【獣医師監修】犬の高脂血症とは?症状はある?発症の原因や治療法、予防法なども解説
自覚症状がほとんどなく進行し、命に関わる病気を引き起こす生活習慣病は「サイレントキラー(沈黙の殺し屋)」とも言われています。その中のひとつである「高脂血症」は犬にとっても注意しておきたい病気です。犬が高脂血症になるとどんな症状が出るのか、原因は何なのか飼い主さんとしては知っておきたいところです。
この記事では、高脂血症の原因や症状と、治療方法、予防方法もあわせて解説していきます。
犬の高脂血症という病気について
高脂血症とは血液中の総コレステロールとトリグリセリド(中性脂肪)のどちらか一方、または両方が増加して血中濃度が高い状態のことです。
食後10時間以内であれば、高脂血症の状態にあるのは生理的に普通のことなのですが、食後12時間を経過しても数値が高いままの状態であれば高脂血症と診断されます。
初期症状とチェック項目
犬の高脂血症はほとんど症状がなく、定期的な健康診断や、他の病気の治療や診断の際に発見される場合がほとんどです。場合によっては食欲低下、嘔吐、多飲多尿などの症状を発症する場合もありますが、身体的な症状を発症して高脂血症と診断されるケースは稀です。
他の犬や人間にうつる?
高脂血症は他の犬や人間にはうつりません。しかし、生活習慣の乱れが原因で発症した場合は、同居犬も同じような生活習慣だと、高脂血症になってしまう可能性が高くなってしまうので、生活習慣の見直しをしましょう。
犬が高脂血症を発症する主な原因
犬が高脂血症になる原因は主に4つあります。ここでは、その原因やなりやすい犬種について詳しく見ていきましょう。
生活習慣やストレス
運動不足、食餌の栄養バランスの偏り、ストレスなどが原因で高脂血症になる場合があります。特に、人間の食べ物を与えていたり、犬が肥満体型の場合は特に要注意です。
遺伝や先天的な異常
遺伝や先天的な異常が原因で、高脂血症を発症してしまう犬がいます。このように、先天的な原因がある場合は予防が難しく、根本的に治療をすることが困難なので、継続的な投薬が必要になる場合があります。
投薬の副作用
性ホルモン製剤やステロイドを投薬していると、そこから高脂血症が引き起こされる場合があります。しかし、投薬をしている場合は基礎疾患があるなどの理由があってのことなので、自己判断で勝手に投薬を中断しないようにしましょう。
他の病気に併発
クッシング症候群、糖尿病、甲状腺機能低下症、閉塞性肝障害などに併発して高脂血症になることもあります。この場合は原因になっている基礎疾患の治療をすることがはじめのステップとなります。
かかりやすい犬種や年齢は?
高脂血症は、ドーベルマン、ロットワイラー、ミニチュアシュナウザー、シェットランドシープドッグが特になりやすい傾向があります。
また、クッシング症候群や糖尿病などの基礎疾患を治療中の犬や、ステロイドなどを投薬中の犬も高脂血症を併発する可能性があります。
犬の高脂血症の治療法は?
犬の高脂血症は基礎疾患をコントロールしたり、食餌中の脂質を制限した療法食を食べさせるといった食餌療法で治療する場合がほとんどです。しかし、これらの治療を行っても改善が見られない場合は、内服薬の投薬を行います。
治療にかかる費用
生活習慣の改善により、高脂血症を治療する場合は特に高額な治療費は必要ありません。しかし、定期的な健康診断により、体重測定や血液検査は定期的に行う必要があります。
投薬によって治療を行う場合は3,000~20,000円程度の治療費がかかります。
また、その子の体格や治療期間によっては金額がさらにかかってくる場合もあるので、事前に獣医師に大体の目安を聞いておくのがおすすめです。
犬の高脂血症を予防するためにできること
高脂血症は、犬に適度な運動をさせて、栄養バランスの取れた食餌を与えることが一番の予防法です。また、強肝作用のあるサプリメントや抗酸化物質も適量を与えることで疾患の予防になります。ただし、サプリメントにも色んな種類があるので、自己判断で与えることはせず、事前に必ず獣医師に相談して動物病院で購入するようにしましょう。
先天的にこの疾患になりやすい犬種は、日常生活に気を遣い予防していても発症しやすい傾向があるので、こまめな健康診断を心がけ、早期発見することが大切です。
再発する可能性
しっかりと治療をして、血液検査での脂質の数値が正常値に戻っても、生活習慣の乱れやステロイドの投薬の再開などにより、高脂血症が再発する可能性は十分にあります。生活習慣が原因で再発するのを防ぐため、正常値になってからも適度な運動と食餌の栄養バランスを維持しましょう。
高脂血症を早期発見できるよう日頃からしっかり健康管理を
犬の高脂血症ははっきりとした症状を示すことが少なく、日常生活にあまり支障をきたさないため、気づかずに診断されないままのケースが多いと考えられます。
しかし、症状が見られていないとはいえ、血液に異常が起きていることには違いありません。放置して重症化した場合、急性膵炎や眼科疾患などを誘発することが示唆されています。
また、適度な運動や低脂肪食を取り入れること、1日あたりの摂取カロリーを徹底して管理することを心がけ、日常生活においても可能な限り予防に取り組んでいきましょう。
参考文献
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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