犬や動物に関する法律について|海外事情もまとめて紹介
2018年、動物の愛護及び管理に関する法律(通称:動物愛護法)が改正され、大きな話題となりました。 この改正の背景には「犬やペットは家族の一員」という意識が強まり、日本でもペットに対する考え方が変化してきたことが大きな理由ではないかと言われています。今回は、犬を飼う上で必ず知っておきたい、動物に関する法律について、海外の事情を交えながらご紹介します。
目次
日本におけるペットに関する法律制定の経緯
実は諸外国からペット後進国と言われ続けている日本ですが、2018年にやっと法律でも「動物は命あるもの」という位置付けがなされ、動物を飼うことに関しての意識が一歩前進した雰囲気があります。
「動管法」が定められた経緯とは
現在では「動物の愛護及び管理に関する法律」として、多くの飼い主に認知が進んだペットに関する法律ですが、少し前までは「動物の保護及び管理に関する法律」(通称:動管法)として定められていました。
この動管法は、1973年に日本で初めて法律として制定され、「保護動物の虐待・遺棄の禁止」「動物愛護思想の普及啓発」「動物による人への危害の防止」「自治体による動物の引き取り」など、動物の生命に関する尊厳と適正な飼養、保持を定めたものとして知られています。
この法律が制定された背景には、捕鯨や実験動物などによって諸外国からたくさんのバッシングを受けていた当時の日本の動物に対する姿勢があったと言われています。また、1975年にイギリスからエリザベス女王が来日することが決定したため、動物愛護の姿勢を見せるために体裁を整えただけの法律となっていったとも言われています。
このように「ザル法」と認識されていた動管法では、動物への虐待や遺棄に対して、たった3万円以下の罰金が処せられるのみで、動物愛護に対して具体的な内容は示されていませんでした。また、1970年代にはいくつかの関連法案が制定されましたが、どれも実際に機能していたとは言えず、形だけの法律となっていたとも囁かれています。
1999年に改正された「動物愛護法」とは
動物愛護団体はじめ動物を愛する人たちから評判が良いとは言えなかった「動管法」は、議員立法によって提案された「動物の愛護及び管理に関する法律」と名称を変え、2000年に新たに施行されました。
この「動物愛護法」では「動物は命あるもの」と位置付けられ、動物の愛護と適正な飼養を行うことが定められています。
その後も改正が重ねられ「人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮し適正に取り扱うようにしなければならない」とされ、さらに、飼い主の義務として「動物の逸走防止」「終生飼養」「繁殖に関する適切な措置」に努めることが明文化されていきました。
また、2018年の改正では、生後56日に満たない犬・猫のを販売・引き渡し・展示を禁止するいわゆる「8週齢規制」が施行され、少しずつにはなりますが、諸外国に近づく一歩を歩めたと感じている方も多いのではないでしょうか。
飼い主として注意しておきたい法律やルールとは
「動物愛護法」では動物愛護に関する法律が定められていますが、これ以外にも「狂犬病予防法」や民法の「動物の占有者などの責任」などペットに関する法律は複数定められています。違反すると罰則や裁判となり損害賠償を求められるので注意が必要です。
狂犬病予防注射をしないと法律違反になる
先日、飼い犬に狂犬病予防注射を接種しなかったとして、飼い主に罰則が科されたことがマスコミで大きく取り上げられました。 狂犬病予防注射は法律で義務付けられた予防接種であるため、特殊な場合を除いて予防注射をすることが飼い主の義務とされています。
犬の散歩中に通行人に怪我をさせ、損害賠償を請求されたケースも
犬の散歩中に通行人を怪我させてしまったというケースは、マスコミでもよく取り上げられています。 この場合も、飼い主の管理責任を問われ、損害賠償を命じられた判例があります。散歩中は愛犬をリードでしっかりと繋いで、他人に飛びかかることがないように注意することが飼い主としての義務とされています。
飼っているペットが他人を傷つけた場合は民法が適用される
