犬のお仕事|災害救助犬になる条件とは。試験や訓練内容について詳しく解説

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世界各地で自然災害が問題となる中、行方不明になってしまった人達を捜索するのは人間だけではありません。災害救助犬という、嗅覚を活かして捜索を行う犬が存在します。

そんな私たちのピンチを救ってくれる災害救助犬ですが、詳しくは知らないという方が多いのではないでしょうか?

今回は、災害救助犬の基礎知識と、災害救助犬になるための訓練や試験の内容について紹介していきます。一緒に災害救助犬への知識を深めていきましょう。

犬のお仕事|災害救助犬になる条件とは。試験や訓練内容について詳しく解説

目次

  1. 災害救助犬の役割は?
  2. 災害救助犬になるために行う訓練内容
  3. 災害救助犬に向いている犬種や性格は?
  4. 災害救助犬の認定試験とは
  5. 引退した災害救助犬の里親募集がある

災害救助犬の役割は?

災害救助犬
USAG Ansbach

 災害救助犬とは、その名の通り、地震や土砂崩れといった災害時に活躍してくれる犬のことです。犬が持つ鋭い嗅覚を活かし、主に行方不明者の捜索を行います。

一言で災害救助犬といっても、大きく3種類に分けられます。

  • 地震救助犬
  • 水難救助犬
  • 山岳救助犬

 種類を分けて訓練することで、それぞれの災害現場に特化した能力を発揮します。今回は、その一例として地震救助犬について紹介していきます。 

救助犬と警察犬の違い

 警察犬も同じく捜索訓練をしていますが、警察犬の場合にはある特定の人物の匂いを頼りに捜索を行います。

これに対して、災害救助犬の場合は、不特定多数を探す必要があり、空気中に漂っているわずかな匂いや人の気配を頼りに捜索を行います。

そのため、どんな人が居るのかも分からないような災害現場では、警察犬ではなく災害救助犬が活躍するのです。

地震救助犬の役割

 地震救助犬とは、地震で崩落した斜面や、崩れた建物のガレキの下に入りこんで人命救助のサポートができる犬を指します。

地震災害の際には、自衛隊や警察官の他に、地震救助犬と、それに指示を出すハンドラーがいち早く現地に入り、行方不明者の捜索にあたります。

2016年に起きた熊本地震の際には、地震救助に特化した災害救助犬が現地に入り、賢明に捜索にあたっている姿がメディアでも多く取り上げられました。

また、日本国内だけでなく、海外にも地震災害時に活躍する災害救助犬は多く存在します。

装備について

 近年では、災害救助犬にGPSやカメラを装着し、現場の様子をいち早く確認できるような装備が研究されています。災害救助犬とテクノロジーを組み合わせることで、より進化した救助体制が整ってきているのです。

また、災害救助犬が出動する際には、ガレキで足を傷つけないように専用のブーツを身に着ける場合があります。しかし、犬は足の裏から多くの情報を得てるため、逆にケガのリスクを高める可能性があるとして、義務付けられてはいません。

災害救助犬になるために行う訓練内容

犬のトレーニング
825545

 災害救助犬になるためには、どんな状況でもパニックにならず、冷静に捜索ができるように常に訓練を行う必要があります。

災害救助犬の訓練の内容と、訓練によってどんな活躍ができるかについて解説していきます。

遠隔操作に従う訓練

 遠隔操作とは、ハンドラーが数メートル離れた位置から災害救助犬へ指示を出す、高度なスキルです。離れた場所からでも、「前進」や「右に曲がる」といった指示を聞き分け、その通りに動けるように訓練します。

災害救助犬に遠隔操作が身に付くことで、広範囲を素早く捜索できるようになります。

クリープ訓練

 クリープ訓練とは、「ふせ」をした状態のまま前進させる訓練です。狭い隙間へ入れるようにするために必要なスキルとなります。

このスキルがあることで、人間では捜索することが困難な状況でも、捜索の手を止める必要がなくなります。

障害物通過訓練

 障害物通過訓練とは、階段やシーソーといった障害物の上を歩かせて、不安定な足場に慣れさせる訓練です。実際の土砂崩れの現場や、崩れた家屋などは足場が悪いため、災害救助犬はバランスを取って進むスキルが必要となります。

また、不安定な足場に対して、災害救助犬に恐怖心を持たせないための訓練でもあるのです。

土砂やガレキ捜索訓練

 土砂やガレキに人間が埋まったことを想定し、災害救助犬を実際の災害現場に近い環境で捜索訓練をします。土砂崩れやガレキが散乱した場所では、足場に気をつけながら嗅覚にも集中しなければいけません。

実践に近い形式で災害救助犬の訓練を行うことで、冷静さと集中力が身に付きます。

災害救助犬に向いている犬種や性格は?

