人にも犬にも危険なマダニについて|知っておきたいマダニの基礎知識と対策を徹底解説!
体長約1〜4mmの小さな節足動物マダニ。小さいからといって油断してはいけません。人にも犬にも極めて危険な生物で、日本全国に分布しています。マダニを媒介とするリケッチアによって死者発生のニュースが報じられたこともあるほどです。今回は、愛犬の身体を守っていただくために、マダニの基礎知識とその対策についてご紹介します。
目次
犬にとって危険なマダニ。その生態について
マダニは6本足である昆虫には属しません。8本脚からなる節足動物で、クモやサソリに近い生物です。一般に家の中に住むイエダニなどの1mmに満たない微小なダニとは異なり、固い外皮に覆われ、大きさは約3〜4mm(成ダニ/吸血前)。日本に分布する約50種類あるマダニのうちフタトゲチマダニ、ヤマトマダニなどの約20種類が犬に寄生します。
動物の血液が唯一の栄養源
マダニの栄養源は動物の血液だけで、幼ダニの段階から吸血します。その吸血の際に、原虫やウイルス、リケッチア、細菌などさまざまな病原体を媒介します。マダニは、幼ダニ期から若ダニ期にかけて2度の脱皮を経て成ダニ期を迎えます。吸血する期間は20〜25日間ほどと言われ、1匹のメスの成ダニが満腹である飽血状態になると犬は最大5mlの血液を失うことになります。
マダニはどうやって犬に付着するの?
マダニは春から秋にかけての草むらや薮などに広く生息し、動物に寄生する機会を狙っています。寒くなるといなくなるといわれていますが、温暖化の影響もあり、冬でも枯れ草や落ち葉の下など、暖かさが残る場所に生息していることもあります。緑の多い公園や河川敷、遊歩道、キャンプ場やハイキングコースなど、犬といっしょのお出かけ場所にある草むらは、すべてマダニが好む場所と言えるのです。
マダニは、そこを通過する動物の体熱や二酸化炭素、振動などを感知してすばやく動物に乗り移り、被毛や皮膚に付着します。そのあと皮膚に口器を突き刺し、数日から10日以上にわたって刺し続けて血を吸います。
犬にとって危険なマダニが媒介する病気について
マダニは多様な病原体を運びます。それによっては犬だけでなく人も含めてさまざまな感染症を引き起こし、場合によっては生命が危険にさらされることもあります。では、どんな病気を引き起こすのでしょうか。ここでは、マダニが媒介する恐ろしい病気をご紹介します。
犬・人ともに最も避けたい人獣共通感染症「SFTS」
「SFTS」とは正式には「重症熱性血小板減少症候群」と呼ばれ、SFTSウイルスによって引き起こされます。感染した人の初期症状は発熱、全身倦怠感、消化器症状などで、重症化して死亡することもあります。実際に日本でも死者が出ており、毎年60〜90名の患者が報告されている恐ろしい病気です。
SFTSウイルスは犬・猫・野生動物の血液からも検出されています。犬は感染しても発症しないと考えられていましたが、日本でも犬の発症報告が上がっています。症状は元気・食欲の減退、発熱、白血球や血小板減少症、下痢や血便などでネコの症状と類似しています。犬の場合は、死に至ることはありませんが、犬から人へと感染する可能性があります。
マダニが媒介する5種類の病気とは
マダニを媒介する病気にはSFTFのほかにも多くあります。どれも、犬だけではなく人にも感染する可能性が高い病気のため、注意が必要です。犬と人の症状を併記してご紹介します。
日本紅斑熱/リケッチア
犬の症状:無症状
人の症状:頭痛、発熱、倦怠感など
Q熱/コクシエラ菌
犬の症状:軽い発熱などが見られる程度
人の症状:インフルエンザに似た高熱や呼吸器症状、肺炎など。慢性化する場合があります。
エールリヒア症/リケッチア
犬の症状:急性は発熱、鼻汁、流涙、食欲不振、元気消失、貧血など
人の症状:発熱、頭痛、関節痛、倦怠感、呼吸困難など。放置すると命の危険もあります。
バベシア症/バベシア原虫
犬の症状:貧血、発熱、黄疸など。重い場合は急死することもあります。
人の症状:発熱、貧血など
ライム病/ボレリア菌
犬の症状:発熱や食欲不振、全身性痙攣、関節炎など
人の症状:赤い発疹や発熱、関節痛など。放置すると心膜炎や顔面神経麻痺なども
これを見ると、犬よりも人の方が重症の場合が多いことが分かります。マダニの存在は私たちにとっても大きなリスクということを心しておくことが大切です。また、大量吸血による貧血、アレルギー性皮膚炎、神経障害であるダニ麻痺症など、媒介ではなく直接マダニに刺されたことによる病気もあります。
