愛犬の交配を考えている方必見!交配方法や注意点など詳しく解説
犬を飼育していると、「愛犬の子の顔が見てみたい!」と思われる飼い主さんは多いのではないでしょうか。
愛犬が可愛くて愛おしい存在ならば、その愛犬の子も同様に、可愛く愛おしい存在に違いありません。
しかし、安易な交配は愛犬の命に関わります。
愛犬を交配させる前に、飼い主さんがきちんと交配について理解しておく必要があります。
本記事では、犬の交配時期とその方法、注意点について解説します。
愛犬に子犬を生ませるか迷っている飼い主さんは、この記事を参考にしながら交配をさせるかどうか検討してみてください。
メス犬の発情と排卵
はじめにメス犬の発情と排卵について解説していきます。
発情について
メス犬の発情周期は、6~12カ月と個体差があります。
発情周期とは、最初の発情が終了し、次の発情がくるまでの期間のことです。
この発情周期を見てみると、犬は1年に1~2回ほど発情をするということがわかります。
交配をするには、メス犬の発情時期や、発情周期を知ることが非常に重要です。
排卵について
犬の場合、人間の生理とはメカニズムが異なり、子宮や膣内の筋肉が発達するときに出血(機能性出血)をします。
排卵のタイミングは、子宮などが発達したサインである機能性出血が見られた後になります。
排卵の時期は犬によって大きく異なり、早めの犬だと出血を確認した3日後、遅い犬だと、31日ほどかかる犬もいるようです。
排卵後、卵子が受精可能になるには2日ほど必要です。
卵子が成熟した後、2日ほどは受精可能な状態が続きます。
犬によって排卵の時期がバラバラで、排卵周期が把握できない場合は動物病院で「膣スメア検査」を受けることができます。
この検査は、膣の中の細胞を採取して、顕微鏡で膣粘膜上皮の変化を観察し、卵子の発育状況をある程度予測できるというものです。
確実に交配を成功させたい場合には、動物病院で検査を受けることをおすすめします。
犬の交配の適期
犬の交配には、メス犬もオス犬も適した年齢があります。
どのくらいの時期に交配を進めればいいのか詳しく見ていきましょう。
適正時期
犬によって個体差がありますが、初めての発情は生後6カ月~10カ月までに迎えます。
初めての発情の際に交配を行うことも可能ですが、交配は2回目以降の発情で行いましょう。
初めて発情を迎えた犬は、年齢が1歳になっていないため、身体が未発達で排卵などの周期が不安定な状態です。
この状態で妊娠・出産をすると母犬への負担も大きくなり、生まれてくる子犬に悪影響があるかもしれません。
なるべく安全に出産を終えるためにも、初めての発情での交配は控えるようにしましょう。
適正年齢
では具体的に、犬が交配に適しているのはどのくらいの年齢なのかを理由もあわせて解説していきます。
2~5歳がベスト
幼犬や高齢犬の出産は、人間と同様に、母親と生まれてくる赤ちゃんのリスクが高くなります。
母犬の身体が十分に成長し、身体的にも精神的にも落ち着いてくる頃に交配した方が、出産に対してのリスクを減らせるのです。
また、出産と育児には体力が必要になります。
母犬が高齢になってくると徐々に体力がなくなっていくので、体力が十分にあるうちに交配を行うことをおすすめします。
交配と出産は、母犬にとって少なからずリスクがあり、死の危険もあるということを忘れないようにしましょう。
1歳以前は控える
日本最大の血統書発行団体のJKC(ジャパンケネルクラブ)では、生後9カ月1日未満のメス犬、オス犬から生まれた子犬には血統書を発行していません。
それだけ、幼犬の交配はリスクが高いということです。
また、「交配の適正時期」の項目でもお伝えしましたが、交配は2回目以降の発情がきてから行うことが推奨されています。
発情周期を考えると、2回目以降の発情は1歳を過ぎてからになります。
安全に交配を進めるためにも、1歳以上の犬同士で交配を行うようにしましょう。
6歳以降は控える
6歳を過ぎたあたりから、犬の老化はどんどん進んでいきます。
老化が進むことで、筋肉が衰え、難産になる可能性が高くなります。
また難産になると、母犬と生まれてくる子犬どちらとも負担が大きくなり、死産などのリスクも高くなり危険です。
6歳というのは人間で換算すると、約45歳ほどです。
高齢犬での出産は避けるようにしましょう。
犬の交配方法
犬にはさまざまな交配方法があります。
交配方法のなかには、個人では避けるべき交配もあるので、事前に知っておきましょう。
基本パターン
犬の交配にはさまざまな方法があります。
- ラインブリーディング(系統繁殖)
- アウトブリーディング(遠親繁殖)
- インターブリーディング(亜種繁殖)
- アウトクロッシング(異種交配)
- インブリーディング(近親交配)