犬のトレーニング
liaoxh1981

 災害救助犬になるためには、どのような犬種で性格的にはどのような犬が向いているのかを紹介します。 

災害救助犬はどんな犬種でもなれる!

 認定試験に合格した犬ならば、どんな犬種でも災害救助犬を務めることができます。なぜ犬種を限定しないのかというと、災害現場では犬種ごとの特徴を使い分ける必要があるからです。

大型犬の場合は、大きな体格を活かし、ガレキや土砂によって足場が悪くなった現場での捜索に向いています。一方、小型犬は小さな体格を活かし、僅かな隙間にも入り込むことができます。

このように、災害救助犬の犬種を限定しないことによって、それぞれの特徴が活かされているのです。

コミュニケーションが取りやすい性格が大切

 災害救助犬になるためには、犬種や体格よりもその犬の性格が重要だとされています。 

  • とにかく人が大好き
  • 好奇心が旺盛で何にでも興味を示す
  • 人と共に過ごしたり遊んだりすることが大好き
  • 大きな音や突発的な出来事にもあまり動じない

 ここに挙げたのは一例となりますが、このような性格の犬は災害救助犬として活躍できる素質があると言えます。

性格以外の点では、足場の悪い場所でも、臆することなく動き回れる俊敏さも災害救助犬の大切な要素となってきます。

災害救助犬の認定試験とは

犬の訓練
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 災害救助犬になるためには、毎日の訓練の他に、毎年開催される「救助犬認定試験」に合格する必要があります。合格率は約30%と、ほとんどの犬が不合格となってしまう厳しい試験です。

災害救助犬の試験では様々な項目が用意されており、得点方式で合否が判断されます。そんな救助犬認定試験の主な内容について見ていきましょう。

実践形式で審査をする「実施科目」

 実施科目とは、その名の通り、実践形式で捜索を行う試験です。捜索中は、発煙筒や騒音といった障害が用意されており、過酷な状況でも冷静に捜索を行えるのかを評価します。

災害救助犬はハンドラーの指示に従うだけでなく、犬が自ら捜索しようとする意欲までが評価の対象です。当然ながら、試験中に疑似的な行方不明者を全員発見することが求められます。

指示が聞けているのかを審査する「服従科目」

 服従科目では、ハンドラーの指示に対して適切な行動がとれているのかを評価します。遠隔操作はもちろんのこと、シーソーやトンネルを使った障害物試験など、合計で約10項目をこなさなければいけません。

試験という慣れない環境でも、災害救助犬は冷静に指示を聞けているかどうかが求められます。ハンドラーからの指示出しが多くなってしまうと、減点の対象となります。

ハンドラーとの絆も大切!

 救助犬認定試験では、犬だけでなく、ハンドラーも評価の対象となります。ハンドラーの指示出しがしっかりできていなければ、犬もスムーズに動くことができないからです。

ハンドラーの緊張は犬にも伝わってしまうので、常に冷静な態度が求められます。日ごろから犬との信頼関係を深め、二人三脚で合格を目指す試験なのです。 

引退した災害救助犬の里親募集がある

災害救助犬
Svadilfari

 災害救助犬は、鋭い嗅覚を活かし、災害時に行方不明者を発見してくれる頼もしい存在です。これまでの災害時にも、災害救助犬によって救われた命がたくさんあります。

そんな災害救助犬になるためには日々の訓練をこなし、救助犬認定試験に合格しなければいけません。ハンドラーの指示を正確に判断し、行動できる犬だけが災害救助犬になることができるのです。

もちろん試験に合格した後も、訓練を欠かすことはありません。私たちの命のために、日々厳しい訓練をこなす災害救助犬がいることを知っておきましょう。

また、日本レスキュー協会では、災害救助犬を引退した犬達の里親の募集が行われています。興味がある方はチェックしてみてください。

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komugi

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komugi

都内で愛犬のビーグルと暮らしています。コロナ期間中に肥満体型になってしまった愛犬のために食事や運動について勉強をはじめました。面白い発見や愛犬家の皆様に役立つ情報があればどんどん発信していきます!

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