飼い主の自宅に工事に行った際に、工事人が犬に噛まれた事例があります。この場合、飼い犬が「噛む犬であることを告げなかった」「口輪をはめておかなかった」など、飼い主としての注意を怠ったとして、その責任が裁判で問われた判例があります。
海外の法律はペットを尊重した内容になっている
欧米からペット後進国と言われ続けている日本。動物愛護法は改正されましたが、まだまだ欧米の足元にも及ばない面が多々見られます。では、ペット先進国の法律にはどんなことが定められているのでしょうか。
ドイツでは飼育方法が厳しく定められている
正当な理由がない限り犬の刹処分が禁止されているドイツでは、憲法で動物を保護することは国の責務であると明記しています。
犬のサイズや犬種にとって、ケージやサークルのサイズが詳細に決められ、犬だけを長時間、留守番させてはいけないことや1日最低2回、計3時間以上を屋外へ連れて行かなくてはいけないなど、犬を育てる上でのルールが細かく定められています。 また、法律を犯していることが通報されると、アニマルポリスや獣医局から指導を受けることになります。さらに、違反が続いた場合は、強制的に犬が施設に収容されてしまい、大好きな愛犬と会えない日々を過ごすこととなります。
動物福祉先進国スウェーデンではお留守番は6時間までと定められている
2018年に全面的に改正されたスウェーデンの動物保護法では、法の目的として「動物福祉及び動物の尊重を促進すること」がうたわれています。また、飼い主向けに細かく定められた規則が小冊子にまとめられ配布されています。
規則の中で特に目を引くのは、「ケージなどの狭いスペースで、長い間、犬や動物を閉じ込めてはいけない」「飼い主またはその家族が1日2回は犬の様子を見ること」「屋外で2時間以上繋留してはいけない」「毎日必ずハウスの外に出して排泄させること」など、犬の習性を理解した上で、飼い主が守らなくてはいけない最低限のことが項目別に記されています。
ブリーダーライセンス制度を導入しているイギリス
1911年に動物保護法が制定されたイギリスでは、1980年には公共の場や青空市場などで登録をしていない人は生体を販売してはならないと定められています。また、ブリーダー・ペットショップ・ペット宿泊施設などの動物を扱う業種のライセンスが一本化されてり、さらにブリーダーには、子犬の販売時に母犬を見せることが義務付けられています。
今後の動物愛護法に求められること
東京都福祉保健局は「飼い主の皆様へ」と題した手引書の中で散歩のルールとして『トイレは散歩の前に家で済ませましょう。もし外でしてしまったときのために、犬を散歩に連れて行くときには、ビニール袋などを持って行き、ふんを必ず持ち帰って始末してください』と掲げています。マナー違反の飼い主がいることは大きな問題ですが、それ以前にこのように犬の習性を全く理解していない行政の姿が浮き彫りになっています。
ペットを擬人化する日本の未来は?
日本では「可愛い動物」を擬人化する傾向にあり、赤ちゃんと同じようにカートに乗せて歩くことを「散歩」と称する、犬という動物の習性や尊厳を無視した育て方が散見されることも事実です。
しかしながら、犬は人間とは異なる動物です。そんな中で、今後より一層、犬と人の幸福な関係性を築いていくためには、「犬としての尊厳を認めること」つまり法律や条文を作成する行政側や第三者委員会が、もっと犬を動物であると認識し、"犬が犬らしく"生活できる世の中へ歩みだすための啓蒙活動を行う必要があるのかもしれません。
日本は法律上ではペットを「モノ」として扱っている
ペットに関する事件がマスコミに取り上げられるたびに、議論となることが「ペットは法律上はモノである」ということです。 「モノ」であることを分かりやすく言うと、飼い主が所有する「所有物」にあたり、警察に届け出を出す時には「遺失物届け」になるのです。
その反面、動物愛護法では「人と動物の共生」や「習性を考慮した適正な飼育を」と明文化されてきています。 いつになったら、ペットは「モノ」ではなくなり「命ある存在」と認識できるようになるのでしょうか?ペット後進国である日本に与えられている試練は大きいものであると感じざるをえません。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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