【獣医師監修】犬が前足を舐めるのはなぜ?8つの理由と対処法
愛犬が足を頻繁に舐めてしまうというお悩みをお持ちの飼い主さんは意外に多いのではないでしょうか?犬は暇つぶしで足を舐めることもあれば、病気やケガ・精神的な理由で足を舐め続けてしまうこともあります。
ここでは、犬が足を舐めてしまう理由や考えられる病気、その対処法についてご紹介します。
もし、愛犬が頻繁に足を舐めていたら注意深く観察するようにしてください。
犬が足を舐めるときに考えられる理由とは
犬が毛づくろい程度に体や足を舐めている分には問題ありませんが、同じ部位を“ずっと舐め続ける”というのはあまりよい行動ではありません。
足を舐め続けることは「足舐め癖がある」と表現されますが、この癖がある子は飼い主さんが気づかないうちにストレスを溜めていたり、病気やケガを抱えていることが考えられます。
犬が足を舐める理由には、身体的な原因のもの、精神的な原因のものの両面が考えられます。頻繁に足を舐める様子があったら、まずは身体的な原因が無いかを確認しましょう。
何も身体的な症状が見当たらなければ、次に精神的な原因を考えましょう。精神的な原因の場合は癖になる前にやめさせる必要があります。エスカレートすると強迫観念のように舐め続けてしまう場合もあります。
ここでは、犬が足を舐める場合に考えられる8つの原因をご紹介します。
犬が足を舐める身体的な理由
- アレルギー(環境性、食物性など)や皮膚炎
- トリミング(バリカンをかけるメニューを含む)後などに見られる違和感
- 痒みや痛みを感じている
- 頚椎損傷やヘルニアなど
犬が足を舐める精神的な理由
- ストレスを抱えている
- 単なる暇つぶし
- 分離不安(気持ちを落ち着かせるために舐める)
- 飼い主さんの注意を引きたい
1.アレルギーや皮膚炎
指間炎やアレルギーなどを発症し、痒みが発生することで犬がしきりに足先を舐めることがあります。舐めている部位や症状によって疑われる原因が異なりますので、それぞれ見ていきましょう。
指間炎|肉球の間の皮膚が赤く腫れる
足を上から見たときの指と指の間・裏から見たときの肉球と肉球の間が炎症を起こして赤く腫れたり、舐めすぎた足先がヨダレで茶色く変色するような場合は指間炎かもしれません。
これは傷や皮膚病などが原因で炎症を起こした状態で、犬は違和感を感じて頻繁に舐めたり噛んだりしてしまいます。そのため、舐めている間は炎症が治りにくいので、エリザベスカラーを巻いて保護する、靴下や包帯を使って舐めないようにするなどの対策が必要になることもあります。
また、お散歩から帰ってきたら肉球の間にノミやダニが付いていないか確認し、足をお手入れして清潔に保ちましょう。濡らして固く絞ったふきんで隅々まできれいに拭いて汚れを落としたら、乾いたふきんで水気をしっかりと取ることが重要です。というのも、肉球の間は乾きにくく、蒸れた皮膚に菌が繁殖することで指間炎を発症することがあるからです。雨で濡れた足先も、ドライヤーなどでよく乾かすことが大切です。
アレルギー性皮膚炎|足先に限らず身体中を気にして舐める
犬がアレルギー性皮膚炎を発症すると皮膚がとても痒くなり、足だけではなく体のあちこちを痒がる様子が見られるでしょう。足先だけでなく耳や脇の下、内股などを痒がり、しきりに舐めたり脱毛する場合があり、酷いときには足を舐めるだけではなく、噛んだり毛をむしったりして患部を悪化させてしまう事もあります。
アレルギー性皮膚炎の原因はさまざまですが、ハウスダストや花粉などの吸引やアレルゲンとなる食べ物の摂取、絨毯などの敷物や食器がアレルゲンとなる接触性のアレルギーなどがあります。
痒みが出る部位は犬によって様々ですが、原因を探るためにも、足を頻繁に舐め始める少し前にごはんの種類を変えなかったか、犬の生活環境にある敷き物を変えなかったかなど、思い当たる要因がないか考えてみましょう。
柴犬やウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、シー・ズー、フレンチブルドッグなどはアレルギー性皮膚炎の好発犬種として知られています。
2.トリミングなどによる違和感
トリミングの注文には「足裏バリカン」や「足先バリカン」というメニューがあります。そして、多くのトリミング犬種は、トリミングのときに足裏バリカンを行っています。足裏の毛が伸びているとフローリングなどの床で足を滑らせて関節を痛めてしまうことがあるので、足の健康を守るためにも大切なケアになります。
