マタギ犬って知ってる?狩猟のパートナーとして山野を駆け巡ったマタギ犬の特性や歴史をひも解いてみよう
欧米ではポピュラーな野生動物の狩猟。スポーツハンティングなども活発で人気があり、漫画やアニメのワンシーンなどでも描かれているため、目にしたことがある人も多いのではないでしょうか?鳥やウサギなどの小動物を追い立てる狩猟犬の犬種も豊富で、現在は愛玩犬とされている多くの犬たちも、ルーツは狩猟犬だった歴史を持つ犬種も少なくありません。
その昔、日本では主に東日本で「マタギ」と呼ばれる人々が狩猟によって生計を立てていました。そしてマタギ犬と呼ばれる犬たちと協力して獲物を追っていたのです。今回は狩猟のパートナーとして欠かせない「マタギ犬」の特性や歴史などをご紹介します。
聞きなじみのない言葉【マタギ犬】とは?
マタギ犬とは文字通りマタギ(猟師)たちのパートナー的存在で、常に狩猟のサポートをしていた犬のことを指します。大型の野生動物の場合は、銃などを用いてマタギが倒すわけですが、アナグマやウサギ程度の小動物であれば、マタギ犬が独力で捕らえ、持ってくることもあったそうです。
ちなみに欧米のように、日本にいる犬たちは特定の狩猟に適するような改良がされてこなかったため、縄文時代の犬の遺伝子を色濃く受け継いでいると言われています。また、マタギ犬とは特定の犬種を指すものではなく、マタギ猟に従事させる犬の総称となります。
「マタギ」とは?その狩猟方法とは?
マタギとは、主に東日本でクマ、イノシシ、カモシカ、サル、その他小動物の狩りをする人たち、銃によって獲物を仕留めることを生業としていた人々のことを言います。彼らは地域ごとにマタギ集落を形成し、山深くに分け入って獲物を追っていました。
マタギの狩猟には2つの方法があり、単独で獲物を追跡して仕留める「忍び猟」と、集団で獲物を追い込んで仕留める「巻狩り」があったそうです。マタギ犬が活躍したのは忍び猟で、主人に獲物の隠れ場所を教えたり、吠えて獲物の動きを封じるなどの役割がありました。
マタギ犬は「熊犬」と呼ばれることもありますが、熊を相手にしても動じない勇気と芯の強さを持っていたことで、マタギたちの最良のパートナーになれたと言われています。
狩猟のパートナー│マタギ犬と人間の歴史
マタギとは、狭義の意味では東北地方の猟師たちのことを指し、それ以外の地域では、単に「猟師」や「山立(やまたて)」と呼ばれていたそうです。この「やまたて」が訛って「マタギ」となったとも言われていますね。
彼らが最も活躍した時代は、江戸〜明治の頃です。江戸後期に雪国での生活を描写した書物「北越雪譜」の中に、マタギたちの様子が描かれています。
出羽(現在の山形県)からやって来た猟師らは、越後の熊を狩りに来ているが、越後の熊の胆が上品であるからという。5〜7人で行動し、3〜4匹の犬を連れている。獣の皮の衣を全身にまとっており、柄の長さ4尺ばかりの手槍、山刀を薙刀のように作ったもの、鉄砲、斧類などを持っており、道具も獣の皮を使って鞘にしている
マタギ犬たちがクマの居場所を知らせ、罠を仕掛けて大石を落としたり、マタギ犬がおびき出して誘い込み、火縄銃や手槍などで仕留める方法があったそうです。
明治時代に入ると、熊の胆の価値が低くなって需要が減りますが、大型獣の毛皮などが軍需品として重宝されたため、マタギ文化は残り続けることになりました。とはいえ時代の移り変わりと共に、後継者不足や禁猟政策などによってマタギも少なくなっていき、マタギ犬たちもまた混血が進むなどして徐々に姿を消すことになったのです。
マタギ犬たちの活躍の場
野生動物たちが多く生息する場所は、やはり人里離れた山深い地です。しかし獲物を追跡しているうちに他領や他府県に立ち入ってしまうことも多く、その土地でマタギの技術を伝えることもあったそうです。
またマタギ集落を囲む山々は、ブナの原生林が非常に多く、クマをはじめとする野生動物たちの楽園でした。マタギ犬たちが活躍したのは、そんな自然豊かな環境だったのです。特に秋田地方のマタギ文化は根強く、秋田のマタギ犬たちが有名なのも、そこに理由がありますね。
どんな犬種がマタギ犬として活躍してきたの?
マタギ犬として優秀な特性を備え、主人と素晴らしいパートナーシップが取れる犬の種類・犬種を紹介していきましょう。
北海道犬
日本古来のマタギ犬ともいわれる存在で、アイヌ人たちが狩猟のために使役していたとされています。 元々は東北地方のマタギ犬でしたが、アイヌ人たちと北海道へ移住したことで才能が開花することになりました。
主人や家族に対しては愛情深い一方で、他の動物に対して攻撃的になる部分が、まさに狩猟向きというべきでしょうか。
秋田犬
秋田犬は、かつて活躍していた秋田マタギたちがパートナーとして共に暮らしていた犬種です。クマにも負けない大柄の体格と闘争心、我慢強く主人に従順な気質はマタギ猟にはぴったりだったことでしょう。 しかし江戸時代に闘犬が盛んになると、より強い犬を生み出すため交配が行われ、純血種は激減していきました。
やがて明治になりますが、秋田犬を必要とするマタギたちの声もあり、純血種を保存するという意識が高まりました。そうして秋田犬の繁殖へと繋がることになったのです。
マタギ犬について記した書籍は?
マタギ犬ゴンとイノシシ槍王の闘い
ドッグライター桑原崇寿氏の著作で、秩父郡東秩父村白石で取材したイノシシとの戦いを、ドキュメンタリー風にまとめたフィクションとなっています。
手負いの巨大イノシシ槍王と、マタギ犬ゴンの戦いを通して、人と自然。そして動物たちとの共生とは何か?を深く考えさせられる作品です。
実際の東北地方のマタギをテーマとしたものではありませんし、どちらかと言えば児童書に当たるのですが、環境破壊など、人と自然が抱える問題点を突き詰めた一冊になっていますので、ぜひ興味のある方は手に取ってみてください。
今も残るマタギ犬の文化
日本の猟師といえば、昔話に出てくるようなイメージを持つ方が多いのではないでしょうか?しかし昔から紡いできたマタギ文化は姿や形を変えながら、現代にもその伝統を残しています。そしてマタギ犬をルーツに持つ犬たちも、秋田犬や北海道犬をはじめとして、狩猟犬らしい性格を今に残しつつ暮らしているんですね。
▼参考資料▼
この記事のライター
komugi
都内で愛犬のビーグルと暮らしています。コロナ期間中に肥満体型になってしまった愛犬のために食事や運動について勉強をはじめました。面白い発見や愛犬家の皆様に役立つ情報があればどんどん発信していきます!
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