犬は記憶力がいい?悪いの?記憶力に関する研究結果で分かったこと
お座りや伏せの指示はちゃんと覚えているのに、何度も叱られたことをやってしまう姿を見ると、犬の記憶力はいいのか悪いのか分からないですよね。犬は『長期記憶』という比較的長い時間の記憶については定着させることができますが、定着させるためにもいくつか条件があるようです。今回は、犬の記憶に関する研究結果や、記憶力を生かしたゲームをご紹介します。
犬の記憶力に関する研究について
犬の記憶力は2〜3秒前のことなら記憶できる「短期記憶」と、30分〜長くて10年も前の事まで覚えている『長期記憶』という2つに分けることが出来ます。
犬は短期記憶があまり得意ではなく、少し前に起きた出来事について覚えていられるのは10秒程度と言われています。しつける上で、犬が不適切な行動をとった時にその場ですぐに注意することが大切なのはこのためです。
『長期記憶』は同じことを何度も繰り返すことによって習慣化し、記憶として残るとされています。おすわりやハウスなど、しつけに関することがそうですよね。また、犬の記憶は目で見た景色や匂い、音なども合わせて記憶しています。嗅覚が一番強いので匂いで判断していることも多いでしょう。
それでは、犬の記憶力について解説していきます。
感情が関わると記憶される時間が伸びる
犬と生活していると覚えておいて欲しいことがたくさんありますよね。おすわりやフセ、自分との思い出などなど。
長期記憶のうち、「エピソード記憶」と呼ばれるものがあります。いつどこで何があったのかを感情と一緒に記憶する方法です。回数に加えて五感や感情が関わることで、物事を『長期記憶』として記憶します。犬は短期記憶が苦手ですが、エピソード記憶は得意です。
飼い主さんとよく行く公園や、散歩道、楽しかった思い出も覚えていることでしょう。散歩やごはんの前になるとそわそわしたり、ぴょんぴょん跳ねて喜んでいる姿を見たことはありませんか?
反対に、怖かったことや辛かったことも覚えています。お風呂が嫌いな子はシャンプーと聞いただけで嫌がることもあります。ドライヤーの音が苦手であれば、人間がドライヤーを使っているだけで別の部屋に行ったり、動物病院へ行くと分かると車に乗ろうとしない、入口で拒否するなどの態度をとることがありますよね。爪切りで痛い思いをした子は爪切りを嫌う傾向にあります。
時間や行動、場所などに対して感情が伴っているので記憶に残りやすいのです。
しかし、マイナスの『長期記憶』はプラスの感情によって上書きをすることが可能です。犬は過去に嫌な思い、つらい経験をしていても、現在が幸せであれば過去のことは忘れているとされています。そのため、辛い思いをしてきた保護犬も、愛情をもってお世話すれば幸せな生活を送ることができるのです。つらい思いをしてきた犬には優しさとリーダーシップを、爪切りやお風呂などを嫌がる犬にはご褒美のおやつなどを毎回与えることで、マイナスの『長期記憶』を上書きしていくと良いでしょう。
保護犬への接し方についてはこちらの記事で紹介しています
匂いや音と関連付けて記憶
先ほども述べた通り、犬は目で見た景色や匂い、音なども合わせて記憶しています。犬の嗅覚は人の数千から1億倍、聴覚は4倍以上と言われています。それらの感覚と、何らかの出来事が起こることによって連想記憶となります。
人間もある特定の匂いを嗅いだ時に懐かしい気持ちになったり、以前の記憶を思い出すことがありますよね。犬も同じで、仕事の都合や環境の変化で長い間会っていない家族でも、匂いを嗅ぐことで思い出すようです。嗅覚の優れている犬だからこそ、匂いは何よりの手がかりかもしれませんね。
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繰り返すことで定着する
人と同様に、繰り返し同じ体験をすることで記憶が定着することもあります。おすわりやマテができて飼い主に褒められた、おやつをもらえたという経験から、徐々にしつけに関するコマンドを覚えることができるようになるのです。
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寝ている間に記憶を定着させている
犬の記憶に関する認知研究をしているハンガリーの研究者は、犬も寝ている間に記憶を定着させていることを発見しました。
人間は睡眠中に脳から出る睡眠紡錘波(すいみんぼうすいは)が学習に大きな影響を与えていると言われますが、研究によって犬にも睡眠紡錘波が出ていることが分かりました。しかも、メスはオスの2倍もの睡眠紡錘波が出ていたそうです。人間もよく眠ったほうが学習の効果があると言われますが、犬も同じなのですね。
犬はどれくらいの名前を覚えられる?
