【獣医師監修】マナー違反やトラブルになることも。犬のマウンティングをやめさせるには
立っているときに愛犬がしつこく足にマウンティングしてきたり、ドッグランでよその犬や飼い主さんにマウンティングしてしまい困った、という経験はありませんか?マウンティングをすることは犬にとって特異な行動ではありませんが、人間社会で生活する上では問題になることがあります。
今回の記事では、犬がマウンティングする理由や、マウンティングすることによるトラブル、しつこいマウンティングをやめさせる方法についてご紹介します。
犬がマウンティングする理由
マウンティングは乗る、またがるといった意味ある「マウント」が由来といわれています。マウンティングするとき、犬は前足で他の犬や人にしがみつきながら、小刻みに腰を振ります。
マウンティング=オスの性行動というイメージがあるかもしれませんが、実際にはメスもマウンティングをします。
犬はどのような理由でマウンティングをするのでしょうか。
性的な本能
未去勢のオスは、発情中のメスのフェロモンに反応してマウンティング行為に及びます。
この場合、マウンティングを許してしまうと交尾して相手の犬を妊娠させてしまう可能性があるので、すぐに引き離さなければなりません。
遊びや暇つぶし
他の犬や飼い主さんと遊んでいるときに過度に興奮すると、遊びの一環としてマウンティングすることがあります。
暇なときに、構ってほしくて飼い主さんの足にマウンティングしたり、クッションやおもちゃを相手にすることもあります。
ストレス解消
散歩に連れて行ってもらえなかったり、相性の悪い犬と過ごさなければならなかったり、引っ越しなどで家庭環境が変わることでストレスがたまった犬は、ストレスを発散するためにマウンティングすることがあります。
ストレスの原因をできる限り排除し、十分に運動する時間を設けたり、一緒に遊んでストレスが溜まらないよう工夫してあげましょう。
優位性のアピール
犬はマウンティング行為によって「自分の方が上だ」とアピールすることがあります。
飼い主さんとの信頼関係が構築できていない場合に飼い主さんにマウンティングしたり、自分より年下の犬や性格の穏やかな犬にマウンティングすることが多いようです。そして、マウンティングされている犬があまり嫌がらなければ、更にマウンティングを続けてしまいます。
散歩のときに犬が行きたい方向に付き合ってしまう飼い主さんや、おねだりされたときに言うことを聞いてしまう飼い主さんは要注意です。
マウンティングによって起こりうる問題
犬のしつこいマウンティングは、次のような問題やトラブルを引き起こし飼い主さんを悩ませます。
他の犬や人とのトラブル
ドッグランなどでよその犬にマウンティングしてしまうと、嫌がった相手の犬が攻撃的になり、ケンカになることがあります。また、誰にでもマウンティングする場合には、お年寄りや子供に飛びつき転倒させてしまうかもしれません。マウンティングが大きな事故に繋がる前にやめさせましょう。
見ている人に不快感を与える
マウンティングは、見ている人に不快感を与える行為でもあります。特に、愛犬がよその犬にマウンティングされているところを目撃したら、飼い主さんは気分が悪いのではないでしょうか。
人と共に暮らす上で、マウンティングは不適切な行為になります。
足腰に負担がかかる
マウンティングするとき、犬は後足で立ち上がった姿勢で腰を振るので、足腰に大きな負担がかかります。腰への負担は椎間板ヘルニアの原因にもなります。
陰部を傷付ける
陰部はデリケートな部分です。しつこくこすりつけていると摩擦によってケガをし、出血することもあります。
マウンティングしなければ自然に治ることもありますが、傷から感染を起こして化膿し、治りにくくなってしまうこともあります。このような原因から、さらに「包皮炎」を起こしたり、「陰茎突出」したまま戻らなくなるといったトラブルにもつながるリスクがあります。ひどくなる前に、動物病院で治療を受けましょう。
飼い主の指示に従わなくなる可能性
飼い主さんにマウンティングする場合、優位性をアピールしていることがあります。この状態を放置すると飼い主さんとの信頼関係が崩れ、飼い主さんが指示を出しても言うことを聞かなくなってしまったり、ひどいときには咬みついてくる可能性もあります。「おすわり」「まて」などの基本的なしつけを見直し、理想的な関係を築きましょう。
犬のしつこいマウンティングをやめさせる方法は?
飼い主さんにマウンティングし始めたときにやめさせずに放っておいたり、クッションやおもちゃへのマウンティング行為を見て見ぬふりをしていると、どんどん癖になってしまいます。マウンティングが習慣化すると、避妊・去勢手術をしてもゼロにはならないと言われているので、繁殖を望まないのであれば適切な時期に避妊・去勢手術を受けましょう。
次に、しつこいマウンティングをやめさせる方法についてご紹介します。
他の犬やクッションにマウンティングする場合
散歩中に他の犬にマウンティングしそうになったときには、リードを短く保持し「おすわり」などの指示を出し、落ち着かせましょう。マウンティングの癖のある子は、ノーリードで遊べるドッグランであっても、他の子がいるときはリードを付けておき、いざというときに引き戻せるようにしましょう。
クッションでマウンティングする場合は暇つぶしであったりストレスを発散していることが多いので、代わりのおもちゃを与えてクッションを取り上げ、隠してしまいましょう。
飼い主さんにマウンティングする場合
飼い主さんにマウンティングする場合の対処法は主に2つあります。
無視をする
飼い主さんに構ってほしくて、気を引くためにマウンティングしている場合には、反応してはいけません。声をかけたり騒いでしまうと、犬にとっては「相手にしてもらえた」というご褒美になってしまいます。
犬がマウンティングしても無反応を貫き、他の部屋や犬から見えない所に行きましょう。
マウンティングすると飼い主さんがいなくなってしまう、と学習させることが大切です。
指示を出し、落ち着かせる
優位性のアピールや、性的な意味でマウンティングする場合は「おすわり」「まて」「ふせ」などの指示を出し、犬を落ち着かせましょう。そして、マウンティングせずにきちんと指示に従ったら、ご褒美のおやつを与えたりして褒めてあげましょう。
興奮がひどいときには、一旦「ハウス」と指示を出し、クールダウンさせても良いでしょう。
マウンティングを放置するとトラブルの元になることも
マウンティングが癖になってしまうと、他の犬とのケンカの原因になったり、飛びつかれた人が転倒して怪我をするかもしれません。マウンティングは犬の自然な行動だからと容認するのではなく、マウンティングしないようきちんとしつけたり、適切な時期に避妊・去勢手術を受けましょう。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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