愛犬がマダニに刺されたときの対処法について
マダニは犬の体の表面に寄生します。なかでも耳、胸、内股、おしり(肛門)の周りなど、被毛の少ないところを好んで寄生します。草むらやキャンプなどマダニが生息している可能性のある場所へ行った場合は、帰宅してからマダニが寄生していないか細かくチェックする必要があります。
愛犬の身体にマダニを見つけたら
見つけるとすぐに取りたくなるマダニ。被毛表面付近ならば、クシやブラシなどを使って取ることができますが、しっかりと噛み付いてしまっている場合は、簡単には取れません。マダニは、セメント状の液体を口から出し、対象動物の体に自分の体を密着させているため、無理に取ろうとすると口器だけが残ってしまいます。口器が残ってしまうと、犬の体内で炎症を起こす可能性があるので、注意が必要です。
マダニを取るときには
マダニを取り除くときは専用のピンセットで慎重に除去するか、病院で薬剤を使用した方法で取ってもらいましょう。また自分で取り除いたマダニは、見失わずにティッシュなどに包み、硬い殻ごと潰すなど、確実に処理することが重要です。
さらに、取った後でもすでに犬の体内に病原体が侵入している可能性があるため、刺された場所がわかるように目印をつけ、動物病院に連れて行くようにしましょう。
普段の愛犬のマダニ対策について
自然豊かな地域を訪れる場合、マダニに対する対策は犬だけではなく飼い主にも必要です。最近では、年間を通じてマダニ対策が必要となる地域もあります。マダニは、気温が15度以上から活動し20度以上で繁殖可能です。ピークのシーズンは春~夏にかけてですが、実はその時期に産卵され成長した若ダニや幼ダニが活発に活動するのが秋なのです。そのため、秋でも昼間の気温が20度近くになる地域ではマダニ対策をする必要があるのです。
マダニ忌避剤
私たちが日常的にできる最良の対策は、まずはマダニがいそうな場所に行かないことですが、なかなか難しいもの。そこで、マダニが付着しないようにするためにマダニ忌避剤を活用します。忌避剤の成分としてディートとイカリジンという2つの有効成分が認可されていますが、子どもへの使用が禁止されているディートではなく、使用制限がないイカリジンが含まれている忌避剤の方が犬にはおすすめです。ただし、忌避剤もマダニをシャットアウトするわけではなく、あくまで付着数を抑えるという効果です。
マダニ駆除薬
動物病院で処方されるのが、フロントラインやネクスガードといったマダニ駆除薬で、月に1回定期的に投与します。これは、動物病院で処方してもらうことが基本となりますが、駆除薬はマダニの付着を防ぐわけではありません。付着したマダニが、犬の血液を吸うことでその薬剤がマダニの体に入ることで駆除できる薬です。この駆除薬には、チュアブルタイプ、タブレットタイプ、スプレータイプがありますが、アレルギーを起こす可能性もあるため投与には注意が必要です。
日々の対策はハーブなど体に負担の少ないもので
最近では、ミントやラベンダー、ティーツリーなどのハーブをはじめ、忌避効果がある天然物質を利用したスプレーやシャンプーを愛用する飼い主も増えてきています。また、防虫効果のあるウエアもさまざまなタイプが販売されています。マダニは、できれば1匹も付着させたくないもの。忌避剤やウエアなどを活用して、日常のマダニ対策を行うことがおすすめです。
犬も人も日頃のマダニ対策を忘れないように!
シカやイノシシ、野うさぎなど野生動物などが出没する環境に多く生息しているマダニ。多くの感染症の原因となる危険なマダニの生息域は、愛犬とのお散歩やお出かけスポットとほぼオーバーラップしています。草むらがある場所や自然豊かなスポットにお出かけするときはもちろん、暖かい時期や地域では、毎日のお散歩でも注意したいところ。犬はもちろん、人間も素肌を出さないことなど、服装にも注意を払って、マダニを寄せ付けないように心がけましょう。
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この記事のライター
komugi
都内で愛犬のビーグルと暮らしています。コロナ期間中に肥満体型になってしまった愛犬のために食事や運動について勉強をはじめました。面白い発見や愛犬家の皆様に役立つ情報があればどんどん発信していきます!
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