犬の血統書は必要か?記載事項や作成の手続き、注意点についても解説
ペットショップで「血統書付き」の表示を見たことはありませんか?
いかにも特別感のある血統書ですが、血統書がついているからといってその犬の価値が高いわけではありません。
今回は犬の血統書の必要性や記載事項、作成や名義変更などの手続きを紹介します。
注意点も解説していますので、ぜひ見てみてくださいね。
犬の血統書とは
犬の血統書とは犬の血筋を血統書発行団体の審査により保証したもので、私たち人間でいう「戸籍」です。
戸籍は誕生してから死亡するまでの身分関係を国に登録し、公に証明する大切なものですが、犬の場合そこまで大きな意味はもちません。
血統書は犬の両親、祖父母、曾祖父母と3代前までの情報が記載されています。
純血種を取り扱うブリーダーにとって血統書は産まれてくる子犬の毛色や大きさ、健康状態を予測できるため重要といえるでしょう。
しかしブリーダーではない飼い主さんにとっては、血統書を受け取ることにどんな意味があるのでしょうか。
次から血統書の必要性について見ていきましょう。
犬の血統書は必要か
飼い主さんが子犬の繁殖を行うブリーダーの場合や、愛犬を競技会に参加させようと考えている場合、血統書は必要です。
犬の血統書が発行されると、主に以下の2点が可能になります。
- 純血種であることを証明できる
- 協議会に参加できる
ペットショップのような場所では、血統書がついていることが特別であるように記載されているところが多いでしょう。
しかし、血統書があるからといって優秀な犬であるという証明にはなりません。
血統書があるとどんなことができるのかを紹介します。
純血犬であることを証明できる
世代を遡ることで、血統書の発行を受けた犬にほかの種類の血が混ざっていない、純血種であることを証明できます。
前述したとおり、血統書は犬の3世代前までの血筋を表したものです。
この犬が純血種である証明を必要とするのは繁殖を行うブリーダーや、特定の犬種を迎えたいと考えている飼い主さんなどでしょう。
純血種の犬を販売する際や、迎えたい子犬に別の犬種の血が混ざっていないかを確認するためには、血統書は必須といえます。
競技会に参加できる
ドッグショーや訓練競技会、アジリティなどの競技会に参加する際には血統書が必要です。
もちろん上記の競技会の中には血統書がついていない犬でも参加できたり、犬種を不問にしているものもあります。
しかし、犬種ごとに部門が分かれている大会や、犬種ごとに分かれて競う競技も存在するため、血統書を持っていることで参加できる大会が増えるでしょう。
犬の血統証明書を発行している団体
犬の血統書は国によりさまざまな団体で発行されていますが、日本では以下の4団体が代表的です。
- 一般社団法人ジャパンケネルクラブ
- NPO法人日本社会福祉愛犬協会
- 公益社団法人日本警察犬協会
- 一般社団法人全日本狩猟倶楽部
また以下のように、特定の犬種に特化した発行団体もあります。
- 公益社団法人日本犬保存会
- 一般社団法人日本コリークラブ
- 公益社団法人日本シェパード犬登録協会
- 一般社団法人天然記念物北海道犬保存会
日本では血統書を発行するための公的機関はありません。
上記のようにさまざまな任意団体が血統書を発行していますが、日本国内において約9割の発行部数を誇るのが、ジャパンケネルクラブ(JKC)です。
JKCは80もの国や地域を統括する国際畜犬連盟(FCI)に加入しており、大きな団体といえるでしょう。
本記事でも血統書の見方や条件についてはJKCのものを基準としていますので、ぜひ参考にしてください。
犬の血統証明書からわかること
犬の血統書にはさまざまな情報が載っています。
基本詳細とチャンピオンタイトルについて見ていきましょう。
基本詳細
血統書は以下のようにとても詳細に、犬の情報が記載されています。
- 名前
- 犬種名
- 性別
- 毛色
- 生年月日
- 繁殖者名
- 所有者名
- 血統書発行団体への登録日、登録番号
- DNA登録番号
- マイクロチップID番号
- 父犬・母犬の血統図
- 兄弟犬の情報
犬種名は飼い主さんが呼ぶ愛称ではなく、繁殖者が登録した名前が英語で記されています。
