【獣医師監修】フレンチブルドックが毎日吐く・・原因は?吐きやすい犬種って本当?
日本でも多くの方が一緒に暮らしているフレンチブルドッグはユニークな見た目や魅力的な性格などからとても人気のある犬種ですよね。近年ではアメリカやイギリスで長年人気ランキング1位だったラブラドールレトリバーを抜いてトップに君臨するほど大人気となっています。そんなフレンチブルドッグ、数多くいる犬種の中でも吐きやすい傾向にあることをご存じでしょうか。犬は人間と比べて吐きやすい身体の作りになっていると言われてはいますが、それでも心配になってしまいますよね。そこで本記事では、フレンチブルドッグが吐きやすい傾向にある理由と、吐いたときに考えられる原因の一部を抜粋してご紹介します。
はじめに|「吐く」には2種類ある
何気なく「吐く」という言葉を使ってしまいますが、「吐く」には「嘔吐」と「吐出」の2種類があり、犬が吐いた時、獣医療分野(医療分野)ではどちらなのかをまず区別します。それぞれの違いについて知っておきましょう。
「嘔吐」
嘔吐とは、脳にある嘔吐中枢が何らかの原因で刺激され、胃や腸の中にあるものを吐き出すことです。すでに消化が始まっているものが逆流するためお腹の筋肉の収縮を伴い、体力を消耗します。一般的に「吐く」と聞いて想像するのはこちらでしょう。
異物誤飲や食物アレルギー、腎不全や肝不全などの疾患、感染症のほか、空腹や早食い、食べ過ぎ・水の飲み過ぎといった生理現象も原因となります。
「吐出」
吐出とは、食べ物が消化される前(胃に到達する前)に食道から逆流して吐き出されることです。食べた直後に起こることが多く、未消化のため、吐き出したものを食べ直すことも珍しくありません。
吐出の原因としては、口内・食道内の異物や巨大食道症、誤飲、口に入れたものが大きすぎたなどが考えられますが、もっとも多いのが早食いだと言われています。
巨大食道症についてはこちらの記事で詳しく解説しています
フレンチブルドックはなぜ吐きやすいと言われているの?
冒頭でも触れましたが、四足歩行である犬は消化器官が地面に対して水平という体のつくりになっているので、吐きやすい生き物です。そのため、愛犬が突然吐いてしまったという経験をしたことがある飼い主さんは多いと思います。中でもフレンチブルドッグは吐きやすい(嘔吐しやすいという意味合いで)と言われていますが、いったいなぜなのでしょうか?
「短頭種」であることが関係している
フレンチブルドッグは「短頭種」に分類される犬種です。短頭種とは頭蓋骨の長さ(幅)に対してマズルが短いことを指しますが、マズルが短く口腔の面積が狭いという構造をしていることから、さまざまな気道の解剖学的異常が認められます。
具体的には外鼻孔狭窄や軟口蓋過長、喉頭小嚢の外反、喉頭虚脱、気管低形成などです。これらにより引き起こされる呼吸器症状を総称して「短頭種気道症候群」と呼んでいます。
短頭種気道症候群はガーガー、ブーブーという呼吸音が聞かれたり、寝ているときにいびきをかくなどの様子が見られることが多いですが、中には咳や嘔吐などの症状が見られるケースもあるため、「フレンチブルドッグは吐きやすい」と言われているようです。
ただし、短頭種に分類される犬がすべて嘔吐しやすいというわけではなく、「短頭種は短頭種気道症候群になるリスクが高く、症状の1つに胃炎などからの嘔吐があるため、中頭種や長頭種の子と比べると嘔吐しやすい傾向にある」という認識に留めてよいでしょう。
短頭種気道症候群についてはこちらの記事で詳しく解説しています
フレンチブルドッグが吐くときに考えられる原因は?
