症の予防として有効なのが、脳への適度な刺激です。犬の脳に刺激を与える方法はいくつかあります。
例えば、スキンシップをたくさん取る、散歩コースをいつもと違う道にする、知育玩具を使って遊ぶ、他の家族や犬と触れ合うなどです。
日々の適度な運動
認知症のリスクを高めてしまうのが、筋力低下により体を動かせなくなることです。激しい運動でなくてもかまわないので、毎日の散歩などで筋力の低下を防ぎましょう。
介護グッズを活用しよう
認知症が進行すると、介護が必要になってくる場合もあります。そんな時使いたいグッズをご紹介します。
サークルを活用する
認知症の代表的な症状である旋回運動(せんかいうんどう)や、家具に頭をぶつける、隙間に入り込んで出られなくなるなどの場合には、円形のサークルを活用するのがおすすめです。
障害物がなく歩きやすいサークルは、犬の気が済むまで安全に歩き回れる場所として最適。折り畳めるタイプや洗えるタイプもあるので、使いやすい商品を選びましょう。サークルはなるべく柔らかい素材のものを選んで、ぶつかっても平気なものにしておくと、外傷などのリスクを防げて良いかもしれませんね。
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愛犬が認知症を患っても変わらない愛情を
犬が認知症を発症したことを受け入れるのは、簡単ではありません。動きや様子が今までと異なる犬の姿に戸惑ってしまう方も多いでしょう。
しかし、認知症の発症は長生きしてくれている証でもあり、根本的な治療ではなくとも症状の改善や進行を遅らせる方法はたくさんあります。
獣医師と協力して、治療していくのはもちろん、運動など適度な刺激になることを日々の生活に積極的に取り入れ、認知症と上手に向き合っていきましょう。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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