犬が舌を出す理由は?舌の状態から見る健康チェックポイントも解説
愛犬が舌を出している様子はとても愛らしいですが、どんな理由で舌を出しているのでしょうか。
今回は犬が舌を出す理由を解説します。
舌が出ているときに観察できる健康チェックポイントや体調が良くない場合の舌の出し方も紹介していますので、ぜひ最後まで見てみてください。
犬が舌を出す理由
犬が舌を出す理由として考えられるのは、以下の7つです。
- 体温調節
- 興奮や緊張
- リラックス
- 満腹のサイン
- ストレス
- 病気
- 歯並びの影響
それぞれの理由について順番に見ていきましょう。
体温調節
犬が舌を出す理由として考えられるのは、体温調節です。
舌を出し全身で荒く呼吸している状態をパンティングと呼びますが、犬はパンティングをすることによって身体の中の熱を逃がし、体温を下げています。
体温を下げるために舌を出す理由としては、犬は汗を分泌するための汗腺が鼻先や肉球、耳の中など一部にしかないためです。
私たち人間であれば暑くなったときは汗腺から汗を出し、気化熱で身体の熱を冷ますことができますが、犬はそれができません。
大きく口を開けて舌を出し、身体の中の熱と外の涼しい空気を入れ換えるためにパンティングを行っているのです。
激しくパンティングをしていると飼い主さんとしては心配になると思いますが、体温が下がるにつれて落ち着いてくるようであれば心配ありません。
より早く体温を下げられるよう、運動後や気温が高い時は日陰の涼しい場所に連れて行きお水を飲ませてあげるなど、飼い主さんも愛犬の体温を下げるようサポートしてあげましょう。
興奮や緊張
犬が舌を出す原因として考えられるのは、興奮や緊張です。
私たち人間と同じように、犬も興奮や緊張を感じると心拍数が増加し、体温や脈、呼吸数が上がります。
上記のパンティングと同じように上がった体温を下げようと舌を出していることが考えられるのです。
ただし緊張感があまりにも強い場合、口元を引き締めて舌を出さない場合も考えられます。
犬が緊張しているかどうかは、あくびをしたり鼻を繰り返し舐めたりするなど、自身を落ち着かせようとする行動が見られるかで判断できます。
愛犬の緊張を解くには撫でたり話しかけたりすることが有効です。
緊張の原因が分かっている場合は遠ざけるなど、犬がリラックスして過ごせるように配慮してあげましょう。
リラックス
舌を出す理由のひとつに興奮や緊張と前述しましたが、犬はリラックスをしていても舌を出します。
顔の筋肉が緩み、口元から舌が出ている状態を想像していただければ分かりやすいのではないでしょうか。
愛犬がリラックスしているかどうかは舌を出す仕草のほかにも、仰向けになっていたりテリトリーである部屋の真ん中でくつろいでいたりすることでも判断できます。
愛犬が自分の前でそんなリラックスしている姿を見せてくれたら嬉しいですよね。
飼い主さんは愛犬がリラックスしていると感じたら、邪魔をせず一緒の空間で過ごすことを楽しみましょう。
満腹のサイン
犬が舌を出す原因は、満腹のサインである場合もあります。
満腹を感じている場合は、フードを食べた後にゆっくりと口の周りを舐めるなど、体温調節や興奮などと少し違った様子が見られるでしょう。
いかにも満足しているといった様子に、微笑ましくなってしまうかもしれません。
しかし犬が出す満腹のサインに気付かずフードを与えすぎてしまった場合、消化不良を起こして嘔吐や下痢などの症状を起こしたり、肥満に繋がったりする恐れもあります。
満腹のサインは舌を出すほかにも、満足げにため息をついたり、床を背中にこすりつけたりする行動が見られます。
飼い主さんは愛犬の適量や満腹のサインを把握し、与えすぎないよう注意しましょう。
ストレス
犬が舌を出す原因として考えられるのは、ストレスです。
ストレスを感じている場合、犬は自分を落ち着かせようと舌を出して口の周りや鼻を舐める行動を示します。
愛犬の周りで、ストレスの原因となるものはないか探しましょう。
犬がストレスを感じる対象は数多く、不快な生活環境や運動不足、家族の増減、喧嘩などの家庭内の不穏な空気、コミュニケーション不足や苦手な音などさまざまです。
やや緊張し舌を出して鼻を舐めるなどのストレスサインを見せている場合、身の周りで起こった環境の変化を家族みんなで話し合いましょう。