足裏バリカンでは、肉球の間にまでしっかりとバリカンをかけるため、バリカンをかけた後に足の裏がチクチクしたり、痒みが出ることがあります。一時的なものであることが多いため、時間が経って毛が伸びてくると解消されるケースがほとんどです。
3.痛みを感じている
犬が頻繁に足先を舐めているときには、肉球に傷がある・肉球の間にトゲが刺さっている・ハチなどの虫を踏んでしまった・爪が割れてしまったなどが原因で痛みや痒みを感じているかもしれません。足の裏をずっと舐めていたり、爪の付け根を舐めている場合はよく観察したり、軽く触って異常がないか確かめましょう。
外傷ではなく、関節炎や骨折などで痛みが出ていることもあります。この場合は歩行自体が不安定になるので、歩く際に引きずる様子が見られるなどの症状があり、足を舐めている時は要注意です。
まずは優しく足を触ってみてください。少しずつ手を挟むようにして押さえていくと、痛みがある箇所でピクッと反応する、嫌そうな表情を浮かべるはずです。痛がる箇所を確認したら、すぐに動物病院を受診しましょう。
4.頚椎損傷やヘルニア
抱き上げたときにキャン!と悲鳴をあげたり、お散歩や運動を嫌がりじっとしているときには、頚椎の損傷や椎間板ヘルニアかもしれません。
頚椎とは首の部位にあたる骨ですが、頚椎を損傷するとしびれから違和感を感じて足先を舐める犬もいます。また、椎間板ヘルニアの回復期に足を舐めることがあります。これは神経伝達に問題が生じるためで、主に後ろ脚を舐めることが多いと言われています。
頚椎損傷も椎間板ヘルニアの回復期も、症状が治まらないと舐め続けることも考えられます。なるべく犬の意識が足以外に向くような対策を取ってあげましょう。おやつを入れたおもちゃなどを用意すると、夢中になって足のことが気にならなくなるのでおすすめです。
5.ストレスを抱えている
ストレスを抱えている犬は足を舐める傾向があります。十分な運動が出来ていなかったり、飼い主さんが忙しくて構ってもらえなかったりするとストレスが溜まってしまいます。
「最近運動が足りていないな」と感じたら、しっかりと運動をさせる時間を作りましょう。
ケガや病気などの原因が無い場合は、愛犬にとってストレスを抱える要素がないかを疑ってみてください。原因となっているストレスが解消されると、足を舐めることも徐々に減ってくるでしょう。
6.単なる暇つぶし
一人で長時間留守番をするなど、暇をもて余しているときに犬は目の前にある自分の足先を舐め続けることがあります。通常は炎症を起こすまで舐めることは考えにくいですが、なるべく留守番の時間が長くなりすぎないよう注意し、毎日コミュニケーションを取る時間を設けてあげましょう。
7.分離不安(気持ちを落ち着かせる)
飼い主さんに依存している犬によく見られる原因のひとつに分離不安があります。少しの留守番でも飼い主さんと離れることが不安で、気持ちを落ち着かせるために足を舐めてしまう犬もいます。
分離不安は飼い主さんの構いすぎが原因です。愛犬が可愛い気持ちはよく分かりますが、構いすぎると犬の自立心が育たず、飼い主さんがいない不安から問題行動を起こしてしまう場合もあります。
飼い主さんが離れていく時に吠える、留守番をしている間だけ足を舐めるという行動が見られたら分離不安を疑ってみてください。分離不安は普段の接し方を変えることで少しずつ改善を図ることができます。飼い主さんは犬を構いすぎず、しっかりとリーダーシップを持って犬と接するように心がけましょう。
最初はなんとなく舐めていた程度でも、癖になるとやめられなくなってしまう犬もいます。足を舐めることが気持ちを落ち着かせるための精神安定剤になってしまう前にやめさせることが重要です。
詳しくはこちらの記事で解説しています
8.飼い主さんの注意を引きたい
足先を舐めながら、横目で飼い主さんの様子をうかがっているときには、飼い主さんの気を引くために舐めているのかもしれません。
犬が同じ場所を舐め続けたときに「舐めちゃダメだよー」「やめなさい」などと声をかけたことはありませんか?もし犬が飼い主さんに構ってほしくて舐めていたなら、犬は身体を舐めれば飼い主さんの気を引ける、相手をしてもらえる、と学習してしまうことがあります。