人間とは異なり犬は健康的な状態であっても早食いや食べ過ぎ、食後の運動などの理由から嘔吐してしまうことがあります。上記のほかにも病気や感染症などが原因であることももちろんあり、嘔吐・吐出含め犬が吐く原因として考えられるものは多岐にわたるため、ここでは原因となりうるものの一部をご紹介します。
嘔吐・吐出どちらの可能性もあるもの(一部)
【早食いや食べ過ぎ】
たくさんの食べ物を短時間のうちに一気に食べると、胃が急速に伸展し、それが刺激となって嘔吐してしまうことがあります。
また、犬は本能的にも歯の形状的にもよく咀嚼せずに飲み込む傾向にありますが、早食いをすることで胃に入る前にフードを吐き出してしまう(吐出)ことも珍しくありません。
さらに早食いは嘔吐・吐出の原因になるだけでなく、満腹感が得にくいため食べ過ぎになりがちです。
フレンチブルドッグは食欲旺盛な子が多いと言われており、早食いをしたり食べ過ぎてしまうことがあるので、早食い防止用のフードボウルを活用したり、1回あたりのごはんの量を減らして食事の回数を増やし、1度にたくさんの食べ物を飲み込ませないように工夫しましょう。
【異物誤飲】
フレンチブルドッグはお腹が常に空いていてごはん以外のものも食べようとしてしまったり、首が短く顔の位置が低いため地面の異物を拾いやすい可能性があることから、誤飲しやすいと言われています。
誤飲は、口に入れたものが大きければ喉に引っかかるので、それを排出しようとします。(吐出→嘔吐)
しかし、「乾電池(※)や髪ゴム、おもちゃの破片など飲み込んでしまえる大きさのものを誤飲してしまった場合(①)」や『中毒性のある異物を摂取してしまった場合(②)』には、「異物によって胃が物理的に刺激され嘔吐したり(①)」、『中毒症状の一環として嘔吐することがあります(②)。』
また、異物によって腸閉塞を起こすとそれ以降口に入れたものは物理的に通過できなくなるので、出どころを失い口から出てくることもあります。
※乾電池の誤飲は、物理的な閉塞のほかに、消化管の粘膜に通電して穴を開けてしまうことによる胃腸炎や消化管穿孔の原因となり、それにより嘔吐してしまうケースも考えられます。
いずれにせよ、誤飲は手術が必要になる可能性があるだけでなく、最悪の場合、気道閉塞を起こし窒息するなど命に関わるケースもあるため細心の注意を払わなければいけません。
犬が口にすると危険な食べ物はもちろん、中毒症状を起こす植物・薬剤や身の回りの雑貨、さらにはお菓子のパッケージなど、誤飲の恐れがあるものは愛犬の手の届くところに置かない・放置しないことが大切です。ぬいぐるみやクッションなどを噛んで中の綿を飲み込んでしまうこともあるので、日頃から柔らかいものを噛む癖がある場合には近くに置かないようにしたほうがよいでしょう。
嘔吐の原因として考えられるもの(一部)
【食物アレルギー】
フレンチブルドッグは、食物アレルギーが原因で吐いてしまうことがあります。数ある犬種の中でも、フレンチブルドッグはアレルギーを発症しやすい犬種と言われており、皮膚トラブルだけでなく、下痢や嘔吐といった消化器症状もみられる事があります。
自宅でアレルギーの原因を特定することは非常に難しいため、特定の食物を食べたときにのみ吐くといった症状がみられる場合は、動物病院に相談することをおすすめします。
フレンチブルドッグのアレルギーに関する記事はこちら
【感染症】
感染症によって嘔吐するケースもあります。感染症といってもさまざまで、犬コロナウイルスや犬パルボウイルス、犬ジステンパーウイルスといったウイルス性のものから、寄生虫や細菌感染によるものが原因となることもあります。
感染症は急性の嘔吐のほかに、下痢や発熱などの症状も見られ、重篤化すると死に至ることもあるため、定期的に予防接種を行うことが重要です。
ただし、ワクチンで予防できる範囲外のウイルスや細菌、寄生虫感染による感染症は防ぐことができません。フィラリアや回虫などの内部寄生虫やノミ・ダニといった外部寄生虫に対しては動物病院で予防薬・駆除薬を処方してもらったり、定期的に健康診断を受診して予防に努めましょう。
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フレンチブルドッグが吐く原因はさまざま
今回はフレンチブルドッグが吐く原因の一部をご紹介しました。犬は吐きやすいと言われてはいるものの、原因によっては命に関わることもあるので軽んじないようにしましょう。
もしも愛犬が嘔吐した際には、嘔吐物の色やニオイ、吐き出したもの、回数・頻度、嘔吐した後の様子などをチェックしてください。血液や黒いものが混じっている、食後数時間経っているのに固体が混ざっている、便臭がする、繰り返し嘔吐する、元気がないなどの様子が見られたら要注意です。
毎日吐いているけど、食欲も元気もあるという場合には緊急性が低いと言われていますが、嘔吐にしても吐出にしても吐くということが続くのはあまり良いことではありません。
吐き続けることで逆流性胃腸炎や食道炎を起こし、さらに吐きやすくなってしまいます。そのため、「よく吐くけど元気」という場合であっても、1度治療を受けることが愛犬への負担を減らすことに繋がると言えるでしょう。
また、1日のうちに何度も吐いてしまう場合には嚥下障害の可能性も考えられます。愛犬が頻繁に吐くのであれば、念のためかかりつけ医に相談してくださいね。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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