2004年にドイツの研究チームが約200語の単語を覚えた犬に関する報告を発表しました。また、2011年アメリカの大学の心理学者による研究報告によれば、牧羊犬であるボーダーコリーは約1000個ものおもちゃの名前を覚えることができ、それぞれを区別できたと発表されています。犬が賢いと言われる所以がわかりますね。
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犬の記憶力を活かしたゲームについて
犬には「短期記憶」と『長期記憶』があるということをお伝えしましたが、ゲームをしながら愛犬の記憶力を試してみてはいかがでしょうか? もしかしたら意外な才能が見つかるかもしれません。行動と視覚を使った短期記憶ゲームと、聴覚を使用した聞き取り学習ゲームをご紹介します。
聞き取り学習ゲーム
2人の人がコップを持ちながら、犬のそばで会話の最後に「コップ」とつけた会話をしてください。 しばらくその様子を犬に観察させたあと、犬に「コップを持ってきて」と伝えます。 犬がコップという単語と現物を結びつけて記憶しているかを確認するゲームです。
短期記憶ゲーム
同じ形をした箱(プラスチック製のコップなど)を数個用意し、一つの中におもちゃを隠してください。 隠したおもちゃを犬に取りに行かせることを教え、完全に覚えたら自分と犬の間に仕切りを立てます。 仕切りを取って犬がおもちゃの入った箱へ直行したら、短期記憶が活かされているということになります。 出来たら是非とも愛情を込めてたっぷり褒めてあげてください。
犬の記憶力が起こした感動実話について
毎日一緒に過ごす飼い主は、犬にとってさまざまな感情と結びついている存在です。撫でてくれる、一緒に遊んでくれる、散歩に連れて行ってくれるなどの嬉しい気持ちや楽しかった気持ちが記憶と強く結びついているため、飼い主のことは忘れないとされています。犬が飼い主さんを亡くしたあと、飼い主さんのお墓の前から動かないという話を聞いたことはありませんか? 実は日本でも同じように飼い主さんと一緒に過ごした場所で、楽しかった思い出を思い出し続ける犬がいます。
コミックエッセイ「犬が教えてくれたこと」のエピソードのひとつに『おじいさんの犬』というお話があります。犬の記憶は感情とともに残されることが証明される実話でもあります。 犬は飼い主さんとの思い出を簡単には忘れないんだ、という素敵なお話をぜひ読んでみてくださいね。
愛犬の記憶は飼い主さんとの関係の深さで決まる
愛犬にはいつまでもずっと、自分との思い出を覚えていて欲しいですよね。そのためには愛犬との感情を交わした濃い時間が必要です。 最近忙しくてなかなか愛犬との時間が作れていなかったなと、感じた方は、この機会に「愛犬との濃い時間」を意識してみてはいかがでしょうか?飼い主さんとの楽しい時間はきっと愛犬の記憶に残り続けるはずです。
しつけについてはこちらの記事で解説しています
この記事のライター
komugi
都内で愛犬のビーグルと暮らしています。コロナ期間中に肥満体型になってしまった愛犬のために食事や運動について勉強をはじめました。面白い発見や愛犬家の皆様に役立つ情報があればどんどん発信していきます!
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