動物病院に行くべきかの判断基準
犬が足先を頻繁に舐めている場合、原因によっては放置しておくことで症状が悪化してしまうケースもあり、あまり好ましい状況とは言えません。愛犬がこれ以上足先を舐めないように、原因に応じて動物病院の受診などを判断する必要があります。それではどのようなケースの場合に注意が必要なのでしょうか?見ていきましょう。
あまり心配の要らないケース
前述した原因のうち、単なる暇つぶしで就寝前やひとりの時に軽く手足を舐めているだけであれば、あまり心配はありません。手足以外の部位は特に舐めず、手足も赤くなっていないのであれば、退屈を紛らわせているだけの可能性が高いと言えるでしょう。
動物病院を受診すべきケース
足先を長時間舐め続けていたり、舐める以外にも肉球の間が赤く腫れている、足を引きずりながら歩く、じっとして動きたがらないなどの症状を伴う場合には、何らかの病気の疑いがあります。原因に合った治療が必要になるので、動物病院を受診しましょう。
病院での治療法(例)
指間炎であれば抗生剤や抗炎症剤、アレルギー性皮膚炎であれば抗ヒスタミン剤やステロイド剤、免疫抑制剤などを使用します。食事が合わなければ、アレルギーに配慮した処方食に切り替える必要が出てくるかもしれません。物理的な対処法として、犬が舐めないようエリザベスカラーを装着することもあります。
飼い主ができる対処法
愛犬が足を舐めている理由が特定できたら、それ以上舐めないようにする必要があります。
飼い主さんの指示ですぐにやめられるならいいのですが、留守番の時などはどうしたらいいのだろうと悩みますよね。愛犬が普段と同じように過ごしながら、足を舐めない方法をご紹介します。
靴や靴下を履かせてみる
靴や靴下は、犬が嫌がらなければ履かせてあげると良いでしょう。足の裏に傷や炎症がある時は散歩の際に靴を履かせてあげると傷口からばい菌も入りにくくなります。はじめて靴下や靴を履くと違和感で固まってしまう子も多いですが、愛犬が舐める行為をしていないうちから靴下に慣れさせておくと、いざという時に役に立つでしょう。
靴下を選ぶポイントはフィット感です。いたずらっ子は靴下が気になって脱いでしまう可能性があるので、靴下は愛犬のサイズに合っていて脱げにくい作りのものを履かせてあげましょう。さらに、きちんと滑り止め加工がされているかも重要なポイントです。靴や靴下を履かせる際は、乾燥対策に肉球保護クリームも塗ってあげると保湿効果もあり一石二鳥です。
肉球クリームや包帯を使ってみる
靴下を履かせても自分で脱いでしまう場合は包帯を巻いてあげましょう。
巻いて押さえるだけで止まる伸縮性の包帯がおすすめです。きつくなりすぎない程度にしっかり巻いて、簡単に外れないようにしてくださいね。包帯を巻く際は、肉球クリームを塗って保護してあげると、包帯による乾燥を防ぐことができます。
舐めると苦い味のするジェルもおすすめです。直接患部に塗って様子を見てみましょう。
エリザベスカラーの装着
手術の後や処置をした後、顔まわりにエリザベスカラーを装着することがありますが、足先を舐めることを防ぐためにエリザベスカラーを使用することもあります。
エリザベスカラーをした犬は、視界が狭くなり周りの状況が把握しにくくなり、足元が見えずにつまずいたり、周りの家具や壁にぶつかってしまうことがあります。そのため、すぐに取り外したくなってしまう飼い主さんも多いようです。
しかし、外してしまえば犬は再び足先を舐めてしまい、少し痒みがあっただけの足先が炎症を起こしたり、せっかく治りかけていた傷が悪化し、治るまでに時間を要してしまいます。
個体差はありますが、多くの犬は2~3日でエリザベスカラーに慣れてくるようです。愛犬に長期間辛い思いをさせないためにも、エリザベスカラーを上手に活用しましょう。
日頃から愛犬の様子に気を配りましょう
今回は「犬が足を舐める」という行為の原因と対処法をご紹介しました。犬にとって「歩く」という行動は生きがいにも繋がり、足元の健康を守ることはとても大切です。愛犬が健やかに過ごせるよう、普段から愛犬の様子を観察し、足元に異常がないかを確認しましょう。
少しでも異常が見られたら、動物病院の受診をおすすめします。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!