自分では気付かないことも愛犬のストレスとなる場合があるため、なるべく多くの要因を考え、ストレスの素を取り除いてあげてください。
病気
犬が舌を出す原因として考えられるものは、病気もあります。
呼吸が苦しいときや吐き気がするときなどは舌を出していつまでも落ち着かない様子を見せるため、飼い主さんは犬の異常に早めに気付いて病院を受診できるようにしておきましょう。
舌を出している際に考えられる病気は、暑い時期であれば熱中症や、ほかにも心臓病や呼吸器系疾患などが挙げられます。
熱中症は特に短頭種の場合、発症後に迅速な処置を行わなければ命に関わる病気です。
夏の暑い時間帯の散歩は避け、水分補給をしっかりと行ってください。
ほかの病気で苦しさを感じている場合も、舌を出す以外に震えや呼吸音の異常など、普段と違う様子が見られます。
飼い主さんは舌を出しているから体温調節しているのだろうと安易に考えず、愛犬の様子を見て判断するようにしてください。
敵意がないことの合図
犬が舌を出している原因として考えられるのは、敵意がないことの合図です。
自分には敵わないと犬が判断した場合、舌を出してペロペロと自分の鼻や口、相手の身体を舐めて敵意がないことを現します。
相手の身体を舐めるのは自分と相手を落ち着かせるためで、カーミングシグナルとも呼ばれる行動です。
舌を出すほかにも敵意がないサインとして、対象と目を合わせない、尻尾を振る、頭や身体を低く保つなどの行動が見られます。
舌を出す以外にも表情やほかのサインも合わせて、愛犬の気持ちを考えてみてください。
歯並びの影響
犬が舌を出している際に考えられることとして、歯並びの影響もあります。
犬の舌は長いため、歯並びの影響で隙間が空いていると舌を抑えきれず、舌が出たままの状態となってしまうのです。
歯並びの影響で舌が出る場合、対処の仕方は特にないためそのまま様子を見ておきましょう。
ただし歯並びが良くないと食べたフードが歯に残りやすく、定期的なケアを行わなければ歯石が溜まり、歯周病へ発展してしまう可能性があります。
飼い主さんはこの後の舌の健康チェックと共に、歯や口腔内の環境もチェックする習慣を付けましょう。
舌の状態から犬の健康をチェック
犬が舌を出している理由にはさまざまなものがありますが、飼い主さんは今愛犬はこんな気持ちで舌を出しているのだなと思うと同時に、愛犬の舌の状態をチェックする習慣をつけると健康管理に役立ちます。
- 舌の色が白色
- 舌の色が黄色
- 舌の色が紫色
- 口腔腫瘍(できもの)
上記の4つ場合の舌の状態について見ていきましょう。
舌の色が白色
通常犬の舌は濃いピンク色や赤みがかった色をしていますが、舌の色が白色の場合に疑われる症状は、貧血です。
貧血とは血液の中の赤血球数が減った状態を指し、貧血を起こすと元気が無くなったり動くのが億劫になったりする様子が見られます。
貧血は病気の診断名ではなく、ケガや身体のどこかに隠れた病気によって引き起こされる症状です。
貧血が確認されたら舌が白いほかにも愛犬の様子をよく観察し、早めに動物病院へ連れて行きましょう。
舌の色が黄色
舌の色が黄色の場合、疑われる症状は黄疸です。
黄疸とは血液の中のビリルビンと呼ばれる胆汁色素が増えている状態を指します。
普段見ている犬の舌より明らかに黄色くなるため、黄疸が見られたら飼い主さんは肝臓や血液、胆嚢になんらかの病気が隠れていないか疑いましょう。
また、黄疸が出るのは舌だけではありません。
白目の部分や皮膚、陰部の粘膜なども黄色くなり尿の色も濃くなります。
黄疸が確認できたら元気消失や食欲不振、下痢、嘔吐などのほかの症状に注意し、なるべく早く病院を受診してください。
舌の色が紫色
舌の色が紫色の場合、疑われる症状はチアノーゼです。
チアノーゼとは血液中の酸素の量が不足している状態を指し、呼吸器系や循環器系の疾患、ケガによる出血、異物の誤嚥、中毒など緊急の処置が必要な状態が考えられます。
チアノーゼが出る場合はかなり症状が進んでいる状態であるサインにもなるため、舌の色が紫になっているのを確認したら、飼い主さんはすぐに病院に連れて行きましょう。
夜中で病院が開いていない時間である場合、かかりつけ医のほかにも夜間救急を承っている病院の連絡先を控えておくと便利です。