任意で愛称の登録もできるため、希望する飼い主さんは手続きを行いましょう。
名前は洋犬であればアルファベット、和犬であれば日本語で表記され、繁殖者がつけた名前の後、犬舎名が続きます。
兄弟犬の情報は最後に紹介する兄弟犬を探す際に役立ちますので、確認しておくとよいでしょう。
またJKCでは上記の項目のほか、股関節評価と肘関節評価の記載も可能です。
股関節評価と肘関節評価を載せることで、犬の遺伝疾患である股関節形成不全や肘関節異形成の減少が期待できます。
手続きをすれば4世代前までの情報の記載もできるため、健康で問題のない子犬を産ませたいブリーダーにとって、血統書は役立つ情報となるでしょう。
チャンピオンタイトル
大会で優秀な成績をおさめてチャンピオンタイトルを獲った犬は、犬名にチャンピオンを示すCH.の暗号が記載されます。
ひと言にCH.といっても以下のようにさまざまな大会が存在するため、略記号と名称を知っておくといいでしょう。
- INT.CH.:インターナショナルビューティチャンピオン
- INT.W.CH.:インターナショナルワーキングチャンピオン
- INT.AG.CH」インターナショナルアジリティチャンピオン
- AG.CH.:アジリティチャンピオン
またCHに続く()内にはチャンピオンを取得した大会の開催国と称号を取得した日付が記載されており、一目で情報がわかるようになっています。
犬の血統書に関する手続き
犬の血統書の基本や見方がわかったら、以下の手続きや情報も知っておくと役立つでしょう。
- 血統書を作りたい場合
- 血統書の名義を変更したい場合
- 血統書の情報から兄弟や親戚を探したい場合
順番に見ていきましょう。
血統書を作りたい場合
血統書を作りたい場合は条件を満たしたうえで、申請に必要なものがそろっていなければいけません。
発行条件と申請に必要なものを順番に見ていきましょう。
血統書発行条件を満たしている
犬の血統書の必要性について前述しましたが、血統書を発行する際は犬種標準を満たしていることが条件です。
犬種基準とは各犬種の標準的な見た目を定めたもので、スタンダードともよばれます。
犬種の特徴がはっきりと表れ、誰にでもその犬種を理解してもらうために、身体の大きさや顔、身体のバランス、毛色など多くの項目を満たさなければなりません。
たとえばミニチュアシュナウザーを例に見てみると、JKCでは以下のような犬種標準が示されています。
- 体重:メスもオスも4~8kg
- 体高:30~35cm
- 外観:小さく力強く、ほっそりというよりはがっしり
上記のほか毛色に関しても、「いかなる毛色であってもそれぞれの毛色に調和する暗色のマスクでなければならない」「頭部や胸、獅子に明瞭な明るい色のマーキングがあるのは好ましくない」などの細かい記載があります。
また、ミニチュアシュナウザーのように犬種標準で尻尾が短いと記述されている犬は、産まれてすぐ断尾を行わなければなりません。
以前は狩りの際の邪魔になるとのことで断尾をおこなっていましたが、現在では犬種標準に近づけるための目的で断尾をおこなっているのが現状です。
標準だからといって産まれてすぐ尻尾を切ってしまうのは可哀想という意見もあり、悩ましいところでしょう。
血統書発行に必要なものが揃っている
上記の条件を満たしたうえで、血統書の発行には以下のものが必要です。
- 名義人のJKC会員証明
- 母犬の血統書
- 母犬所有者の犬舎名登録
- 交配証明書
- オス犬の血統書コピー
- 母犬の写真
- 血統証明書発行申請書
- DNA登録
血統書は厳密な審査により発行されるため、必要書類も多くなります。
子犬の血統証明書が発行されるには母犬の所有者である繁殖者が所属クラブを通じてJKCに申請する必要があり、登録の際は以下の料金もかかります。
- 母犬所有者(繁殖者)のJKCへの入会登録:入会金2,000円、年会費4,000円
- 犬舎名登録:6,600円
- オス犬(父犬)DNA登録:7,500円
- 申請料:生後90日以内2,200円、生後91日以上5,600円
母犬だけでなく交配証明書や父犬のDNA登録、父犬の血統書のコピーはやり取りに時間がかかる場合もあるため、必要書類を知って早めに準備することが大切です。