- インセスチュアスブリーディング(極近親交配)
それぞれの交配方法について、メリット・デメリットを含めて順番に紹介していきます。
ラインブリーディング(系統繁殖)
『ライン』とは血統のことで、比較的、血縁関係が薄い犬同士が行う繁殖方法です。
3~5世代前まで遡り、同じ血統の犬同士で交配が行われます。
濃い血縁同士で行われる交配に比べると、遺伝的な疾患を持って生まれる可能性が低くなります。
ただ、母犬や父犬が持っている身体の特徴や、性格などは遺伝しにくくなるようです。
アウトブリーディング(遠親繁殖)
血縁だけでなく、系統的にもほぼ無関係の犬同士が行う繁殖方法です。
遺伝的にも遠い犬同士での交配なので、遺伝的な疾患を抱えた犬がほとんど生まれてこないというメリットがあります。
稀に、身体的な特徴や、性格などまったく予想していなかった犬が生まれることもあるようです。
インターブリーディング(亜種繁殖)
同じ犬種のなかで、変種同士を交配させる方法です。
例えば、ロングコートのダックスフンドと、ショートコートのダックスフンドを交配させるなど、サイズや毛質、毛の長さが違う犬同士を交配させることで、新しい品種を生み出そうとする目的で行われます。
遺伝的な疾患がある子犬が産まれる可能性が高く、イギリスなど多くの国ではすでに禁止されています。
日本では、いまだに血統書を発行されることがあるためインターブリーディングを行うこともあるようです。
アウトクロッシング(異種交配)
まったく異なる犬種の犬同士で行う繁殖方法になります。
例えば、トイプードルとチワワとの交配が、アウトクロッシングにあたります。
生まれてくる犬はすべてMIX犬(雑種)です。
純血種にはない魅力を持って生まれることもありますが、なかには歯の嚙み合わせが悪いといった身体的な疾患を持って生まれてくる犬もいます。
インブリーディング(近親交配)
血のつながりが近い犬同士で行う繁殖方法です。
血統が近い犬同士の交配だと、その犬の長所を受け継いだ犬が生まれてくる可能性が高くなります。
しかし、遺伝子が近いことで、奇形、内臓・骨格の形成異常など遺伝的疾患が出やすくなるので、インブリーディングはなるべく避けるようにしましょう。
インセスチュアスブリーディング(極近親交配)
兄弟や親子など、より血のつながりが近い犬同士で行う繫殖方法です。
インブリーディングと比べて、遺伝子がとても近いので、遺伝的な疾患が非常に出やすくなります。
通常では血統書を発行することができません。
JKC(ジャパンケネルクラブ)で血統書を発行してもらうには、事前に審査を受ける必要があります。
個人で交配するには、リスクがとても大きいので、インセスチュアブリーディングは絶対に避けるようにしましょう。
相手の探し方
では実際に、愛犬の相手を探すには、どのような方法があるのでしょうか。
主に3つの方法があります。
ペットショップ、ブリーダーに問い合わせる
ペットショップ、ブリーダーへの問い合わせは、犬の交配相手を探すのに、一番メジャーな方法です。
繁殖のプロにお願いすることになるので、交配をする際には1~10万円ほど費用がかかります。
交配相手の犬に、遺伝的な疾患がないか事前に確認しておくことが重要です。
信頼できるブリーダー・ペットショップを選ぶようにしましょう。
動物病院に問い合わせる
かかりつけの動物病院に、交配可能なブリーダーを紹介してもらう方法です。
獣医さんが知っている信頼できるブリーダーを教えてもらうことができます。
動物病院がブリーダーとの間に入って仲介してくれるわけではないので、ブリーダーへの連絡や条件の確認などは飼い主自身で行いましょう。
雑誌やインターネットサイト上の交配情報から問い合わせる
この方法は、相手がどんな犬なのかブリーダーにお願いするときよりも念入りに確認する必要があります。
また、交配後のトラブルを避けるためにも、交配を行う前に生まれた子犬はどうするのかなど条件の確認をしっかり行いましょう。
なお、どちらの飼い主も交配の経験がない場合はとてもリスクが高くなります。
交配には、犬の血統や遺伝子などについての知識が必要で、交配経験のない人だと交配の適正時期の把握や、交配が成功したかなど判断するのは困難です。
交配をする場合は、繁殖のプロ(ブリーダー)に任せるほうが、リスクは低く、安全に交配を行うことができるので、ブリーダーを探すことをおすすめします。
犬の交配の注意点
犬の交配には注意すべき点がいくつかあります。
- 遺伝病のリスクがある
- 毛色やサイズによる交配のタブーがある
- インブリーディングには危険性がある
順番に解説していきます。
遺伝病のリスクがある
ほぼすべての犬種は、人間によって生み出されてきました。
無理な近親交配をくり返した結果、遺伝的な疾患が出やすい犬種もいます。