緊急事態に備えて準備をしておくことはチアノーゼだけでなくほかの予測できない事態にも対処できるため、犬を飼い始めたらかかりつけ医と救急時に診察してくれる病院を確認しておきましょう。
口腔腫瘍(できもの)
舌の色のほかにも観察していることで発見できる症状に、口腔腫瘍があります。
口腔腫瘍は愛犬の舌にできた膨らみやできものを指し、原因は口内炎による潰瘍から切除が必要な腫瘍までさまざまです。
舌に腫瘍のような膨らみを確認したら、口の中などほかの場所にもできものがないか確認しましょう。
脅かすつもりはありませんが、発見が遅れれば広範囲で舌を切除しなければならない恐ろしい疾患である場合も考えられます。
愛犬にほかの症状がなく元気そうにしていれば時間外に受診する必要はない場合が多いですが、なるべく早く動物病院に連れて行きましょう。
体調が良くない可能性がある場合の舌の出し方
犬が舌を出す理由や舌の状態を見てきましたが、最後に体調が良くない可能性がある際の舌の出し方について解説します。
- あまりにも長い間舌を出している
- 苦しそうな呼吸音を伴っている
- 舌を出しながら震えている
- 不自然な体勢をしている
順番に見ていきましょう。
あまりにも長い間舌を出している
犬があまりにも長い間舌を出しっぱなしにしている場合、体調が良くない可能性があります。
舌を出す理由のさまざまな理由について見てきましたが、リラックスや満腹のサインであれば長い間出しっぱなしにしていても問題ありません。
しかし運動した後やいつもと違う場所にいる場合で舌を出しっぱなしにしている場合は、いつまでも体温調節がうまくいっていない場合や、緊張や興奮が収まっていない場合が考えられます。
飼い主さんは愛犬が長時間舌を出しっぱなしにしていると感じたら、周りの状況をよく見て判断してください。
苦しそうな呼吸音を伴っている
犬が舌を出しながら苦しそうな呼吸音を伴っている場合、体調が良くない可能性があります。
特に「ガーガー」「ゼーゼー」など異音がしたりする場合、気管虚脱の可能性を考えて早めに動物病院を受診しましょう。
気管虚脱とは空気の通り道である気管が潰れ、変形することで呼吸がしづらくなってしまう病気です。
遺伝的要素や肥満が原因であるといわれていますが、吠えすぎた場合や首輪を強く引っ張ることによって発症する場合もあります。
小型犬に多い疾患でもあるため、飼い主さんは犬を飼育する前にその犬種のかかりやすい病気を調べて知識をつけ、症状が見られたらすぐに病院に連れて行く判断ができるようにしておくといいでしょう。
舌を出しながら震えている
犬が舌を出しながら震えている場合、体調が良くない可能性があります。
震え事態もさまざまな原因で現われ、舌を出す理由でも解説したストレスや興奮、緊張でも発現します。
犬を取り巻く環境を考え、明らかに震える状況ではないのに震えている場合、体調が悪いのかと考えほかの症状も観察しておきましょう。
不自然な体勢をしている
犬が舌を出しながら不自然な体勢をしている場合、体調が良くない可能性があります。
普段のリラックスしている体勢と比べ、どこか違和感がないか見てみてください。
前足を伸ばした状態で腰を落とした中腰のような体勢で舌を出している場合、身体のどこかに痛みを感じ、ストレスで舌を出している可能性があります。
飼い主さんは食欲や元気、嘔吐、下痢などほかにもなにか気になる症状がないか観察し、長時間落ち着かない様子の体勢でいたらできるだけ早く病院を受診してましょう。
まとめ
今回は犬が舌を出す理由や健康チェック方法、体調が良くない場合の舌の出し方について解説しました。
愛犬が舌を出すのは珍しいことではなく、特にリラックスや満腹を感じている際に見られると飼い主さんとしても微笑ましい気持ちになるのではないでしょうか。
しかし舌を出す行動はストレスや病気などから起こる場合もあるため、飼い主さんは愛犬をしっかりと観察しなければなりません。
今回紹介した健康チェック方法や体調が良くない可能性の舌の出し方を参考にして、愛犬の状態を観察してみてください。
この記事のライター
satoko
わんちゃん大好きなドッグライターです!愛犬のコーギーに癒される日々を送っています。皆さんにとって有益な情報を発信できるよう頑張ります!
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