また上記条件を満たしてる場合でも、JKCでは以下の場合血統書の発行が見送られます。
- 生後9カ月未満での交配
- 近親(親子、兄弟姉妹など)での交配
- 2歳以上の犬
- 書類不備
生後9カ月未満での交配や近親交配は、産まれる子犬が健康を損なっている可能性や遺伝的疾患要素が強いとされています。
血統書発行の際だけでなく、愛犬の子供を望んだ際も近親交配はタブーのため、絶対に避けましょう。
またJKCでは2歳以上の犬の場合、基本的には登録ができません。
親子すべてのDNA確認ができる場合は認められるので、2歳を過ぎた犬を登録したい場合は登録条件を確認しておくとよいでしょう。
血統書は厳正なる審査を行ったうえで発行されるため、書類不備の場合発行が見送られます。
申請の際は記入不備や捺印漏れ、父犬のDNA登録や名義変更の完了状況を確認し、完璧に必要書類を作成して申請しましょう。
血統書の名義を変更したい場合
血統書が発行された当初は所有者の名前は登録したブリーダーとなっているため、血統書を受け取ったら名義変更を行いましょう。
血統書の名義変更を行う場合、JKC本部ではなく愛犬クラブ事務所か登録畜犬業者で行います。
名義変更には名義変更料と、JKCクラブ会員でない場合は登録料がかかります。
変更料は血統書の発行日から申請までの期間で異なり、6カ月以内であれば1,200円、6カ月以上経過している場合は3,400円が必要です。
血統書の所有者名義は愛犬の所有権を表しているものではないため、変更しなくても問題はありません。
ただし名義変更を行わないと、血統書を紛失してしまった際に再発行手続きができません。
繁殖を行う際などにも必要となるため、飼い主さんが必要だと感じたら早い段階で行うとよいでしょう。
血統書の情報から兄弟や親戚を探したい場合
犬の血統書に関する手続きではありませんが、血統書から兄弟や親戚を探せる方法も知っておくとよいでしょう。
血統書を使い兄弟や親戚を探すには、血統書のデータベースを紐付けたサービスを利用する方法があります。
「ペディ(PEDI)」では約16万頭の血統書データベースから愛犬の兄弟や親戚を探せます。
一緒に産まれた兄弟が今どこにいるのか、どうしているのか、どんな性格をしているのか、犬を飼ううえで知っておきたいこともありますよね。
また愛犬とSNSで繋がって、愛犬に似た仕草や行動を目にしたら微笑ましく思えますよ。
上記のサイトは登録も検索もとても簡単なので、ぜひ試してみてくださいね。
犬の血統書に関する注意点
最後に犬の血統書の注意点としてお伝えしたいことは、血統書は犬が優秀であることの証明にはならないことです。
この記事でも何度かお伝えしましたが、血統書は愛犬の血筋が辿れるものですが、優劣の判断はできません。
どの犬も飼い主さんにとって魅力的で個性的で、愛らしい存在です。
血統書があろうがなかろうが、大切な愛犬に違いはありません。
ただし血統書は見てきたように厳しい条件や審査に基づき発行されるため、愛犬がどこで繁殖されて、どんな祖先や親から産まれたのかがわかるため、安心にはつながります。
危険な交配をするブリーダーやペットショップから愛犬を迎えなかったという証明をされていると考えれば、私たち飼い主が血統書を持つ意味はあるのかもしれません。
まとめ
今回は犬の血統書についての必要性や記載事項、手続きや注意点を解説しました。
血統書には愛犬に関するさまざまな情報が載っています。
親や兄弟の情報も載っているため、愛犬が家に来る前にどんな風に遊んで過ごしていたのかと想像を巡らせてみるのも楽しいでしょう。
ただし、血統書があるからといって優秀であることの証明にはならない点は知っておかなければなりません。
血統書は迎えた際に貰ったまま引き出しの奥にしまっておかず、時々でも眺めてみましょう。
項目の意味や見方、手続きの方法を知り、必要なときに必要な情報が読み取れるようになっていければいいですね。
この記事のライター
satoko
わんちゃん大好きなドッグライターです!愛犬のコーギーに癒される日々を送っています。皆さんにとって有益な情報を発信できるよう頑張ります!
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