例えば、キャバリアは心臓の疾患である『僧帽弁閉鎖不全症』を若い頃に発症する犬が、ほかの犬種と比べて多いです。
交配を考えているのであれば、このような遺伝的な疾患を持って生まれる犬種がいるということを知っておきましょう。
毛色やサイズによる交配のタブーがある
犬の交配には、血統だけでなく、犬の毛色やサイズなどにも気を付けなければいけません。
例えば、ダックスフンドやチワワにはタブーとされている毛色のかけ合わせがあります。
また、トイプードルは標準体型より小さすぎるプードルの交配は、健康面を考えると避けるべきとJKC(ジャパンケネルクラブ)が注意勧告をしています。
身体的な特徴もそうですが、異常に攻撃的な犬や精神的に不安定な犬も交配に向かないとされているのです。
インブリーディングには危険性がある
遺伝子の構造が近いことで、インブリーディング(近親交配)は、さまざまな疾患を持って生まれてくる犬が多くなります。
これは同じ遺伝子をもつ犬同士が交配することで、同じ型の遺伝子が接合し、劣性の遺伝子へと変化するためです。
同じ遺伝子を持つ犬との交配を続けることで、同じ種類の劣性の遺伝子が接合し、さらに劣性になり、生まれてくる犬に悪影響を及ぼします。
近親交配を繰り返すことで、奇形や繁殖能力の低下などの問題を引き起こしてしまうということを知っておきましょう。
犬の交配の心得
犬の交配に関する知識は一通り紹介してきました。
次に、犬の交配をする際の、飼い主さんの心構えについて解説していきます。
犬の交配についての知識を身につける
犬の交配には、交配NGの組み合わせや、避けるべき交配方法があります。
そのような交配に関する知識をしっかり身に付け、母犬、子犬ともに健康で、リスクが少ない出産になるように努める必要があります。
一般的に知られている交配の知識だけで満足せず、時間をかけて勉強していく姿勢を忘れずに、正しい交配についての知識を身に付けましょう。
母体の健康管理に務める
犬の出産は、すべて安産ということはありません。
場合によっては、母子ともに命の危険にさらされることもあります。
破水後になかなか生まれなかったり、陣痛が長時間微弱のまま経過してまったりすると、動物病院で処置を受ける必要があります。
交配前や妊娠中にも母犬の健康管理をきちんと行いましょう。
新生児の管理や育児に向き合う
生まれてくる子犬がすべて順調で、健康体に生まれてくる保障はありません。
死産になってしまったり、生まれてすぐ奇形とわかったりする子犬もいます。
また子犬が産まれたら、あとのお世話は母犬がやってくれるというわけではありません。
母犬が育児放棄をしてしまう場合もあります。
その際は、飼い主が人口授乳や排せつの補助をし、離乳するまで寝る間を惜しんでお世話をする必要があります。
特に母犬が初産の場合は、飼い主さんのサポートが必ず必要です。
24時間付きっきりでお世話をできる環境かどうか、交配前にもう一度考えてみてください。
家庭の飼育環境を整える
一般の家庭で出産・育児をする場合、ある程度スペースを確保する必要があります。
子犬が歩き出し、兄弟同士でじゃれ合ったりする頃には、さらに広いスペースが必要になり、一部屋すべて犬たちの飼育スペースとして使うことになるかもしれません。
母犬と生まれた子犬たちが、ストレスを溜めない環境を準備できるか確認してみましょう。
また、犬が多くなればなるほど、それだけ犬のお世話に時間がかかってしまいます。
犬たちのお世話をできる時間が十分にあるかどうか、事前に考えておきましょう。
犬への愛情を忘れない
母犬への愛情もそうですが、生まれてきた子犬に対しても愛情を持って接しましょう。
生まれてきた子犬は、新しい飼い主さんに譲ることになるかもしれませんが、譲る予定だった子犬が生まれつき病弱だったり、奇形があったりするかもしれません。
そうすると新しい飼い主さんを見つけることは難しくなる可能性があります。
そういった場合でも、子犬の疾患の有無に関わらず、愛情を注ぎ、生まれてきた命にきちんと責任を持つことが重要になります。
まとめ
今回は犬の交配方法や注意点について解説しました。
愛犬の子犬が見たいと考えている方は、この記事を読んで、本当に交配をすることができるか考えてみてください。
個人での交配はリスクが非常に高いので、信頼できるプロのブリーダーに任せることをおすすめします。
リスクや交配の際にかかる費用、時間などすべて検討してみてから、交配を進めるようにしましょう。
この記事のライター
curo
これから犬を飼う方はもちろん、今現在、犬と暮らしている方のお悩みを解決できるような情報を提供していきたいと思います。
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