【獣医師監修】歯周病になりやすいのはどんな犬?犬種や年齢、生活習慣などの特徴をまとめました
歯茎が赤くなったり、腫れたり、歯を支える歯周組織が破壊されてしまう歯周病。犬は歯周病になりやすい動物で、3歳以上の成犬の約80%が歯周病にかかっているとも言われています。放っておくと命に関わることもある怖い病気です。そんな歯周病にかかりやすい犬にはどのような特徴があるのでしょうか?
本記事では、歯周病になりやすい犬のサイズや犬種、年齢、生活習慣などについてご紹介します。
歯周病になりやすい犬の特徴|サイズや犬種
一般的に、小型犬は歯周病になりやすいと言われています。
小型犬が歯周病になりやすい理由
小型犬が歯周病になりやすい理由には、次のようなものが挙げられます。
顎が小さい
個体差はありますが、大型犬でも小型犬でも歯の本数は変わらず、乳歯は約28本、永久歯は約42本生えます。大型犬の場合は歯と歯の間に隙間がありますが、小型犬は顎が小さいため歯が密生し、狭い隙間に歯垢や歯石が溜まりやすくなります。
また、小型犬は乳歯が抜け落ちないまま永久歯が生える「乳歯遺残」になることがよくあります。すると、噛み合わせが悪くなるだけでなく、歯が重なった部分に汚れがたまりやすくなり、歯周病を発症しやすくなります。
唾液の分泌量
唾液には雑菌の繁殖を抑える役目があります。個体差はありますが小型犬で唾液が少ない場合、歯周病になりやすいと言われています。
一回あたりの飲水量の少なさ
飲水には、口内の食べかすを洗い流し、清潔を保つ効果があります。大型犬に比べると小型犬は一回当たりの飲水量が少ないため、口内の汚れや細菌が口の中にとどまりやすくなり、口内が不衛生になりがちです。
歯周病になりやすい犬種
ある保険会社の歯周病の保険金請求割合はイタリアン・グレーハウンドが最も多く、次いでミニチュア・ダックスフンド、パピヨンなどの小型犬が多くなっています。必ずしもこの結果通りになるわけではありませんが、顎が小さく歯が密集しやすい犬種は要注意と言われています。
イタリアン・グレーハウンド
マズルが細長いイタリアン・グレーハウンドは、狭い顎に歯が密生するため歯と歯の間に汚れが溜まりやすいと考えられています。特に、歯の隙間が狭い切歯(前歯)には歯垢や歯石が付きやすく、歯が抜け落ちてしまうことも多いようです。
ミニチュア・ダックスフンド
細長いマズルにつぶらな瞳がかわいらしいミニチュア・ダックスフンドは、歯が密集しやすいという小型犬の特徴に加え、口蓋ヒダが深いことも歯周病になりやすい原因として考えられています。
パピヨン
小顔で蝶が羽を開いたような大きな立ち耳が印象的なパピヨンは、顔と顎が小さいことから歯が密集しやすく、歯周病になりやすいと言われています。
歯周病になりやすい犬の特徴|年齢
犬の歯周病のなりやすさはライフステージによる違いがあり、若齢でも発症しますが、人間と同様、加齢に伴い発症率が高くなることがわかっています。これは、時間の経過と共に歯石が重度に沈着することや、老化によって唾液の分泌量が減って歯垢が蓄積しやすくなること、免疫力が低下することなどが関係していると考えられます。
高齢犬は歯周病治療が難しいことも
犬の歯周病の治療では一般的に歯石除去や抜歯処置などが行われますが、これらの処置には全身麻酔が必要です。高齢になると全身麻酔のリスクが高くなるため、麻酔前検査(血液検査、胸部レントゲン検査、心臓エコー検査など)で全身麻酔に耐えられる状態かを調べ、問題が見つかれば根治的な治療ができない場合もあります。
歯周病になりやすい犬の特徴|生活習慣
歯周病には、日頃の生活習慣が大きく関係しています。
デンタルケアが不十分
犬の歯垢は3~5日で歯石に変化すると言われています。柔らかい歯垢のうちであればデンタルケアで落とすことができますが、ケアが不十分な場合には歯石に変化してしまい、自宅のケアでは落とせなくなってしまいます。
歯みがきガムやロープのおもちゃなどデンタルグッズを与える方法もありますが、歯垢を落とすために最も有効な方法は歯ブラシを使用した歯みがきです。いきなり磨こうとすると驚いてしまうので、時間をかけて少しずつ慣れさせることが大切です。まずは口元にさわる練習から少しずつ始めていくのが良いでしょう。
飲水量が少ない
前述した通り、飲水には口内の汚れを洗い流す効果があるため、飲水量が少ない犬は歯垢が付きやすくなります。
犬が水を飲みたいタイミングでいつでも飲めるようにしておくことが大切なので、自宅では水飲み場を数ヶ所設けたり、お散歩などで外出する際にもペットボトル等に水を入れて持ち歩きましょう。
柔らかい食事
ウェットフードや半生タイプのドッグフード、手作りごはんなどの柔らかい食べ物を与えている場合、歯や歯ぐきにフードが残りやすく、歯垢が付きやすくなります。十分に歯磨きで汚れを落とせれば問題ありませんが、そうでない場合はドライフードを食べている子と比べ歯石や歯周病の原因になってしまう可能性が高くなるので注意が必要です。
日頃からのデンタルケアで歯周病を予防しよう
歯周病はどのような子でも発症するリスクがありますが、犬のサイズや犬種、年齢、生活習慣によってかかりやすさに違いがあります。愛犬が歯周病になりやすい条件に当てはまるようであれば、特に注意してあげましょう。飼い主さんがケアすることで予防できる病気なので、日常的なデンタルケアで予防に努め、お口の異常に気付いたら早めに動物病院を受診しましょう。
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この記事のライター
choco
シェルティとの生活に憧れる社会人です。みなさんの愛犬との暮らしがより豊かになるような情報を発信できたら、と思っています!
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